2013年7月6日土曜日

心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)の総合的視点

心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)は、単に肉体のみならず、メンタル面との関係性を診ることで、様々な慢性症状の改善や幅広い健康面のサポート、さらにはコーチング技法を取り入れることで、人の可能性に焦点をあてることができる総合的な療法です。

最近では、腰痛や様々な慢性症状の原因として、心理面が大きく関係しているということがテレビや雑誌などで幅広く紹介されるようになり、人々が当たり前に話すような時代になってきています。しかしながら、そのための治療法は何かというと、薬物療法であったり、精神論であったりして、直接的に関与する治療法はまだまだ知られていません。

代替医療に関係する治療者は年々増加し続けているようですが、自然治癒力を引き出すことを目的とする治療者の多くは肉体面での施術にとどまり、メンタル面との関係性を診る範囲には及んでいないのが現状です。肉体面だけを調整するマニュアル的な手法には限界があります。

「自然治癒力とは何か?」「脳と自然治癒力との関係は何か?」心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)は総合的な視点で施術を行います。どのように総合的なのかという視点を解説してみたいと思います。

脳は、大きく分けて三層構造になっています。この三層構造は、マズローの5段階欲求モデルにある生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、承認の欲求、自己実現の欲求に関連して見ることもできます。人間の脳は様々な外部刺激を受けて、様々な反応作用を引き起こして健康を維持したり、病気を引き起こしたりしています。

第一層目は反射系の領域です。意識とは無関係に生命維持のために自動的に働いてくれる機能が備えられています。第二層目は大脳辺縁系と呼ばれる領域で、潜在的感情面や人間の本能的な感覚に関係します。第三層目は、理性的に考えたり認識したりする認知や判断に関係します。

脳の三層構造と神経系に基づいて総合的に健康を考えると、大きく反射系、感情、理性に分けることができます。第一層目では、身体内システムの神経反射的誤作動が健康に影響を及ぼします。自然治癒力を制限している第一層の誤作動を調整するためには、反射系の施術によって比較的短期に改善されます。

第二層目では心(潜在的感情)と身体の関係性による誤作動が健康に影響を及ぼします。自然治癒力を制限している第一層から第二層に関係する誤作動を調整するためには、反射系と感情領域に焦点を当てた施術で改善されます。第三層目では、信念や思い込みが神経系の反射系に関係して健康に影響を及ぼします。自然治癒力を制限している第一層から第三層に関係する誤作動を調整するためには、反射系と信念や思い込みに焦点を当てた施術で改善されます。

2013年7月5日金曜日

「心因性運動失調」

【はじめに】

心因性運動失調に絡んだ症状が、心身条件反射療法(以下PCRT)を併用した施術で早期に改善したのでその経過を報告する。64歳男性が、両手の震え、首や肩の重だるさ、ならびに浮遊感や股関節痛を訴えて来院。問診ではその症状は5~6年前より発症し、症状の悪化により両手の震えで茶碗を持つこともできずに、日常生活にも支障をきたしているという。病院での画像診断では頸椎の変形を指摘され、3日ほど通院したが変化がなかったとのこと。
いくつかの愁訴の中で、特に両手の震えは日常生活に支障をきたしており、深刻な問題であった。ハード面(肉体)の施術には神経関節機能障害改善を目的としたアクティベータ・メソッド(以下AM)を用いた。メンタル面に関連したソフト面(心身相関)の施術にはPCRTを用いた。
PCRTでは、症状に関連する「エネルギーブロック」(以下EB)を特定し、その関連パターンの学習記憶による誤作動を調整することが主な施術目的になる。術前と術後の評価の客観性を高めるためにも、患者の主観やPCRT独自の検査法に限らず、医学分野でも使われる神経学的機能検査の評価も行った。

【検査】

まずは、主な愁訴である「両手の震えがどこから生じているのか」に注目した。医学的に運動失調を引き起こす神経中枢系障害には部位別に、大脳性、小脳性、前庭性、脊髄性があり、振戦を引き起こす病態にはパーキンソン病、甲状腺機能亢進症、肝性脳症、本態性振戦、小脳性疾患、心因性、中毒性・薬剤性、生理学的振戦(疲労・緊張性)、ジストニアに伴う振戦などがある。振戦を動作やタイミングで分類すると、安静時振戦、姿勢時振戦、本態性振戦、動作時振戦、企図振戦がある。
問診から推測できたのは企図振戦であり、病院で医学的検査を受けていることから構造学的な原因ではないことがうかがえた。小脳性運動失調の疑いがあり、脊椎性運動失調との鑑別でロンベルグ試験を行ったが陰性で閉眼の影響はなかった。歩行では若干のよろめき歩行がみられた。その他、指-指試験、指-鼻試験、手回内-回外試験、踵-膝試験では左側で全て陽性反応が示された。患者自身も左側の動作に抵抗を感じていた。
それ以外にPCRTの効果判定に使う神経学的検査法として、ハッカ油による臭覚刺激とペンライトによる視覚刺激、メトロノームによる聴覚刺激、眼球運動によるその他の脳神経刺激などを加えて神経反射検査を行い、右側の聴覚刺激と右側眼球運動によって陽性反応が示された。

【経過】

合計で5日間、すべてAMとPCRTの施術を併用した。毎回、施術では初めにAMにより神経関節機能障害の改善を図った。心と身体の関係性による誤作動反応にはPCRT施術を行った。通院経過中に分析した関連感情は、「保護」、「恐れ」、「楽しみ」、「意欲」、「拘束」、「喜び」、「孤独」などで、様々な事柄が絡んでいた。PCRT施術後には毎回、EB陽性反応が消失し、それに伴って神経学的検査反応の改善と症状の改善が顕著に表れた。4日目には小脳機能を強化する目的で、片足立ちのバランス強化のリハビリ運動も指導した。
5日の施術最終日、小脳失調運動の神経学的検査では、初回検査と比較すると、顕著な改善が見られ、患者本人からも日常生活には支障がないまでに回復されているとの報告があった。完全ではないにしろ患者の方から治っているという自信が得られているので、希望により様子をみてもらい、悪化を感じたら来院するように促した。3か月半の間、患者の再来はなかった。

【考察】

患者は以前当院を利用して下さっていた娘さんの奨めで来院された。感情の検査では、いくつかの否定的感情や肯定的感情が混同していたが、施術経過の全体を通じて、「保護」というキーワードが主に影響を及ぼしていたように感じた。「保護」という感情は、あまり示されない感情なので、患者に「何か保護というキーワードに関連する思い当たることはありますか」と尋ねると、患者自身はすぐに思いつかなかったが、横で付き添われていた娘さんが「私でしょう」という。お父様も納得された様子でその感情に対して施術を行った。その時は「保護」の内容は詳しくはお聞きしなかった。
その後、お孫さんも学校へ行きたがらないということで来院。お孫さんの施術の際にご主人と別居されているというお話を伺い、娘さんのメンタル面やお父様の震えの背後にある「保護」という感情の因果関係が見えてきた。お父様が来院されたときには、そのような精神的ストレスの話はされなかったが、恐らくそのことでお父様が心配されて症状が悪化したのかもしれないと思い、娘さんが当院を勧めてくれたのかもしれない。以前、娘さんには当院を利用していただいていたので、心と身体の関係性のことはよく理解していただいていた。
運動失調の原因には脳血管障害や腫瘍などの構造的な問題が原因の場合もあるが、本症例のように心因性の運動失調もある。心が身体に影響を及ぼし、身体が心に影響を及ぼしているということは周知のとおりでその関係性は密接につながる。心身条件反射療法は、心と身体の関係性による誤作動を検査して施術を行う統合的なエネルギー療法である。まだまだ発展途上の施術法ではあるが多くの患者に貢献できることを願っている。