2015年8月12日水曜日

送球イップスの改善

最近、イップスで来院された患者さんがいます。野球を辞めようかと悩んでいた高校生は、レギュラー競争で、無意識的に現在のポジションを守りたいという心が一つの原因になっていました。もう一人、現在、高校野球部の指導をされている先生は、大学時代のバント処理がきっかけで、自分自身に対して、「チームのために役立つべき」という信念などが関係していました。他にも様々な信念などが心の背後に関係しています。お二人とも経過は良好で、問題なく改善されるでしょう。今までにも多くのイップスの患者さんを診させていただきましたが、まじめな方が多いようです。

送球イップスにも様々なケースがあります。よくあるケースは、遠投は問題ないが、塁間での送球や至近距離でのキャッチボールがうまく投げられなくなるケースです。イップスの患者さんは、数年間悩んだあげく、来院される方が多いようです。また、イップスを改善する専門の指導者もいるようですが、指導を受けても改善されなかったという患者さんもいらっしゃいます。

イップスの改善で大切なことは、肉体だけの問題ではなく、心理的な要因が関係しているということの理解です。心理面の要因とは、一般的に思われている心が弱いと強いとかの問題ではありません。広義的には「こころとからだの関係性」による問題です。狭義的には「誤作動の学習記憶」による問題です。心理学的には「意識と無意識の関係性による誤作動記憶」の問題です。

イップスの患者さんの多くは、発症のきっかけがあります。それを境にして、悪循環を繰り返し、様々な誤作動記憶を積み重ねている方が多いようです。きっかけとは、所属しているチームメンバーとの人間関係だったり、指導者との関係だったり、あるいは、自分自身だけの問題だったりします。また、そのきっかけが、スポーツとは関係のないプライベートなことに関係することもあります。

イップスを改善するためには、心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)のように、心身相関に関連する誤作動記憶に目を向けた治療法であれば本質的な改善が望まれるでしょう。投球フォームや肉体面のバランスばかりに目を向ける指導者や治療者もいますが、そのような表面的なアプローチでは恐らく効果が望めないのではないでしょうか。

また、カウンセリング、あるいはコーチングでメンタル面ばかりに目を向けても時間がかかりすぎるかもしれませんし、イップスとは関係のないメンタル面のケアになっているかもしれません。イップスの改善に大切なのは誤作動を生じさせている潜在的な心の状態をピンポイントで認識することです。

イップスは、無意識的な誤作動記憶の積み重ねによって引き起こされる症状なので、その誤作動記憶を明確にして、施術によってその誤作動記憶を健全な記憶へと段階的に上書きするだけです。イップスは改善が難しい症状ではありません。必要なのは適切な治療法と治療期間です。後は、施術者との信頼関係が、しっかりと構築されていれば徐々に改善されていくはずです。

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