2015年12月7日月曜日

治癒効果に欠かせない「信頼」と「コミットメント」

「慢性症状が改善する人と、改善しない人の違いは何か」ということを長年探求している治療家の立場で考えると、治療効果を引き出す前提条件として、「信頼」と「コミットメント」が最重要課題であるとつくづく感じます。これは、行動心理学を取り入れたコーチング手法を臨床に取り入れるようになってからさらに明確になってきました。

私たちが患者に施す治療、あるいは施術というものは、外科医や歯科医が行う治療とは大きく異なります。例えば、外科医が骨折の手術をする場合、何回も治療を繰り返すということはありません。1回、あるいは2回ほどの手術で完了する。治療が成功するかどうかは、外科医の技量が90%以上影響を及ぼすのではないでしょうか?

患者が外科医自身の「人間性」を信頼しているか、外科医が施す「治療法」を信頼しているか、あるいは、完治するまで治療を継続し続けるという患者の「コミットメント」がどれだけ高いかということはあまり関係しないでしょう。外科医が有資格者である以上、その技術技能を疑うことも少ないでしょうし、何度も手術を繰り返すわけでもありません。

外科医と患者との信頼関係や、患者の治療に対するコミットメントは、構造的な問題を修復する限り、あまり問題にはなりません。その場合の治療が成功するかどうかは、ほとんどドクターの専門の技術技能に委ねられるのです。

さて、患者自身が持つ自然治癒力を引き出すことを目的とする治療の場合の「信頼」と「コミットメント」の影響はどうでしょうか?構造的な修復を目的とした治療とは性質が異なります。自然治癒力を引き出すことを目的とする治療者と患者との関係において、それは重要課題であり、治療を成功させるためには必須条件になるでしょう。

目には見えない「自然治癒力」というものは、「無意識」の心との関係性が深く、深層心理に深く影響されます。例えば、2年以上も腰痛の慢性症状を抱えている患者さんの場合、一回目の治療で効果が実感できたので、治療計画通りに通院され、徐々に症状が改善されて完治する。これは、慢性症状改善の通常の道のりです。

その一方で、通常の道のりから外れる患者さんもいます。同じような症状で、継続すれば基本的には治る可能性のある慢性症状なのですが、そこにブレーキをかける4つの要因があります。

一つ目は、「患者と術者」との信頼関係
二つ目は、患者と術者が選択する「治療法」に対する信頼
三つめは、自分自身の「自然治癒力」に対する信頼
四つ目は、患者の治療継続に対する「コミットメント」

一つ目の患者と術者の信頼関係は、簡単に言えば、人と人との相性です。言葉では表すことができないけれどもお互いに、あるいはどちらか一方で、合う合わないなどの違和感がある場合です。

二つ目は、術者が施す治療法に対して、患者が期待している治療法と食い違っている場合、あるいは、治療法の意図や目的が理解しがたい場合などです。

三つ目は、患者自身は治すつもりで来院しているのですが、無意識的に自分の症状が改善されることが信じられない、すなわち自分の治癒力が信じられない場合です。この場合、過去の治らない記憶が潜在的に学習記憶されている場合や医学情報による制限された信念、あるいは治ること、健康になることで重い負担がかかったり、責任が生じたりすることを潜在的に避けている場合があります。

四つ目は、患者が症状を継続的に治そうとする覚悟(コミットメント)が本当にあるかどうかです。コミットメントがある場合、患者は、完治するまで粘り強く治療を継続されます。そこまでの時間とお金を費やしてまで、治そうと思わない場合もあります。コミットメントは言葉だけでは分からない傾向があります。

「藁をもすがる気持ちで・・・治したい!」という患者さんが、完治していないのに一回、あるいは数回の治療で来院されなくなるという場合もあれば、言葉少なく、あまり信頼されていないのかなと感じる患者さんや「なかなか治らない」と不満をいいつつも、継続的に治療を受けるなど、その人がどのように行動するのかを確認するまでは言葉だけでは「信頼」と「コミットメント」の質や程度は分からないものです。

一言に「信頼している」といってもその種類は程度、質など様々な関係性があります。言葉で信頼しているというのは簡単ですが、その信頼というものは、結果的には行動で表されるということだと思います。

患者に信頼される側の治療者自身も、どの程度、あるいはどのような性質で信頼関係を維持しようとしているのか、また、治療者として患者に貢献するために生涯を掛ける覚悟、コミットメントがあるのか、自分自身に問いかけることは大切なことだと思います。

2015年12月1日火曜日

「身体に聞く検査法」とは?「無意識への問診」


当院で治療を受けていただいた方はすでにご存じの方も多いかと思いますが、調整を行うか否かの判断は、「通常医療」とは異なる「身体に聞く検査法」に基づいています。そして、その検査結果に基づいて「身体の働き」や「生体エネルギー」の調整を行っています。

「身体に聞く検査法」は、目で確認できるような西洋医学的検査だけしか信じられないという方にとっては「不可思議な検査法」になるかもしれません。この「身体に聞く検査法」には、当院で行っている「下肢長比較」と「筋肉テスト」による検査法があります。これは、米国のカイロプラクティックという療法から始まりました。

下肢長比較による検査法は1920年代、筋肉テストは1940年代から体系化され、多くのカイロプラクティックドクターによって治療の判断基準として使われてきました。このような検査法は、信頼性のある科学的論文で、一部客観性が証明されていますが、心‐脳‐身体の関係性は複雑で、研究のための「客観性」を再現するのはとても困難とされています。

しかしながら、このような検査法を信じていただける患者さんには、的確で再現性のある検査ができますので、その検査結果による治療効果は高くなります。逆にいうと、このような検査法が信じられない患者さんの場合は、検査法が不安定になり、それに伴って治療効果がうまく引き出せないこともあります。

この「身体に聞く検査法」のすごいところは、無意識の誤作動記憶にアクセスできるところです。私たちの心‐脳‐身体はほとんど無意識の世界で活動しています。内臓系での消化やホルモン系の代謝、あるいは、筋肉の緊張やリラックスもほとんど無意識的(約95%)にコントロールされています。

この無意識のコントロール系が誤作動を起こして、その誤作動が脳や身体に記憶化されると、様々な慢性症状が生じてしまいます。この慢性症状を引き起こす誤作動の記憶を検査するためには、無意識の心‐脳‐身体に聞くのが早いのです。「意識の心」ではなく「無意識の心」へのアプローチがポイントです。

「意識への問診」も大切ですが、身体に聞く「無意識への問診」の方が数段価値が高く、信頼できると考えており、それゆえに、ほとんどの検査法は「身体に聞く検査法」に委ねられています。このような検査法は非科学的だと揶揄されがちですが、信頼関係が保てる限り、脳は高性能の検査結果を出してくれるといつも感じています。これからも「身体に聞く検査法」に磨きをかけて、皆様の健康にお役に立つことができればと願っています。