2018年12月28日金曜日

8年ほど前からのサバアレルギー

ゴルフのアプローチイップスの症状で来院していただいていた患者さんが、以前からサバのアレルギーがあるとのことで相談を受ける。2年前にはサバを食べた後に、唇や喉が腫れて、呼吸が苦しくなり、アナフィラキシー症状で病院の治療を受けたという。サバは大好きだが、それ以来食べていないという。アプローチイップスの症状はほぼ改善されていたので、サバアレルギーの治療を行う。PCRTのプロトコルに沿って検査を進めると、確かにサバで陽性反応が示される。さらに「組み合わせ」を検査すると陽性反応、サバアレルギーの背後に信念に関連する誤作動記憶の反応が示された。

その後、11日後に来院された。サバの検査では陰性反応を示されたので、「サバを少し触れたりして身体に何か反応が感じられるか様子を見てみてもいいかもしれませんね。」と、アドバイスさせていただいた。その後、約1ヶ月後に来院された。サバを二切れほど食べてみたがなんともなかったらしい。PCRTのサバの検査でも陰性反応が示された。サバアレルギーの症状は大丈夫なようだが、念には念を入れて、「大丈夫だとは思いますが、徐々に量を増やして試された方がいいかもしれません・・・」と油断されないようにアドバイスさせていただいた。

恐らくサバのアレルギーはほぼ改善されたと思う。サバに限らず食物アレルギーの背後にはメンタル系の誤作動記憶がリンクしていることが多い。その「記憶」を引き出してサバの情報と組み合わせていくことで多くのアレルギー症状は改善される。本症例の患者さんは、拙著の「体の不調は脳がつくり、脳が治す」の本を読んでいただいたことも関係しているのか、イップスの治療からスムーズに治療が進んで、アレルギーの治療も比較的早期に改善したようだ。やはり、西洋医学とは異なるこのような療法を患者さんがいかに理解していただけているかどうかは治療効果にも影響を及ぼしていると常々思う。

2018年12月17日月曜日

卓球イップス 動画の影響を受ける

30代の男性が卓球イップスの症状で来院。今まで出会った卓球選手にしてはがっちりした体格だった。見るからにパワーが溢れている感じの一方で優しい顔立ちをしている。症状は5〜6年前から始まったらしい。その頃から自分の理想の卓球ができなくて、悩みが多いとのこと。以前はBランクだったのに現在はDランクに下がっているという。普段の日常生活には支障はないが、特に試合の時には症状が顕著で、経過としては良くなったり悪くなったりしているという。

イップスの症状を抱えている患者さんの場合、肉体的な機能異常に加えて、メンタル面との関係性を調整しなければならないので、時間の都合で二枠の予約を頂いて進めさせていただいている。本症例の患者さんも二枠の予約で初回を含めて、7回調整させていただいた。7回の間に、以前から抱えていた膝の問題も調整させていただき、順調に改善されている。いくつかの過去の誤作動記憶もうまく調整され、ご本人も改善を実感されていた様子。

まだ、調整途中ではあるが、7回目の誤作動記憶の原因が、これから遭遇する可能性のあるパターンだなと感じたのでご紹介したい。本症例では試合の際のパターンと、フォアサーブ、バックハンドが主なイップス症状だったが、ゆっくりとした球を打つ際に手が震えていると周りの選手に指摘されるという。その場面をイメージすると確かに誤作動の陽性反応が示される。

PCRTのプロトコルに沿って検査を進めていくと、大脳皮質系⇨意味記憶⇨情報と示されたので、「その症状の原因の一つで、何か外からの情報を入れることで、その情報を信じていることで影響を受けている可能性があるのですが、何か心当たりはありませんか・・」と質問させていただいた。患者さんはしばらく考えて、「・・・ん、もしかしてこれかな・・」と想像してもらいながら検査をすると、陽性反応が示された。

「それは影響しているようですけど、どんな情報ですか・・」と尋ねると、「卓球の動画です・・・」という。ある卓球の選手の動画のフォームを研究してそれに近づこうとして練習していたが、何か自分には合わないということを何となく気づいていたらしい。最近は動画を簡単に見ることができる時代なので、それを見ながら研究して自分のパフォーマンスを改善しようとしているスポーツ選手が増えてきているようだ。

イップスの原因に関して言えば、以前はコーチ指導による情報が多かったが、これからは動画映像、あるいは指導による情報の影響も増えるのではないかと予測される。コーチからの直接指導、あるいは動画による間接的な指導であれ、その情報が自分にあっているかどうかがとても重要である。「たとえ理想の選手がいいフォームでいい結果を出しているからといって、そのフォームが自分に合っているかどうかは分からない。」ということは理解しておいた方がいいだろう。理想の選手のフォームは参考にしても、そこから自分の合ったフォームを自分で体得することが大切である。

本症例の患者さんは、内面的な心の動きも分かりやすく話してくださり、心身相関の理屈やPCRTの治療理論もスマートに理解される方なので、施術がスムーズに進行している。西洋医学の診断や方法論が主流になっている現状において、このような新しい治療法の理論や意図を理解していただけるのは非常にありがたい。

2018年12月12日水曜日

送球イップスから腕の局所性ジストニア

はじめに

二十代女性、5年ほど前に、ソフトボール部に所属しており、そのころから送球が上手くできなくなっていた。その頃から送球イップスの症状を抱えていたが、引退後も腕をゆっくり上げようとすると、腕が勝手に早く動くようになり、自動販売機で腕を使うときなどには支障があるとのこと。特に意識して何かをしようとしたときに悪化する傾向にあり、だんだんと悪くなってきているような気がするらしい。

目安検査

最初にどのような症状なのか再現してもらう。片方だけ観察すると分かりにくいが、左右、同じスピードで腕を挙上してもらい比較すると、明らかに右腕が早く挙上してしまう。本人が言われるように、勝手に早く腕が動いてしまう症状がある。珍しい症例かもしれないが、局所性ジストニアで経過から予測すると心因性ジストニアの疑いがある。また、仰向けに寝た状態では症状が再現されないが、座位や立位姿勢では症状が再現されるのもジスニア症状の特徴の一つである。調整前の機能評価では現在の症状がPRTで9レベル、メンタル系がPRTで9レベルだった。

1回目の調整

最初はアクティベータ療法で、ハード面の検査調整を行う。脊柱と右肩関節関連に陽性反応。右小脳機能に陽性反応が示された。PCRTのソフト面調整では大脳辺縁系レベルで2つのキーワードが示され、それに関連する内容を質問して誤作動記憶を引き出し調整する。調整後は、現在の症状はPRTで5レベル。メンタル系では1レベルまで下がった。施術後に問題の動作を試してもらったが、顕著な変化は見られなかった。

2回目の調整

最初に1回目の施術からジストニアの症状がどのように変化しているのか試してもらった。1回目と同様に顕著な変化は見られなかった。症状の機能評価は9レベル。メンタル系が8レベル。アレルギー系が9レベル。アレルギー系は前回反応が示されなかったので、「なぜ?」と内心思った。

3層構造のチャートで検査を進めていくと「聴覚」→時系列→過去→8年前→お父さんの声で反応が示された。もしかすると、これがアレルギー系(五感適応系)の反応なのかなと思った。でも、なぜ、前回は示されなかったのだろうと考えると、前回はお父様が付き添いで一緒に来られていたので、無意識がその部分を解放せずにブロックしていたのだろうと納得した。お父さんに関係する声の内容は2つあり、過去の誤作動記憶が陽性反応として示されていたなので調整を行なった。

その後、検査を進めると、「執着心」に関係する内容が2つほど示されていたので、その誤作動記憶の調整も行なった。施術後の目安検査でメンタル系はレベル1まで下がった。調整後の腕の動作を確認すると、なんとほとんど左右の違いが分からないくらいに改善していた。「え、こんなに早く改善するの・・・」と内心、思った。なぜなら、その症状は5年ほど継続していたイップス、ジストニアである。ご本人も喜ぶというか、不思議に感じている様子だった。

ジストニアの患者さんから相談を受ける際、改善にどれくらいの治療が必要なのかと回数などを尋ねられるが、いつも個人差があるので明確な回答はしていない。当院の患者さんの平均的な改善率は出せるが、肉体の構造異常を修復させるような施術ではなく、あくまでも個人の無意識の誤作動記憶を調整する治療なので、そこに齟齬が生じないようにあえてお答えしていない。症状の程度や抱えてきた年数にも関係している傾向はあるが、このように早期に改善するジストニアもあれば、長期にわたって治療が必要な事例もある。

3回目の調整

目安検査で上腕を挙上してもらい、左右比較すると、初検時ほどではないが、若干、挙上スピードが早い感じがする。本人も挙上時に違和感を感じるという。ソフト面の検査をして見ると、8年前の誤作動記憶が示された。部活をしていた時の同級生に対する当時の記憶が影響を及ぼしていた。調整後、肩関節に手を当て、フィンガーテストを行いながら、挙上運動の動きを検査してみると、一定の角度で挙上運動に関係する手動筋なのか拮抗筋の共収縮なのか厳密には分からないが、筋肉の異常緊張が示された。その角度での異常緊張は患者も自覚しており、その感覚は術者と共有することができた。

その後、同じ8年前で、別の誤作動記憶が陽性反応として示された。それを調整すると挙上運動に関係する異常緊張は消失した。患者もその消失を自覚できた様子だったが、まだ違和感があるとのことでさらに検査を進めると、肩関節の内旋の動作での異常緊張を患者とともに確認した。それも内旋運動に関係する手動筋なのか拮抗筋の共収縮なのか定かではないが、調整を行うとその異常緊張も消失した。3回目の調整を終えた時点では、まだ、違和感があるとのことだが、最初よりは良いという。目視検査では初検時よりもかなり改善しているように見えた。

考察

4回目の予約を入れていただいたが、台風などの天候不良で2度キャンセルとなり、その後3ヶ月が経過し来院されていない。3回目の調整からその後の経過をみさせていただきたかったが、恐らく施術の必要がないと判断されたのかもしれない。ジストニアの症状もある程度改善され、ソフトボールの方もキャッチボールなど試したらどうですかと提案させていただいたところだったので、そこまでサポートさせていただきたかった。5年ほど前に発症し、イップスから局所ジストニアに移行した症例だったが、比較的に短期間で症状が改善されたのではないかと思う。どの症状も個人差があるのが当然だが、イップスやジストニアの症状は、程度や経過年数、さらには原因の深さや複雑さによって個人差がある。特にメンタル系が絡んだ症例は、施術者との信頼関係はもちろん、患者さんがその治療法に納得できるかが治療効果を引き出すために大切なポイントにもなるだろう。

2018年12月10日月曜日

痛みの記憶と情動

以前、腰痛や肩の痛みで来院された患者さんが、2ヶ月半ぶりに来院。今回は左肩から腕にかけての痛みがあるとのこと。二週間ほど前に寝違えたようで、その後、痛みが改善しないらしい。前回はアクティベータ療法のみで調整を行い、その後の調子は大分良かったとのこと。

今回もアクティベータ療法で、関節系や筋肉系の陽性反応は改善されたが、首から腕にかけての痛みが改善されないらしい。頚椎部に持続圧を加えて検査を行うと陽性反応が示される。そこで情動関連の文字情報を使ったPCRTの言語加算振動法を行う。4つのキーワードで調整を行なった後、持続圧の陽性反応は消失。患者さんも「あっ痛みが楽になった・・」とその場で症状の改善を自覚していただいた。

今回の施術で痛みに関係していた情動に関係する4つのキーワードを患者さん自身には認識してもらうことはしなかった。痛みの記憶に情動が関連している場合、このように情動の文字情報だけで症状が改善するケースと、陽性反応が示されたキーワードに関係する情動の内容を認識した方がさらに改善度が高まる場合がある。

痛みの記憶に関係する情動の内容を患者さんに認識してもらう場合、質問力のスキルが必要になる。もしも、患者さんにあまり質問されたくない傾向がみられたり、術者が質問力に自信がない場合は、文字情報だけの調整で十分に効果は引き出せる。「情動」が絡むと記憶が長期化されるということは科学的な研究でも証明されている。慢性症状の多くが記憶と情動との関係性で条件付けされており、そのための直接的な調整が根本的な改善につながるだろう。

2018年12月8日土曜日

卓球のイップス

 はじめに
40代男性が卓球のイップスを改善したいとのことで来院。具体的なイップスの症状は、打球した際に手首が上に向いてしまうという。専門用語では肘関節の回外の動きが生じる。この現象は以前からたまにあったが、ここ最近は常に生じてしまい、悪くなっている感じがするらしい。卓球歴は、中学、高校で6年間部活動をしていた。20年ぶりに再開して5年ほど子供達を指導しており、練習では主に球出しをしてあげているとのこと。

初回の施術
関節、筋肉関連の機能異常検査では右の肩関節、肘関節、手関節部、頸椎部に陽性反応が示された。機能異常部位をアクティベータ療法にて調整する。その後、イップスに関係する誤作動記憶検査、最初の検査では、時系列で2歳の時に関係する事柄が示され保留にした。その後、2項目の信念に関係する誤作動記憶を調整。エピソード記憶の陽性反応も調整。

2回目〜4回目
施術前に、施術後に何か変化があったかどうか問診するが、練習をする前から、「また、なりそうな予感がする・・」「意識すればするほど入らなくなる・・」「無意識だと入る」「最初の方だけ、意識したら出る・・」などのフィードバックをいただいた。2回目まではアクティベータ療法との併用で施術を行い。3回目と4回目はPCRTのみで施術を行なった。特に目安検査では、症状の場面を想像しながらの関節可動検査では、肩関節の筋群に異常緊張を認めたので、その異常緊張を目安に検査を行い、関連する誤作動記憶を調整した。

5回目の施術
前回から改善を感じたらしく、「思ったよりも(イップス症状が)起こらなかった・・・」とのフィードバックをいただいた。検査でも、「イップスが起きそうだな・・」という予期不安の想像をすると陽性反応が示されたので、そこから誤作動記憶の検査をして調整を行なった。

6回目の施術
約2ヶ月後に来院され、「大分良くなっている・・」とのこと。患者さん曰く、過去のコーチとして内面的な気づきの調整から良くなってきたような気がする・・・とのコメントをいただいた。しかしながら、原因となる記憶は卓球だけのことでなく、他の記憶も潜在的に関係していたので、そのような複合した記憶が調整された結果である可能性があるとのフィードバックをさせていただいた。

考察
イップスのような症状は、それぞれのスポーツに関係するメンタル面が関係していると思われることが多い。確かにそのスポーツに関係するプレッシャーや人間関係なども関係するが、案外、それ以外のメンタル面の記憶が関係していることがあり、その過去の誤作動記憶を調整すると改善に向かう方が多い。このことは、あらかじめ患者さんにも理解してもらっていないと、不信感につながり治療効果を引き出せないこともあるので、その都度、患者さんに合わせて伝えることが大切だと思う。イップスの症状が改善する過程において、常々思うことがある。それは、無意識的に記憶され、普段意識していないところで誤作動記憶が生じているということである。これは、イップスに限らず他の症状にも言えることだが、先入観を持たずに無意識に聞いていくことが効果を引き出す大切なポイントになる。

2018年12月7日金曜日

慢性症状はなぜ治りにくいのか?(動画)

慢性症状と誤作動記憶の関係性についての動画です


先日、脳神経科学の研究者である奥山さんと芥川賞作家の又吉さんがNHKの番組で記憶の書き換えについての研究成果を紹介していました。PCRTの誤作動記憶の調整にとても関係する研究内容でした。

10年以上も前から身体に不調を引き起こす誤作動記憶の概念をPCRT研究会で伝えてきました。あくまでも臨床で培った仮説でしたが、その仮説が段々と科学的な証明へと近づいていくのを感じています。

慢性症状は、「記憶」というよりも、身体の「構造異常」の問題だと考えるのがまだまだ一般的ですが、「慢性症状の場合は、『記憶』を調整する」という考え方が社会に広まると、どれほど多くの人々が慢性症状から解放されるか計り知れないと私は考えています。

今回「慢性症状がなぜ治らないのか?」という動画をLCAのスタッフに協力していただいて作成しました。もしかすると、一般の人には難しいと感じる人もいるかもしれませんが、繰り返し見ていただくことで、理解が深まると思います。

PCRTを臨床で使っている先生方には是非患者教育に活用していただき、「誤作動記憶」の調整を啓蒙していただければと思います。

将来は「慢性症状なら、誤作動記憶の調整をした方がいいよ!」あるいは、「症状の記憶を書き換える調整をしたら治るよ!」ということがさらに一般化する時代になることを願っています。

2018年12月4日火曜日

自然な顔の美しさ

ニュースレター2018.12-2019.01

人の顔は変わる?長年の臨床経験の中で、毎日患者さんに接していると、顔の表情を伺う観察力も自然に鋭くなってきます。それは経験を積んだ治療者の脳に蓄積された数十年間のデータに基づくもので、数字では表せない感覚的な能力です。最初に来院される患者さんの多くは、肉体的にも精神的にも問題を抱えています。その問題が徐々に改善されるごとに、患者さんの表情が変化していく場面に遭遇します。

「あっ、あの方の顔が変わってきた・・」あるいは「あの人の人相が変わってきた・・」中には、「本当はこんな顔をしていたのか?」と、気づかされる場面があります。肉体的にも精神的にも様々な症状が改善されると、暗いイメージの表情から明るいイメージに変化してくる患者さん、何か不満をかかえている表情から感謝が見え隠れする表情へと変化してくる患者さんなど、本来の美しい顔に遭遇する瞬間があります。

継続的に来院して下さっている患者さんの表情の変化は、サポートさせていただいている治療者にとっては醍醐味でもあり、喜びでもあります。「心と身体の関係性」、あるいは「意識と無意識の関係性」を調整させていただいている患者さんの多くは、自分でも認識し難い心の奥に隠れた自分に遭遇することもあります。その時、ありのままの自分を優しく包み込んであげることで、何かが変わるようです。

特に顔の表情に変化が現れてくるのは、「意識」と「無意識」が調和してくる時です。自分の心の「建前」と「本音」が調和してくるときといってもいいでしょう。もしかすると、あまり見たくない自分の内面を認めてあげたときかもしれません。あるいは、「そんな自分がいてもいいのだ・・」「嫌な自分にも何か意味があるのだ・・」などと、無意識の自分の存在を認めてあげた時に、未来に繋がる心の成長が育まれているように感じられます。

美しく見せたいという願望は年齢や性別を問わず多くの人にあると思います。女性であれば、お化粧や美顔マッサージなどを施すかもしれませんし、表情筋のトレーニングをされている方もおられるかもしれません。どの手法もその方に合っていれば有効な手段になると思います。このような美しさを保つ方法には大きく分けて「外から働きかける方法」と「内から働きかける方法」があります。

内面に働きかける方法とは、前述した「意識」と「無意識」を調和させる方法です。当院で行なっている「身体に聞く検査」を繰り返し受けていると、だんだんと自分の無意識の心の点と点が繋がって、線となり、さらには面となって全体像が見えてくるようです。複数の表情筋は、意識でコントロールできる部分もありますが、多くは無意識で作り出され、瞬間、瞬間にその表情が印象付けられます。意識と無意識がつながることで、自然の笑顔、自然の仕草が表現され、それが美しい顔として私たちの記憶に残っていくのだと思います。

この自然体の顔の美しさは、年齢や性別を問わず、善悪を超えた調和の美しさといってもいいのではないでしょうか?その美しさは言葉では言い表し難いものがあるように思います。脳の神経回路が常に変化しているように、いつからでも顔の表情は変化します。自分らしい自然な美しさを育んでいきましょう。

2018年12月3日月曜日

ファミリーカイロプラクティックセンターの24周年

先日、ファミリーカイロプラクティックセンターがお陰様で24周年を迎えました。多くの患者様にご支援いただいたことはもちろん、影ながら支えてくれたスタッフに深く感謝しております。

当院の施術法は開業当初から常に進化し続けております。治療法に対する考え方や手法が先に進みすぎているようで患者様にご迷惑をお掛けすることも多々ありましたが、最近ではそれぞれの患者様のニーズに合わせた治療法を提供できるようになってきました。

今後も自然治癒力を最大限に引き出すための治療法の研究を積み重ねて、皆様方の健康管理のお役に立つことができればと願っております。



2018年11月30日金曜日

変形性膝関節症の原因療法

70代前半の女性が膝関節の痛みを訴えて来院。3年ほど前より膝関節痛を発症。歩き始めに左膝の内側に痛みを感じ、重いものを持って歩く時も痛む。特に階段を降りる時に痛む。痛み始めてからは徐々に悪くなっているとのこと。整形外科を受診され、レントゲン検査で、変形性膝関節症の診断を受ける。電気療法、投薬、貼り薬の治療、並びにリハビリ療法を受ける。

初回の施術

調整前の目安検査
膝関節の屈曲で約100度超えたところで膝関節内側部に疼痛(VAS8)。筋抵抗検査では、股関節の屈筋群、伸筋群、内転筋群、外転筋群、膝関節屈筋群で弱化反応が示された。

AM調整
骨盤、腰椎、胸椎部、膝関節部、股関節部を調整。

調整後の目安検査
調整前の膝関節屈曲時疼痛はほぼ消失(VAS2)。陽性反応が示された筋抵抗検査は、すべて陰性化。

感想
患者さんは、調整後の痛みが改善され、驚きと共に大変喜ばれていた。

2回目の施術(3日後に来院)

患者さん曰く、膝は大分良くなったとのこと。歩き始めの痛みは無くなったという。

調整前の目安検査
膝関節の屈曲で約130度超えたところで膝関節内側部に疼痛(VAS6)。筋抵抗検査では、股関節の内転筋群、伸筋群、膝関節屈筋群に弱化反応が示された。

AM調整
骨盤、腰椎、胸椎部、膝関節部、股関節部を調整。

調整後の目安検査
調整前の膝関節屈曲時疼痛はほぼ消失。陽性反応が示された筋抵抗検査は、すべて陰性化。

感想
患者さんは、調整後の痛みは、初回の施術と同様に改善され喜ばれていた。

3回目の施術(10日後に来院)

患者さん曰く、調子は良かったが、良好で歩き過ぎて元に戻ったとのこと。

調整前の目安検査
膝関節の屈曲で膝関節内側部に疼痛(VAS8)。筋抵抗検査では、股関節の屈筋群、伸筋群、内転筋群、外転筋群、膝関節屈筋群で弱化反応が示された。

AM調整
骨盤、腰椎、胸椎部、膝関節部、股関節部を調整。

調整後の目安検査
調整前の膝関節屈曲時疼痛はほぼ消失(VAS2)。陽性反応が示された筋抵抗検査は、すべて陰性化。

感想
施術後には症状も改善するが、ぶり返すことから不安定性を感じる

4回目の施術(4日後に来院)

患者さん曰く、前回ほど悪くはないが元に戻ったとのこと。

調整前の目安検査
前回とほぼ同様の反応が示された。

AM調整
前回と同様に調整

PCRT調整
今回は、症状のぶり返しが繰り返されていることからPCRTの調整を加えた。
PCRTではいくつかの潜在的な恐れが関係しており、それを調整した。

考察
約1ヶ月後、当院をご紹介して下さった息子さんが来院されたのでお母様の様子を伺った。すると、お母様の膝の調子は良いとのことで、お礼の言葉をいただいた。恐らく、前回の治療で原因となっていたメンタル系が調整できたのだろう。このようにハード面(肉体面)だけの調整でよくなる事例もあるが、ぶり返す場合はソフト面(メンタル面)の調整を行わないと根本的には改善されない方も少なくはない。

なぜ、病院で治療を受けているのに治らないのか?それは、原因療法ではなく対症療法だからだろう。対症療法とは症状に対する療法で、原因に対する療法ではない。原因にも多く分けて、ハード面とソフト面のレベルがある。今回の患者さんは、最初はハード面の神経のコントロール系の調整で、施術後はすぐに改善した。しかし、症状がぶり返すことから、ソフト面の調整を行い、そこからぶり返さなかったことから鑑みると、根本原因はソフト面レベルにあったことが推測できる。

ここでいっているハード面の異常とは、神経系の働き、筋肉系の働きの異常であり、ひっくるめて「働きのバランス異常」ということになる。神経の働きにバランス異常が生じると、筋肉が正常に働かなくなり、関節がうまく噛み合わずに痛みなどの症状を引き起こす。一般の人の多くは、筋肉が弱いから筋肉を鍛えればよくなる。あるいは体重を減らせば良くなると思い込んでいる傾向があるが、それは正しい理解ではない。

なぜなら、ボディービルダーのようなスポーツ選手でも神経、筋肉系のバランス異常が生じれば関節が痛くなるし、たとえ痩せている人でも関節痛はある。でも、一般の多く人は機械論的な分かりやすい理屈を信じる傾向にある。原因療法を志している治療者として、もっと分かりやすい言葉で伝える努力をしていかなくてはならないと常々思う。

2018年11月24日土曜日

首の痛みが教えてくれた「結婚の目的」

30代の女性が首の痛みを訴えて来院。最初の頚部痛の施術で肉体のみのハード面の施術を行ったが、深いところの緊張が改善されていない様子。そこでメンタル系のソフト面の施術を行う。検査では「意欲」に関係していたので、将来の意欲に関係することを意識してもらい調整。施術後に痛みは軽減したが、11日後に首の痛みが継続しているとのことで再来院。その日も将来の意欲で調整したが、同じ意欲のパターンなので、恐らく内容が不明瞭であると推測。詳しい内容をお聴きした方が調整も効果的になると思い、「話せる内容であれば内容を教えていただければ」と尋ねる。

前々回の副鼻腔炎の施術の際にも深い内容のことを伺っていたので、恐らくそのことに関連したことだろうと、内容をお聞きした。「もしも、意欲的になっているとすれば、仕事と家庭を両立させるとのことかな・・」という。そこから、生体反応検査を行いながら、質問させていただき、深いレベルの無意識を探索。

*コーチングのやり取りが厳密ではないが以下のように進めた。

何のために仕事と家庭を両立させるのですか?
「幸せのため・・・」
あなたにとって仕事と家庭の両立で得られる幸せとはなんですか?
「・・・良きパートナーと巡り会えて・・・子供を産んで幸せな家庭を築く・・・」
そもそも、結婚の目的は何ですか?何のために結婚をするのですか?
良きパートナーと巡り会えて、子供が生まれると幸せになれそうですか?
「いや・・・お互いに成長しながら家庭を築いていくこと・・・」

生体反応検査法ではさらに深い意欲の目的はないようなので、そのことを認識してもらい調整。その後、調整前にあった首の回旋時痛は消失した。また、将来への意欲に関係する目的が整理された様子で、喜んでいただいた。恐らく、ご本人は将来について深く考えていたのだろう。なぜなら過去に色々経験をされていたので、今度はそのようなことが繰り返されないようにと真剣に自分の将来について考えていたのが伝わってきた。恐らく、「何のために結婚するのですか」などと、誰からも質問されたことはないだろうし、一般的に「幸せになるため」としか答えようがないだろう。そこで、いきなり「あなたにとって幸せとはなんですか?」と尋ねられると、返答に困るのが普通だろう。

結婚して、子供を産んで、家庭を築いて、幸せになれるかもしれないし、なれないかもしれない。それはその人それぞれの価値観であるということは言うまでもない。ただ、あえていうならば、幸せとは「創り出すもの」で、単に「与えられるモノ」ではないだろう。むしろ、「与えることで得られるモノ」かもしれない。多くの人にとっての幸せは、良きパートナーを得ることや子供を授かることかもしれない。確かにそうかもしれないが、そこから何かを与え続け、創造していかなければ幸せは得られないだろう。「幸せ」は何かを得るということよりも何かに向かって前進し続けていく過程で遭遇するものではなかろうか?

今回ご紹介させていただいた患者さんも、恐らくそのようなことをどこかで考えており、施術の質問を通して気づかれ、モヤモヤした心の葛藤が整理されたようだ。そして、それに伴って首の痛みを生じさせた無意識の緊張がほぐれて症状改善につながったようだ。

首の痛みが人生にとって大切なことを教えてくれた一症例である。

2018年11月18日日曜日

2018年度PCRT上級研究会を終えて

お陰様で本年度最後となるPCRT上級研究会が終了しました。今回は初めてご紹介する内容ばかりでした。いつもご協力いただいているインストラクターの先生方も受講者としてご参加いただき、インターラクティブ(双方向)に質の高い学習ができたと思います。上級に相応しいレベルの学習内容で実りのある二日間でした。

最初は「記憶のしくみについての神経学的一考察」をプレゼンさせていただきました、ノーベル医学生理学賞を受賞したエリック・キャンデルの研究と長期記憶と短期記憶、ならびに陳述記憶と非陳述記憶を明確に示した心理学者ブレンダ・ミルナーの研究をPCRTの臨床と照らし合わせてご紹介させていただきました。

EB(エネルギー・ブロック)の検査ルールとして、「EBは観察者が持っている情報(知識)の範囲内のフィルターを通して、診ようとする(検査する)から存在し、診ようとしなければ存在しない。EBは観察者(検査者)と共に存在する。」という説明を復習しました。これは、言い換えると検査者が異なり、診ようとするマインド設定が異なれば、検査結果も異なるわけです。だからといって、どんな陽性反応がでてもいいという訳ではありません。

特に、反射系の施術であるハード面の調整法では、一連の目安検査とその調整による結果が、患者も体感できるような理想の結果がでていなければなりません。もしも、毎回の施術において、その場で症状も改善するような理想の結果が出ていないのであれば、自分の検査法のスキルに疑いを持つべきであるということを分かりやすくお伝えしました。

視線によるPRT検査法では、陽性反応を特定した部位と直接法による検査結果が一致していなければなりません。もしも、一致していなければ、フィンガーテストや間接法による検査法などのPRTが不安定であるということになります。熟練された上級者の先生方は安定している様子が伺えました。このような検査法をマスターすることで、施術時間も短縮され、効果的な調整法ができるようになると思います。

『過去のプチトラウマの調整』、『「復讐心」の「べき」の調整』、『信念の出所を特定』、『気づきによる「体感変化」』なども上級ならでは深みのあるワークがそれぞれに体験できていた様子でした。特に「高い存在」に聞くワークも上級者でなければできないワークだったと思います。また、恐らくミラーニューロンに関係しているであろうダミー人形を使ったワークもそれぞれの参加者が体験されましたので、臨床でスムーズに活用されると思います。

「術者患者間のラポール技法」では、それぞれの患者のニーズや満足度に合わせてラポールを強化する期待の管理をご紹介しました。基本的にはオーダーメイド的に様々な患者さんのタイプに合わせて、どれだけ寄り添ってニーズにお応えできるかということ。また、それぞれの治療院のルールの中で、できることとできないことを明確にして患者さんの期待を管理することの重要性もお伝えさせていただきました。

来年もさらに患者さん目線で患者さんに分かりやすい施術、楽しめる施術を目指して進化していきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

2018年10月24日水曜日

発声イップス(機能性発声障害)

自律神経系の他の症状で以前から通院していただいている患者さんで、順調に様々な症状が改善しており、今度は話すときに滑舌や発声がうまくできなくて伝わりにくいのでその症状を改善したいとのこと。以前から問診の際に少し話が聞き取りにくいということは感じていたが、それほど気にはなっていなかった。でも、施術を継続してその経過を振り返ると、「あ〜これは本人にとって随分困っていた症状だったのか・・・」ということが後で分かった。この症状はいくつかの記憶による条件付けで発声に関係する神経系の誤作動が生じるという点において、「発声イップス」(機能性発声障害)といってもいいだろう。

発声イップスの施術後の約1ヶ月後、別の症状で来院された際に、そのことお聞きしながら患者さんの声が滑らかで聞き取りやすいのに気づいた。初診時からの声の印象しかなかったので、本来はこんなに聞き取りやすい滑らかな声の持ち主人だったのいかと内心驚いた。「あれから声の方はどうですか?」と尋ねると、「あ〜すごくいいです!」という。「そうでしょうね。声が滑らかですよね・・・」と伝えると、「ありがとうございます。嬉しいです!」と喜んでいただいた。

今回の成果は、改善するまでに2回の施術を行なった。この患者さんの場合、メンタル面が関係することが多いので、一回の施術に二枠のご予約をしていただき、通常の患者さんの2倍の施術時間(2025分)内で行う。最初の発声イップスの施術は滑舌の悪さも含めて調整を行なった。18年前の英語が上手く発音できない時の記憶や4年前の人間関係に関する記憶などが関係していたのが興味深かった。

その後の来院では発声イップスの症状ではなく、別の症状が強いのでその施術を行なった。そして、その後の来院で、滑舌は改善したが、音程の音感がつかめないという。他人には分かりにくいが、自分の声が理想の音程ではないとのこと。検査をすると陽性反応が示されたので、その誤作動の調整を行う。13年前の人間関係やカラオケの時の記憶などが関係していた。

本症例は、1回目の発声イップスの施術から別の施術を挟んで、二週間後の2回目の施術後に改善された。この患者さんは以前から別のメンタル的な症状で当院をご利用いただいており、当院のメンタル系の治療法に慣れているということも早期の改善につながったのだと思う。

2018年10月23日火曜日

痙性斜頸患者へ鏡療法(リバビリ)の可能性

先日、痙性斜頸で通院していただいている患者さんで、興味深い現象があったのでご報告させていただく。40代男性の患者さんで、最初の痙性斜頸の程度としては、首が左に向いてしまう傾向が強く、頸部や肩周辺にも痛みを伴って、かなり辛い症状がしばらく継続していた。遠方からだったがほぼ毎週通院していただき、ここ最近改善の兆しが見えてきている。今回の施術の際には、ご本人もだいぶん良くなってきた感じがしてきたとのコメントをいただいた。

良くなった一つのポイントとして、「良くなったら以前からの趣味であるバイクでのツーリングを始めたいという目標ができたことも一つの要因になっているかもしれない」とのことだった。施術途中で、左から右に向ける際に、引っかかりがあるので、「何か思い当たる原因はありますか?」と尋ねると、「左に向くと、そこから首が動かなくなるという恐れかな・・・」と話されていたので、その恐れで検査をすると陽性反応が示されたので誤作動記憶を調整。

その後、検査をすると、まだ引っかかりがあるので、患者の顔の前に鏡をおいて、鏡の中の自分の顔を見ながら、鏡を患者の首の動きに合わせて動かすと、首を左右にスムーズに動かすことができた。「ん???何がちがうのかな???」と自問自答して「あっ〜目標があるからかな・・・」と何かご自分で気づかれた様子。「改善したらバイクのツーリングで楽しめるという目標と関連があるのですかね・・・」とコメントすると、「あ〜そうかもしれない・・・」と言われていた。

痙性斜頸の原因は様々な誤作動記憶が関係していたが、原因の一つに症状を抱えることによる「肯定的な意図」も含まれていた。症状があることで、ある役職をしなくても良いという意味づけも関係していたようで、そのような意味記憶を超える目標ができたことで、治癒力も加速してきたように感じた。患者さんは治したい一心で遠方から通院していただいているが、治ることでさらに得られる目標があると治癒力も促進されるということは、度々遭遇する臨床現場だから分かるストーリーである。

今回の鏡を使った運動の検査は、鏡療法を応用したもので、以前から四肢麻痺の患者さんにリハビリ療法として使われ効果的であるとの論文も掲載されている。PCRTでは自分の症状のある姿が脳に記憶されて脳からの信号で症状を引き起こしている場合、客観的に自分を見てもらう訓練で鏡を使うことがある。今回、ジストニアの患者さんに試してみたら、効果的な現象が示された。他の痙性斜頸の患者さん達にも試してもらい痙性斜頸患者のリハビリ運動として使えるのか成果を確かめてみたい。

ただ、痙性斜頸のようなジストニアの患者さんは、特定のリハビリで改善するというわけではない。リハビリを無理に行うことで、できない動作をさらに記憶させて、逆効果が生じてしまう恐れもある。よって、ジストニアやイップスのリバビリ運動は、患者さんの状態に応じて慎重にアドバイスされた方が良いだろう。むしろ治そうと意識が向かなくなったときに、自然に良くなることもあるが、単純に意識を変えれば良くなるというものではない。似たような症状でも原因は一人一人異なるので、治り方も人それぞれに異なる。肝心なのは、原因となる誤作動記憶がどれだけ解放されるかにあるだろう。

2018年10月18日木曜日

結果が出せる検査法とは

健康維持や症状改善のための検査法を大きく分けると、自然治癒力や身体機能を引き出すための「機能学的検査法」と、身体構造を修正するための「構造的検査法」に分けることができます。先日開催されたアクティベータ・メソッドで使われている下肢長検査法は、「機能学的検査法」です。いつも下肢長検査法のレクチャーで強調しているのは、「機能的に診るのであって、構造的に診るのではない」ということです。経験のない受講者にとって、最初はこの概念を理解することは容易ではありません。

通常は機能=動き=働きというように考えますので、静止状態で下肢長を機能的に検査するとはどういうことなのか理解に苦しむところだと思います。静止状態では機能が分からないというのはもっともな理屈ですが、関節や筋肉を自動的に動かさなくても、生体は生きている限り神経系を通じて微妙に働いています。脳の細胞が寝ている間も活動しているように、筋肉を動かさなくても筋肉細胞やそれをコントロールしている神経細胞は常に動いているのです。そして、静止状態における筋肉細胞の微妙な働きは「筋肉のトーン」として現れます。

AMの下肢長検査は静止状態で相対的な下肢長差を判断します。筋肉や靭帯などを無視して骨の長さで診るのか、「関節のあそび」に関連する人体や筋肉のトーンで診るのかで、下肢長差の判断に大きな違いがでてきます。「構造的」に診ると左が短く見えるが、「機能的」に診ると右が短く見えるという場合もあります。初心者の多くはこの判断に苦労します。機能的に下肢長を診るスキルをマスターするのは、適切な指導の元で、繰り返し訓練することが大切です。数多くの患者さんの「機能的下肢長検査」を繰り返すことで、脳が自然にそのコツを覚えていきます。

恐らく教科書や文章を読んだだけでマスターしようとうしても難しいかもしれません。公認AMセミナーでしっかりと基本を繰り返し学び、それを臨床現場で何度も繰り返して自分の身体に覚えさせていく必要があります。私たちの施術は生体の機能を回復させる施術ですので、構造的な検査をしてもあまり価値はありませんし、構造的な検査を指標にしても結果がでないでしょう。機能の問題は機能的な検査に基づいて機能障害を判断し施術を行うので結果が伴うのです。もしも、構造の問題であれば、画像診断などの構造的検査に基づいて施術を行うのは言うまでもないでしょう。

AMは関節筋肉系の機能異常を調整するにはとても効果的な治療法です。適切な機能的下肢長検査ができれば、控えめに言っても9割は機能改善の結果が得られるはずです。もしも、結果が得られないのであれば、まずは、ご自分の下肢長検査法の精度を疑ってみましょう。機能的に検査しているのか?構造的に検査しているのか?そこに大きな上達のヒントが隠されているはずです。

2018年10月11日木曜日

健全な記憶の神経回路に書き換えて慢性症状を改善させる

健全な記憶の神経回路に書き換えて慢性症状を改善させる

2000年に神経系の情報伝達に関する発見の功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞したエリック・カンデル教授は、「記憶」をテーマに研究を進めてきた神経生理学領域の第一人者の一人です。彼は幼少期にホロコーストに遭遇した経験から最初は精神医学、精神分析に興味を持ちました。その後、精神分析の根幹は何かという問いに対して、「記憶」というテーマが浮かび上がって脳の生理学的研究へと進んでいきました。

カンデル教授は、単純な神経システムを持つアメフラシを用いて記憶の分子メカニズムを次々と明らかにしていきました。アメルフラシは単純な無脊椎動物です。その非陳述記憶のメカニズムは基本的なところでは人間とそれほど違いはないといわれています。非陳述記憶とは身体で覚える記憶で、自転車の乗り方を自然に覚えていくような記憶です。頭で覚える陳述記憶はアメフラシにはありませんが、アメフラシの非陳述記憶の研究成果が人間にも通じるということを考えると非常にワクワクします。

カンデル教授は画像診断技術の発展に伴って、長期記憶に関わる神経回路の生物学的構造変化をライブ映像で示すことに成功しました。ライブ映像では長期記憶に関係する神経の枝が伸びていく様子を目で確認することができます。私たちが慢性症状に対する誤作動記憶の調整を行う際、患者さんに「新しい健全な記憶に書き換える」という説明を行っています。慢性症状を創り出す記憶の神経回路から健全な記憶の神経回路に書き換えて症状改善を促します。慢性症状で治る自信を失った患者さんにとって、このような最新の研究成果は治ることへの勇気付けになるのではないでしょうか。

繰り返される身体的な慢性症状や人間関係の問題やパフォーマンスの低下などは、すべて私たちの「記憶」が関係します。つまり、脳が私たちの経験を記録し、また、その経験に上書きして保存するという能力に関係しているのです。記憶は私たちの生活を豊かにし、社会や他者とのつながり、自己成長にはなくてはならない機能です。今後もさらに研鑽を重ねながら、多くの患者さんの健康の貢献できるように、健全な記憶の神経回路を上書きして慢性症状の改善にお役に立てればと願います。

まだ未開拓の脳科学の分野において「記憶」の研究は一番進んでいるようで、慢性症状が脳の「誤作動記憶」に関係するということをテーマにしている治療家にとって、臨床の成果を裏付けしてくれる研究がさらに進められることに大きな期待を寄せています。

2018年10月6日土曜日

起立性調節障害の改善

起立性調節障害は、小学生から中学生に多く、めまいや立ちくらみ、朝起床困難、気分不良、倦怠感、頭痛など自律神経系の症状を訴える子供が病院で診断を受けて初めてわかることが多い。いわゆる自律神経失調症のひとつと考えられている。特徴として、起立や座位で脳血流が減少し、思考力と判断力が低下する。

当院でも病院で起立性調整障害の診断を受けてから、薬物療法以外の本質的な治療を求めて多くの子供達がご両親の勧めで来院してくださっている。そのような長年の臨床経験から、起立性調節障害の問題なのかどうなのかという検査法を開発した。決め手となる二つの検査法で、両方とも陽性反応が示されたら、病院でいわれている起立性調節障害の症状だと判断できる。もちろん病院のように診断はできないが、治療院での目安検査としては分かりやすい検査法である。

先日も貧血でクラクラするという30代前半の女性の患者さんが来院され、鉄欠乏性貧血を視野に入れながら、念のために起立性調節障害の検査を行なった。すると決め手のなる2つの検査で陽性反応が示された。その目安検査となる部位を基準に原因となる誤作動記憶の検査と調整を行なった。調整後はすっきりした感じになったとのことで、患者さんに喜んでいただいた。

起立性調節障害は、立ったり座ったりする際に重力に対する血圧調整機能がうまく働かないことによる自律神経系の障害である。身体の中のメカニズムとしては血圧調整の問題だが、血圧調整の機能に問題を生じさせる原因が脳の誤作動記憶にあることが多い。当院ではこの症状を抱えている患者さんにはこの手法で検査を行い調整する。個人差はあるが、早期に改善される患者さんが多いようだ。

2018年10月2日火曜日

過去の記憶(プチ・トラウマ)が、現在の症状につながる

トラウマ(心的外傷)というと、命が脅かされるような出来事(戦争、事故、虐待など)によって、強い精神的衝撃を受けることが原因とされます。当院で慢性症状の本質的な原因を探求していると、一般的に知られているようなトラウマ(心的外傷)と言わないまでも、「プチ・トラウマ」とも言える慢性症状に関係する過去の「誤作動記憶」の影響が多く存在していることが分かります。「プチ・トラウマ」の特徴として、理性的に処理して意識的にはほとんど気にしていなくても、無意識的に心の奥に保存されている記憶と言えるケースがほとんどです。

過去に起こった記憶が無意識に思い出されて、それが現実に起こっているかのような感覚があるときに、「フラッシュバック」という心理用語で表現されます。フラッシュバックは「恐怖」や「怒り」などの感情や身体的症状など、感覚の記憶として再現されます。そして、その記憶はまともに意識に上らないため、フラッシュバック性の記憶は鮮明に再現されますが、言語化するのが困難な場合が多いようです。

この「フラッシュバック」は、強いトラウマ体験(心的外傷)を受けた場合の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の特徴的な症状の一つとして知られていますが、冒頭で述べたように長年の心身条件反射療法の臨床研究では、強いトラウマ体験でなくても、過去の記憶がフラッシュバックされて、身体的症状を引き起こすケースに多く遭遇します。検査で示された過去の記憶を引き出して調整を行うと、施術直後にその患者さんが訴えていた症状が消失することから、過去の記憶が関係していたことが分かります。

施術後に、「そういえば、そのこと(過去の記憶)をふと思い出しました」とフォードバックしてくれる患者さんも少なくはありません。症例によっては、10年〜20年以上も前の記憶でも、検査を進めるとほとんどのケースで、症状に関係する誤作動記憶にたどり着き、調整を行うと症状の改善につながります。時系列の検査をLPRT(言語生体反応検査法)で進めると、ピンポイントでその誤作動記憶にたどり着き、患者さんはもちろん、術者もその検査の正確性に驚かされます。その検査の結果も慣れてくると当たり前になりますが、それでも、抱えている患者さんの問題はそれぞれに異なるので、その症状が改善されるときの喜びはいつも新鮮です。

もしも、「プチ・トラウマ」が慢性症状の原因になっている場合、タイムカプセルのように保存されていた内容を引き出して、その過去の記憶に戻って調整を行います。その内容が明確に表現できる場合もありますが、場面だけで言葉に表現できない場合もあります。内容が明確に言語化されなければ調整ができないわけではないので、誤作動反応を示している場面だけで調整を行います。慢性症状に関係する誤作動記憶は複数存在することが多いのですが、調整後には多くの症例で症状の改善を確認することできます。隠れた「プチ・トラウマ」を見つけて慢性症状を解消していきましょう。

2018年9月25日火曜日

妊娠7ヶ月の妊婦さんの腰痛、関節痛の改善

20代後半の妊婦の患者さんが、腰痛と股関節、恥骨部周辺、足部周辺の痛みを訴えて来院。アクティベータ療法にて、骨盤、背骨など比較的多くの部位の調整を行なった。特に恥骨周辺部位は通常よりも多く調整した。施術後には、施術前に陽性反応を示していた関節可動制限や運動時痛は全て消失。

2回目の施術は次の日に連続して来院していただいた。骨盤と背骨を調整、恥骨部や他の四肢部の関節は安定していた。しかしながら、右側の上肢と下肢の筋肉群の機能低下と右小脳の機能低下の陽性反応が示されていたので、アクティベータ療法の後にPCRTを加えて調整を行なった。患者さん曰く、全体的に悪かったけど、どちらかというと右側の股間部の方に痛みを感じていたというようなことを話されていた。

3回目の施術も次の日に連続して来院していただいた。左の足背部が少しピキッとした痛みがあったとのこと。アクティベータ療法で調整を行う。最初の施術部位の数に比べて、調整部位がかなり少なくなり、関節系はかなり改善しているとのことだった。その日は、以前から気になっていた皮膚症状の施術もPCRTで行なった。

本症例で調整部位の記録を取ったカルテを見ると、初回から2回目、3回目と調整部位が激減していた。初回ではあまり強い痛みを訴えていなかったが、調整した後で振り返ると、おそらく痛みを我慢されていたのではないかと察した。妊婦さんは赤ちゃんがだんだんと大きくなるにつれて、その重さを支える筋力とバランスが大切である。同時に骨格も変化してくるので、腰痛や骨盤などの症状が生じやすくなる。そのような妊婦さんの関節痛にはアクティベータ療法の調整刺激は刺激が優しくとても効果的である。

妊婦さんの腰痛や骨盤痛にはアクティベータ療法がいつも好評である。

2018年9月19日水曜日

アクティベータ・ネットワーク・ジャパンの連携

先日、海外でアクティベータ療法を受けられたことがある方が、そこの先生からのご紹介で来られた。三ヶ月前に海外から福岡に帰省しており、しばらくしてからメンテナンスの目的もあり当院をご利用していただいた。海外に赴任されていた際には、顎関節症などで困っていたらしく、職場近くで開業されていたアクティベータ療法の認定資格をもっている先生に治療していただいたとのこと。通院治療を継続されていくごとに、症状が改善されたとのことで、その先生に治療していただいたことを大変喜ばれていた。

今回は、ときどき肩こりと首の痛みがあるとのことで、同じアクティベータ療法で施術させていただいた。同じ療法なので、安心して受けていただいた様子で、施術後も変化を感じていただき喜んでいただいた。最初に施術された先生が認定者であり、基本通りにアクティベータ療法を行っているので、施術もスムーズに進めることができた。

受付で、その患者さん曰く、「(最初の)〇〇先生は、自分の癖を修正してもらうためにセミナーに毎年参加しているけれど、いつも緊張すると言われていた・・・」と話されていたそうだ。その先生も多くの患者さんに喜ばれている成功者だけれども、それに満足することなく、初心を忘れずに、セミナーでは自分の癖を修正して、技能に磨きをかけている謙虚な姿勢が素晴らしいと思う。

アクティベータ・ネットワーク・ジャパンのつながりで、多くの患者さんが転勤などされても引き続き継続治療できるように、私たちはアクティベータ療法の認定者を育成する活動を今後も継続していきたい。

2018年9月18日火曜日

(有)ライフコンパス20周年記念日

本日、2018年9月18日、お陰様で有限会社ライフコンパスが20周年の記念日を迎えました。ファミリーカイロプラクティックセンターを開業してから4年目に会社を設立しました。当時は会社経営に関しては全くの素人でしたが、通院していただいた経営者の方や会計事務所の社長さんから経営人間学講座を学ぶ機会を与えていただきました。そこでは、経営者としての在り方や「経営とは何か」の本質に触れることができました。10年間ほど他の経営者の方々と共に聴講させていただきました。そのような有難いご縁のお陰もあって、法人として今日に至っております。本当に心より感謝申し上げます。

弊社は治療院経営がメインの会社です。その中でも治療技術が一番の強みであり、今日までの患者様との信頼関係や治療技術の進化は会社の財産になっています。今後も治療院の治療技術をさらに強化して、スタッフと共に成長し、多くの方に喜んでもらえる会社に発展していきたいと願っています。

会社の理念を20年の節目の年に分かりやすくシンプルに改定しました。

「成長と貢献で喜びを創り出す」

会社が存続するためには、人や社会のお役に立っていることが大前提です。そのためには、会社を支えている個のメンバーが成長し続けなくてはなりません。個のメンバーが成長することで、チームとしての会社が成長し、日々の喜びを創り出すノウハウが生まれます。

「喜び」を創り出すための課題はたくさんあります。その課題に勇気をもって挑戦することで、私たちは成長することができます。私たちは日々の生活の中から喜びを創り出す「種」を撒いて、それをコツコツと育てていきます。そして、何かの役に立っているということを実感しながら喜びの花を咲かせていきます。

今後もご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します。


2018年9月16日日曜日

過去の記憶が急性腰痛の原因

50代男性。腰痛と肩こりが主訴で来院。定期的に腰痛があるとのことで、今回は左腰部、左股関節周辺、並びに右肩関節周辺の機能障害。アクティベータ療法で調整すると、すぐに筋肉の働きも正常化して、症状も改善する。しかし、次の来院日にはぶり返していた。3回ほど継続的に施術をさせていただいた。毎回、治療後は症状が軽減しているようだが、朝起きた時が悪いという。ハード面の施術だけ様子を見ていたが、寝ている際のイメージで誤作動記憶の反応が毎回示されたので、次回はソフト面の施術の提案をした方が良いだろうと考えていた。朝起きて症状がある場合は、寝ている間の無意識の誤作動を疑う。

4回目の来院時、ぎっくり腰(急性腰痛)のように悪いとのこと。寝ている状態でのイメージ検査でも陽性反応が示されるので、ハード面調整を行なった後にソフト面調整法を行なった。寝ている状態を目安に検査を進めていくと、いくつかのキーワードが示され、会社の人事異動に関することで、責任のある立場に関する事柄がストレスになっていた様子だった。恐らく脳は無意識にそのことを思い身体を緊張させたのだろう。調整後はかなり改善した。

その次の日の来院の際、前回の改善が維持されている様子。朝起きた際の腰痛も良かったとのことだった。機能検査ではかなり改善しているのに、痛みをかばっている様子があるので、おそらくエピソード記憶が関係しているのではと予測した。そして、検査では予想通りエピソード記憶の陽性反応が示され、その誤作動記憶を調整。さらに検査をすすめると。「恐れ」→「時系列」→「六ヶ月前」に反応を示す。『六ヶ月前に何か「恐れ」や「不安」などに関係することで、思い当たることがありますか?』と尋ねると、丁度、その時に人事異動の辞令を受け、いくつかの恐れや不安があったとのことだった。

前回の施術で人事異動がストレスとして関係していたことは知っていた。しかし、6ヶ月前に初めて会社から人事異動の辞令を受けたことまでは知らなかった。でも、PCRTの検査では、ピンポイントで誤作動記憶の陽性反応にたどり着く。このようなピンポイントの誤作動記憶の検査結果で多くの患者さんは驚かれる。そして症状がその誤作動記憶の調整で改善するので、その記憶が影響を及ぼしていたということを認めざるを得ない。

施術者は淡々と検査を進めてはいるが、「ん〜なるほど!」と因果関係が明確になるとが、内心とても面白い。「面白い」というと、辛い症状を抱えている患者さんに対して不謹慎かもしれないが、原因があっての結果なのだという繋がりが明確になることが、難問を解決したように面白い。このように人間の脳の記憶が、いかに慢性症状に影響を与えているのかということをもっと多くの人に知ってもらいたいと思う。

2018年9月13日木曜日

PCRT中級2の研究会を終えて・・・「素直さ」に勝る武器はない


 今回のPCRT中級2の研究会を通じて嬉しく感じたことがあります。PCRT研究会に継続して参加していただいている若手の先生が、臨床現場でもPCRTを忠実に使い、多くの患者さんに喜んでもらって成果を出しているという声を聞かせていただきました。また、他のインストラクターからもその先生が今回の研究会で、他の先生方の見本になるような実技を淡々とされていたとフィードバックをいただきました。確かにその先生の成長ぶりには目を見張るものがありました。私への質問も、研究会で会うごとにだんだんとレベルが高くなってきているのを感じていました。

何がそのような「成長」を促しているのでしょうか?それは、「素直さ」だと改めて思いました。その先生は直感的に「これだ!」と感じたのでしょう。ある時からPCRTの研究会はもちろん、私が指導するICCコーチングのトレーニングにも参加していただきました。吸収できるものはできるだけ吸収しようという意欲が感じられました。ご本人もコーチングを受講されて、人生的にも大きな変化を感じられたと言われていました。

昔読んだ本の中で「一流の人は、いくつになっても素直に学ぶ」ということが書かれていたのを思い出しました。「素直な人」の反対は「我が強い人」ということになります。「我が強い人」は、自分が身につけた知識や経験を大事にして、過去の知識や経験が否定される情報や新しい考え方を受け入れようとしないように感じます。一見、謙虚に受け入れて頭では理解しているように感じても、行動を見ていると心の奥に響いていないのが分かります。

一流の人は、自分の考えだけに凝り固まっている危うさを知っているので、人の話を素直に受け入れる感性を持っているようです。その危うさとは、「自分が正しい」、「この考え方しかない」と思った瞬間から成長が止まってしまうからです。もしも、自分に合わない考え方でも、一旦は素直に相手の教えを受け入れる。そして、その考え方が自分の成長につながるようであれば、その考え方を実践し、もしも、自分には合わない、自分の成長にはつながらないのであれば、それは知識として置いておく。

恐らく、新しい考え方を受け入れると、過去の考え方を捨てなくてはならないと思い込んでしまい、新しい考え方を受け入れられないのかもしれません。本来は、過去の知識や経験は捨てるものではなく、積み重ねていくもので、新しい考え方が加わることで成熟していくはずです。逆に新しい考え方が入ってこない時は、成長が止まっているときでもあると言えるでしょう。

どんなに高いレベルの知識や長い経験があっても、成長のための「素直さ」に勝る武器はないように思います。何よりも素直な人は応援したくなるし、周りからも応援されるように思います。「素直さ」は人を成長させ、人生を豊かにしてくれると私はつくづく思います。

2018年9月8日土曜日

腰椎疲労骨折(分離症)に対する治療

はじめに

中学1年、男子、野球部所属、約5ヶ月前に腰痛で整形外科を受診。レントゲン、MRICTなどの検査を受け、腰椎の疲労骨折(分離症)の診断。約1ヶ月の完全安静の指導を受ける。その後、運動は再開するが、コルセットの着用を指示される。本人は運動をしても痛みは感じないとのこと。ただし、整形外科医の指示通りコルセットを着用しての活動なので動きに制限があるらしい。

本人は痛みがないのに、コルセットをいつまでつけなくてはならないのかという相談と身体のバランスを検査してほしいとのことで来院された。恐らく、ご両親が整形外科医の指示通りでいいのだろうかという疑問をもたれたのだろう。知人のご紹介で来院していただいた。

初回目安検査

施術前の目安検査では、右側の股関節後面、股関節の内転筋群、腰方形筋、肩甲骨後面の筋肉に筋抵抗弱化反応が確認された。小脳機能検査では右側に陽性反応が示された。

初回の施術

アクティベータ療法で、骨盤部と腰部に神経関節機能異常が確認され調整を行う。ご両親によると本番で緊張するクセがあるとのことで、PCRTのソフト面の検査を行ったところ「意欲」で陽性反応が示されたので調整を行なった。

2回目の施術(5日後)

初回で反応した目安検査は消失。アクティベータ療法で骨盤と腰部、腰部の神経関節機能障害を調整。本番で緊張するクセがあり、本来の実力が発揮できずにパフォーマンスに影響を及ぼしているとのこと。PCRTでメンタル系の検査調整を行う。前回の試合の場面を想像してもらうと陽性反応が示された。その場面を目安に検査を進めていくと、「恐れ」や「意欲」の誤作動記憶の陽性反応が示され、調整を行なった。先に検査した目安検査は消失した。

3回目の施術(二週間後)

前回の施術から痛みもなく、メンタル的にも調子がいいという。アクティベータ療法で骨盤と胸椎部の調整を行う。自覚症状はないが、音波刺激で検査をすると、胸腰椎部に陽性反応が示されたので、検査を進めると、7年前の誤作動記憶が示される。本人はあまり記憶がないようだが、お父様によると、小学校入学の際の身体検査で先天的な心臓障害が見つかったときだという。その過去のことも誤作動記憶になっていたので調整を行う。その後、様子を見ながら、何かあれば来院していただくように伝える。

考察

来院時に相談を受けた腰椎分離症だが、筋肉、関節系の機能検査を行う限り、その構造異常から生じる痛みの因果関係は確認できなかった。もしかすると、疲労骨折の骨が癒合して痛くないのかもしれないし、まだ骨癒合が完治していないかもしれない。しかし、そもそも、疲労骨折を生じさせる原因は何か?西洋医学的に考えると、単純に「使いすぎ」なので、「運動を制限する」ということになるだろう。でも、本当に「使いすぎ」だけが原因なのだろうか?筋肉や関節の機能異常を研究している専門家としては、単純に「使いすぎ」だけが原因だとは考え難い。

本来、人の関節は使うためにあるので、筋肉と関節のバランスが正常であれば、疲れを感じるまで使っても、一部の骨だけに異常なストレスが生じるとは考えにくい。例えば、腰を曲げる時には前面の筋肉群が収縮して、後面の筋肉群は緩む。前面の筋肉群に関係する神経は「オン」となり、後面の筋肉群に関係する神経は「オフ」となる。神経系は様々な筋肉を無意識的にコントロールしており、自動的にオンとオフのスイッチを微妙に切り替えている。もしも、神経系の機能に誤作動が生じれば、このスイッチのタイミングが乱れ、筋肉に異常緊張を生じさせる。そして、そのアンバランスな力が関節や骨に異常なストレスを加えることになり、疲労骨折を生じさせると考えられる。

そのように考えると、単純に安静にしただけで、神経の誤作動を調整していないと、元のコントロール系統に異常があるので、運動を再開すると同じような症状を引き起こすかもしれない。画像診断も大切だが、人間の身体は骨だけで構成されているのではないので、骨を動かす筋肉、神経系の働きを診ることも重要である。あいにく整形外科では最新の画像診断で骨の構造異常は分かるが、筋肉や神経の働きの異常までは詳細に検査しない。筋肉と神経系のバランスが整った上で運動をすれば、疲労骨折や怪我なども少なくなるだろうし、パフォーマンスもいい状態になるだろう。また、神経系は「無意識の心」と密接に関係するので、身体だけの原因にとどまらずに、身体と心との関係性においても誤作動の原因を追求していかなくては、本質的な治療にならないだろう。

2018年9月5日水曜日

アロディニア(異痛症)の改善

15年以上も前から、腰痛や首、肩、背中の痛みなどで当院を利用していただいている患者さんが、1年半ぶりの来院。今回は左足の痺れ感と前面部の痛みを訴えた。1ヶ月位前から発症したとのことで、特に左足背部の痛みはかなり強く、軽く触れるだけでも痛い、いわゆるアロディニア(Allodynia:異痛症)の症状を示した。患者さんの表現ではビリビリした痛みがあるとのこと。患者さんはそれほど強く痛みを訴えるタイプではないが、今回はかなり痛みが強い様子だった。検査を行う際には、患部を触らないように注意しながら進めた。

思い当たる原因は特にないとのことで、おそらくハード面の問題でなく、ソフト面の問題であることが予測できた。初回の施術から、1回目、2回目・・・と施術ごとに、段階的に痛みの度合いが軽減はしている様子だったが、毎回、痛みがぶり返していた。結果的には、6回の施術を終えた後で痛みが完全に消失したとのこと。そのことは、痛みが消失した最後の施術から約1ヶ月後の来院日にご報告していただいた。その日の来院はメンテナンス的な施術が目的で、足背部のエネルギーブロックの反応も患者さんがおっしゃるように完全に消失していた。

原因は、大脳辺縁系レベルのいくつかの誤作動記憶だった。検査で陽性反応を示したキーワード以外は、誤作動記憶に関係する詳しい内容は分からないが、恐らく、仕事面で大きな変化があったのではないかと察した。このような通常医療では分かりにくい痛みの原因をPCRTで進めていくと因果関係が見えてくる。このような痛みは、しっかりとした原因療法を行わないと、さらに慢性疼痛が持続していた可能性もある。大脳辺縁系=無意識の心が、このような痛みの原因になっているということは、まだまだ一般化されていない。

「目に見えないものは分からない」となりがちな医療が主流を占めている今日において、将来は、「慢性痛=無意識の心を疑う」ということが優先される医療を創っていきたい。

2018年9月3日月曜日

お母さんの無意識が関係する子供の食物アレルギー

6年ほど前に、食物アレルギーの症状で来院して下さった患者さんが再来院。以前、来院していただいたときは、一歳半の幼児だった。当時、来院された際には、食物アレルギーが多くて、病院からの指導も受けて幅広い食物制限を行なっていた。その結果、約8ヶ月前から体重が増えていないとのことだった。来院時には、通常の幼児に比べると明らかに痩せ細っているのが見てわかった。当院を受療する前にはいくつかの病院を転々とされていたが、解決策もなくお母様は八方塞がりの状態でとても悩まれていた。そんな最悪の状態で当院に来院され、10回ほど通院されてから体重も1キロ増えてきて喜んでいただいた。まだ、いくつかの食物アレルギーの治療は必要だったが、経済的な理由で中止されていた。

それから、その患者さんも元気な7歳の男の子に成長した。今回はご主人の転勤に伴って海外で生活をすることになり、それまでには、何でも食べられるようにアレルギーを改善したいとの希望で再度、アレルギー治療で来院。以前ほどではないが、まだ、複数の食品に対してアレルギー症状がでるとのことで、アレルギー治療を施しながら、陽性反応が消失した後に、実際にその食品を触ったり、ほんの少しだけ舐めたり、口にしたりして、実際のアレルギー症状を確認してもらいながら治療を継続した。

4回の通院治療で、以前から制限していた牛乳、乳製品、卵、鶏肉、パンなどが普通に食べられるようになった。興味深かったのは鶏肉のアレルギー治療だった。アレルギー検査チャートでは陽性反応が示されていなかったのに、実際に食べて試してみたら、顔が赤くなってアレルギー症状がでたという。再検査でもチャートで検査しても反応が示されない。これはアレルゲン以外の何かが関係していると直感的に思い、症状が再現されたイメージから検査をすすめた。すると、「警戒心」というキーワードが示される。それもお母様の過去の記憶が影響を及ぼしていたことが判明。3歳以下の子供は、お母様の影響を受けやすいことは臨床的によくあることだが、7歳の子供でも、過去の記憶で、しかもお母様の記憶が影響を及ぼしているというのはとても興味深かった。

お母様によると、過去、鶏肉をうっかり食べてアレルギー症状がでていたので、お母さん自身も意識的にも無意識的にも鶏肉に対して警戒していたと思うとのこと。お子さんと手をつないでもらい、鶏肉に対する警戒心を認識してもらい調整を行なった。その後、鶏肉を試してもらったが、アレルギー症状は出なかったという。因果関係に関しては珍しいが、この症例から考察すると、3歳以上の患者でも身近にいるお母さんの過去の記憶の影響も考慮して検査を行なわなければならないと思った。やはり、術者のマインド設定はいかにニュートラルにするかの訓練が大切だと改めて思った。

2018年8月30日木曜日

「トラウマ=誤作動記憶」による小脳機能障害

はじめに
10年ほど前に腰痛で来院された患者さんが遠方から来院。今回は半年前から左足に力が入りづらく、仕事で大きな丸太を抱えて移動させるときに力が入らない状態が続いているという。ふくらはぎの筋肉もだんだんと細くなっているという。

機能検査(目安検査)
筋抵抗検査をしてみると、明らかに左下肢の検査で陽性反応が示される。最初の問診では左腕の症状は話されていなかったが、検査をしてみると左上肢にも陽性反応が示される。ここまでの検査で、左側の小脳の機能低下が疑われる。いくつかの小脳機能検査をすると、やはり陽性反応が示される。前腕を回旋させる回内-回外検査をしてみると、左の動作が遅れている。PCRTの三層構造レベルの検査では、小脳-大脳辺縁系関係の誤作動が疑われた。これらの検査を総合して機能障害の根源は小脳機能障害であることが明らかであり、その機能障害を生じさせているのは大脳辺縁系の誤作動記憶であるという予測はできた。

調整
1.     ハード面調整はアクティベータ療法で行い、ソフト面調整法はPCRTのチャートで検査を進めた。
2.     大脳辺縁系→信念→復讐心→時系列→過去→14ヶ月前→思い当たる事柄の特定、相手の特定→「べき」の明確化→調整。
3.     調整後、回内-回外検査をしてみると、先ほどよりは動かしやすくなっているが、若干、左が遅れている感じがするとのこと。
4.     再検査で、同じ出来事で、別の人も関連しているというので、その人に関する「べき」の明確化で調整。調整後の再検査では、先ほどよりも、まだ若干の違和感があるとのこと。
5.     次の再検査では、同じ出来事で「恐れ」のキーワードが示される。「当時のことで最も恐れていたことで、最悪のシナリオとして、思い当たることはありますか?」患者さんはすぐにその恐れのシナリオを想像できた様子。そのイメージで調整。
6.     調整後の回内-回外の再検査では、患者さん曰く「あっ、いいみたいですね!」と、ほぼ左右が同じ感覚で回旋できるようになった。
7.     最初の他の小脳関連の機能検査も全て陰性化して機能障害の反応はすべて改善した。

考察
最初は、現在の症状のことだけをお聞きして、原因になっていた過去の出来事(トラウマ)に関しては一切お聞きしていなかった。でもPCRTの検査ではピンポイントでその原因にたどり着いた。施術後、患者さんにその出来事の内容をお聞きして、なるほど、そんな大きな出来事があればトラウマ(心的外傷)=誤作動記憶として、影響を及ぼしてもおかしくはないと納得した。患者さんは、身体全体を使った力仕事をされている方で、施術前と施術後の違いを明確に感じていただいた様子。以前、腰痛で来院されてから、腰の調子もいいとのことで、今回も信頼して来院してくださり、不調の原因も明確になりとても喜んでいただいた。恐らく、このような関係性による本質的な原因を診ないままで、単に機能神経学的(ハード面の施術)だけのアプローチにとどまると、改善にもっと時間を要しただろう。全ての症例でこのような因果関係がスムーズに分かるわけではないが、今回のように何が症状の本質的原因なのかが明確に分かり、それに伴ってその場で症状が改善されるのはとても清々しい!