2018年2月3日土曜日

患者(クライエント)への「質問力」その6【「寄り添う力」を高めるために】

患者(クライエント)への「質問力」その6【「寄り添う力」を高めるために】

患者とのラポールを築くための寄り添い方にはいくつかの技法がある。カウンセリングやコーチング 関連の書籍でも紹介されているが、最初によく取り上げられる技法は「傾聴」である。しかし、傾聴の前に大切だと思われるのは「患者に関心を寄せること」である。「患者に関心を寄せるなんて当たり前のことでしょ」と思われる方も少なくはないだろう。新米の医療者であれば、患者に関心を寄せることは当たり前のように思われるが、どのように患者に接するのかのマニュアル的な手法ばかりに意識が先行して、目の前の患者の問題に対する関心が薄れてしまうこともある。

一方、ベテランの医療者であれば、「慣れ」や経験からくる「思い込み」が知らず知らずのうちに生じてしまい患者が抱えている本質的問題への関心が薄れてしまうこともある。また、患者の来院数が増えると、患者の数をこなすことに関心が向いたり、早く終わらせることに関心が向いたりして、表面的なことばかりに気を取られて、言葉では言い表すことのできない心(無意識)の声に耳を傾けるまでには及ばなくなる。医療者は新米であれ、ベテランであれ、目の前の患者の表面的な言語や身体検査だけにとどまらず、言葉の背後に隠れた無意識的な心の訴えや魂に関心をよせ、無意識的な仕草や表情などのボディーランゲージにも深く関心を寄せることが求められるだろう。

関心を寄せることの効果を表した心理学的実験がある。「ピグマリオン効果」と呼ばれアメリカの心理学者ローゼンタールとフォードによって行われた。最初はネズミを使った動物の迷路実験だった。ネズミをランダムに二つのグループに分けた。実験を行う学生たちに一つ目のグループはよく訓練された利巧なネズミとして渡し、二つ目のグループはまったくのろまなネズミとして渡した。学生たちは恐らく前者のネズミを丁寧に扱い、後者のネズミをぞんざいに扱い、その両者のネズミへの関心や期待度の違いが実験結果に反映されたものとローゼンタールは考えた。そこで、教育現場の教師と学生でもありうるのではないかと考えた。

教育現場の実験では、普通の知能テストを行なったにも関わらず特別なテストを行なったかのごとく装った。そして、学級担任には今後数カ月の間に成績が伸びてくる可能性のある生徒の名簿を渡した。それは実際にはテストの結果とは関係のない無作為に選ばれた名簿だった。その後、学級担任は選ばれた子供達の成績が向上するという期待を込めてその子供たちを見ていたらしい。そして、実際にその子供達の成績が向上した。報告論文では成績が向上した原因として、学級担任が子供達に対して期待のこもった関心を向けたこと。さらに、子供達も期待されていることを感じ取ったがゆえに成績が向上していったと主張されている。


恐らく、教育現場では成績が伸びない予測がでたからといって、子供達にあからさまな差別的な扱いはしないだろう。しかしながら、期待を込めた関心が無意識的に態度に表れたのではないだろうか。もっと言えば、目には見えない期待や関心の信号が伝わったのではないかと考えられる。このように期待をこめた関心を寄せることの効果は、医療現場でも同じだろう。表面的には見えにくい効果ではあるが、誠実に患者に接している医療者であれば、納得していただけるのではないだろうか?

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