2018年4月6日金曜日

患者(クライエント)への「質問力」その9【傾聴のスキル1】

患者(クライエント)への「質問力」その9【傾聴のスキル1】

治療者は患者(クライアント)が何を求めて来院されたのかに関心を寄せ、患者のニーズをしっかりと把握することが必要になる。そのために患者に寄り添いながら傾聴の質の向上を目指さなければならない。傾聴の質を高めるためにはいくつかのスキルがある。最初のスキルは「あいづち」と「うなずき」である。それらは、言語的には「ええ〜」、「はい〜」、「そうですね〜」、「なるほど〜」、「ほ〜」などで相手の承認を促す。非言語的にはうなずいたり、会釈をしたり、アイコンタクトをしたり、身を乗り出したりして相手の話に興味を示す行為がある。言語的にも非言語的にも対話の中で相手の「あいづち」と「うなずき」があると、真剣に傾聴してくれているというのが分かるので話しやすいというのは誰もが経験していることだろう。

また、相手の話すペースや姿勢に自然な感じで合わせることでさらに話しやすさも増すだろう。これを「ペーシング」、「ミラーリング」とコーチングでは呼ばれており、相手が話しやすい状態を作り出すことをいう。例えば、対話の相手が腕組みをしていたり、足を組んでいたりすると、あいづちやうなずきがあっても心を開いた対話は期待し難いだろう。ただし、ただ単に「あいづち」と「うなずき」があればいいというものではない。時折、対話で絶え間なくうなずく人もいるが、「本当に理解しているのだろうか?」「理解してくれているようだが、表情が不自然に感じる・・・」などと、何となく心の奥で違和感を感じることがある。その場合、表面的には問題のない対話に見えても、心の奥に響くような対話にはならないこともある。あえて言えば、表面的なテクニックで飾られた「建前」の対話という感じになるのだろう。心に届く「本音」の対話をするために、まずは、心から相手の立場に立って相手の心に寄り添って、判断や評価を入れない傾聴が求められるだろう。

初対面の相手に対して、相手の立場になり、相手の心になるというのはそう簡単にできるものではないだろう。ある程度の対話を重ねていく中で相手の置かれている立場や状況が見えてくる。そうすると相手の立場に立って相手の心に寄り添いやすくなる。だが、クライエントをサポートする立場にある治療者が全面的に相手の立場になることができれば、クライエントをサポートしやすくなるのかというとそうでもない。それはなぜかというと、もしも、完全にクライエントの立場になりきってしまうと、クライエントと同じ目線になり、クライエントが気づく必要のある盲点も見えなくなって、視野が狭くなる場合がある。相手の立場になりつつも、第三者的な立場をとって、客観的にクライエントの置かれている状況を認識する必要もある。治療者は、クライエントの立場になったり、一歩引いて客観的に見たりしながら、クライエントに寄り添って承認するスキルが求められるだろう。

対話の際の表情や姿勢などの外的な要因と合わせて、思考や心の内的な要因も大切である。聞く態度に問題がなくとも、相手が話している内容や心情をしっかりと理解できていなければ、対話が弾まなくなり相手はその不自然さに違和感を感じるだろう。相手の話す内容をしっかりと理解して、相手が言わんとしていることを把握している人は、対話の中で時折、話の要点となるキーワードをポツリと相手に返すことがある。これは「おうむ返し」というように呼ばれることもあるが、「おうむ返し」のスキルは単に相手の言葉を真似るのではなく、相手の話の中で要点と思われる「言葉」をうなずきながら繰り返すスキルである。相手の話の内容をしっかりと理解せず、あまり意味のないところで言葉を引っ張り出して「おうむ返し」を使うと、相手は共感を得られずに対話の距離が離れてしまうかもしれない。

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