2018年10月23日火曜日

痙性斜頸患者へ鏡療法(リバビリ)の可能性

先日、痙性斜頸で通院していただいている患者さんで、興味深い現象があったのでご報告させていただく。40代男性の患者さんで、最初の痙性斜頸の程度としては、首が左に向いてしまう傾向が強く、頸部や肩周辺にも痛みを伴って、かなり辛い症状がしばらく継続していた。遠方からだったがほぼ毎週通院していただき、ここ最近改善の兆しが見えてきている。今回の施術の際には、ご本人もだいぶん良くなってきた感じがしてきたとのコメントをいただいた。

良くなった一つのポイントとして、「良くなったら以前からの趣味であるバイクでのツーリングを始めたいという目標ができたことも一つの要因になっているかもしれない」とのことだった。施術途中で、左から右に向ける際に、引っかかりがあるので、「何か思い当たる原因はありますか?」と尋ねると、「左に向くと、そこから首が動かなくなるという恐れかな・・・」と話されていたので、その恐れで検査をすると陽性反応が示されたので誤作動記憶を調整。

その後、検査をすると、まだ引っかかりがあるので、患者の顔の前に鏡をおいて、鏡の中の自分の顔を見ながら、鏡を患者の首の動きに合わせて動かすと、首を左右にスムーズに動かすことができた。「ん???何がちがうのかな???」と自問自答して「あっ〜目標があるからかな・・・」と何かご自分で気づかれた様子。「改善したらバイクのツーリングで楽しめるという目標と関連があるのですかね・・・」とコメントすると、「あ〜そうかもしれない・・・」と言われていた。

痙性斜頸の原因は様々な誤作動記憶が関係していたが、原因の一つに症状を抱えることによる「肯定的な意図」も含まれていた。症状があることで、ある役職をしなくても良いという意味づけも関係していたようで、そのような意味記憶を超える目標ができたことで、治癒力も加速してきたように感じた。患者さんは治したい一心で遠方から通院していただいているが、治ることでさらに得られる目標があると治癒力も促進されるということは、度々遭遇する臨床現場だから分かるストーリーである。

今回の鏡を使った運動の検査は、鏡療法を応用したもので、以前から四肢麻痺の患者さんにリハビリ療法として使われ効果的であるとの論文も掲載されている。PCRTでは自分の症状のある姿が脳に記憶されて脳からの信号で症状を引き起こしている場合、客観的に自分を見てもらう訓練で鏡を使うことがある。今回、ジストニアの患者さんに試してみたら、効果的な現象が示された。他の痙性斜頸の患者さん達にも試してもらい痙性斜頸患者のリハビリ運動として使えるのか成果を確かめてみたい。

ただ、痙性斜頸のようなジストニアの患者さんは、特定のリハビリで改善するというわけではない。リハビリを無理に行うことで、できない動作をさらに記憶させて、逆効果が生じてしまう恐れもある。よって、ジストニアやイップスのリバビリ運動は、患者さんの状態に応じて慎重にアドバイスされた方が良いだろう。むしろ治そうと意識が向かなくなったときに、自然に良くなることもあるが、単純に意識を変えれば良くなるというものではない。似たような症状でも原因は一人一人異なるので、治り方も人それぞれに異なる。肝心なのは、原因となる誤作動記憶がどれだけ解放されるかにあるだろう。

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