2019年1月16日水曜日

精神薬が抗がん作用を持つ・・・

2019/01/07付 西日本新聞朝刊に興味深い記事が掲載されていた。九州工業大の山西芳裕教授が既存の薬で他の病気への効果をAIで解析し、既存薬が別の病気に効くかどうかを予測する「AI創薬」システムを開発した。これまでに、抗精神病薬「フェノチアジン」が前立腺がんに有効。統合失調症の治療薬「ペンフルリドール」が抗がん作用を持つ。腹痛に効く漢方薬「大建中湯」が炎症性大腸がんに有効などと予測した。

私が興味深かったのは、「精神薬が抗がん作用を持つ」ということだ。当院では筋骨格系の症状を主訴とする患者さんが多いが、がんの診断を受けた患者さんも、病院の治療と併用して代替医療の一つの選択として当院を利用されることもある。心身相関の臨床的な探求を続けて20年以上になるが、がんのような自然発生的に生じる病気には無意識的なメンタル面が原因の一つとして関係しているというこということは常々感じていたことではあるし、心と身体が関係し合っている以上関係しないはずはない。

人の主観を排除した、AIによる膨大なビックデータに解析をふまえた研究成果によって、「精神薬が抗がん作用を持つ」ということが分かったということは、長い臨床経験から鑑みても納得のいく成果だと思う。現代医療の多くが身体面と精神面を切り離して治療を進める中で、「身体と心の関係性」を調整する医療の価値がますます高まってくる時代へと進んでいっているのではなかろうか?いや、本質的な原因療法を追求している一人の治療家にとっては、ぜひ、そのような方向性で医療が進んでいくことを願いたい。

2019年1月14日月曜日

毎朝の腰痛の原因は何か?

2ヶ月ほど前から腰痛を発症、特に朝起きた時に腰が痛くて、日常生活での行動に支障があるとのこと。年齢は60代後半。約10ヶ月前から以前行なっていた卓球を再開されたとのこと。来院の前日には病院でレントゲン診断を受け、ギックリ腰の診断。湿布の処方を受けたという。どのように当院を知ったのかお尋ねすると、当院と同じビル内にあるヘルストロンに通っており、そこで偶然に知り合った当院の患者さんに、「とてもひどかった腰の痛みが良くなって・・・腕のいい先生よ・・」などと聞いて来院されたという。

初めて受ける施術なので、最初に検査の手法や目的、施術法などを分かりやすく説明させていただいた。施術前の検査では、腰部や股関節部、さらには膝関節部にも誤作動、機能異常に関連する陽性反応が示された。最初の主訴には記載されていなかったが、「膝のバランスもよくないのではないか?」と質問すると、卓球の練習の際には痛みを伴うという。

初回の施術後には全ての陽性反応が陰性へと転じた。3回目の施術日には朝の腰痛や膝の痛みもないとのこと。4回目の施術日には腰と膝の陽性反応が示されていないので、症状がぶり返した際には早めに来院していただくようにお伝えした。患者さんは、朝の腰痛から解放されて、「毎朝、あんなに悪かったのに良くなって・・・」と、とても喜んでいただいた。

今回の患者さんの主訴は朝起きる際の腰痛であったが、朝起きて首や肩が痛くなったりする人もいる。その際、枕やベットの硬さや柔らかさを痛みの犯人にしてしまう傾向が多くの人にある。先日、たまたま目にした新聞の記事にもそのようなことが当たり前のように記載されていた。その内容は、枕やベットが身体の骨格にフィットするように隙間がない状態が良いというようなことが説明されていた。その解説者の肩書は整形外科医で大学病院の教授。

もっともらしい説明ではあるが、おそらく科学的な根拠はないだろう。私も開業したての頃は、朝の寝違え、あるいは朝の腰痛などの患者さんには、枕やマットが原因ではないかと疑いを持っていたが、よくよく聞いてみると、いつもの枕やマットを使っており、寝具を換えたから痛みが生じたという人はほとんどいなかった。

そうすると「寝る姿勢が悪かったのか・・」となるが、寝ているときは無意識であり、ほとんどの人は無意識的に寝返りをうったり、自然に態勢を変えて、心地よい姿勢になっているだろう。そのような現状を考えると、単純に枕やマットを痛みの犯人にはできないことが分かる。では、何が原因なのか?それは睡眠中に生じている無意識の筋緊張から生じていると私は考えている。これはあくまでも私の臨床経験による推測に過ぎないが、施術効果と照らし合わせても間違いないと確信している。

睡眠中の無意識の筋緊張が影響しているかどうかを検査するのは簡単である。朝起きた際に首の寝違えや腰痛を訴える患者さんが来院された場合、睡眠時の状態を想像してもらい、生体反応検査法を行う。もしも、睡眠時の筋緊張が誤作動として記憶されている場合、陽性反応を示すだろう。

私はこの原因を発見して以来、寝違えや朝の腰痛などの患者さんの治療効果が格段に上がり、改善度も数段早くなった。機械論的に考えると枕やマットが犯人にされやすいが、有機論的に考えると、人間は様々な環境に適応できる柔軟性を備えているということを基本に考えることが大切だろう。また、肉体面だけでなく、身体と心の両面を診ないと部分的な施術になり、症状を長引かせてしまうことにもつながるだろう。

これは、機械論から派生した医療の誤謬のほんの一部ではあるが、少しでも多くの人にそのことを伝えたいと思う。

2019年1月8日火曜日

治せる治療者

新年、明けましておめでとうございます。

昨年はお陰様で学びの多い1年間でした。今年もさらに学びを深め、多くの人の症状改善や問題解決に貢献できるように精進してまいりたいと思います。治療家としての原点を振り返ると、「自然療法で治す」ということを30年以上も問い続けてきた訳ですが、今年も症状を「治す」ということの意味を深く考えながら臨床とセミナーで貢献できるように邁進してまいります。

自然手技療法で「治す」とは、どういうことでしょうか?

薬や外科的手術などを行わない代替医療に携わっている治療者は、患者が本来持っている自然治癒力を高める、あるいは引き出すことを目的に施術を行います。例えば、全身のマッサージをして自然治癒力を高める。足つぼのマッサージをして自然治癒力を高める。また、第一頸椎にだけ刺激を行う治療者達は、そこだけを調整して後は自然治癒力に任せる。あるいは別の言い方でイネイト・インチェリジェンス(内なる自然の叡智)に任せるというカイロプラクティック由来のハイカラな言葉を使う人も最近は多くなってきているようです。

薬や外科的手術などの西洋医学であれ、代替医療の東洋医学であれ、あらゆる療法で効果があるというのは患者自身に自然治癒力、すなわち生命力が本来備わっているからです。死を迎える時が来るまでは、ほとんどの人に自然治癒力、生命力が備わっています。かすり傷がほっといても自然に治るように、誰もがその力を持っています。しかし、特に骨折や脱臼などの障害は、治療者による施術がなければ、変形したままの状態になります。その一方で腰痛などの障害は、西洋医学でも代替医療でも治療者が施す施術によって治る場合もありますが、治療者が関わらなくても時間をかけて自然に治る場合もあります。

例えば、手技療法で、ある部分だけを調整して、「後は自然治癒力に任せる。身体に治させる」という理屈で患者を帰して、数日後に症状が改善したとします。その改善は調整したから改善したのか、もしかしたら調整しなくても自然治癒力で治っていたかもしれません。その真意を判断することは容易なことではありません。調整したから数日後に症状が改善したかもしれませんし、ある種の儀式のような暗示効果で改善したかもしれません。患者にとっては改善されれば、どのような理屈でも関係のないことですが、治すことを重んじている治療者にとっては、大切な関心ごとだと思います。

前述したように治す治癒力は患者自身にありますが、自然治癒力を100%発揮できるように施術をしているのは治療者であるということが、明確に分かる施術を行っているかどうかが治療者としての価値を決めているのではないでしょうか。代替医療の治療者は、構造や病理ではなく生命エネルギーの滞り(ブロック)を治すことが本来の役割だと私は考えています。しかしながら、その本質から外れて、西洋医学の医師のように診断して、慢性症状を構造的に捉えている代替医療の治療者は少なくはないように思います。

西洋医学の知識と技術がなければ治らない様々な病気や症状はたくさんあります。機械論的な思考でなければ治せない症状や病気がある一方で、機械論的思考の医療では限界がある慢性症状もたくさんあります。とくに慢性症状の多くは、機械論的に分離、分割的な思考ではなく、有機論的思考、すなわち、生体エネルギーを基準に、関係性、統合性、システム思考で考える必要性があると私は考えています。

構造的異常がなく機械論的な医療が施せない慢性症状に対しては、特に治る力を阻害している生体エネルギーのアンバランスをいかにして整えることができるかが重要な鍵になるのです。代替医療の治療者に求められるのは、自然治癒力を妨げている生体エネルギーブロックを除去するために生体エネルギーを調整して“治す”ということす。生体エネルギーブロックは目で確認することはできませんが、外科医が肉体の構造を修復して治すという行為と同じように、生体エネルギーブロックを調整して治しているのだと私は考えています。

生体エネルギーブロックが判断できる熟練した治療者は、症状に関連する生体エネルギーブロックを検査し、それを調整することができるので、多くの症例において、なぜ、症状が改善したのかが理解できていると思います。そのように生体エネルギーブロックを調整することで、自分が“治している”という感覚を毎日の臨床で感じられるようになります。そして、“治せる治療者”としてのアイデンティティーや誇りを確立することができると思います。

代替医療の治療者を志す多くの方々とともに“治せる治療者”の価値を高めて参りたいと思います。