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2019年11月26日火曜日

ジストニア治療のための新たな発見

先日、ジストニア(痙性斜頸)の患者さんが3人来院され大きな発見がありました。3人とも治療前と治療後に確実に効果が示されたので、この新たな発見に確信を持ちさらなる可能性を感じているところです。この発見は以前から筋骨格系の患者さんの症状の改善から分かっていたことではありましたが、ジストニアの患者さんにおいて、機能神経学的な視点や筋肉系を重要視していたあまり、ある意味盲点になっていたように感じました。

PCRTのプロトコルに従って幅広く、客観的に検査すれば引出されるEB(生体エネルギーブロック)なのですが、恐らく、「ジストニア=神経学的機能異常」というような偏った見方がどこかにあり、無意識的に視野が狭くなっていたのかもしれません。もちろん、PCRTは心身相関、経絡、機能神経学も含めて、幅広く原因となる誤作動記憶を検査していきますが、「神経系が身体の働きの全てをコントロールしている」という偏った思想が根底にあるがゆえに、見逃していた可能性もあります。

脳・神経系が損傷してしまうと確かに身体の機能が失われるので「神経系が身体の働きの全てをコントロールしている」よって、「神経系の働きを整えれば、身体の症状が改善され健康が維持される」というのはある意味正しいかと思いますが、病気や症状の原因を探求する際、この理屈で全ての症状を改善しようというのは、かなり偏った思想になるかと思います。私自身もカイロプラクティック大学を卒業したての頃は、「神経系の働きを調整すれば様々な症状が改善される」という信念で施術を行なっていた時期がありました。しかし、臨床現場で「原因と結果」を追求すればするほどこの考え方には偏りがあることが分かりました。

かれこれ20年以上前に気づいたことですが、「神経系の働き」の異常は、様々な他のシステム(系)に関係しているということです。例を挙げると、東洋医学の施術の基準となる経絡も身体全体におけるシステムの一つです。「経絡の働き」が乱れれば、「神経系の働き」も乱れ、その逆も然りです。神経系も生体エネルギーの一つですが、「生体エネルギー論」の視点から見ると、様々な生体エネルギーに関係するシステムが調和しあって生命力や治癒力が維持されているのです。よって、神経系のシステムだけを強調し過ぎるあまり、他のシステムが盲点となって、改善するはずの症状も改善し難くなるということが私の臨床体験から導き出された気づきです。

今回の発見には、その日にたまたま3人の痙性斜頸の患者さんが来院されたという偶然が重なったという影響があったかもしれません。まず、一人目の患者さんは大学生の女性です。来院当初は首が右に傾いて、正面に向くことが出来ない状態でした。しばらく通院していただき、現在ではかなり改善しているのですが、今回の目安検査では首の左回旋と前屈時に多少の傾きが生じていました。いつものようにどの領域にEBがあるか検査をしてみると、前回示されていた神経学的な領域や筋肉系の領域には反応が示されませんでした。「もしかすると」という直感で、新たな領域を加えると陽性反応が示されました。この領域をEBとしてPCRTのプロトコルに従って調整を行うと、その後、明らかにその動きの異常が改善しました。

二人目の痙性斜頸の患者さんは、来院当初はかなり頸部の傾きが強く、仕事も出来ない状態。現在では仕事には支障はないものの、まだ正常とは言えない状態。その日の目安検査では特に前屈の動きができない状態。そこから通常のPCRTプロトコルと前回と同様の領域を加えて調整を行ったところ、一人目に続いて前屈の異常運動が明らかに改善されました。三人目の痙性斜頸の患者さんも初回の来院時は頸部の傾きはもちろん、異常姿勢や不随意運動も強い状態でした。その日の来院時には初診時に比べると改善はしているものの、頸部が右に傾いている状態で、仰臥位においても首が右に傾いて左には容易には向けない状態でした。この患者さんも通常のPCRTプロトコルに加えて、同様の領域を追加してみると、陽性反応が確認され、調整後には首が真っ直ぐに向けるようにまで改善しました。

今回の発見は、その領域だけで全てのジストニアに効果があるということではありません。あくまでも通常のPCRTプロトコルに追加されたEB領域ということで、盲点になりやすい領域であるということです。PCRTの調整法は常に臨床現場からの偶然の発見から発展しているように思います。今回の発見もその一つで、この発見はジストニアの治療に限らず、他の症状においても有効に活用ができると思います。この新しい発見には確信を得てはいるものの、セミナーで紹介するには繰り返し検証が必要だと考えています。他にもジストニアの患者さんが通院されているので、さらなる追試を繰り返し検証を重ねた後、来年度のPCRT上級セミナーでこの発見の内容をご紹介させていただく予定です。PCRT上級セミナーに参加資格のある方はご期待ください。

2019年10月14日月曜日

「友達が多い方がいい」という信念の影響―痙性斜頸の施術過程での一コマ

本日、痙性斜頸の施術の過程で深い気づきがあったので、書き留めておきたいと思います。現在、大学1年生の女性が痙性斜頸で通院中です。本人も随分よくなってきているとの自覚があり、施術は順調に進んでいます。施術の過程でとても良い気づきがあり、そのことが症状改善につながっているということがよく分かります。その気づきの過程を一部シェアさせていただきます。

誤作記憶の検査では、以下の反応が示されました。
「喜び」→良い成績→さらに深く→「存在感」の反応。成績が良いことで人に評価され存在感を維持できているという認識。
「慈悲心」→友人関係で自分→人格的に切るに切れなくてだらだら続いてお付き合いする自分→ネガティブな思考を持つお友達に振り回されるので、もっとポジティブな思考をもつお友達とお付き合いして自分を高めたいと願う。それが一年ほど前からの悩みで現在でもその悩みは続いているとのこと。

そこで、悩みパターンに関係する「誤作動記憶」を検査。すると信仰心のキーワードで反応→友人関係→質問から「友達は多い方がいい」という信念があり、それは、先に示された「存在感」にも関係していました。

つまり、「友達は多い方がいい」という信念は、心の奥で大切にしている「存在感」につながっており、「友達が多ければ、自分の存在感は高い」という心の構造の一つになっていました。その信念が「心のブレーキ」になり、それがあるが故に切りたくても切れない友人関係のジレンマにつながっていたということが明確になったということです。

そして、その施術後の改善も明らかに示されており、下に向く動作でも首が傾く動作はほとんど再現されず、スタッフによると受付から帰る際の動作でも、ジストニア特有の手を添える「感覚トリック」の動作も見られずに帰られたとのこと。

今回は9回目で2枠の施術時間で週に2回のペースで通院されています。まだ、完治したとは言えないまでも初心時の症状に比べるとかなりよくなっているのは明らかなので、この調子でさらにぶり返すことなく良い方向へと改善してほしいと願っています。

2019年7月18日木曜日

鳥肌が立つぐらい良くなった・・・(痙性斜頸の症例)

「前回の治療を終えてから帰るとき、本当に鳥肌がたつぐらいに良くなっていました・・・このまま治るのではないかと思うくらい・・・」50代前半の女性の患者さんからコメントをいただいた。症状は痙性斜頸(ジストニア)。まだ、完治したわけではないが、症状の改善に感動されてこのようなコメントをいただいた。20代後半から約25年間症状を抱えているが、5年前から症状悪化。そのため仕事を辞める。人を意識した時などに特に顔が左に回旋する。悪くなり始めの頃から整形外科、鍼灸院を数カ所、5ヶ月前からは別の整形外科に週1回で5回ほど通院した。その後、大学病院を受診して5回通院されたとのこと。大学病院ではナーブロック注射を受ける。

来院の5ヶ月ぐらい前から症状が悪化して病院での治療も受けているが、改善が見られず少しずつ悪化しているかも・・ということを問診票に記載されていた。初回の施術を終えた後に症状の改善を感じられた様子で継続的に通院していただいている。7回目の来院時には良くなってきていることを自覚されていたが、その後、症状がぶり返すこともあった。13回目の来院の際に、前述のように、「前回の治療を終えてから帰るとき、本当に鳥肌がたつぐらいに良くなっていました・・・」というコメントをいただいた。初回の来院時から比べると確かに症状の改善が見られる。25年も抱えていた症状なので、様々な誤作動記憶の反応がでる。だが、施術を行うたびに消去法のように着実に改善している経過が伺える。

この頃では何よりも患者さんの顔の表情に変化があり、スタッフの間では「だいぶん変わってきたよね・・・」と話していた。50代前半の女性には失礼かもしれないが、あどけない自然の顔の表情が垣間見られるようになった感じで、受付では「最初は目をそらしていることが多かったけれども、しっかりと目を見て話されるようになっている・・・」らしい。恐らく症状の背後に隠れているメンタル的な側面が楽になっている様子で、そのことと連動して顔の表情や仕草に変化が現れているのだと思われる。

「鳥肌が立つぐらい良くなった」というコメントをいただく前の施術では、色々なメンタル系のキーワードが関係していたが、その中でも「猜疑心」というワードが大きな影響を与えていたのではないかと感じている。患者さんは治したい一心で通院されているのだが、心の奥には、長年患ってきた症状なので、「簡単に治るはずはない・・・」と自分の治る力に疑いを持つ思い込みをしていたことが分かった。患者さんは、「本当に治ることが奇跡・・・」とも仰っていた。

そこで、私は、「患者さん自身が治ることを心の底から信じられないと、その信念が足かせになって、本来は治る症状も治りにくくなる傾向がありますよ・・・」「症状を創ったのは患者さん自身の脳であり、脳が誤作動の記憶をしているだけなので、その症状を引き起こしている誤作動の記憶を施術することで治ると私は信じていますよ・・・」というようなお話をさせていただいた。また、意識と無意識の奥深い関係性も患者さんに理解してもらえるかどうか半信半疑ではあったが、あえてこのタイミングで説明させていただいた。

「治ることが奇跡・・」という患者さんの何気ない言葉ではあるが、その言葉の裏には「治るはずがない・・」という信念が隠れている可能性がある。ある意味それは「治らない」という「予言」でもある。もしも、治る方向へ行くと、その予言は崩されてしまうのである。そのような信念を無意識的に思い込んでいると、それは強いブレーキとして治癒力を制限する。また、信念とは自分が正しいと信じていることなので、もしも、治る方向へと進むと、自分が長年信じてきた信念や予言が崩される感覚になる。そして、無意識はその信念が壊れないように症状を呼び戻してしまうというような自己矛盾が生じてしまうことが推測される。

心理学的にとても深い話なので少しためらいはあったが、チャレンジして話してみた。すると、患者さんはそのことを理解してくれた様子で、そのような無意識の自分がいてもおかしくはないようなことを言われていた。そして、その説明も含めて「猜疑心」に関係する誤作動記憶の調整をした。他にも調整したキーワードがあったが、もしかすると、今回の改善はその説明とそのキーワードの調整が大きな作用を及ぼしたかもしれないと思う。

単純に信じれば良くなるということではないが、患者さんが無意識に抱いている自分への治癒力に対する不信感は、施術効果に多大な影響を及ぼしている。長年症状を抱えていると、「治したい・・」「いやいや治るはずがない・・・」などの心の葛藤があっても不思議ではない。治療者はこのような心の奥に隠れた葛藤や自己矛盾に対しても働きかけて整理するサポートをしなくてはならない。このような症状は、複雑な脳が関係しているがゆえにハウツウ的な治療法で治る症状ではないと言っても過言ではないだろう。

ジストニアの症状のほとんどが大脳基底核、大脳辺縁系、小脳など様々な脳の領域に関係しているが、知覚神経や運動神経を通じて、神経学的機能低下領域を刺激すれば治るという単純な症状ではない。意識と無意識の関係性や過去のトラウマなど脳の無意識的な関係性が誤作動として記憶されている。脳の機能そのもの自体が複雑に関係しあっており、無意識的な記憶が複雑に絡み合っている。ジストニアの調整はその複雑に絡み合った記憶の糸を解きほどいて整理していかなくてはならない。神経科学の研究が進むにつれて、未知の領域である脳の「複雑性」が徐々に解明されている。脳の機能は教科書に描かれているような線形の世界ではなく非線形の世界であることをジストニアの治療に関わる治療者は理解する必要があるだろう。

2019年7月10日水曜日

久しぶりにお子さんと遊んでほんとに楽しかった!!(頸部ジストニア、痙性斜頸の症例)

繰り返される日々の施術の過程で、時折心に響く場面に遭遇することがあります。ジストニアの症状で来院されている患者さんの施術中の一場面で印象深いコメントがありました。それは、「久しぶりに子供と遊んでほんとに楽しかった・・・」と心に染み渡るように語っていたことです。何気ない普通の会話なのですが、ジストニアを発症した半年前から小学2年生のお子さんと遊べていなかったとのこと。育ち盛りの息子さんと久しぶりに遊べたことは、お父さんにとってはかけがえのない貴重な時間だったに違いありません。最初の強いジストニアの症状を知っているが故に、しばらくぶりにお子様と遊べたことはとても嬉しかったのだろうということがひしひしと伝わってきました。

それは7回目の施術日でしたが、その日の来院時はジストニアの症状の改善が明らかに分かる状態でした。患者さん自身も前日にお子さんと遊べるほど調子が良かったとのことでした。最初の来院時は、顔が左側に最大限に回旋したままで、不随意運動も強い状態。日常生活にも支障がでている様子で、お子さんと遊べる状態ではなかったのは明らかでした。ジストニアという症状の多くが肉体的な問題だけでなく、メンタル的な関係性が奥に隠れています。恐らくそのような潜在的なメンタル的な要因も解放されたことで心から楽しめたのだと思います。

当院で施術を受ける前は大学病院でボトックス注射を2回ほど受け、投薬治療を受けたとのことですが、症状の改善が見られずに来院されました。当院での継続治療で改善の転機になったのは5回目の施術の後だったかもしれません。その時、ある程度施術内容を理解されていたので、マインドフルネスによる自己療法も指導させていただきました。「雑念がいろいろと思い浮かぶと思うので、気になる雑念がでてきたら次回の施術で教えて下さい・・」とお伝えしていました。そして、次の6回目の施術の際に、「人生で最悪の出来事があったのを思い出しました・・・今までの施術で、なぜそれが出てこなかったか不思議なくらい自分にとっては人生で一番苦しい出来事でした・・・」と言われました。

実際にそのことを思い浮かべてもらうと明らかにトラウマの反応が示されました。10年前のことでしたが、脳の誤作動として記憶されていました。それ以外にも過去のトラウマ的な誤作動記憶は調整しましたが、そのことは本人も自覚しているように大きなトラウマだったようです。単純にそのトラウマだけがジストニアの原因となる誤作動記憶ではありませんが、症状の改善度から鑑みても大きな原因の一つになっていたように感じました。

当院を受診されるジストニアの患者さんのほとんどが心身相関的な誤作動による症状です。ジストニアの患者さんは目で見て分かる身体症状の改善を訴えて来院されます。メンタル的な問題を最初から訴えることはありませんが、施術を通じてだんだんと症状が改善するにつれて心の状態と身体症状が連動しているということが感覚的に分かってきます。継続治療の過程でメンタル的な気分も良くないと、それに連動して症状もぶり返すこともあります。でも、症状がぶり返してもその記憶を調整して書き換えることでその誤作動記憶による症状は消去法のように改善されていきます。

今回ご紹介せていただいている患者さんも継続治療のプロセスを通じて、だんだんと心と身体との関係性を体験的に理解されています。今回のような明らかな改善を体験することでジストニアが根本的に治っていくのだという自分の治癒力に自信を持つことができたのではないかと察します。今後、さらに改善されるように継続治療させていただきたいと思います。

2018年10月23日火曜日

痙性斜頸患者へ鏡療法(リバビリ)の可能性

先日、痙性斜頸で通院していただいている患者さんで、興味深い現象があったのでご報告させていただく。40代男性の患者さんで、最初の痙性斜頸の程度としては、首が左に向いてしまう傾向が強く、頸部や肩周辺にも痛みを伴って、かなり辛い症状がしばらく継続していた。遠方からだったがほぼ毎週通院していただき、ここ最近改善の兆しが見えてきている。今回の施術の際には、ご本人もだいぶん良くなってきた感じがしてきたとのコメントをいただいた。

良くなった一つのポイントとして、「良くなったら以前からの趣味であるバイクでのツーリングを始めたいという目標ができたことも一つの要因になっているかもしれない」とのことだった。施術途中で、左から右に向ける際に、引っかかりがあるので、「何か思い当たる原因はありますか?」と尋ねると、「左に向くと、そこから首が動かなくなるという恐れかな・・・」と話されていたので、その恐れで検査をすると陽性反応が示されたので誤作動記憶を調整。

その後、検査をすると、まだ引っかかりがあるので、患者の顔の前に鏡をおいて、鏡の中の自分の顔を見ながら、鏡を患者の首の動きに合わせて動かすと、首を左右にスムーズに動かすことができた。「ん???何がちがうのかな???」と自問自答して「あっ〜目標があるからかな・・・」と何かご自分で気づかれた様子。「改善したらバイクのツーリングで楽しめるという目標と関連があるのですかね・・・」とコメントすると、「あ〜そうかもしれない・・・」と言われていた。

痙性斜頸の原因は様々な誤作動記憶が関係していたが、原因の一つに症状を抱えることによる「肯定的な意図」も含まれていた。症状があることで、ある役職をしなくても良いという意味づけも関係していたようで、そのような意味記憶を超える目標ができたことで、治癒力も加速してきたように感じた。患者さんは治したい一心で遠方から通院していただいているが、治ることでさらに得られる目標があると治癒力も促進されるということは、度々遭遇する臨床現場だから分かるストーリーである。

今回の鏡を使った運動の検査は、鏡療法を応用したもので、以前から四肢麻痺の患者さんにリハビリ療法として使われ効果的であるとの論文も掲載されている。PCRTでは自分の症状のある姿が脳に記憶されて脳からの信号で症状を引き起こしている場合、客観的に自分を見てもらう訓練で鏡を使うことがある。今回、ジストニアの患者さんに試してみたら、効果的な現象が示された。他の痙性斜頸の患者さん達にも試してもらい痙性斜頸患者のリハビリ運動として使えるのか成果を確かめてみたい。

ただ、痙性斜頸のようなジストニアの患者さんは、特定のリハビリで改善するというわけではない。リハビリを無理に行うことで、できない動作をさらに記憶させて、逆効果が生じてしまう恐れもある。よって、ジストニアやイップスのリバビリ運動は、患者さんの状態に応じて慎重にアドバイスされた方が良いだろう。むしろ治そうと意識が向かなくなったときに、自然に良くなることもあるが、単純に意識を変えれば良くなるというものではない。似たような症状でも原因は一人一人異なるので、治り方も人それぞれに異なる。肝心なのは、原因となる誤作動記憶がどれだけ解放されるかにあるだろう。

2017年8月11日金曜日

頸部ジストニア(痙性斜頸)の一症例



50代男性、人と接するお仕事。痙性斜頸の兆候は30代の頃からみられ、当初は写真撮影時に気になる程度だったが、一年半ほど前より酷くなってきた。仕事上、対面で人と話そうとすると症状が出てしまう。人前に出ることが多く、最近では仕事に支障が出ているとのこと。ジストニアの症状が強くなるのは、人に見られている時、ストレスを感じている時、細かな作業をする時などで、一人でリラックスしている時は軽減する。

一つ目の病院でMRICTなどの検査を受け、頸部ジストニア(痙性斜頸)の診断を受ける。二つ目の病院でも同様の診断を受ける。そこからボツリヌス神経治療の専門医を紹介されて、3ヶ月に1回ボツリヌス注射を受けているとのこと。3回ほど治療を受けて、症状は改善したように見えるが、効果がなくなってくる度に再発が見られるので、対症療法ではなく、根本的な改善を期待して来院。問診の際に、少し顔が左下に向き、右肩が上がる傾向があった。来院時の症状レベルは10段階で5レベルとのこと。

PCRTの目安検査では、右肩甲帯前方、右頚椎回旋、右肩関節挙上、右側頭部空間ブロックで陽性反応。アクティベータ療法を終えた後、ストレスを感じる場面をイメージしてもらい陽性反応を確認。その後、PCRTソフト面調整法へと進む。ストレスで嫌だなと感じる場面が二つほどあるとのこと。その嫌な気分のレベルを尋ねると、10段階で10レベルとのこと。
 
10レベルの嫌な気分を軽減させる目的で、最初は、井合穴経絡調整法(大腸、小腸、膀胱、胆)と音階調整法で6レベル。次に、信念(復讐心)4レベル、カラー調整法と信念(競争心)で2レベルまで軽減。初回の施術は完了。

遠方からの来院なので、一泊2日で続けて2回目の調整を行う。問診をしている間、初回に見られたジストニアの症状は現れなかった。アクティベータ療法をおこなった後に、PCRTの検査を行う。昨日の嫌な気分は二つとも陰性反応。ご本人もそのことは気にならなくなっているとのことだった。ストレスを感じる嫌な気分の際の反応は改善された様子。以前から感じていた対人恐怖の調整を行う。自覚的には8レベル。井合穴調整法(心、胃、膀胱)で5レベル、音階調整法で3レベル。信念(利己心)の調整で1レベルに軽減。

最後に「ジストニアが完治する自信はどうですか?」と尋ねたところ、「いや、まだ不安ですね。」という。「10段階でどれくらい不安が強いですか?」と尋ねたところ9レベルとのこと。最後の不安感を意味記憶の経験や情報を書き換える施術で調整を行い、1レベルまで下がる。

ジストニアの治療に関しては大変満足していた様子。遠方からの来院だったので、また、不安を感じるような症状がでたら来院されるとのこと。安心した様子で当院を後にした。本症例はジストニアの症状が悪化して1年半以上経過している。2回の施術で本質的な改善が望めるかどうかは分からない。しかしながら、対症療法ではなく、本質的な改善を目的にした調整法で改善されたという自信は持たれた様子。あれから1ヶ月以上になるが、患者さんからの連絡がないので、経過が良好であることを期待している。



2017年4月28日金曜日

痙性斜頸(ジストニア)の改善 シリーズ2

痙性斜頸(ジストニア)の改善 シリーズ2

【2回目の施術】3日後

問診:
術者:その後どうでしたか?
患者:治療後は良かったのですが、1日あいて、今日は昨日とは違う感じがします。以前からあったのですが、電車やエレベーターで人目が気になって症状がでるようです。
術者:わかりました。その時の状況も検査してみましょう。

目安検査:陽性反応
筋肉・関節(自動運動)=前回の陽性反応は全て陰性
EB(エネルギーブロック)部位=前回の右胸鎖乳突筋の筋腹を摘む陽性反応も陰性
症状イメージ=マンドリンを弾くイメージ=陰性、下を向くイメージ=陰性、字を書くイメージ=陰性、夜締め付けられたイメージ=陰性、人前でのイメージ=陽性

ハード面調整(肉体内関係の誤作動記憶調整):
l   AM(アクティベータ・メソッド)とPCRT(心身条件反射療法)でハード面調整を完了。
l   ハード面調整完了後、人前での症状イメージ以外の目安検査は消失。

ソフト面調整(肉体内関係の誤作動記憶調整):

術者:前回の陽性反応はほとんど消失していますので、人前での症状イメージから検査を進めてみましょう。
l   PCRT誤作動記憶検査チャートを使いPRT(生体反応検査法)を行う。
l   大脳辺縁系→信念チャート→虚栄心でPRT陽性反応
術者:虚栄心というキーワードも関係しているようですが、何か心当たりはありますか?虚栄心というのは、周りの人から〇〇のように思われたいとか、だれにでもありそうな心の一つですが・・・
患者:・・・そうですね。それだったらマンドリンに関係しているかもしれませんね・・・
術者:それでは、「虚栄心」という言葉につなげてそのことを心の中で思ってもいえますか?
患者:はい。(イメージ)
術者:今の思っている内容で身体が反応していますので、そのイメージで調整させてもらいますね。
PCRT呼吸振動法を施す。「虚栄心」のフィードバック検査で陰性反応。
術者:「虚栄心」に関する誤作動記憶は調整できましたので、再度、人前で気になる場面を想像していただけますか?
患者:はい。
術者:人前で気になるイメージで反応が示されていますので、また、チャートを使って検査させてもらいますね。
患者:はい。
l   PCRT誤作動記憶検査チャートを使いPRT(生体反応検査法)を行う。
l   大脳辺縁系→信念チャート→「利己心」でPRT陽性反応
術者:こんどは、「利己心」というキーワードで反応が示されています。「利己心」というのは誰にでもある心ですが、何か避けたいことから自分を守ろうとする心に関係するのですが、何か思い当たることはありますか?
患者:・・・今、思いついたのはマンションの人ですね。偶然ですけれど同じマンションの住人の方が、マンドリンの教室にいて、一緒に習っていたのですよ。
術者:あ〜そですか?その方は上手でした。
患者:そうですね。私よりも以前からその教室で習っていたので上手でしたね。多分、私がやめたことをその人にどのように思われているのかを私は気にしていると思います。
患者が話しているあいだにPRT(生体反応検査法)を行う。
術者:なるほど。今、話されている時に検査をしてみると陽性反応が示されて、「さらに」の検査でもう少し明確にした方が良さどうですが、自分を守ろうとしている何かにつなげられそうですか?
患者:その方が教室にいなかったらもっと早く辞めていたと思うんですが、同じ住人なので辞めづらかったというのはありますね。
術者:何が辞めづらくさせていたのかが明確になるといいかもしれませんね。・・・すみません。ちょっと待っていただけますか?(術者は他の患者さんへ移動)後で検査させてもらいますので、そのことにについて考えておいてください・・
患者:はい。
術者:・・・五分後・・・どうですか?
患者:しばらく冷静に考えてみると、自分の体裁を守りたかったのだと思います。
l   PCRT誤作動記憶検査チャートを使いPRT(生体反応検査法)を行う。
術者:なるほど。今話されている間に検査をしてみと反応していますので、そのことを思ってもらったままで調整させてもらいます。
l   PCRT呼吸振動法を施す。「利己心」のフィードバック検査で陰性反応。
術者:「利己心」に関する誤作動記憶は調整できましたので、再度、人前で症状が感じるイメージをしていただけますか?
患者:はい。
術者:いいですね。そのイメージでも陽性反応が示されていませんので、今日の施術はこれで完了させていただきます。
l   ソフト面調整法の施術完了

遠方からの来院で、その日は近隣のホテルに宿泊し次の日に施術を予約されていた。翌朝早く来院されたが、施設にいるお母様が急に意識がなくなったとの連絡があり、すぐに帰省しなくてはならないとのこと。受付で話をされてもジストニアの症状が再発することもなく、症状はだいぶん改善された様子。「とてもよくなって大変感謝しています。」と、その日の施術は一旦キャンセルして帰られた。

考察:
一年半前位より発症したジストニアが2回の施術で随分改善した。脳の記憶は複雑なので、これで完治したとは判断し難いが、ご本人は症状改善に満足されていた。身内の事情で継続通院できなかったが、また、何か問題があれば来院してくださるだろう。本症例ではジストニア症状に関係する誤作動記憶がうまく整理できように感じる。完治であろうがなかろうが、患者自身がこのような治療法で「自分の身体は治るのだ!」ということ信じてくれることだろう。