2019年1月14日月曜日

毎朝の腰痛の原因は何か?

2ヶ月ほど前から腰痛を発症、特に朝起きた時に腰が痛くて、日常生活での行動に支障があるとのこと。年齢は60代後半。約10ヶ月前から以前行なっていた卓球を再開されたとのこと。来院の前日には病院でレントゲン診断を受け、ギックリ腰の診断。湿布の処方を受けたという。どのように当院を知ったのかお尋ねすると、当院と同じビル内にあるヘルストロンに通っており、そこで偶然に知り合った当院の患者さんに、「とてもひどかった腰の痛みが良くなって・・・腕のいい先生よ・・」などと聞いて来院されたという。

初めて受ける施術なので、最初に検査の手法や目的、施術法などを分かりやすく説明させていただいた。施術前の検査では、腰部や股関節部、さらには膝関節部にも誤作動、機能異常に関連する陽性反応が示された。最初の主訴には記載されていなかったが、「膝のバランスもよくないのではないか?」と質問すると、卓球の練習の際には痛みを伴うという。

初回の施術後には全ての陽性反応が陰性へと転じた。3回目の施術日には朝の腰痛や膝の痛みもないとのこと。4回目の施術日には腰と膝の陽性反応が示されていないので、症状がぶり返した際には早めに来院していただくようにお伝えした。患者さんは、朝の腰痛から解放されて、「毎朝、あんなに悪かったのに良くなって・・・」と、とても喜んでいただいた。

今回の患者さんの主訴は朝起きる際の腰痛であったが、朝起きて首や肩が痛くなったりする人もいる。その際、枕やベットの硬さや柔らかさを痛みの犯人にしてしまう傾向が多くの人にある。先日、たまたま目にした新聞の記事にもそのようなことが当たり前のように記載されていた。その内容は、枕やベットが身体の骨格にフィットするように隙間がない状態が良いというようなことが説明されていた。その解説者の肩書は整形外科医で大学病院の教授。

もっともらしい説明ではあるが、おそらく科学的な根拠はないだろう。私も開業したての頃は、朝の寝違え、あるいは朝の腰痛などの患者さんには、枕やマットが原因ではないかと疑いを持っていたが、よくよく聞いてみると、いつもの枕やマットを使っており、寝具を換えたから痛みが生じたという人はほとんどいなかった。

そうすると「寝る姿勢が悪かったのか・・」となるが、寝ているときは無意識であり、ほとんどの人は無意識的に寝返りをうったり、自然に態勢を変えて、心地よい姿勢になっているだろう。そのような現状を考えると、単純に枕やマットを痛みの犯人にはできないことが分かる。では、何が原因なのか?それは睡眠中に生じている無意識の筋緊張から生じていると私は考えている。これはあくまでも私の臨床経験による推測に過ぎないが、施術効果と照らし合わせても間違いないと確信している。

睡眠中の無意識の筋緊張が影響しているかどうかを検査するのは簡単である。朝起きた際に首の寝違えや腰痛を訴える患者さんが来院された場合、睡眠時の状態を想像してもらい、生体反応検査法を行う。もしも、睡眠時の筋緊張が誤作動として記憶されている場合、陽性反応を示すだろう。

私はこの原因を発見して以来、寝違えや朝の腰痛などの患者さんの治療効果が格段に上がり、改善度も数段早くなった。機械論的に考えると枕やマットが犯人にされやすいが、有機論的に考えると、人間は様々な環境に適応できる柔軟性を備えているということを基本に考えることが大切だろう。また、肉体面だけでなく、身体と心の両面を診ないと部分的な施術になり、症状を長引かせてしまうことにもつながるだろう。

これは、機械論から派生した医療の誤謬のほんの一部ではあるが、少しでも多くの人にそのことを伝えたいと思う。

2019年1月8日火曜日

治せる治療者

新年、明けましておめでとうございます。

昨年はお陰様で学びの多い1年間でした。今年もさらに学びを深め、多くの人の症状改善や問題解決に貢献できるように精進してまいりたいと思います。治療家としての原点を振り返ると、「自然療法で治す」ということを30年以上も問い続けてきた訳ですが、今年も症状を「治す」ということの意味を深く考えながら臨床とセミナーで貢献できるように邁進してまいります。

自然手技療法で「治す」とは、どういうことでしょうか?

薬や外科的手術などを行わない代替医療に携わっている治療者は、患者が本来持っている自然治癒力を高める、あるいは引き出すことを目的に施術を行います。例えば、全身のマッサージをして自然治癒力を高める。足つぼのマッサージをして自然治癒力を高める。また、第一頸椎にだけ刺激を行う治療者達は、そこだけを調整して後は自然治癒力に任せる。あるいは別の言い方でイネイト・インチェリジェンス(内なる自然の叡智)に任せるというカイロプラクティック由来のハイカラな言葉を使う人も最近は多くなってきているようです。

薬や外科的手術などの西洋医学であれ、代替医療の東洋医学であれ、あらゆる療法で効果があるというのは患者自身に自然治癒力、すなわち生命力が本来備わっているからです。死を迎える時が来るまでは、ほとんどの人に自然治癒力、生命力が備わっています。かすり傷がほっといても自然に治るように、誰もがその力を持っています。しかし、特に骨折や脱臼などの障害は、治療者による施術がなければ、変形したままの状態になります。その一方で腰痛などの障害は、西洋医学でも代替医療でも治療者が施す施術によって治る場合もありますが、治療者が関わらなくても時間をかけて自然に治る場合もあります。

例えば、手技療法で、ある部分だけを調整して、「後は自然治癒力に任せる。身体に治させる」という理屈で患者を帰して、数日後に症状が改善したとします。その改善は調整したから改善したのか、もしかしたら調整しなくても自然治癒力で治っていたかもしれません。その真意を判断することは容易なことではありません。調整したから数日後に症状が改善したかもしれませんし、ある種の儀式のような暗示効果で改善したかもしれません。患者にとっては改善されれば、どのような理屈でも関係のないことですが、治すことを重んじている治療者にとっては、大切な関心ごとだと思います。

前述したように治す治癒力は患者自身にありますが、自然治癒力を100%発揮できるように施術をしているのは治療者であるということが、明確に分かる施術を行っているかどうかが治療者としての価値を決めているのではないでしょうか。代替医療の治療者は、構造や病理ではなく生命エネルギーの滞り(ブロック)を治すことが本来の役割だと私は考えています。しかしながら、その本質から外れて、西洋医学の医師のように診断して、慢性症状を構造的に捉えている代替医療の治療者は少なくはないように思います。

西洋医学の知識と技術がなければ治らない様々な病気や症状はたくさんあります。機械論的な思考でなければ治せない症状や病気がある一方で、機械論的思考の医療では限界がある慢性症状もたくさんあります。とくに慢性症状の多くは、機械論的に分離、分割的な思考ではなく、有機論的思考、すなわち、生体エネルギーを基準に、関係性、統合性、システム思考で考える必要性があると私は考えています。

構造的異常がなく機械論的な医療が施せない慢性症状に対しては、特に治る力を阻害している生体エネルギーのアンバランスをいかにして整えることができるかが重要な鍵になるのです。代替医療の治療者に求められるのは、自然治癒力を妨げている生体エネルギーブロックを除去するために生体エネルギーを調整して“治す”ということす。生体エネルギーブロックは目で確認することはできませんが、外科医が肉体の構造を修復して治すという行為と同じように、生体エネルギーブロックを調整して治しているのだと私は考えています。

生体エネルギーブロックが判断できる熟練した治療者は、症状に関連する生体エネルギーブロックを検査し、それを調整することができるので、多くの症例において、なぜ、症状が改善したのかが理解できていると思います。そのように生体エネルギーブロックを調整することで、自分が“治している”という感覚を毎日の臨床で感じられるようになります。そして、“治せる治療者”としてのアイデンティティーや誇りを確立することができると思います。

代替医療の治療者を志す多くの方々とともに“治せる治療者”の価値を高めて参りたいと思います。

2018年12月28日金曜日

8年ほど前からのサバアレルギー

ゴルフのアプローチイップスの症状で来院していただいていた患者さんが、以前からサバのアレルギーがあるとのことで相談を受ける。2年前にはサバを食べた後に、唇や喉が腫れて、呼吸が苦しくなり、アナフィラキシー症状で病院の治療を受けたという。サバは大好きだが、それ以来食べていないという。アプローチイップスの症状はほぼ改善されていたので、サバアレルギーの治療を行う。PCRTのプロトコルに沿って検査を進めると、確かにサバで陽性反応が示される。さらに「組み合わせ」を検査すると陽性反応、サバアレルギーの背後に信念に関連する誤作動記憶の反応が示された。

その後、11日後に来院された。サバの検査では陰性反応を示されたので、「サバを少し触れたりして身体に何か反応が感じられるか様子を見てみてもいいかもしれませんね。」と、アドバイスさせていただいた。その後、約1ヶ月後に来院された。サバを二切れほど食べてみたがなんともなかったらしい。PCRTのサバの検査でも陰性反応が示された。サバアレルギーの症状は大丈夫なようだが、念には念を入れて、「大丈夫だとは思いますが、徐々に量を増やして試された方がいいかもしれません・・・」と油断されないようにアドバイスさせていただいた。

恐らくサバのアレルギーはほぼ改善されたと思う。サバに限らず食物アレルギーの背後にはメンタル系の誤作動記憶がリンクしていることが多い。その「記憶」を引き出してサバの情報と組み合わせていくことで多くのアレルギー症状は改善される。本症例の患者さんは、拙著の「体の不調は脳がつくり、脳が治す」の本を読んでいただいたことも関係しているのか、イップスの治療からスムーズに治療が進んで、アレルギーの治療も比較的早期に改善したようだ。やはり、西洋医学とは異なるこのような療法を患者さんがいかに理解していただけているかどうかは治療効果にも影響を及ぼしていると常々思う。

2018年12月17日月曜日

卓球イップス 動画の影響を受ける

30代の男性が卓球イップスの症状で来院。今まで出会った卓球選手にしてはがっちりした体格だった。見るからにパワーが溢れている感じの一方で優しい顔立ちをしている。症状は5〜6年前から始まったらしい。その頃から自分の理想の卓球ができなくて、悩みが多いとのこと。以前はBランクだったのに現在はDランクに下がっているという。普段の日常生活には支障はないが、特に試合の時には症状が顕著で、経過としては良くなったり悪くなったりしているという。

イップスの症状を抱えている患者さんの場合、肉体的な機能異常に加えて、メンタル面との関係性を調整しなければならないので、時間の都合で二枠の予約を頂いて進めさせていただいている。本症例の患者さんも二枠の予約で初回を含めて、7回調整させていただいた。7回の間に、以前から抱えていた膝の問題も調整させていただき、順調に改善されている。いくつかの過去の誤作動記憶もうまく調整され、ご本人も改善を実感されていた様子。

まだ、調整途中ではあるが、7回目の誤作動記憶の原因が、これから遭遇する可能性のあるパターンだなと感じたのでご紹介したい。本症例では試合の際のパターンと、フォアサーブ、バックハンドが主なイップス症状だったが、ゆっくりとした球を打つ際に手が震えていると周りの選手に指摘されるという。その場面をイメージすると確かに誤作動の陽性反応が示される。

PCRTのプロトコルに沿って検査を進めていくと、大脳皮質系⇨意味記憶⇨情報と示されたので、「その症状の原因の一つで、何か外からの情報を入れることで、その情報を信じていることで影響を受けている可能性があるのですが、何か心当たりはありませんか・・」と質問させていただいた。患者さんはしばらく考えて、「・・・ん、もしかしてこれかな・・」と想像してもらいながら検査をすると、陽性反応が示された。

「それは影響しているようですけど、どんな情報ですか・・」と尋ねると、「卓球の動画です・・・」という。ある卓球の選手の動画のフォームを研究してそれに近づこうとして練習していたが、何か自分には合わないということを何となく気づいていたらしい。最近は動画を簡単に見ることができる時代なので、それを見ながら研究して自分のパフォーマンスを改善しようとしているスポーツ選手が増えてきているようだ。

イップスの原因に関して言えば、以前はコーチ指導による情報が多かったが、これからは動画映像、あるいは指導による情報の影響も増えるのではないかと予測される。コーチからの直接指導、あるいは動画による間接的な指導であれ、その情報が自分にあっているかどうかがとても重要である。「たとえ理想の選手がいいフォームでいい結果を出しているからといって、そのフォームが自分に合っているかどうかは分からない。」ということは理解しておいた方がいいだろう。理想の選手のフォームは参考にしても、そこから自分の合ったフォームを自分で体得することが大切である。

本症例の患者さんは、内面的な心の動きも分かりやすく話してくださり、心身相関の理屈やPCRTの治療理論もスマートに理解される方なので、施術がスムーズに進行している。西洋医学の診断や方法論が主流になっている現状において、このような新しい治療法の理論や意図を理解していただけるのは非常にありがたい。

2018年12月12日水曜日

送球イップスから腕の局所性ジストニア

はじめに

二十代女性、5年ほど前に、ソフトボール部に所属しており、そのころから送球が上手くできなくなっていた。その頃から送球イップスの症状を抱えていたが、引退後も腕をゆっくり上げようとすると、腕が勝手に早く動くようになり、自動販売機で腕を使うときなどには支障があるとのこと。特に意識して何かをしようとしたときに悪化する傾向にあり、だんだんと悪くなってきているような気がするらしい。

目安検査

最初にどのような症状なのか再現してもらう。片方だけ観察すると分かりにくいが、左右、同じスピードで腕を挙上してもらい比較すると、明らかに右腕が早く挙上してしまう。本人が言われるように、勝手に早く腕が動いてしまう症状がある。珍しい症例かもしれないが、局所性ジストニアで経過から予測すると心因性ジストニアの疑いがある。また、仰向けに寝た状態では症状が再現されないが、座位や立位姿勢では症状が再現されるのもジスニア症状の特徴の一つである。調整前の機能評価では現在の症状がPRTで9レベル、メンタル系がPRTで9レベルだった。

1回目の調整

最初はアクティベータ療法で、ハード面の検査調整を行う。脊柱と右肩関節関連に陽性反応。右小脳機能に陽性反応が示された。PCRTのソフト面調整では大脳辺縁系レベルで2つのキーワードが示され、それに関連する内容を質問して誤作動記憶を引き出し調整する。調整後は、現在の症状はPRTで5レベル。メンタル系では1レベルまで下がった。施術後に問題の動作を試してもらったが、顕著な変化は見られなかった。

2回目の調整

最初に1回目の施術からジストニアの症状がどのように変化しているのか試してもらった。1回目と同様に顕著な変化は見られなかった。症状の機能評価は9レベル。メンタル系が8レベル。アレルギー系が9レベル。アレルギー系は前回反応が示されなかったので、「なぜ?」と内心思った。

3層構造のチャートで検査を進めていくと「聴覚」→時系列→過去→8年前→お父さんの声で反応が示された。もしかすると、これがアレルギー系(五感適応系)の反応なのかなと思った。でも、なぜ、前回は示されなかったのだろうと考えると、前回はお父様が付き添いで一緒に来られていたので、無意識がその部分を解放せずにブロックしていたのだろうと納得した。お父さんに関係する声の内容は2つあり、過去の誤作動記憶が陽性反応として示されていたなので調整を行なった。

その後、検査を進めると、「執着心」に関係する内容が2つほど示されていたので、その誤作動記憶の調整も行なった。施術後の目安検査でメンタル系はレベル1まで下がった。調整後の腕の動作を確認すると、なんとほとんど左右の違いが分からないくらいに改善していた。「え、こんなに早く改善するの・・・」と内心、思った。なぜなら、その症状は5年ほど継続していたイップス、ジストニアである。ご本人も喜ぶというか、不思議に感じている様子だった。

ジストニアの患者さんから相談を受ける際、改善にどれくらいの治療が必要なのかと回数などを尋ねられるが、いつも個人差があるので明確な回答はしていない。当院の患者さんの平均的な改善率は出せるが、肉体の構造異常を修復させるような施術ではなく、あくまでも個人の無意識の誤作動記憶を調整する治療なので、そこに齟齬が生じないようにあえてお答えしていない。症状の程度や抱えてきた年数にも関係している傾向はあるが、このように早期に改善するジストニアもあれば、長期にわたって治療が必要な事例もある。

3回目の調整

目安検査で上腕を挙上してもらい、左右比較すると、初検時ほどではないが、若干、挙上スピードが早い感じがする。本人も挙上時に違和感を感じるという。ソフト面の検査をして見ると、8年前の誤作動記憶が示された。部活をしていた時の同級生に対する当時の記憶が影響を及ぼしていた。調整後、肩関節に手を当て、フィンガーテストを行いながら、挙上運動の動きを検査してみると、一定の角度で挙上運動に関係する手動筋なのか拮抗筋の共収縮なのか厳密には分からないが、筋肉の異常緊張が示された。その角度での異常緊張は患者も自覚しており、その感覚は術者と共有することができた。

その後、同じ8年前で、別の誤作動記憶が陽性反応として示された。それを調整すると挙上運動に関係する異常緊張は消失した。患者もその消失を自覚できた様子だったが、まだ違和感があるとのことでさらに検査を進めると、肩関節の内旋の動作での異常緊張を患者とともに確認した。それも内旋運動に関係する手動筋なのか拮抗筋の共収縮なのか定かではないが、調整を行うとその異常緊張も消失した。3回目の調整を終えた時点では、まだ、違和感があるとのことだが、最初よりは良いという。目視検査では初検時よりもかなり改善しているように見えた。

考察

4回目の予約を入れていただいたが、台風などの天候不良で2度キャンセルとなり、その後3ヶ月が経過し来院されていない。3回目の調整からその後の経過をみさせていただきたかったが、恐らく施術の必要がないと判断されたのかもしれない。ジストニアの症状もある程度改善され、ソフトボールの方もキャッチボールなど試したらどうですかと提案させていただいたところだったので、そこまでサポートさせていただきたかった。5年ほど前に発症し、イップスから局所ジストニアに移行した症例だったが、比較的に短期間で症状が改善されたのではないかと思う。どの症状も個人差があるのが当然だが、イップスやジストニアの症状は、程度や経過年数、さらには原因の深さや複雑さによって個人差がある。特にメンタル系が絡んだ症例は、施術者との信頼関係はもちろん、患者さんがその治療法に納得できるかが治療効果を引き出すために大切なポイントにもなるだろう。

2018年12月10日月曜日

痛みの記憶と情動

以前、腰痛や肩の痛みで来院された患者さんが、2ヶ月半ぶりに来院。今回は左肩から腕にかけての痛みがあるとのこと。二週間ほど前に寝違えたようで、その後、痛みが改善しないらしい。前回はアクティベータ療法のみで調整を行い、その後の調子は大分良かったとのこと。

今回もアクティベータ療法で、関節系や筋肉系の陽性反応は改善されたが、首から腕にかけての痛みが改善されないらしい。頚椎部に持続圧を加えて検査を行うと陽性反応が示される。そこで情動関連の文字情報を使ったPCRTの言語加算振動法を行う。4つのキーワードで調整を行なった後、持続圧の陽性反応は消失。患者さんも「あっ痛みが楽になった・・」とその場で症状の改善を自覚していただいた。

今回の施術で痛みに関係していた情動に関係する4つのキーワードを患者さん自身には認識してもらうことはしなかった。痛みの記憶に情動が関連している場合、このように情動の文字情報だけで症状が改善するケースと、陽性反応が示されたキーワードに関係する情動の内容を認識した方がさらに改善度が高まる場合がある。

痛みの記憶に関係する情動の内容を患者さんに認識してもらう場合、質問力のスキルが必要になる。もしも、患者さんにあまり質問されたくない傾向がみられたり、術者が質問力に自信がない場合は、文字情報だけの調整で十分に効果は引き出せる。「情動」が絡むと記憶が長期化されるということは科学的な研究でも証明されている。慢性症状の多くが記憶と情動との関係性で条件付けされており、そのための直接的な調整が根本的な改善につながるだろう。

2018年12月8日土曜日

卓球のイップス

 はじめに
40代男性が卓球のイップスを改善したいとのことで来院。具体的なイップスの症状は、打球した際に手首が上に向いてしまうという。専門用語では肘関節の回外の動きが生じる。この現象は以前からたまにあったが、ここ最近は常に生じてしまい、悪くなっている感じがするらしい。卓球歴は、中学、高校で6年間部活動をしていた。20年ぶりに再開して5年ほど子供達を指導しており、練習では主に球出しをしてあげているとのこと。

初回の施術
関節、筋肉関連の機能異常検査では右の肩関節、肘関節、手関節部、頸椎部に陽性反応が示された。機能異常部位をアクティベータ療法にて調整する。その後、イップスに関係する誤作動記憶検査、最初の検査では、時系列で2歳の時に関係する事柄が示され保留にした。その後、2項目の信念に関係する誤作動記憶を調整。エピソード記憶の陽性反応も調整。

2回目〜4回目
施術前に、施術後に何か変化があったかどうか問診するが、練習をする前から、「また、なりそうな予感がする・・」「意識すればするほど入らなくなる・・」「無意識だと入る」「最初の方だけ、意識したら出る・・」などのフィードバックをいただいた。2回目まではアクティベータ療法との併用で施術を行い。3回目と4回目はPCRTのみで施術を行なった。特に目安検査では、症状の場面を想像しながらの関節可動検査では、肩関節の筋群に異常緊張を認めたので、その異常緊張を目安に検査を行い、関連する誤作動記憶を調整した。

5回目の施術
前回から改善を感じたらしく、「思ったよりも(イップス症状が)起こらなかった・・・」とのフィードバックをいただいた。検査でも、「イップスが起きそうだな・・」という予期不安の想像をすると陽性反応が示されたので、そこから誤作動記憶の検査をして調整を行なった。

6回目の施術
約2ヶ月後に来院され、「大分良くなっている・・」とのこと。患者さん曰く、過去のコーチとして内面的な気づきの調整から良くなってきたような気がする・・・とのコメントをいただいた。しかしながら、原因となる記憶は卓球だけのことでなく、他の記憶も潜在的に関係していたので、そのような複合した記憶が調整された結果である可能性があるとのフィードバックをさせていただいた。

考察
イップスのような症状は、それぞれのスポーツに関係するメンタル面が関係していると思われることが多い。確かにそのスポーツに関係するプレッシャーや人間関係なども関係するが、案外、それ以外のメンタル面の記憶が関係していることがあり、その過去の誤作動記憶を調整すると改善に向かう方が多い。このことは、あらかじめ患者さんにも理解してもらっていないと、不信感につながり治療効果を引き出せないこともあるので、その都度、患者さんに合わせて伝えることが大切だと思う。イップスの症状が改善する過程において、常々思うことがある。それは、無意識的に記憶され、普段意識していないところで誤作動記憶が生じているということである。これは、イップスに限らず他の症状にも言えることだが、先入観を持たずに無意識に聞いていくことが効果を引き出す大切なポイントになる。