2015年8月27日木曜日

全体(脳)と部分(身体)のシステム調和に基づくパフォーマンスの向上

「タイムが順調に伸びてきているので、今度の九州大会には参加できそうです!」

と、報告してくれたのは、水泳部に所属する高校男子生徒。中学の時からファミリーカイロを利用していただいている。勉強もスポーツもまじめに取り組むスマートで素直な好青年という感じ。

中学ではバスケット、高校では水泳部に所属して、当初は、水泳部専属のコーチがいないため、どのようにトレーニングすればいいのか迷いもあった様子。本を読んだり、ビデオを観たりしながら、いろいろと研究されていた。

関節の痛みや筋肉の張りなどを訴えて来院され、その都度、原因を特定して施術をおこなってきた。また、理想のパフォーマンスを特定して実践で試すということを繰り返し、水泳のタイムもだんだんと伸びてきたとの報告をいただいた。

その中でも特に効果的だったのは、メンタル的なサポート。メンタル面といっても、心を強くするなどというような精神論的なことではない。ベストなタイムを得るためのマインド設定やベストな泳ぎを実現させるための全体的なイメージ設定など、ご本人にとってのベストなパフォーマンス達成を心身条件反射療法でサポートさせていただいた。

まず、泳ぎのフォームで問題になったのは、泳ぎ方の教本や雑誌などに影響する技術的なこだわり。この部分的な技術面へのこだわりは、脳に誤作動を生じさせやすく、関節の動きが全体的に調和されずに、痛みなどの症状を生じさせやすい。

これは、水泳に限らずあらゆるスポーツ選手に共通することで、部分にフォーカスした技術面のこだわりは、指導者によっても生じやすい。部分的な技術指導が悪いというのではない。技術を修得する上で時には部分的な指導が必要なこともあるだろう。ただし、「全体」と「部分」との調和が伴うということが重要である。

「全体」と「部分」の調和を言い換えれば、「脳」と「身体」との調和といえるだろう。よくあるパターンは、「全体」よりも「部分」が先行してしまう誤作動である。バランスの良いパターンは、まずは、理想的な全体的なパフォーマンスのイメージが先行して、次に部分的なパフォーマンスが、後から自然についてくるという心と身体の状態である。

例えば、股関節や膝の角度を何度位で動かすなどの部分的なイメージ先行して、全体的な理想の動きのイメージが不明瞭な場合は、脳と身体が調和できずに、関節に傷害を生じやすくなる。人間は、ロボットとは異なり、システム的に統合された生命体である。部分を修正すれば良くなるというものではない。

人間がベストなパフォーマンスを実現するためには「全体」と「部分」を切り離すのではなく、統合的なシステム思考で調和させることが大切であろう。


2015年8月12日水曜日

送球イップスの改善

最近、イップスで来院された患者さんがいます。野球を辞めようかと悩んでいた高校生は、レギュラー競争で、無意識的に現在のポジションを守りたいという心が一つの原因になっていました。もう一人、現在、高校野球部の指導をされている先生は、大学時代のバント処理がきっかけで、自分自身に対して、「チームのために役立つべき」という信念などが関係していました。他にも様々な信念などが心の背後に関係しています。お二人とも経過は良好で、問題なく改善されるでしょう。今までにも多くのイップスの患者さんを診させていただきましたが、まじめな方が多いようです。

送球イップスにも様々なケースがあります。よくあるケースは、遠投は問題ないが、塁間での送球や至近距離でのキャッチボールがうまく投げられなくなるケースです。イップスの患者さんは、数年間悩んだあげく、来院される方が多いようです。また、イップスを改善する専門の指導者もいるようですが、指導を受けても改善されなかったという患者さんもいらっしゃいます。

イップスの改善で大切なことは、肉体だけの問題ではなく、心理的な要因が関係しているということの理解です。心理面の要因とは、一般的に思われている心が弱いと強いとかの問題ではありません。広義的には「こころとからだの関係性」による問題です。狭義的には「誤作動の学習記憶」による問題です。心理学的には「意識と無意識の関係性による誤作動記憶」の問題です。

イップスの患者さんの多くは、発症のきっかけがあります。それを境にして、悪循環を繰り返し、様々な誤作動記憶を積み重ねている方が多いようです。きっかけとは、所属しているチームメンバーとの人間関係だったり、指導者との関係だったり、あるいは、自分自身だけの問題だったりします。また、そのきっかけが、スポーツとは関係のないプライベートなことに関係することもあります。

イップスを改善するためには、心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)のように、心身相関に関連する誤作動記憶に目を向けた治療法であれば本質的な改善が望まれるでしょう。投球フォームや肉体面のバランスばかりに目を向ける指導者や治療者もいますが、そのような表面的なアプローチでは恐らく効果が望めないのではないでしょうか。

また、カウンセリング、あるいはコーチングでメンタル面ばかりに目を向けても時間がかかりすぎるかもしれませんし、イップスとは関係のないメンタル面のケアになっているかもしれません。イップスの改善に大切なのは誤作動を生じさせている潜在的な心の状態をピンポイントで認識することです。

イップスは、無意識的な誤作動記憶の積み重ねによって引き起こされる症状なので、その誤作動記憶を明確にして、施術によってその誤作動記憶を健全な記憶へと段階的に上書きするだけです。イップスは改善が難しい症状ではありません。必要なのは適切な治療法と治療期間です。後は、施術者との信頼関係が、しっかりと構築されていれば徐々に改善されていくはずです。

2015年8月11日火曜日

2015年PCRT中級1のご案内

PCRT研究会代表の保井です。PCRTの中級1が9月6日(日)と7日(月)に開催されます。LCAの講師陣の協力で、充実したプログラム内容がほぼ準備できました。今年から、プロトコルチャートを使ったアプローチの手順を強調しているため、施術の進め方も以前に比べると数段使いやすくなっています。

今回の中級1では、経絡を中心にして、チャクラや肉体内外に関係するアプローチの仕方などをご紹介させていただきます。PCRTのコンピテンシーの一つである「身体をエネルギー体として診る」ということを実践的に学んでいいただける内容です。

医療、健康関係に従事する治療者を大きく分けると、「病理の目」と「感性の目」に大きく分けることができます。人を機械的な目、もしくは病理の知識を備えた目で診るのか、それとも、有機的な目、もしくはエネルギー的な感性を生かした目で診るのか?

私たちの感性には、本来、エネルギー的なバランス異常を感知するセンサーが備えられているはずです。昔の宗教画や仏像などの背景にはオーラのような「エネルギー」が描かれています。昔の人々は、研ぎ澄まされた感性を生かして、そのようなエネルギーを普通に感じながら生活を営んでいたのかもしれません。

現代のようなに知識、情報がありふれた生活の中では、大切な感性を軽視し、退化させて、知識、情報ばかりを頼りにしているようにも感じます。病理学的、あるいは神経生理学的な知識の多くは、科学的、あるいは客観的に証明された結果です。それはとても素晴らしい成果であり、多くの人に支持され高く評価されています。

しかしながら、小宇宙と呼ばれている人間を取り巻く様々な関係性からすると、それらはほんの一部の知識、情報でしかありません。「人はなぜ、病気になり、病気にならないのか?」「昨日まで元気だったのが、なぜ、理由もなく突然体調不良になるのか?」など、本質的に解明されていない課題がたくさんあります。

科学的に証明された知識、情報は、ネットを開けば取り出せる時代です。しかしながら、目には見えないエネルギー的な情報は、ご自身の感性を高めなければ診ることはできません。PCRTの研究会はそのような感性を磨く場でもあります。PCRTの研究会を通じて、エネルギー的な感性に磨きをかけて、さらに多くの人々に貢献できる力を身に着けていきましょう。

それでは、研究会でお会いできることを楽しみにしています。

2015年8月6日木曜日

2015年度ライフコンパスアカデミーパワーアップ研修

 先日、ライフコンパスアカデミーでは、ファミリーカイロプラクティックセンターと志賀島において、AMセミナー、ならびにPCRT研究会などでご協力いただいているインストラクターの先生方と2日間のパワーアップ研修を行いました。

AMやPCRTの実技試験と指導法の統一を確認し合いました。PCRTでは新しく開発した簡便な小脳機能検査法、軽擦法加算振動法、生体反応検査法を使った認知検査などを学びました。生体反応検査法を使ったタイプ別の検査において、それぞれのタイプでチームが支えられているということを確認することができました。

特にコーチング手法を取り入れた、いくつかのトレーニングにおいて、それぞれに深い気づきを得ることができたようです。チームメンバーひとりひとりの信念や価値観を尊重し認め合いながら、チームのゴールと個人のゴールをすり合わせて、LCAが目指す方向性を確認し合うことができました。

長年ご協力いただいている菊地先生が、今年、還暦を迎え、チームでお祝いをすることができました。赤いちゃんちゃんこが良く似合っていました。60歳で赤ちゃんに戻るという意味もあるそうです。研修で遭遇した「素直」というキーワードは、菊地先生の琴線にも触れた様子で、60歳から素直に生きるという気づきを得たのでしょうか? 菊地先生のこれからが楽しみですね。

LCAは今後も、自然の法則に調和した健康と幸せに貢献するために、治療者をサポートし、多くの患者様に貢献できればと願っております。

2015年7月29日水曜日

一般論に基づく、症状を創り出す信念

「骨が変形しているから痛い」「軟骨がすり減っているから痛い」これは、多くの人々が信じている関節痛に関する一般論です。どこまで深く信じているかは人によって様々です。もしも、レントゲン検査、あるいはMRIなどの画像検査で骨や軟骨の変形が発見された場合、その変形が修正されない限り、関節痛が持病になると信じてしまいがちです。言い方を変えると、「画像診断の結果、関節痛が常にあるのが当たり前」という信念体系を持つことになります。

また、「関節の変形は使い過ぎによる」という一般論から関節を使わないようにする一方で、「関節の筋肉を鍛えなければならない」という一般論から運動するという相矛盾した信念によって脳が混乱し、何を信じていいのか分からないとう方も少なくはないようです。

「関節の骨や軟骨がすり減って痛くなる」一般の人にはとても分かりやすい機械論的な理論です。しかし、それをまともに信じてしまうと、誤作動を生じさせる意味づけの「記憶」として脳に定着し、痛み信号を脳で創ることになります。実際に関節変形が直接痛みの原因になっている場合もありますが、それがすべての原因ではありません。関節痛で特に注意が必要なのは「変形」ではなく「バランス」の問題です。

関節痛で特に注目しなければならないのは、筋肉の「オン」と「オフ」のバランスです。関節を支えている一つ一つの筋肉がちゃんと働いているかどうかも大切な要因ですが、その前に全体的に力を入れる筋肉(興奮系=オン)と力を抜く筋肉(抑制系=オフ)のバランスが取れているかどうかはとても重要です。

例えば、膝を伸ばす筋肉は太ももの前にある大腿四頭筋という筋肉、膝を曲げる筋肉は太ももの後ろにある大腿二頭筋という筋肉です。膝を伸ばすときは大腿四頭筋が「オン」になり、膝を曲げるときは大腿二頭筋が「オフ」になります。その逆で膝を曲げるときは大腿二頭筋が「オン」になり、大腿四頭筋が「オフ」になります。この「オン」と「オフ」の絶妙なバランスが崩れると、痛みや関節変形の原因になります。関節痛の多くは、「オフ」ができないこと、すなわち、「力が抜けない」ことが主な原因なります。

ファミリーカイロでは、関節痛の患者さんの多くが、「オフ」(力を抜く)の検査で反応が示され、この検査で反応が示されなくなると、たとえ関節に変形が存在しても症状が改善される方がほとんどです。しかしながら、「関節変形=痛み」という信念体系があると、関節部位からの痛み信号が消えても、脳で創られる痛み信号が存在し続けて、実際に痛みを感じます。その場合、痛みを創る信念体系から痛みを生じさせない健全な信念体系に上書きする治療を行うと、脳で創られる痛み信号が消えていきます。

もしも、無意識的に構築されやすい症状を創り出す信念体系があれば、自分の体や脳の柔軟性を信じられる健全な信念体系へと上書きしていきましょう。





2015年6月23日火曜日

PCRT基礎2の案内

前回の基礎1での懇親会の席で、初めて参加されていた先生方が、「PCRTはすごいですね!」と言ってくださいました。何がすごいのかをお尋ねすると、「いくら神経学的な機能異常を突き止めたとしても、それはあくまでも「結果」であって、その機能異常を引き起こす「原因」があるので、その原因をさらに追究しようとしているところがすごいと思う。」などいろいろなコメントをいただきました。お話を聞いてみると、カイロプラクティックを始め、治療関係の勉強はかなり深くされている様子。そのような本質的な内容を理解してくださることをとても心強く感じました。

前回のPCRTの基礎1では、PCRT検査法の基本となる生体反応検査法や言語神経反射検査法、並びにハード面の主な治療法として、体幹軸や四肢軸、ならびに、脊椎部や四肢部の基本となる部位の加算振動法をご紹介しました。さらに、PCRTハード面調整法の特徴的な概念でもある抑制性イメージ調整法、ソフト面の導入編として、サイクルパターン調整法や基礎感情の導入編、ならびにエネルギー系の施術法としてカラー調整法もご紹介しました。

基礎2では加算振動法の概念を応用した抑制系分野の、体軸、四肢軸の上級編、多岐にわたる関節系の上級編をご紹介します。興奮系分野では、各部位のマッスルテストを使った様々な検査法、筋膜系の調整法。さらに、前庭器官、小脳、脳神経系の調整法。エネルギー系ではブレインマップ調整法、大脳辺縁系領域では、基礎感情の使い方の詳細、大脳皮質系では、意味記憶やエピソード記憶の調整法をご紹介する予定です。

基礎1と基礎2をしっかりとマスターすれば、様々な筋骨格系の症状において、幅広く治療効果を引き出すことができると思います。基礎2では、基礎1に引き続き、チャートの手順に沿って進めることで手法をシンプルにする工夫をしています。それに伴って治療効果が高まるのはもちろん、楽しんで治療を受けてくださる患者さんが増えてきているようです。

先日、マスター認定を修得した先生も、患者さんの数が以前より増えてきたとのことで、大変喜ばれていました。PCRTの基本を着実にマスターすることで、患者さんのニーズに幅広く答えられるという先生方がだんだんと増えてきているようです。

それでは、皆様の研究会へのご参加をお待ちしております。

2015年6月22日月曜日

AMI社主催リーダーシップカンファレンスレポート

2015年6月12日‐13日にAMI社主催のリーダーシップ研修がアリゾナ州のフェニックス市のホテルで開催された。2013年7月にAMI社主催プラットフォーム(プレゼンター)インストラクター特別研修会が開催されて以来、2年ぶりのAMI社主催の研修会。

今回はリーダシップ・カンファレンスと題して、日本を含め、イギリス、オーストラリア、ブラジルからもリーダー達が招待された。日本の代表として招待された私は、ドクター・ファーの許可を得て、国内でご協力いただいている菊地先生、国井先生、土子先生をお誘いして、本研修会に同行していただいた。

初めて招待された1997年のAMI社30周年記念カンファレンスから18年目になる。インストラクターの中では、私もだんだんと古いメンバーの一人になってきた。変わらない古いメンバーがいる一方で、新しいメンバーも入ってくる。毎回、招待を受けるたびに、古いメンバーとの再会と、新しいメンバーとの出会いも楽しみの一つになっている。今回の研修会開催の理由の一つは、ドクター・ジーグラ―という方が新しくAMI社の社長に就任したことである。

ドクター・ジーグラ―は、ノースウエスタン健康科学大学(元ノースウェスタンカイロプラクティック大学)の学長やフットレベラー社の副社長を歴任。20年以上の臨床経験を持ち、その間、サウスダコタ州、スタージス市の市長も務めている。AMI社は、グローバルな発展を目指して、ドクター・ジグラーには大いに期待を寄せているようだ。まだ、社長に就任して5か月足らずではあるが、メンバー全員に気配りしていたのは印象的だった。

初日は、診療記録の取り方やリスクマネジメントなど、保険診療を対象にしたマネジメントに関する講演が行われた。米国以外のドクターにとっては関係の薄い内容だった。二日目は、治療院やセミナーなどに役立つコミュニケーションに関する講義が、カイロ大学で教鞭をとっている二人のドクターによって行われた。私は、以前からコーチングの勉強も継続してきていたので再学習ができ、今後もさらに学習を深めていきたいと感じた。

二日目の後半には、7月ごろより新しく改定されるAMI社のサイト情報が、ITの専門家から報告され、最後に新社長のドクター・ジーグラーからAMのグローバルな広がりや今後のアクティベータの展望が語られた。ドイツでは、整形外科医が斜頸の治療にアクティベータ器を使うことで効果が得られ、AMに関心を寄せているとのこと。また、今後のAMI社は、マッサージセラピーや指圧、ナチュロパス(自然療法士)にも市場を拡大していくとのこと。

病んでいる患者のために、ドクターやセラピストが求めれば、それに応じて臨機応変に市場の流れに沿って行く戦略だ。

日本国内でも10年ほど前から、カイロプラクターのみならず、柔道整復師、鍼灸師、理学療法士など幅広く市場を拡大し、治療院や病院でを多くの患者に貢献していただいている。カイロプラクター以外の治療者を受け入れたAMセミナー開催経験は、ある意味で、日本チームの方が先を進んでいる。当初は他業種拡大に向けて、いろいろと試行錯誤したが、その判断は時代のニーズにマッチしていたということだろう。厳しい認定試験に合格し臨床現場で活躍してくれているカイロプラクターや有資格者の先生方を誇りに思う。

ここしばらくの間、AMI社での研修は、一人で参加することが多かったが、今回、協力スタッフに同行していただだき、とても有意義な二日間の研修を共有することができた。このようにドクター・ファーを初め、AMI社と長きにわたって交流ができるのはとても有難いことであり、不思議なご縁を感じる。この場をお借りして、ANJ、並びにライフコンパスアカデミーのコアメンバー、そして、それを陰で支えてくれている協力スタッフや受講されている先生方には心より感謝の意を表したい。