2018年12月17日月曜日

卓球イップス 動画の影響を受ける

30代の男性が卓球イップスの症状で来院。今まで出会った卓球選手にしてはがっちりした体格だった。見るからにパワーが溢れている感じの一方で優しい顔立ちをしている。症状は5〜6年前から始まったらしい。その頃から自分の理想の卓球ができなくて、悩みが多いとのこと。以前はBランクだったのに現在はDランクに下がっているという。普段の日常生活には支障はないが、特に試合の時には症状が顕著で、経過としては良くなったり悪くなったりしているという。

イップスの症状を抱えている患者さんの場合、肉体的な機能異常に加えて、メンタル面との関係性を調整しなければならないので、時間の都合で二枠の予約を頂いて進めさせていただいている。本症例の患者さんも二枠の予約で初回を含めて、7回調整させていただいた。7回の間に、以前から抱えていた膝の問題も調整させていただき、順調に改善されている。いくつかの過去の誤作動記憶もうまく調整され、ご本人も改善を実感されていた様子。

まだ、調整途中ではあるが、7回目の誤作動記憶の原因が、これから遭遇する可能性のあるパターンだなと感じたのでご紹介したい。本症例では試合の際のパターンと、フォアサーブ、バックハンドが主なイップス症状だったが、ゆっくりとした球を打つ際に手が震えていると周りの選手に指摘されるという。その場面をイメージすると確かに誤作動の陽性反応が示される。

PCRTのプロトコルに沿って検査を進めていくと、大脳皮質系⇨意味記憶⇨情報と示されたので、「その症状の原因の一つで、何か外からの情報を入れることで、その情報を信じていることで影響を受けている可能性があるのですが、何か心当たりはありませんか・・」と質問させていただいた。患者さんはしばらく考えて、「・・・ん、もしかしてこれかな・・」と想像してもらいながら検査をすると、陽性反応が示された。

「それは影響しているようですけど、どんな情報ですか・・」と尋ねると、「卓球の動画です・・・」という。ある卓球の選手の動画のフォームを研究してそれに近づこうとして練習していたが、何か自分には合わないということを何となく気づいていたらしい。最近は動画を簡単に見ることができる時代なので、それを見ながら研究して自分のパフォーマンスを改善しようとしているスポーツ選手が増えてきているようだ。

イップスの原因に関して言えば、以前はコーチ指導による情報が多かったが、これからは動画映像、あるいは指導による情報の影響も増えるのではないかと予測される。コーチからの直接指導、あるいは動画による間接的な指導であれ、その情報が自分にあっているかどうかがとても重要である。「たとえ理想の選手がいいフォームでいい結果を出しているからといって、そのフォームが自分に合っているかどうかは分からない。」ということは理解しておいた方がいいだろう。理想の選手のフォームは参考にしても、そこから自分の合ったフォームを自分で体得することが大切である。

本症例の患者さんは、内面的な心の動きも分かりやすく話してくださり、心身相関の理屈やPCRTの治療理論もスマートに理解される方なので、施術がスムーズに進行している。西洋医学の診断や方法論が主流になっている現状において、このような新しい治療法の理論や意図を理解していただけるのは非常にありがたい。

2018年12月12日水曜日

送球イップスから腕の局所性ジストニア

はじめに

二十代女性、5年ほど前に、ソフトボール部に所属しており、そのころから送球が上手くできなくなっていた。その頃から送球イップスの症状を抱えていたが、引退後も腕をゆっくり上げようとすると、腕が勝手に早く動くようになり、自動販売機で腕を使うときなどには支障があるとのこと。特に意識して何かをしようとしたときに悪化する傾向にあり、だんだんと悪くなってきているような気がするらしい。

目安検査

最初にどのような症状なのか再現してもらう。片方だけ観察すると分かりにくいが、左右、同じスピードで腕を挙上してもらい比較すると、明らかに右腕が早く挙上してしまう。本人が言われるように、勝手に早く腕が動いてしまう症状がある。珍しい症例かもしれないが、局所性ジストニアで経過から予測すると心因性ジストニアの疑いがある。また、仰向けに寝た状態では症状が再現されないが、座位や立位姿勢では症状が再現されるのもジスニア症状の特徴の一つである。調整前の機能評価では現在の症状がPRTで9レベル、メンタル系がPRTで9レベルだった。

1回目の調整

最初はアクティベータ療法で、ハード面の検査調整を行う。脊柱と右肩関節関連に陽性反応。右小脳機能に陽性反応が示された。PCRTのソフト面調整では大脳辺縁系レベルで2つのキーワードが示され、それに関連する内容を質問して誤作動記憶を引き出し調整する。調整後は、現在の症状はPRTで5レベル。メンタル系では1レベルまで下がった。施術後に問題の動作を試してもらったが、顕著な変化は見られなかった。

2回目の調整

最初に1回目の施術からジストニアの症状がどのように変化しているのか試してもらった。1回目と同様に顕著な変化は見られなかった。症状の機能評価は9レベル。メンタル系が8レベル。アレルギー系が9レベル。アレルギー系は前回反応が示されなかったので、「なぜ?」と内心思った。

3層構造のチャートで検査を進めていくと「聴覚」→時系列→過去→8年前→お父さんの声で反応が示された。もしかすると、これがアレルギー系(五感適応系)の反応なのかなと思った。でも、なぜ、前回は示されなかったのだろうと考えると、前回はお父様が付き添いで一緒に来られていたので、無意識がその部分を解放せずにブロックしていたのだろうと納得した。お父さんに関係する声の内容は2つあり、過去の誤作動記憶が陽性反応として示されていたなので調整を行なった。

その後、検査を進めると、「執着心」に関係する内容が2つほど示されていたので、その誤作動記憶の調整も行なった。施術後の目安検査でメンタル系はレベル1まで下がった。調整後の腕の動作を確認すると、なんとほとんど左右の違いが分からないくらいに改善していた。「え、こんなに早く改善するの・・・」と内心、思った。なぜなら、その症状は5年ほど継続していたイップス、ジストニアである。ご本人も喜ぶというか、不思議に感じている様子だった。

ジストニアの患者さんから相談を受ける際、改善にどれくらいの治療が必要なのかと回数などを尋ねられるが、いつも個人差があるので明確な回答はしていない。当院の患者さんの平均的な改善率は出せるが、肉体の構造異常を修復させるような施術ではなく、あくまでも個人の無意識の誤作動記憶を調整する治療なので、そこに齟齬が生じないようにあえてお答えしていない。症状の程度や抱えてきた年数にも関係している傾向はあるが、このように早期に改善するジストニアもあれば、長期にわたって治療が必要な事例もある。

3回目の調整

目安検査で上腕を挙上してもらい、左右比較すると、初検時ほどではないが、若干、挙上スピードが早い感じがする。本人も挙上時に違和感を感じるという。ソフト面の検査をして見ると、8年前の誤作動記憶が示された。部活をしていた時の同級生に対する当時の記憶が影響を及ぼしていた。調整後、肩関節に手を当て、フィンガーテストを行いながら、挙上運動の動きを検査してみると、一定の角度で挙上運動に関係する手動筋なのか拮抗筋の共収縮なのか厳密には分からないが、筋肉の異常緊張が示された。その角度での異常緊張は患者も自覚しており、その感覚は術者と共有することができた。

その後、同じ8年前で、別の誤作動記憶が陽性反応として示された。それを調整すると挙上運動に関係する異常緊張は消失した。患者もその消失を自覚できた様子だったが、まだ違和感があるとのことでさらに検査を進めると、肩関節の内旋の動作での異常緊張を患者とともに確認した。それも内旋運動に関係する手動筋なのか拮抗筋の共収縮なのか定かではないが、調整を行うとその異常緊張も消失した。3回目の調整を終えた時点では、まだ、違和感があるとのことだが、最初よりは良いという。目視検査では初検時よりもかなり改善しているように見えた。

考察

4回目の予約を入れていただいたが、台風などの天候不良で2度キャンセルとなり、その後3ヶ月が経過し来院されていない。3回目の調整からその後の経過をみさせていただきたかったが、恐らく施術の必要がないと判断されたのかもしれない。ジストニアの症状もある程度改善され、ソフトボールの方もキャッチボールなど試したらどうですかと提案させていただいたところだったので、そこまでサポートさせていただきたかった。5年ほど前に発症し、イップスから局所ジストニアに移行した症例だったが、比較的に短期間で症状が改善されたのではないかと思う。どの症状も個人差があるのが当然だが、イップスやジストニアの症状は、程度や経過年数、さらには原因の深さや複雑さによって個人差がある。特にメンタル系が絡んだ症例は、施術者との信頼関係はもちろん、患者さんがその治療法に納得できるかが治療効果を引き出すために大切なポイントにもなるだろう。

2018年12月10日月曜日

痛みの記憶と情動

以前、腰痛や肩の痛みで来院された患者さんが、2ヶ月半ぶりに来院。今回は左肩から腕にかけての痛みがあるとのこと。二週間ほど前に寝違えたようで、その後、痛みが改善しないらしい。前回はアクティベータ療法のみで調整を行い、その後の調子は大分良かったとのこと。

今回もアクティベータ療法で、関節系や筋肉系の陽性反応は改善されたが、首から腕にかけての痛みが改善されないらしい。頚椎部に持続圧を加えて検査を行うと陽性反応が示される。そこで情動関連の文字情報を使ったPCRTの言語加算振動法を行う。4つのキーワードで調整を行なった後、持続圧の陽性反応は消失。患者さんも「あっ痛みが楽になった・・」とその場で症状の改善を自覚していただいた。

今回の施術で痛みに関係していた情動に関係する4つのキーワードを患者さん自身には認識してもらうことはしなかった。痛みの記憶に情動が関連している場合、このように情動の文字情報だけで症状が改善するケースと、陽性反応が示されたキーワードに関係する情動の内容を認識した方がさらに改善度が高まる場合がある。

痛みの記憶に関係する情動の内容を患者さんに認識してもらう場合、質問力のスキルが必要になる。もしも、患者さんにあまり質問されたくない傾向がみられたり、術者が質問力に自信がない場合は、文字情報だけの調整で十分に効果は引き出せる。「情動」が絡むと記憶が長期化されるということは科学的な研究でも証明されている。慢性症状の多くが記憶と情動との関係性で条件付けされており、そのための直接的な調整が根本的な改善につながるだろう。

2018年12月8日土曜日

卓球のイップス

 はじめに
40代男性が卓球のイップスを改善したいとのことで来院。具体的なイップスの症状は、打球した際に手首が上に向いてしまうという。専門用語では肘関節の回外の動きが生じる。この現象は以前からたまにあったが、ここ最近は常に生じてしまい、悪くなっている感じがするらしい。卓球歴は、中学、高校で6年間部活動をしていた。20年ぶりに再開して5年ほど子供達を指導しており、練習では主に球出しをしてあげているとのこと。

初回の施術
関節、筋肉関連の機能異常検査では右の肩関節、肘関節、手関節部、頸椎部に陽性反応が示された。機能異常部位をアクティベータ療法にて調整する。その後、イップスに関係する誤作動記憶検査、最初の検査では、時系列で2歳の時に関係する事柄が示され保留にした。その後、2項目の信念に関係する誤作動記憶を調整。エピソード記憶の陽性反応も調整。

2回目〜4回目
施術前に、施術後に何か変化があったかどうか問診するが、練習をする前から、「また、なりそうな予感がする・・」「意識すればするほど入らなくなる・・」「無意識だと入る」「最初の方だけ、意識したら出る・・」などのフィードバックをいただいた。2回目まではアクティベータ療法との併用で施術を行い。3回目と4回目はPCRTのみで施術を行なった。特に目安検査では、症状の場面を想像しながらの関節可動検査では、肩関節の筋群に異常緊張を認めたので、その異常緊張を目安に検査を行い、関連する誤作動記憶を調整した。

5回目の施術
前回から改善を感じたらしく、「思ったよりも(イップス症状が)起こらなかった・・・」とのフィードバックをいただいた。検査でも、「イップスが起きそうだな・・」という予期不安の想像をすると陽性反応が示されたので、そこから誤作動記憶の検査をして調整を行なった。

6回目の施術
約2ヶ月後に来院され、「大分良くなっている・・」とのこと。患者さん曰く、過去のコーチとして内面的な気づきの調整から良くなってきたような気がする・・・とのコメントをいただいた。しかしながら、原因となる記憶は卓球だけのことでなく、他の記憶も潜在的に関係していたので、そのような複合した記憶が調整された結果である可能性があるとのフィードバックをさせていただいた。

考察
イップスのような症状は、それぞれのスポーツに関係するメンタル面が関係していると思われることが多い。確かにそのスポーツに関係するプレッシャーや人間関係なども関係するが、案外、それ以外のメンタル面の記憶が関係していることがあり、その過去の誤作動記憶を調整すると改善に向かう方が多い。このことは、あらかじめ患者さんにも理解してもらっていないと、不信感につながり治療効果を引き出せないこともあるので、その都度、患者さんに合わせて伝えることが大切だと思う。イップスの症状が改善する過程において、常々思うことがある。それは、無意識的に記憶され、普段意識していないところで誤作動記憶が生じているということである。これは、イップスに限らず他の症状にも言えることだが、先入観を持たずに無意識に聞いていくことが効果を引き出す大切なポイントになる。

2018年12月7日金曜日

慢性症状はなぜ治りにくいのか?(動画)

慢性症状と誤作動記憶の関係性についての動画です


先日、脳神経科学の研究者である奥山さんと芥川賞作家の又吉さんがNHKの番組で記憶の書き換えについての研究成果を紹介していました。PCRTの誤作動記憶の調整にとても関係する研究内容でした。

10年以上も前から身体に不調を引き起こす誤作動記憶の概念をPCRT研究会で伝えてきました。あくまでも臨床で培った仮説でしたが、その仮説が段々と科学的な証明へと近づいていくのを感じています。

慢性症状は、「記憶」というよりも、身体の「構造異常」の問題だと考えるのがまだまだ一般的ですが、「慢性症状の場合は、『記憶』を調整する」という考え方が社会に広まると、どれほど多くの人々が慢性症状から解放されるか計り知れないと私は考えています。

今回「慢性症状がなぜ治らないのか?」という動画をLCAのスタッフに協力していただいて作成しました。もしかすると、一般の人には難しいと感じる人もいるかもしれませんが、繰り返し見ていただくことで、理解が深まると思います。

PCRTを臨床で使っている先生方には是非患者教育に活用していただき、「誤作動記憶」の調整を啓蒙していただければと思います。

将来は「慢性症状なら、誤作動記憶の調整をした方がいいよ!」あるいは、「症状の記憶を書き換える調整をしたら治るよ!」ということがさらに一般化する時代になることを願っています。

2018年12月4日火曜日

自然な顔の美しさ

ニュースレター2018.12-2019.01

人の顔は変わる?長年の臨床経験の中で、毎日患者さんに接していると、顔の表情を伺う観察力も自然に鋭くなってきます。それは経験を積んだ治療者の脳に蓄積された数十年間のデータに基づくもので、数字では表せない感覚的な能力です。最初に来院される患者さんの多くは、肉体的にも精神的にも問題を抱えています。その問題が徐々に改善されるごとに、患者さんの表情が変化していく場面に遭遇します。

「あっ、あの方の顔が変わってきた・・」あるいは「あの人の人相が変わってきた・・」中には、「本当はこんな顔をしていたのか?」と、気づかされる場面があります。肉体的にも精神的にも様々な症状が改善されると、暗いイメージの表情から明るいイメージに変化してくる患者さん、何か不満をかかえている表情から感謝が見え隠れする表情へと変化してくる患者さんなど、本来の美しい顔に遭遇する瞬間があります。

継続的に来院して下さっている患者さんの表情の変化は、サポートさせていただいている治療者にとっては醍醐味でもあり、喜びでもあります。「心と身体の関係性」、あるいは「意識と無意識の関係性」を調整させていただいている患者さんの多くは、自分でも認識し難い心の奥に隠れた自分に遭遇することもあります。その時、ありのままの自分を優しく包み込んであげることで、何かが変わるようです。

特に顔の表情に変化が現れてくるのは、「意識」と「無意識」が調和してくる時です。自分の心の「建前」と「本音」が調和してくるときといってもいいでしょう。もしかすると、あまり見たくない自分の内面を認めてあげたときかもしれません。あるいは、「そんな自分がいてもいいのだ・・」「嫌な自分にも何か意味があるのだ・・」などと、無意識の自分の存在を認めてあげた時に、未来に繋がる心の成長が育まれているように感じられます。

美しく見せたいという願望は年齢や性別を問わず多くの人にあると思います。女性であれば、お化粧や美顔マッサージなどを施すかもしれませんし、表情筋のトレーニングをされている方もおられるかもしれません。どの手法もその方に合っていれば有効な手段になると思います。このような美しさを保つ方法には大きく分けて「外から働きかける方法」と「内から働きかける方法」があります。

内面に働きかける方法とは、前述した「意識」と「無意識」を調和させる方法です。当院で行なっている「身体に聞く検査」を繰り返し受けていると、だんだんと自分の無意識の心の点と点が繋がって、線となり、さらには面となって全体像が見えてくるようです。複数の表情筋は、意識でコントロールできる部分もありますが、多くは無意識で作り出され、瞬間、瞬間にその表情が印象付けられます。意識と無意識がつながることで、自然の笑顔、自然の仕草が表現され、それが美しい顔として私たちの記憶に残っていくのだと思います。

この自然体の顔の美しさは、年齢や性別を問わず、善悪を超えた調和の美しさといってもいいのではないでしょうか?その美しさは言葉では言い表し難いものがあるように思います。脳の神経回路が常に変化しているように、いつからでも顔の表情は変化します。自分らしい自然な美しさを育んでいきましょう。

2018年12月3日月曜日

ファミリーカイロプラクティックセンターの24周年

先日、ファミリーカイロプラクティックセンターがお陰様で24周年を迎えました。多くの患者様にご支援いただいたことはもちろん、影ながら支えてくれたスタッフに深く感謝しております。

当院の施術法は開業当初から常に進化し続けております。治療法に対する考え方や手法が先に進みすぎているようで患者様にご迷惑をお掛けすることも多々ありましたが、最近ではそれぞれの患者様のニーズに合わせた治療法を提供できるようになってきました。

今後も自然治癒力を最大限に引き出すための治療法の研究を積み重ねて、皆様方の健康管理のお役に立つことができればと願っております。