2019年6月14日金曜日

関節痛の施術の本質は何か?


例えば、可動域の広い肩関節や股関節に左右差がある場合、それは、器質的(構造的)なのでしょうか?それとも機能的なのでしょうか?

もしも、その原因が機能的なものであれば、多くの場合、関節の可動に伴って「痛み」などの症状を伴うことが多いようです。

もしも、その原因が器質的なものであれば、骨の変形や筋肉の拘縮などによる構造的な制限によって可動域は制限されますが「痛み」などの症状はほとんど伴ないません。

私たちのような代替医療の治療院に来院される患者さんの多くは、構造的な問題ではなく「機能的な問題」を抱えて来院されていることが多いです。もちろん、患者さんは「機能異常を治してください・・・」といって来院されるわけではなく、病院で治らなかったから来院される方がほとんどです。よって、私たち代替医療の治療者は、病院の医師のような診方ではなく、機能的な問題を分析できる知識や技術をもたなければなりません。

もしも、構造的な問題であれば、病院で明らかになりますが、微妙な機能的な問題の特定は病院では明らかにならないことが普通です。我々の治療院に来院する多くの患者さんは、病院での検査では痛みに関連する原因が見つからないまま、痛み止めや消炎剤などの対症療法を受けて、症状が改善されずに来院されます。

痛みをかばってまともに歩行できないなどの機能異常は病院でも明らかですが、痛みを引き起こしている機能異常の特定までには至りません。病院で改善されない肩関節痛、膝関節痛、股関節痛の患者さんの多くは、機能異常から生じています。なぜ、そのように言い切れるのかというと、臨床現場で多くの関節痛の患者さんを治療させていただいて、控えめに言っても約9割以上の患者さんが、治療後には症状の軽減、消失を体感されているからです。

多くの症例において、症状を伴う関節には必ずと言っていいほどマッスルテストにおいて機能異常が確認されます。施術によって機能異常が改善されると、多くの症状は軽減、消失します。症状の程度によっては炎症症状が強い場合、あるいは痛みの記憶が残りやすいなどで、施術後すぐに改善を感じられない患者さんも少なからずいますが、ほとんどの患者さんが改善を体感されます。

さて、施術では何をしているから機能異常が改善されるのでしょうか?

関節痛を軽減するための施術法はたくさんあります。各種理学療法、鍼灸、カイロプラクティックなど様々な療法がありますが、本質的には何をしているのでしょうか?関節を調節する、循環を良くする、筋肉をほぐす、気の流れを良くするなど様々な目的で痛みのある関節に施術を施すかもしれません。

もしかすると、施術目的など考えずにハウツウ的に施術を行なっているかもしれません。

例えば、「関節のズレを治すために矯正する」という目的をもっている治療者がいる場合、構造的な関節のズレは治せるのですか?もしも、機能的に関節のズレが生じているのであれば、何がそのズレを引き起こしているのでしょうか?と、私は質問するかもしれません。

もしも、「筋肉の緊張や機能異常がから生じています・・・」という答えが返ってきたり、筋肉をほぐす目的で施術をしている治療者がいる場合、「筋肉の機能異常はどこから生じているのでしょうか」と、私は質問をするかもしれません。

もしも、「筋肉の機能異常は神経系の機能異常から生じています・・・」という答えが返ってきたら、その神経系の機能異常はどこから生じていますか?とさらに質問するでしょう。多くの治療者はここから先の答えを持ち合わせていないか、分かっていてもそのための直接的な施術法には及ばないかもしれません。

私は長年の臨床を通じて筋肉の機能異常は、単に神経系の機能異常だけでなく、東洋医学で云われている経絡のエネルギーブロック、さらには神経系や経絡などに関係する生体エネルギーブロックを繰り返し継続させる脳の誤作動記憶(プログラム化)だと確信しています。生体エネルギーブロックや記憶は電気信号のように目には見えない「エネルギー情報伝達」のブロックです。私たちはそのような目には見えない電気信号のようなエネルギー情報伝達のブロックを調整して症状の改善を促しているのです。

また、その「エネルギー情報伝達」の信号は、肉体内の働きだけでなく、心の動きも含まれます。意識的にも無意識的にも心が動けば脳や神経系や経絡に電気信号、すなわち「エネルギー情報伝達」が生じます。最近ではストレスが腰痛や関節痛などを生じさせるということは、テレビ番組でも取り上げられています。明らかなストレスが症状に関連することもありますが、多くの場合、症状に関係するような心の問題の多くは無意識的で、普段認識していない心の動きでありその記憶です。

私たちは身体に影響を及ぼすような記憶を「誤作動記憶」と呼んでいます。肉体内の生体エネルギーブロックを消去することで多くの関節痛は改善されますが、慢性的に症状がぶり返す場合は、脳の誤作動記憶の調整が必要です。脳の誤作動記憶の調整に伴って慢性症状も改善されます。対症療法的な施術で改善されない場合は、さらに原因を追求することが必要だと私は常々考えています。そのことが施術の本質を追求することにつながり、延いては患者さんへの貢献につながると信じています。

2019年6月13日木曜日

人の「記憶」はあてにならない


先日、AMセミナーのインストラクターミーティングで、一人のインストラクターから話を聞いて驚いた。そのインストラクターによると、ある受講生が通常のAM手順を行わずに、3箇所ほど検査をして、陽性反応があった箇所を続けて調整を行なっていたという。手順が違っていたので、丁寧に指導したところ、その受講生はそのように習ったというらしい。誰から習ったのかと尋ねると、代表である私から習ったというのです。

私はそのことを聞いて呆気にとられました。私は、日本でAMI社公認セミナーを始めたインストラクターとして18年目になりますが、そのような指導をしたことは一度もありません。むしろ、そのような誤った手順で行なっている受講生に指導をしたことはあっても、それは基本から外れているのであり得ないし、そのようにしてはいけない理由も伝えています。

なぜ、そのように先に何箇所も検査をして、反応があった箇所を連続して矯正してはいけないのか?AMが提唱している理論をご紹介しましょう。AMI社公認のAMセミナーでは手順として「下から上に」向かって検査と調整を行います。

「上から下」ではなく、なぜ「下から上」なのか?それは重力との関係性を考慮しているからです。人間の活動は常に重力に逆らって行われます。したがって、下の土台がしっかりと安定していなければ、上のバランスに問題が生じます。家を建てる際に土台が不安定だと家は崩れやすくなるのと同じ理屈です。

次に、なぜ、最初に数カ所検査をして、陽性反応の箇所をまとめて調整してはいけないのか?それは、最下位の一ヶ所目を調整した場合、上の陽性反応部位が連動して調整される場合がある。あるいは、調整したことによって、異なる部位に陽性反応が生じる可能性もあるからです。

AMでは出来るだけ少ない箇所の調整を推奨しています。それは、調整箇所を最小限に止めることで脳・神経系が混乱せずに治そうとする力(自然治癒力)が効果的に発揮しやすいという理屈です。コンピューターを使いすぎるとパフォーマンスが低下するという現象にたとえて説明しています。

以上の理論は、セミナーのマニュアルにはないので毎回説明しているわけではありませんが、受講生からの質問にはいつもこのようにお答えさせていただいています。おそらく私の伝え方が不十分だったので、今回のような誤解が生じたのかもしれません。

「人の記憶はあてにならない」ということは、最近の脳科学の研究でも証明されていますが、このようなことが起きると、伝え方には十分に配慮しなくてはならないと改めて考えさせられます。記憶は後で入ってきた情報や、心理状態の影響を受けて刻々と姿を変えてしまうということがいくつかの研究で明らかになっています。

今回の受講生に限らず、伝言ゲームのようにある事柄が歪んで伝えられているということは指導者として経験することです。そのような事実も含めてさらにセミナーにおける学習方法をさらに工夫する必要があります。また、人の記憶はウソをつくが、人の行動はウソをつかないということも含めて指導者としてよく人を観察しなくてはならないと思いました。

2019年6月5日水曜日

お母さんと乳幼児の調整

先日、20代後半のお母さんと生後半年の娘さんが、福岡の実家への帰省に伴って来院されました。お母さんは8ヶ月ほど前の妊娠中にも帰省された時に来院してくださり、調整をさせていただきました。生後半年の娘さんは、お母様の身体を通じて生体エネルギーのバランスを検査しました。主な筋骨格系の生体エネルギーブロックとして、右小脳の機能異常の反応が示されました。

お母様はお子さんの行動をよく観察しているようで、寝返りが左側にしかできないとか、ズリバイの際に右足に力が入りにくいという左右差を以前から観察されていたとのことでした。恐らく、右小脳機能異常から生じる右側の上肢、下肢の微妙な筋肉の機能低下が続いていたのではないかと推測できました。また、右側の髪が生えにくいという状態もあり、動きの偏りによって結果的に生じていたかもしれません。また、咳も気になるとのことで、検査を行いアレルギー関連の誤作動を調整しました。

次にお母さんのバランス検査をすると、筋骨格系全体に機能異常部位が多数示されました。筋肉系や関節系に加えて、身体と心との関係性による誤作動も調整しました。初めてのお子さんを授かって、色々大変だろうと思われましたが、弱みを見せずに淡々と子育てをされている様子が伺えました。

本来であれば、継続的に施術をした方がいいのですが・・・同じような施術をしてくれる治療者をご紹介させていただいてはいますが、そこも気軽に通院できるところではないとのことで致し方ないところではあります。お子様の健康面で色々と気になることもあるかと思いますが、基本的に乳幼児の成長は著しく、以前に気になっていた体調不良も成長に伴って自然に改善することも多くあるようです。

お子様の健康は、いつも寄り添っているお母様の体調に左右されやすく、メンタル面も含めてお母様の健康状態がお子様に影響を及ぼすこともあります。一人で頑張り過ぎずに、頼れる人には頼ってゆとりを持って子育てを楽しんでいただければと思います。また、次回の帰省の際には、調整させていただければと願います。

以下、患者様から感想のメールをいただきました。ありがとうございます。

感想
今回、妊娠中にも調整して頂いていたこともあり、産後の調整に娘と共に2度伺いました。
まず母である私は、初めに全体のバランスを確認し、全体的にガタガタになっていたことを自覚しました。自覚すると母としてしっかりしなければと力んでいたものがすっと抜けて、立ち上がるときに腰が抜けるほどでした。
2
度目には、長く続いていた腰痛をメインに診て頂きました。無意識ながら自尊心があると分かり、その原因が判明すると、痛くて時間がかかっていたのが嘘みたいにすんなりと立ち上がることができました。
ただの産後の不調だと思って軽く見ていましたが、自覚のないことも原因が分かることで痛みが和らぎ、気持ちの面も軽くなりました。
また生後半年になる娘は、初回なので全体のバランスを確認して頂きました。親として気になっていた寝返りやズリバイの時の偏った方向や利き足、髪の毛の生えない部分にはブロックが確認されました。私がそういうこともあると自覚することで、短期間でブロックには改善がみられました。
2
度目は、空咳が気になっていたので診て頂くと、抱っこの際に触れる私の服の素材に起因するということでした。しばらく気をつけようと思います。
そんな繊細な娘ですが、不思議なことにリラックスした状態で診療され、泣きもしませんでした。
妊娠中から産後、さらに娘と、短時間の治療ではありますが、自分では分からない原因を見つけて向き合い、症状を軽くすることができ、感謝しています。ありがとうございました。

2019年6月2日日曜日

運動や仕事などにおける「パフォーマンス低下」

あなたの人生で、こんな経験はありませんか?「今まで上手くできていた〇〇が、なぜか今まで通りにできなくなった・・」、「今まで〇〇がスムーズに進んでいたのに、なぜかやる気が起きなくなった・・」「練習のときには問題ないが、いざ本番になるといつものような力が発揮できない・・」など。身体の不調に連動して運動や仕事などのパフォーマンスが低下するという場合も少なくはありませんが、身体の不調は感じていないのになぜか運動や仕事のパフォーマンスが低下していたことがあるという経験は多くの人にあるようです。このような原因不明の「パフォーマンス低下」は、単に精神面が弱いといった精神論の問題ではないことが多いようです。

運動や仕事などのパフォーマンス低下で相談を受けて施術を行うと、ほとんどの患者さんは本来のパフォーマンスを取り戻すことができているようです。一体何が原因なのでしょうか?それは、個人によって様々ですが、一括りにいうと「脳の誤作動記憶」です。私たちの脳は約千億もの神経細胞からなる複雑で巨大なネットワークでプログラム化され、運動や仕事のための様々な情報を入力して学習と記憶を繰り返し、様々なパフォーマンスが自動的に出力できるよう機能しています。もしも、本来機能するはずのパフォーマンスを制限するような誤作動記憶が脳で無意識的に構築されると、脳の機能が制限されてパフォーマンス低下につながります。

身体の痛みやコリ、違和感などの身体的不調は、身体が訴えているサインです。施術経験のある方であれば、調整すればすぐに改善されると思っていただける方が多いかと思いますが、パフォーマンス低下の場合、それが施術の対象になるのか否かは分かりにくいところかもしれません。一つの目安として、「今まで当たり前の様に出来ていたことができなくなった・・」ということを感じましたらご相談ください。「身体に聞く検査」をすれば、それが「脳の誤作動記憶」によるパフォーマンス低下なのかどうかがすぐに分かります。

「脳の誤作動記憶」が過去のトラウマや無意識的なストレス、人間関係などに関係しているかもしれません。特徴として意識的にはほとんど気にしていないが、よくよく考えると関係しているかもしれないというような内容の記憶が多いようです。施術によってパフォーマンス低下が改善された患者さんの多くが、単にそのことだけでなく他のことにも波及してプラスの効果を感じてくださる方が多いようです。簡単に「年のせい・・」などと諦めないで、思い当たることがありましたらお気軽にご相談ください。


2019年5月23日木曜日

「素直さ」は成長の源

先日、PCRT基礎2のセミナーを終えて色々な気づきがありました。受講生はいつものように臨床経験が豊富な方から少ない方まで幅が広く、できるだけ多くの受講生に分かりやすく理解してもらうために、基礎知識から専門知識まで広く網羅した内容になります。そのような幅の広さから、ある先生にとっては膨大な知識になり、ある先生にとっては丁度良い内容になったのかもしれません。このような形式のセミナーであるため繰り返し受講していただくよう勧めています。そして、繰り返して受講されている先生は着実に内容を理解して臨床現場で使えるようになっているようです。

私は長きに渡って、このような幅広い受講者を「蟻の目」の視点で直接ご指導させていただいたり、先生方の上達ぶりを年単位で客観的に「鷹の目」の視点で観察させていただいたりする立場にあります。そのような立場で観察していると、上達が早い人と、遅い人の違いが見えてきます。さて、その違いは何でしょうか?一言で言うと、それは「素直さ」にあると思います。経営の神様といわれる松下幸之助氏が「一流の人たちの共通項は素直な心を大事にする」というような内容を述べていたのを思い出します。

かれこれ20年ほど近い経験を振り返ると、やはり素直な人は成長が早いように感じます。「素直な人」とは、単に「イエスマン」や「騙されやすい人」とは異なります。「素直な人」は、しっかりした自分の考えを持ちつつも相手の立場になって、相手の心をしっかりと受け止めようとします。デモや実技の際においても、しっかりと見て真似ようとしますので、吸収が早くスムーズにできるようになってきます。つまり、「素直に学んで素直に真似ている」のです。模倣から始まって、最終的には自分のモノにしていくわけですが、言い換えると、真似が下手な人は上達するのに時間がかかりますし、その背後にある心の制限が邪魔をしているのかもしれません。

素直でない人は、見て習うというよりも理屈(頭)で習おうとするので、自分が信じている理屈が先行しすぎて、批判的に見てしまいます。結果的に柔軟性が欠けてしまうので技術をスムーズに習得することができなくなります。また、アドバイスをすると、あれこれと言い訳をして理屈を言う傾向があります。PCRTセミナーは常に進化し続けていますので、手法や手順が変化することがあります。素直な人は、過去の手法や手順は尊重しながらも、進化した手法や手順を素直に学ぼうとして自らも進化しようと努力します。一方、素直でない人は、過去に身につけた手法に囚われて、進化した手法を身に付けることに抵抗し自らの成長にブレーキを掛けてしまいます。

「ハイハイ」と素直に受け止めているようで、実は心から素直に受け入れていないという人もいます。それは、その人の実技を見ていると読み取れます。何か頑なに信じているモノがあると、それが足かせになって、新たな技術が入ってこなくなるようです。我々治療者の仕事には常に「柔軟性」や「応用力」が求められます。毎日の臨床で同じ患者さんは来院しませんし、一人の同じ患者さんでも次の来院日には変化がありますので、その変化に対しての「応用力」が求められます。

過去に身につけた技術技能は捨てるモノではありません。身体に身に着いた技術は身体が覚えているので捨てたくても捨てられないモノです。新しい技術技能を身に着けることで、身につけた技術を捨てるのではないかと錯覚しがちですが、むしろ新しい技術を身に着けることで、過去の技術が柔軟に修正され磨きがかかってきます。そして、新しい技術を積み重ねることで臨床においても柔軟性が養われるはずです。理屈よりもまずは結果を素直に受け入れることが肝心であり、その結果を引き出す技術を素直に受け入れることで成長が促されるのだと思います。年齢とともに素直さがなくなってくるとも言われていますが、何歳になっても「素直さ」は仕事に限らず人生を豊かにしてくれる大切な心の姿勢だと思います。「素直さ」は成長の源になるようです。


2019年5月17日金曜日

「がんが自然に治る生き方」ケリー・ターナー著を読んで


現代医学では「ガン」のはっきりした原因は分かっていませんが、対症療法として外科手術、抗ガン剤や放射線療法などが推奨されて、根本的に治すというよりも少しでも症状を軽減、あるいは延命のための処置が施されます。

現代医学だけを信じている人たちにとってはそれ以外の選択肢は考えられないでしょうが、代替療法でガンを治したという人は確かに存在しています。そのことに関連する本は、私の知る限りでは2〜30年以前から医師や代替医療の治療者によって著述されています。

今回ご紹介させていただくガン関連の本で興味深いところは、医師や治療者という立場ではなく、研究者という立場で客観的な調査をした観点からガンが自然に寛解した患者を対象にリサーチしているところです。

研究者であるターナー氏は、「治った」人についての1000件以上の医学論文を精査した後、劇的な寛解を遂げた20人にインタビューし、「あなたはなぜ自分が治癒したと思うか」を直接聞いたといいます。また、世界中を旅して回り、代替医療の治療者50人にインタビューをしました。

劇的な寛解について記した医学論文を1000本以上分析して、博士論文の研究を終えてからもさらにインタビューを続け、その対象者は100人を超えました。ターナー氏は質的分析の手法で症例を詳細に分析し、劇的な寛解において重要な役割を果たしたと推測される要素が75項目浮かび上がりました。さらに調べると、上位9項目は、ほぼ全てのインタビューに登場していることに気づいたといいます。

その9項目とは以下の通りです。

1.     抜本的に食事を変える
2.     治療法は自分で決める
3.     直感に従う
4.     ハーブとサプリメントの力を借りる
5.     抑圧された感情を解き放つ
6.     より前向きに生きる
7.     周囲の人の支えを受け入れる
8.     自分の魂と深くつながる
9.     「どうしても生きたい理由」を持つ

この9つの項目には順位はなく、ターナー氏が話を聞いた劇的寛解の経験者のほぼ全員が、程度の差はあれ9項目ほぼ全てを実践していたといいます。私は「ガン患者」を専門に施術を行っている治療者ではありませんが、多くの慢性症状を抱えた患者さんの施術をさせていただき、慢性症状が改善される人たちの多くが上記の9項目に一致しているように思います。そして、これらの9項目すべては、食習慣をかえる覚悟をすることも含めて「心」が関係しています。

私の臨床経験を振り返ると、自分の感覚を重視して治療法を選択するよりも頭で治療法を選択する人達、すなわち自分の直感を信じるというよりも、知識やデータ重視、つまり科学重視になったり、権威者重視になったりする人たちはこの項目には当てはまらないと思います。おそらくご自分の「内なる心」と向き合ったり、心から生活習慣を変革したりするといったことはせずに、科学重視の現代医学の医師にお任せすることになると思います。

「どうしても生きたい理由」を持つというのは、ガンが完治した後、どのように生きたいかという心のそこから湧き上がってくる明確な理由がある人たちです。ややもすると、ガンと闘うことが人生の目的かのようになってしまったり、ガンであるが故に心地よい人間関係ができたりすると、ガンが完治した後の心の空白を無意識的に避けるようにして、負のサイクルから抜け出すことが難しくなることもあるようです。

「抑圧された感情を解き放つ」、「より前向きに生きる」ということは自然治癒力を引き出す上で大切なことですが、この項目も、本当に心の底から意識的にも潜在意識的にもそのような前向きな心になっていればその力が発揮されるのですが、頭(理性)ではそのように考えていても潜在意識(感性)で抑圧している方もいます。その場合は本来の自然治癒力は発揮できないようです。

厄介なのは、頭で考えている自分と心の奥底にある魂とが離れすぎ自己矛盾が生じることです。頭で前向きに考えようとすればするほど、心と身体が離れて自然治癒力が抑圧される状態になるようです。

ターナー氏が掲げた9項目を参考にして、ガンに限らず慢性症状を改善するために大切な項目として私は以下の4項目を挙げます。

1.     本気で治したいという「主体性」を持つこと
2.     無意識的な誤作動に関連する感情、信念、価値観を認知すること
3.     意識と潜在意識(心と身体)のつながりを意識すること
4.     健全な生活習慣(食習慣を含む)に変える覚悟を持つこと

ガンと診断されると多くの人たちは、現代医学に頼るものです。この本の趣旨は、現代医学を否定するものではありません。ターナー氏は現代医学以外の方法で完治したガン患者に関心を持って、幅広く、客観的に調査し、代替医療でも完治した人がいるという事実を多くの人々に知ってもらい、「自然治癒力」という本質的な意味を伝えたかったのだと思います。

手術、抗ガン剤、放射線の「三大医療」でガンを完治した人も多く存在しています。大切なことは、現代医学が全ての医療ではないということと、本当に治す力は自分の内なる治癒力にあるということを確信することだと思います。

本書の中で、ガン回復者と代替治療者が共通して持っている考えで、「病気とは、私たちの人間の身体・心・魂のどこかのレベルで詰まっているものである」と述べられています。そして、健康とは、この3つのレベルが滞りなく、自由な状態にあって初めて得られるものであると、彼らは考えているといいます。

この考え方は私の長年の臨床経験でも一致する考え方です。私は詰まっているものをエネルギーブロック(EBと読んで、そのEBを指標に検査と調整を行います。よって健康状態とはそのEBがない状態をいかに維持できるかによると考えています。

そして、私はそのEBが様々な関係性による記憶によってもたらされていると考え、そのような病気を引き起こすようなEBの記憶を「誤作動記憶」と呼んでいます。そして、過去から未来に渡る様々な関係性による「誤作動記憶」の調整を行うことが、慢性症状に対する本質的な治療だと考えています。

本書の中に以下のプラトンの言葉が引用されています。

「医療が犯した最大の過ちは、身体を診る医者と心を見る医者を分けてしまったことだ。身体と心は、分けられないのに」

私は20年ほど前から「心と身体の関係性」を診て調整を行う施術法を研究しています。様々な慢性症状や原因が分からずに急に症状が出てきた場合なども含めて、多くの原因不明の症状や病気の原因は「心と身体の関係性」が多大な影響を及ぼしていると考えています。治療者の多くは、身体に問題が生じると、身体の構造的な部位だけに注目してその部位の機能的、構造的異常症状の原因だと決めつけたり、あるいは飲食の問題だけが病気の問題だと考えたりする傾向があります。

その部位の施術を行うと症状は改善されますが、「なぜその部位に機能異常や構造異常が生じたのか」という本質を追求することは少ないようです。例えば腰痛の症状で筋肉の問題、関節の問題があると判明しても、その原因は使いすぎ、姿勢が悪いなどという機械構造論的な因果関係を結びつける傾向があり、心と身体の関係性による因果関係にまでは及びません。

「心が関係している」というと様々な誤解を受けやすいようです。一般的に心が関係していると聞くと、心が弱いとか、ネガティブ思考だとか精神面のいい悪いにフォーカスされがちですが、ネガティブな心だけが身体に影響を及ぼしているわけではありません。ポジティブな心でさえも身体に影響を及ぼします。大切なのは機械仕掛けのロボットのように心と身体を切り離して症状や病気の因果関係を考えないことだと思います。


外傷や感染症などの症状は別にして、自然発生的に生じている症状は何らかの心のサインだと考えても失うものはありません。むしろ、本書で掲げている「自分の魂と深くつながる」チャンスでもあり、病気を予防する秘訣になると思います。