2019年7月18日木曜日

鳥肌が立つぐらい良くなった・・・(痙性斜頸の症例)

「前回の治療を終えてから帰るとき、本当に鳥肌がたつぐらいに良くなっていました・・・このまま治るのではないかと思うくらい・・・」50代前半の女性の患者さんからコメントをいただいた。症状は痙性斜頸(ジストニア)。まだ、完治したわけではないが、症状の改善に感動されてこのようなコメントをいただいた。20代後半から約25年間症状を抱えているが、5年前から症状悪化。そのため仕事を辞める。人を意識した時などに特に顔が左に回旋する。悪くなり始めの頃から整形外科、鍼灸院を数カ所、5ヶ月前からは別の整形外科に週1回で5回ほど通院した。その後、大学病院を受診して5回通院されたとのこと。大学病院ではナーブロック注射を受ける。

来院の5ヶ月ぐらい前から症状が悪化して病院での治療も受けているが、改善が見られず少しずつ悪化しているかも・・ということを問診票に記載されていた。初回の施術を終えた後に症状の改善を感じられた様子で継続的に通院していただいている。7回目の来院時には良くなってきていることを自覚されていたが、その後、症状がぶり返すこともあった。13回目の来院の際に、前述のように、「前回の治療を終えてから帰るとき、本当に鳥肌がたつぐらいに良くなっていました・・・」というコメントをいただいた。初回の来院時から比べると確かに症状の改善が見られる。25年も抱えていた症状なので、様々な誤作動記憶の反応がでる。だが、施術を行うたびに消去法のように着実に改善している経過が伺える。

この頃では何よりも患者さんの顔の表情に変化があり、スタッフの間では「だいぶん変わってきたよね・・・」と話していた。50代前半の女性には失礼かもしれないが、あどけない自然の顔の表情が垣間見られるようになった感じで、受付では「最初は目をそらしていることが多かったけれども、しっかりと目を見て話されるようになっている・・・」らしい。恐らく症状の背後に隠れているメンタル的な側面が楽になっている様子で、そのことと連動して顔の表情や仕草に変化が現れているのだと思われる。

「鳥肌が立つぐらい良くなった」というコメントをいただく前の施術では、色々なメンタル系のキーワードが関係していたが、その中でも「猜疑心」というワードが大きな影響を与えていたのではないかと感じている。患者さんは治したい一心で通院されているのだが、心の奥には、長年患ってきた症状なので、「簡単に治るはずはない・・・」と自分の治る力に疑いを持つ思い込みをしていたことが分かった。患者さんは、「本当に治ることが奇跡・・・」とも仰っていた。

そこで、私は、「患者さん自身が治ることを心の底から信じられないと、その信念が足かせになって、本来は治る症状も治りにくくなる傾向がありますよ・・・」「症状を創ったのは患者さん自身の脳であり、脳が誤作動の記憶をしているだけなので、その症状を引き起こしている誤作動の記憶を施術することで治ると私は信じていますよ・・・」というようなお話をさせていただいた。また、意識と無意識の奥深い関係性も患者さんに理解してもらえるかどうか半信半疑ではあったが、あえてこのタイミングで説明させていただいた。

「治ることが奇跡・・」という患者さんの何気ない言葉ではあるが、その言葉の裏には「治るはずがない・・」という信念が隠れている可能性がある。ある意味それは「治らない」という「予言」でもある。もしも、治る方向へ行くと、その予言は崩されてしまうのである。そのような信念を無意識的に思い込んでいると、それは強いブレーキとして治癒力を制限する。また、信念とは自分が正しいと信じていることなので、もしも、治る方向へと進むと、自分が長年信じてきた信念や予言が崩される感覚になる。そして、無意識はその信念が壊れないように症状を呼び戻してしまうというような自己矛盾が生じてしまうことが推測される。

心理学的にとても深い話なので少しためらいはあったが、チャレンジして話してみた。すると、患者さんはそのことを理解してくれた様子で、そのような無意識の自分がいてもおかしくはないようなことを言われていた。そして、その説明も含めて「猜疑心」に関係する誤作動記憶の調整をした。他にも調整したキーワードがあったが、もしかすると、今回の改善はその説明とそのキーワードの調整が大きな作用を及ぼしたかもしれないと思う。

単純に信じれば良くなるということではないが、患者さんが無意識に抱いている自分への治癒力に対する不信感は、施術効果に多大な影響を及ぼしている。長年症状を抱えていると、「治したい・・」「いやいや治るはずがない・・・」などの心の葛藤があっても不思議ではない。治療者はこのような心の奥に隠れた葛藤や自己矛盾に対しても働きかけて整理するサポートをしなくてはならない。このような症状は、複雑な脳が関係しているがゆえにハウツウ的な治療法で治る症状ではないと言っても過言ではないだろう。

ジストニアの症状のほとんどが大脳基底核、大脳辺縁系、小脳など様々な脳の領域に関係しているが、知覚神経や運動神経を通じて、神経学的機能低下領域を刺激すれば治るという単純な症状ではない。意識と無意識の関係性や過去のトラウマなど脳の無意識的な関係性が誤作動として記憶されている。脳の機能そのもの自体が複雑に関係しあっており、無意識的な記憶が複雑に絡み合っている。ジストニアの調整はその複雑に絡み合った記憶の糸を解きほどいて整理していかなくてはならない。神経科学の研究が進むにつれて、未知の領域である脳の「複雑性」が徐々に解明されている。脳の機能は教科書に描かれているような線形の世界ではなく非線形の世界であることをジストニアの治療に関わる治療者は理解する必要があるだろう。

2019年7月13日土曜日

パフォーマンスを下げる興味深いパターン(誤作動記憶)

先日、バドミントン選手の施術をさせていただいて、とても興味深いパフォーマンスの問題が判明しました。患者さんもその気づきを得て、なるほどとすごく納得していました。以前から利用していただいている選手でカナダでの国際試合から帰国してすぐに来院していただきました。いつものように関節や筋肉の調整の後、患者さんから前回の試合で、得点をリードしていたのに追いつかれて逆転されて負けたので何かパフォーマンスに問題がなかったか検査をしてほしいとのことで、検査をすると誤作動記憶の陽性反応が示されました。

このパフォーマンスの誤作動記憶という意味は、本来の実力が引き出されていなかったという意味です。そこには無意識的な「心のクセ」が隠れていました。まず、ある程度点差が開いていたにも関わらず点差が縮まってきた場面を想像してもらいました。そこで生体反応検査法(PRT)を行うと陽性反応が示されました。無意識に関連するキーワードを検査すると「慈悲心」というキーワードが示されました。最初はそのキーワードにどのような関係性があるのか分かりませんでした。相手の選手に慈悲の心が生じたということなのですが、よくよく思い起こすと以前にもそのようなキーワードが示されていました。

それは、対戦相手が先輩のケースで示された「慈悲心」でした。勝負の世界なので相手を負かすということは当たり前のことと頭では理解していても、無意識の心は、先輩を負かしてしまうと悪い、先輩は尊重しなければ・・・というような錯覚に脳が陥っていたようです。その時は、先輩であろうが真剣勝負で全力で戦うことが相手を敬うことであり、先輩を尊重することだという気づきを得ました。そして、試合以外の活動では先輩として敬意を払い先輩を敬うことを大切にする・・・ということで整理がついていたようでした。

今回は、先輩でもない海外の相手なのにどうして?ということで、いろいろと考察されていました。すると、自分よりも格下の選手と練習する際、自分が本気で対戦すると相手の練習にならないので、相手にとって練習になるように少し手を抜くように練習しているとのこと。恐らく、本番の試合でも、ある程度点差をリードした際に、そのパターン(誤作動記憶)が出たのかもしれないと振り返っていました。そして、今後は、相手が格下の選手でも全力で対戦して練習することが相手のためにもなり、相手を尊重することでもあるのだという考え方を整理して、パフォーマンスを下げる「心のクセ」を切り替えていきたいというようなことを話されていました。

人を思いやる心の優しさから生じる無意識のパフォーマンスの低下でしたが、小学生3年生の頃から来院されている選手であるがゆえに、このパターンがもたらす影響はよくわかります。勝つために試合をしているはずなのですが、無意識の心のどこかで相手を負かすことにブレーキをかけてしまうのでしょう。「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きる資格が無い」という何かのセリフを思い出しますが、勝負の世界では、真剣勝負で全力を尽くすことに純粋な美しさが育まれると思いますし、勝っても負けてもそこには「成長」という未来が待っているのだと私は感じました。

2019年7月11日木曜日

治療者の「志」

先日、セミナー後の懇親会で若い先生方とお話しする機会を得ました。それぞれに課題があり、毎回同じ症状を訴える患者さんのことなど色々な話題がありました。開業して1年目で経営的に苦労されているという先生もいました。私も経験がありますが、開業1年目はこの先どうなることかと不安がよぎることが多々ありました。1年目、2年目、3年目と患者さんとのご縁と信頼関係で不安を乗り越えていくことができました。当時はインターネットの普及率が数パーセントの時代でしたので、現在のようにネットを通じて広告するというようなことはない時代でした。でも、開業してからの25年を振り返ると、広告ではなく、口コミによる信頼関係によって支えられたのだと思います。

あの苦しい時期をどのように乗り越えたのか、何が良かったのかは一言で答えることはできません。「運」が良かったから、あるいは「お陰様で」ということは言えると思います。でもその「運」をどのように創ってきたのかという観点で見れば、色々な要因があると思います。一つ言えることは、ハウツウ的なテクニックで患者さんが集まってきたのではないことははっきりと言えます。開業して間もない先生にとっては、何かいいアドバイスはないかと悶々としているのではないかと察しますが、コーチング的に言えば、答えはご本人が持っているのだと思います。

敢えて、私の経験を振り返って見ると、なぜ、治療者【鍼灸師、柔道整復師、カイロプラクター(DC)】という職業を志したのか、そして、なぜ、カイロプラクティックの治療院を開業したのかという動機に邪な志がなかったかどうかだと思います。邪な志が全くなかったのかと問われると、全くなかったとは言い切れませんが、軸足としては高い志を目指していたと思います。私を支えてくれた父は、私の留学時代に長い手紙のやり取りの中で、人としての在り方を教えてくれていたように思います。また、整骨院修行時代でも、そこの院長が臨床家としての在り方や人としての義理や人情を教えてくれました。その教えにはどのように患者を集客するなどといった教えは一切ありませんでした。

さらに、治療院経営者としての在り方を学ぶために、患者さんからご紹介いただいた経営人間学講座にも10年ほど参加させていただき、中国の古典や帝王学などから解説された経営者としての在り方も学んできました。そこでもお金儲けの話などは一切ありませんでした。私が現在治療者として生かされているのは、運良く人としての在り方を教えてくれた何人かの恩師に巡り会えたお陰だと思っています。人間学だけでなく、治療に関係する学術的なことも継続的に学んで来ました。振り返ると「人間学」と「治療技術」を両輪のように熱心に学んだ時期は患者さんも右肩上がりで増えてきていたと思います。

昨年ごろより、社内でスタッフと共に「人間学」の勉強会を再開していますが、その勉強の深さに伴って、患者さんもだんだんと増えてきているのが分かります。なぜ、「人間学」を学ぶことで患者数が増えるのか?色々な要因があると思いますが、一つは、チームで同じテーマを話し合うことで、共通の理念、志が自然に生まれてくるのだと思います。人としての在り方を深く洞察して自分の言葉で語ることで自分を深く反省し、思考の枠組みの幅が広がってきます。その結果、自然に患者さんとのコミュニケーション力が変化して、マニュアル的に接するのではなく、心と心、魂と魂との触れ合いへと進化し、一人一人の患者さんのニーズを自然に察知できるようになるのだと思います。

人と人の触れ合いの質が高まると、必然的に来院してくださる患者さんの満足度も上がり、困ったことがあれば相談してくださり、知り合いに困っている人がいればご紹介して下さるのだと思います。治療者の基本は、治療技術も大切ですが、人としての在り方がそれ以上に大切で常に磨きをかけていかなくては、治療者としての存在価値が上がらないのではないかと考えます。

経営の神様といわれたピーター・ドラッカーの著書の中で語られている有名な寓話として、「3人の石切り工」の話があります。旅人がある町を通りかかると、3人の石切り工が働いていました。そこで、「あなたは、何のためにこの仕事をしているのですか?」1人目の石切り工に尋ねました。すると、「生活のために働いている」と答えました。次に2人目の石切り工に尋ねました。すると、「最高の石切りの仕事をしている」と答えました。最後に3人目の石切り工に尋ねました。すると「教会を建てている」と答えたという寓話です。この話は様々な職種のリーダー達に語り継がれています。

この寓話を治療者として経験を交えて解説してみたいと思います。結論的に開業25年を振り返り、私の中には3人の石切り工の要素が含まれていたと思います。開業当初はこのままで治療院が継続できるのか、生活のために他の職種につかなくてはならないのではないかという一抹の不安を抱えながら仕事をしていました。それから治療院が安定してくると、修行時代からの課題である最高の治療技術を身に付けたいと治療法の勉強や臨床研究に熱心に取り組みました。そして、自然療法の本質がある程度見えてくると、その治療法を広めて大きな組織(教会)を創って、多くの人に貢献したいと考えるようになりました。そして、現在では地域の方々に喜ばれ信頼される治療院経営とさらに治療法を進化させ、治療者の先生方にその治療技術を広める活動を行なっています。

振り返ると、私の思考の多くが「なぜ・・・」ということが基本にあり、「どのように・・・」というのはあまり重要ではありませんでした。現在でもまだまだ臨床で研究し続けていますが、イレギュラーな現象があると常に「なぜ・・」という思考が働きますし、経営に関しても「なぜ、治療院を経営しているのか」という原点になる問いかけは忘れないようにしています。治療法、経営、そして人としての在り方に関しての勉強はこれからも永遠に継続していきたいですし、さらに磨きをかけることで多くの人に喜ばれる自分になれることを信じています。

「どんな職業の人もその職業に死ぬ覚悟がないと本物になれない」という言葉があります。以前、弊社が主催するコーチングのトレーニングで、あるワークをしていた際、自分は今の仕事に命をかけているのだということを知ることができました。自分を客観的に観ることでなるほどと思いました。命をかけるというと、何か悲壮感が漂うかもしれませんが、私にとって命をかけることのできる職業に巡り会えたことは何よりの喜びであり、これからの100年時代に向かってこの職業をさらに価値あるものに引き上げて、同志を増やし喜びの輪を広げていきたいと思います。

2019年7月10日水曜日

久しぶりにお子さんと遊んでほんとに楽しかった!!(頸部ジストニア、痙性斜頸の症例)

繰り返される日々の施術の過程で、時折心に響く場面に遭遇することがあります。ジストニアの症状で来院されている患者さんの施術中の一場面で印象深いコメントがありました。それは、「久しぶりに子供と遊んでほんとに楽しかった・・・」と心に染み渡るように語っていたことです。何気ない普通の会話なのですが、ジストニアを発症した半年前から小学2年生のお子さんと遊べていなかったとのこと。育ち盛りの息子さんと久しぶりに遊べたことは、お父さんにとってはかけがえのない貴重な時間だったに違いありません。最初の強いジストニアの症状を知っているが故に、しばらくぶりにお子様と遊べたことはとても嬉しかったのだろうということがひしひしと伝わってきました。

それは7回目の施術日でしたが、その日の来院時はジストニアの症状の改善が明らかに分かる状態でした。患者さん自身も前日にお子さんと遊べるほど調子が良かったとのことでした。最初の来院時は、顔が左側に最大限に回旋したままで、不随意運動も強い状態。日常生活にも支障がでている様子で、お子さんと遊べる状態ではなかったのは明らかでした。ジストニアという症状の多くが肉体的な問題だけでなく、メンタル的な関係性が奥に隠れています。恐らくそのような潜在的なメンタル的な要因も解放されたことで心から楽しめたのだと思います。

当院で施術を受ける前は大学病院でボトックス注射を2回ほど受け、投薬治療を受けたとのことですが、症状の改善が見られずに来院されました。当院での継続治療で改善の転機になったのは5回目の施術の後だったかもしれません。その時、ある程度施術内容を理解されていたので、マインドフルネスによる自己療法も指導させていただきました。「雑念がいろいろと思い浮かぶと思うので、気になる雑念がでてきたら次回の施術で教えて下さい・・」とお伝えしていました。そして、次の6回目の施術の際に、「人生で最悪の出来事があったのを思い出しました・・・今までの施術で、なぜそれが出てこなかったか不思議なくらい自分にとっては人生で一番苦しい出来事でした・・・」と言われました。

実際にそのことを思い浮かべてもらうと明らかにトラウマの反応が示されました。10年前のことでしたが、脳の誤作動として記憶されていました。それ以外にも過去のトラウマ的な誤作動記憶は調整しましたが、そのことは本人も自覚しているように大きなトラウマだったようです。単純にそのトラウマだけがジストニアの原因となる誤作動記憶ではありませんが、症状の改善度から鑑みても大きな原因の一つになっていたように感じました。

当院を受診されるジストニアの患者さんのほとんどが心身相関的な誤作動による症状です。ジストニアの患者さんは目で見て分かる身体症状の改善を訴えて来院されます。メンタル的な問題を最初から訴えることはありませんが、施術を通じてだんだんと症状が改善するにつれて心の状態と身体症状が連動しているということが感覚的に分かってきます。継続治療の過程でメンタル的な気分も良くないと、それに連動して症状もぶり返すこともあります。でも、症状がぶり返してもその記憶を調整して書き換えることでその誤作動記憶による症状は消去法のように改善されていきます。

今回ご紹介せていただいている患者さんも継続治療のプロセスを通じて、だんだんと心と身体との関係性を体験的に理解されています。今回のような明らかな改善を体験することでジストニアが根本的に治っていくのだという自分の治癒力に自信を持つことができたのではないかと察します。今後、さらに改善されるように継続治療させていただきたいと思います。

2019年6月14日金曜日

関節痛の施術の本質は何か?


例えば、可動域の広い肩関節や股関節に左右差がある場合、それは、器質的(構造的)なのでしょうか?それとも機能的なのでしょうか?

もしも、その原因が機能的なものであれば、多くの場合、関節の可動に伴って「痛み」などの症状を伴うことが多いようです。

もしも、その原因が器質的なものであれば、骨の変形や筋肉の拘縮などによる構造的な制限によって可動域は制限されますが「痛み」などの症状はほとんど伴ないません。

私たちのような代替医療の治療院に来院される患者さんの多くは、構造的な問題ではなく「機能的な問題」を抱えて来院されていることが多いです。もちろん、患者さんは「機能異常を治してください・・・」といって来院されるわけではなく、病院で治らなかったから来院される方がほとんどです。よって、私たち代替医療の治療者は、病院の医師のような診方ではなく、機能的な問題を分析できる知識や技術をもたなければなりません。

もしも、構造的な問題であれば、病院で明らかになりますが、微妙な機能的な問題の特定は病院では明らかにならないことが普通です。我々の治療院に来院する多くの患者さんは、病院での検査では痛みに関連する原因が見つからないまま、痛み止めや消炎剤などの対症療法を受けて、症状が改善されずに来院されます。

痛みをかばってまともに歩行できないなどの機能異常は病院でも明らかですが、痛みを引き起こしている機能異常の特定までには至りません。病院で改善されない肩関節痛、膝関節痛、股関節痛の患者さんの多くは、機能異常から生じています。なぜ、そのように言い切れるのかというと、臨床現場で多くの関節痛の患者さんを治療させていただいて、控えめに言っても約9割以上の患者さんが、治療後には症状の軽減、消失を体感されているからです。

多くの症例において、症状を伴う関節には必ずと言っていいほどマッスルテストにおいて機能異常が確認されます。施術によって機能異常が改善されると、多くの症状は軽減、消失します。症状の程度によっては炎症症状が強い場合、あるいは痛みの記憶が残りやすいなどで、施術後すぐに改善を感じられない患者さんも少なからずいますが、ほとんどの患者さんが改善を体感されます。

さて、施術では何をしているから機能異常が改善されるのでしょうか?

関節痛を軽減するための施術法はたくさんあります。各種理学療法、鍼灸、カイロプラクティックなど様々な療法がありますが、本質的には何をしているのでしょうか?関節を調節する、循環を良くする、筋肉をほぐす、気の流れを良くするなど様々な目的で痛みのある関節に施術を施すかもしれません。

もしかすると、施術目的など考えずにハウツウ的に施術を行なっているかもしれません。

例えば、「関節のズレを治すために矯正する」という目的をもっている治療者がいる場合、構造的な関節のズレは治せるのですか?もしも、機能的に関節のズレが生じているのであれば、何がそのズレを引き起こしているのでしょうか?と、私は質問するかもしれません。

もしも、「筋肉の緊張や機能異常がから生じています・・・」という答えが返ってきたり、筋肉をほぐす目的で施術をしている治療者がいる場合、「筋肉の機能異常はどこから生じているのでしょうか」と、私は質問をするかもしれません。

もしも、「筋肉の機能異常は神経系の機能異常から生じています・・・」という答えが返ってきたら、その神経系の機能異常はどこから生じていますか?とさらに質問するでしょう。多くの治療者はここから先の答えを持ち合わせていないか、分かっていてもそのための直接的な施術法には及ばないかもしれません。

私は長年の臨床を通じて筋肉の機能異常は、単に神経系の機能異常だけでなく、東洋医学で云われている経絡のエネルギーブロック、さらには神経系や経絡などに関係する生体エネルギーブロックを繰り返し継続させる脳の誤作動記憶(プログラム化)だと確信しています。生体エネルギーブロックや記憶は電気信号のように目には見えない「エネルギー情報伝達」のブロックです。私たちはそのような目には見えない電気信号のようなエネルギー情報伝達のブロックを調整して症状の改善を促しているのです。

また、その「エネルギー情報伝達」の信号は、肉体内の働きだけでなく、心の動きも含まれます。意識的にも無意識的にも心が動けば脳や神経系や経絡に電気信号、すなわち「エネルギー情報伝達」が生じます。最近ではストレスが腰痛や関節痛などを生じさせるということは、テレビ番組でも取り上げられています。明らかなストレスが症状に関連することもありますが、多くの場合、症状に関係するような心の問題の多くは無意識的で、普段認識していない心の動きでありその記憶です。

私たちは身体に影響を及ぼすような記憶を「誤作動記憶」と呼んでいます。肉体内の生体エネルギーブロックを消去することで多くの関節痛は改善されますが、慢性的に症状がぶり返す場合は、脳の誤作動記憶の調整が必要です。脳の誤作動記憶の調整に伴って慢性症状も改善されます。対症療法的な施術で改善されない場合は、さらに原因を追求することが必要だと私は常々考えています。そのことが施術の本質を追求することにつながり、延いては患者さんへの貢献につながると信じています。

2019年6月13日木曜日

人の「記憶」はあてにならない


先日、AMセミナーのインストラクターミーティングで、一人のインストラクターから話を聞いて驚いた。そのインストラクターによると、ある受講生が通常のAM手順を行わずに、3箇所ほど検査をして、陽性反応があった箇所を続けて調整を行なっていたという。手順が違っていたので、丁寧に指導したところ、その受講生はそのように習ったというらしい。誰から習ったのかと尋ねると、代表である私から習ったというのです。

私はそのことを聞いて呆気にとられました。私は、日本でAMI社公認セミナーを始めたインストラクターとして18年目になりますが、そのような指導をしたことは一度もありません。むしろ、そのような誤った手順で行なっている受講生に指導をしたことはあっても、それは基本から外れているのであり得ないし、そのようにしてはいけない理由も伝えています。

なぜ、そのように先に何箇所も検査をして、反応があった箇所を連続して矯正してはいけないのか?AMが提唱している理論をご紹介しましょう。AMI社公認のAMセミナーでは手順として「下から上に」向かって検査と調整を行います。

「上から下」ではなく、なぜ「下から上」なのか?それは重力との関係性を考慮しているからです。人間の活動は常に重力に逆らって行われます。したがって、下の土台がしっかりと安定していなければ、上のバランスに問題が生じます。家を建てる際に土台が不安定だと家は崩れやすくなるのと同じ理屈です。

次に、なぜ、最初に数カ所検査をして、陽性反応の箇所をまとめて調整してはいけないのか?それは、最下位の一ヶ所目を調整した場合、上の陽性反応部位が連動して調整される場合がある。あるいは、調整したことによって、異なる部位に陽性反応が生じる可能性もあるからです。

AMでは出来るだけ少ない箇所の調整を推奨しています。それは、調整箇所を最小限に止めることで脳・神経系が混乱せずに治そうとする力(自然治癒力)が効果的に発揮しやすいという理屈です。コンピューターを使いすぎるとパフォーマンスが低下するという現象にたとえて説明しています。

以上の理論は、セミナーのマニュアルにはないので毎回説明しているわけではありませんが、受講生からの質問にはいつもこのようにお答えさせていただいています。おそらく私の伝え方が不十分だったので、今回のような誤解が生じたのかもしれません。

「人の記憶はあてにならない」ということは、最近の脳科学の研究でも証明されていますが、このようなことが起きると、伝え方には十分に配慮しなくてはならないと改めて考えさせられます。記憶は後で入ってきた情報や、心理状態の影響を受けて刻々と姿を変えてしまうということがいくつかの研究で明らかになっています。

今回の受講生に限らず、伝言ゲームのようにある事柄が歪んで伝えられているということは指導者として経験することです。そのような事実も含めてさらにセミナーにおける学習方法をさらに工夫する必要があります。また、人の記憶はウソをつくが、人の行動はウソをつかないということも含めて指導者としてよく人を観察しなくてはならないと思いました。

2019年6月5日水曜日

お母さんと乳幼児の調整

先日、20代後半のお母さんと生後半年の娘さんが、福岡の実家への帰省に伴って来院されました。お母さんは8ヶ月ほど前の妊娠中にも帰省された時に来院してくださり、調整をさせていただきました。生後半年の娘さんは、お母様の身体を通じて生体エネルギーのバランスを検査しました。主な筋骨格系の生体エネルギーブロックとして、右小脳の機能異常の反応が示されました。

お母様はお子さんの行動をよく観察しているようで、寝返りが左側にしかできないとか、ズリバイの際に右足に力が入りにくいという左右差を以前から観察されていたとのことでした。恐らく、右小脳機能異常から生じる右側の上肢、下肢の微妙な筋肉の機能低下が続いていたのではないかと推測できました。また、右側の髪が生えにくいという状態もあり、動きの偏りによって結果的に生じていたかもしれません。また、咳も気になるとのことで、検査を行いアレルギー関連の誤作動を調整しました。

次にお母さんのバランス検査をすると、筋骨格系全体に機能異常部位が多数示されました。筋肉系や関節系に加えて、身体と心との関係性による誤作動も調整しました。初めてのお子さんを授かって、色々大変だろうと思われましたが、弱みを見せずに淡々と子育てをされている様子が伺えました。

本来であれば、継続的に施術をした方がいいのですが・・・同じような施術をしてくれる治療者をご紹介させていただいてはいますが、そこも気軽に通院できるところではないとのことで致し方ないところではあります。お子様の健康面で色々と気になることもあるかと思いますが、基本的に乳幼児の成長は著しく、以前に気になっていた体調不良も成長に伴って自然に改善することも多くあるようです。

お子様の健康は、いつも寄り添っているお母様の体調に左右されやすく、メンタル面も含めてお母様の健康状態がお子様に影響を及ぼすこともあります。一人で頑張り過ぎずに、頼れる人には頼ってゆとりを持って子育てを楽しんでいただければと思います。また、次回の帰省の際には、調整させていただければと願います。

以下、患者様から感想のメールをいただきました。ありがとうございます。

感想
今回、妊娠中にも調整して頂いていたこともあり、産後の調整に娘と共に2度伺いました。
まず母である私は、初めに全体のバランスを確認し、全体的にガタガタになっていたことを自覚しました。自覚すると母としてしっかりしなければと力んでいたものがすっと抜けて、立ち上がるときに腰が抜けるほどでした。
2
度目には、長く続いていた腰痛をメインに診て頂きました。無意識ながら自尊心があると分かり、その原因が判明すると、痛くて時間がかかっていたのが嘘みたいにすんなりと立ち上がることができました。
ただの産後の不調だと思って軽く見ていましたが、自覚のないことも原因が分かることで痛みが和らぎ、気持ちの面も軽くなりました。
また生後半年になる娘は、初回なので全体のバランスを確認して頂きました。親として気になっていた寝返りやズリバイの時の偏った方向や利き足、髪の毛の生えない部分にはブロックが確認されました。私がそういうこともあると自覚することで、短期間でブロックには改善がみられました。
2
度目は、空咳が気になっていたので診て頂くと、抱っこの際に触れる私の服の素材に起因するということでした。しばらく気をつけようと思います。
そんな繊細な娘ですが、不思議なことにリラックスした状態で診療され、泣きもしませんでした。
妊娠中から産後、さらに娘と、短時間の治療ではありますが、自分では分からない原因を見つけて向き合い、症状を軽くすることができ、感謝しています。ありがとうございました。