2019年12月12日木曜日

第79回AMセミナーを終えて

先日、今年最後のAMセミナーが終了しました。熱心に参加して下さる先生方と共に学びを深められることをいつも有り難く思っております。AMのことをよく知らない人たちにとっては調整器具自体が強調される傾向にありますが、臨床的な効果につながる大切なポイントは「一貫性のある下肢長検査法」です。二日目最後のワークでは、それぞれの課題に応じてグループワークが行われます。いつも人気のワークは「下肢長検査で反応を読み取るワーク」のグループです。

これは、多くの先生方が、「臨床上、反応を読み取る技術が重要である」ということを認識されているということの表れだと思います。もちろん、コンタクトの仕方も治療効果を引き出す上でとても大切です。これらの技術技能は恐らく教科書を読んだだけでは学べない内容だと思います。繰り返し体験して、他者からのフィードバックを得て「気づき」が得られるものだと思います。この「気づき」は言葉では表せないいわゆる「コツ」のようなものなので、体験して習得するしか方法はありません。

今回のセミナーにおいても、この「気づき」を得た先生が何人もいました。恐らくセミナーで得たいくつかの「気づき」は、ご自分の臨床現場で生かされているのではないでしょうか?「技」というものは、『「頭」ではなく「身体」で覚える』と言われ続けています。まずは、「基礎」の「型」をしっかりと身体に覚え込ませながら、多くの患者さんの身体を通じて、生体反応やコンタクトの程よい感覚を体得していただければと思います。

それではまた、来年度もセミナー会場でお会いしましょう。


2019年12月7日土曜日

「自責」と「他責」どちらが健康的でしょうか?

人は様々な「ストレス」に遭遇しながら生かされています。「ストレス」と聞くと、精神的にネガティブなことだと思われますが、ポジティブなストレスもあります。それは、人それぞれに捉え方、解釈の仕方によって受けるストレスがネガティブになったりポジティブになったりするからです。例えば、あるプロジェクトの責任者に任命された時、Aさんは、「責任者として様々なことを犠牲にして、大きなストレスを抱えなくてはならない・・・」と悲観的に捉えるかもしれません。その一方でBさんは、「このプロジェクトを進めていく過程で、多くの学びを得て、将来の成長のための糧にしよう・・・」と楽観的に捉えるかもしれません。

人間関係において、多くの人が「ストレス」を経験します。自分の部下やパートナーに、期待しているような行動がみられない時、あるいは、自分の上司や周りの人たちに期待しているような評価をしてもらえない時などは「ストレス」を感じやすいと思います。様々な人間関係において、「捉え方」「解釈の仕方」は様々です。大きく分けると「他責」にするか、「自責」にするかです。他責の場合、「自分は正しい」「自分は被害者だ」ということを誰かに分かってほしいということに意識が向いてしまう傾向にあります。一方、自責の場合、「自分のどこに問題があったのか・・・」「自分の何がそのようなことを引き寄せたのか・・・」というような意識が働く傾向があります。

さて、人間関係や組織の関係性において、「他責傾向」の人と「自責傾向」の人では、どちらの方が発展的で、成長への方向へ進みやすいでしょうか?また、どちらの方が健康的でしょうか?ある問題が生じた時、「他責傾向」の人は、問題を解決するために、責任や原因の所在を他者や環境に求めていきます。そうすると、他者が行動を起こさない限り問題は解決しませんし、自分自身が行動を変える必要性は無くなります。そして相手を非難するだけの傍観者になるでしょう。その一方で「自責傾向」の人は、自分の何がそのようにさせたのか?自分の何がそのような問題を引き寄せたのかと考え、自らを変えようとして行動に移して問題解決へと導いていきます。誰がみても99%相手の責任だとしても、「目の前にある課題は、自分の何かが引き寄せた結果であると解釈してその課題に向き合う人もいます。

「自責傾向」の人と、「自虐傾向」の人とは性質が異なります。「自責傾向」の人とは目の前の問題や課題を自分自身の学びや成長の糧にする人です。「自虐傾向」の人は、自分を卑下して、他者からの哀れみを引き寄せようとする傾向のある人です。もしも、それが長期的な心の「クセ」になると、人生は明るいでしょうか?「他責傾向」の人と「自責傾向」の人ではどちらが人生をポジティブに豊かにしていくでしょうか?あなたは、「他責傾向」や「自虐傾向」の人のそばにいたいですか?それとも「自責傾向」の人とともに人生を歩んで成長をしていきたいですか?

人生において健康を維持することはとても大切です。これは、多くの患者様の健康をサポートさせていただき感じることですが、人生に豊かさを感じるのは、様々な問題を自分の課題として向き合う「自責傾向」の人達です。人生の中で「他責」にしたり、「自虐」になったりする経験は誰もがすることかも知れません。私自身も長い人生経験を通じて、「他責」にすることが多々ありました。今でも時折他責にしてしまうこともあります。振り返るとそこには反面教師として学ぶことはあっても問題解決や自分の成長にはつながりませんでした。やはり、自分自身が変わることで現状に変化が現れていました。これは頭で理解しても何も変わりません。実際に行動に移すことで知らず知らずのうちに変化が生じるものです。

恐らく、多くの人は「自責」で考えた方が自分の人生や健康にとっていいとは分かっていても、時には他責的な発言をして共感を示してほしいと思うことことがあるでしょう。私たちはそのような患者様の気持ちをできるだけ理解し、耳を傾けるようにしています。そして、患者様が「自分の気持ちが理解されている」と十分に感じられると、徐々に自責の思考へと変化していく方も少なくはありません。その変化は内容によっては長い期間を要する場合もありますが、私たちは患者様の気持ちを徹底的に理解し、寄り添いながらサポートすることが大切だと考えています。

人生は山あり谷あり、人は人とのつながりの中で生かされています。もしも、現在抱えている人間関係などの問題や課題が「他責傾向」の罠にはまっているのであれば、今一度ご自身の思考パターンや行動パターンを見つめ直す機会かもしれません。他者はコントロールできません。コントロールできるのは自分自身です。「自責傾向」へとシフトして考えることは、人生を豊かにし、健康を維持していく上でとても大切なことになると思います。さあ、「自責」「他責」、あなたのどちらの傾向なのか今一度見直してみましょう。

2019年12月2日月曜日

お陰さまでファミリーカイロプラクティックセンター25周年

2019121日、ファミリーカイロプラクティックセンター(FCC)はお陰様で25周年になりました。1994121日に開業以来、年月を重ねるにつれて本当に多くの患者様に支えられて今日があるということを実感しております。

ご存知のように当院での治療法はどこにでもあるようなものではありません。常に最良の施術法を目指して日々研究を重ねております。海外などのセミナーで新しい知識、技術を得ることもありますが、治療法発展のために最も価値のあるのは、やはり治療現場だと思います。それは、患者様一人一人の「身体の反応」に色々なことを教えていただいているからです。

FCCではどのような「刺激」(検査)に反応し、どのような「刺激」(調整)で効果が引き出されたのか、一人一人の患者様に合うオーダーメイドの施術をさせていただいております。オーダーメイドの施術とは、既製の施術のように「腰痛」=「お決まりの治療法」というわけではなく、同じ腰痛でも、その人が抱えている原因によって、それぞれに最も適した施術を行なっているということです。

FCCが25年間発展し続けた背景には、開業当初からこのオーダーメイドの施術を一人一人の患者さんに継続させていただいた経緯があります。そして、FCCで確認した効果のある施術法は、ライフコンパスアカデミー(LCA)のセミナー活動の一環として、全国の治療家に啓蒙して、他の先生方に使っていただけるかどうかを検証してきました。この活動も治療法発展の一助となっております。

これからも常に効果的な治療法が提供できるように、臨床現場での研究を深め、知恵と技術を両輪のように進めて、高みを目指す努力を積み重ねてまいります。また、FCCLCAのスタッフが定期的に行っている人間学の勉強会も継続し、人間力を高める自己研鑽も努めていきたいと思います。

これからもさらに皆様の健康のお役に立てるように精進していく所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

2019年11月28日木曜日

「健康」と「運気」の安定

先日、田坂広志氏の最新の著書、「運気を磨く 心を浄化する三つの技法」という本を読みました。当院で行っている心身条件反射療法(PCRT)という施術法の根底にある「考え方」が如実に表された内容だったのでとても感銘を受けました。『なぜ、ポジティブ思考が、逆効果になるのか』、並びに『「良い運気」を引き寄せられない本当の理由』が説明されていました。田坂氏によると、いくらポジティブ思考でポジティブなことを表面的に考えていても、無意識的にネガティブな想念がある以上「良い運気」を引き寄せることはできない・・・そして、本当に「良い運気」を引き寄せたいと思うならば、心の中をポジティブな想念で満たす前に、何よりも、心の中に数多く存在するネガティブな想念を消していかなければならない・・・と述べています。

つまり、心の奥にある無意識的なネガティブな想念を消してからポジティブ思考をしなければ逆効果になってしまうということです。このことは、当院で長年研究してきた本質的な施術法の原理原則に通じるものがあり、慢性症状の多くが、心の奥に隠れている無意識的な想念に関係しており、その想念を認識し、書き換えることで症状が改善し、さらには健康を取り戻すことで「運気」も改善している様子がうかがえる実例を数多く経験させていただいているので、田坂氏が伝えたいことはよく分かります。また、田坂氏は科学研究者としての立場から「運気」というものを明らかにしたいと考えており、そうした視点からの「科学的仮説」についても紹介しています。

私は「健康」を研究する臨床家として、長年多くの患者様の健康をサポートさせていただき、「健康」=「安定した運気」というような感覚を持っています。「不健康」=「不安定な運気」のときで、その原因は田坂氏が述べているように、無意識の世界が「ネガティブな想念」で満たされていることが多いようです。「幸せになりたいと願いながら、不幸を引き寄せる人」というテーマでは、心理学者の仮説を引用して、その原因は自分でも気づいていない無意識の世界が自分の行動を支配してしまい、人生の選択を誤らせてしまうことがあると述べています。

多くの人々は何事も「意識」でコントロールしていると思いがちですが、実は意識する以前に「無意識」にコントロールされているのです。このことは、近年、科学研究者によっても述べられています。有名な心理学者が共通して語っている無意識の世界を要約すると以下の通りです。

第一 「無意識」は「意識」の世界からは明確に自覚できない。
第二 「無意識」の世界は力強く、「意識」の世界に大きな影響を与えてしまう。
第三 「無意識」の世界に働きかけて、それを意識的に変えることは容易ではない。

当院ではこの「無意識の世界」を十分に踏まえて、生体反応を利用した「体に聴く検査」を行って、「無意識の世界」を探索します。そして、健康を阻害している「無意識の想念」を認知してもらい、それを書き換える調整を行っています。その結果として症状が改善し、健康を取り戻すことができます。心と身体の関係性、「心身一如」という観点から、慢性症状が心の奥にある「無意識」と関係するということは、頭で理解しても体験しないと信じられないということもあるかもしれません。当院では「無意識の気づき」によって、症状が改善される患者様が多いので、無意識の世界の影響は理解しやすいと思いますし、さらには、その気づきによって「運気」も上向きに向かっているということも合わせてご理解いただければと思います。「無意識の世界」を明確にして「健康」と「運気」の安定を維持していきましょう。

2019年11月26日火曜日

ジストニア治療のための新たな発見

先日、ジストニア(痙性斜頸)の患者さんが3人来院され大きな発見がありました。3人とも治療前と治療後に確実に効果が示されたので、この新たな発見に確信を持ちさらなる可能性を感じているところです。この発見は以前から筋骨格系の患者さんの症状の改善から分かっていたことではありましたが、ジストニアの患者さんにおいて、機能神経学的な視点や筋肉系を重要視していたあまり、ある意味盲点になっていたように感じました。

PCRTのプロトコルに従って幅広く、客観的に検査すれば引出されるEB(生体エネルギーブロック)なのですが、恐らく、「ジストニア=神経学的機能異常」というような偏った見方がどこかにあり、無意識的に視野が狭くなっていたのかもしれません。もちろん、PCRTは心身相関、経絡、機能神経学も含めて、幅広く原因となる誤作動記憶を検査していきますが、「神経系が身体の働きの全てをコントロールしている」という偏った思想が根底にあるがゆえに、見逃していた可能性もあります。

脳・神経系が損傷してしまうと確かに身体の機能が失われるので「神経系が身体の働きの全てをコントロールしている」よって、「神経系の働きを整えれば、身体の症状が改善され健康が維持される」というのはある意味正しいかと思いますが、病気や症状の原因を探求する際、この理屈で全ての症状を改善しようというのは、かなり偏った思想になるかと思います。私自身もカイロプラクティック大学を卒業したての頃は、「神経系の働きを調整すれば様々な症状が改善される」という信念で施術を行なっていた時期がありました。しかし、臨床現場で「原因と結果」を追求すればするほどこの考え方には偏りがあることが分かりました。

かれこれ20年以上前に気づいたことですが、「神経系の働き」の異常は、様々な他のシステム(系)に関係しているということです。例を挙げると、東洋医学の施術の基準となる経絡も身体全体におけるシステムの一つです。「経絡の働き」が乱れれば、「神経系の働き」も乱れ、その逆も然りです。神経系も生体エネルギーの一つですが、「生体エネルギー論」の視点から見ると、様々な生体エネルギーに関係するシステムが調和しあって生命力や治癒力が維持されているのです。よって、神経系のシステムだけを強調し過ぎるあまり、他のシステムが盲点となって、改善するはずの症状も改善し難くなるということが私の臨床体験から導き出された気づきです。

今回の発見には、その日にたまたま3人の痙性斜頸の患者さんが来院されたという偶然が重なったという影響があったかもしれません。まず、一人目の患者さんは大学生の女性です。来院当初は首が右に傾いて、正面に向くことが出来ない状態でした。しばらく通院していただき、現在ではかなり改善しているのですが、今回の目安検査では首の左回旋と前屈時に多少の傾きが生じていました。いつものようにどの領域にEBがあるか検査をしてみると、前回示されていた神経学的な領域や筋肉系の領域には反応が示されませんでした。「もしかすると」という直感で、新たな領域を加えると陽性反応が示されました。この領域をEBとしてPCRTのプロトコルに従って調整を行うと、その後、明らかにその動きの異常が改善しました。

二人目の痙性斜頸の患者さんは、来院当初はかなり頸部の傾きが強く、仕事も出来ない状態。現在では仕事には支障はないものの、まだ正常とは言えない状態。その日の目安検査では特に前屈の動きができない状態。そこから通常のPCRTプロトコルと前回と同様の領域を加えて調整を行ったところ、一人目に続いて前屈の異常運動が明らかに改善されました。三人目の痙性斜頸の患者さんも初回の来院時は頸部の傾きはもちろん、異常姿勢や不随意運動も強い状態でした。その日の来院時には初診時に比べると改善はしているものの、頸部が右に傾いている状態で、仰臥位においても首が右に傾いて左には容易には向けない状態でした。この患者さんも通常のPCRTプロトコルに加えて、同様の領域を追加してみると、陽性反応が確認され、調整後には首が真っ直ぐに向けるようにまで改善しました。

今回の発見は、その領域だけで全てのジストニアに効果があるということではありません。あくまでも通常のPCRTプロトコルに追加されたEB領域ということで、盲点になりやすい領域であるということです。PCRTの調整法は常に臨床現場からの偶然の発見から発展しているように思います。今回の発見もその一つで、この発見はジストニアの治療に限らず、他の症状においても有効に活用ができると思います。この新しい発見には確信を得てはいるものの、セミナーで紹介するには繰り返し検証が必要だと考えています。他にもジストニアの患者さんが通院されているので、さらなる追試を繰り返し検証を重ねた後、来年度のPCRT上級セミナーでこの発見の内容をご紹介させていただく予定です。PCRT上級セミナーに参加資格のある方はご期待ください。

2019年11月21日木曜日

「技」を極める

手技によって行われる施術は徒手療法、あるいはマニピュレーションと呼ばれています。カイロプラクティック、整体、オステオパシーなど様々な施術法があります。アクティベータ・メソッド(AM)もカイロプラクティック大学で教えられているテクニックの一つです。筋骨格系の痛み症状に対しては即効性のある効果的な施術法です。一見シンプルに思える施術法ですが、その「技」には奥深いものがあります。最近ではオンラインによる動画で学ぶこともできるようになっていますが、「技」をマスターするためには、実際に体験し、多くの熟練者の技術をライブで体感することが重要だと思います。「見て学ぶ」ことも大切ですが、その情報「インプット」した後は、実際に行って「アウトプット」し、他者からのフィードバックをもらい「微調整」をすることがさらに大切になります。

「見て」→「体験して」→「フィードバックを受けて修正」この一連の流れを繰り返し継続して、自分なりの「コツ」を掴むことが上達の近道です。「コツ」の掴み所は人それぞれですが、それは「体験」を通じてのみ得られるものなので、マニュアルを読む、動画を見るだけで得ることは難しいでしょう。例えば、AMの下肢長検査のポジション1では、術者の立ち位置、手の当て方、頭上方向への圧の加え方など説明はマニュアルに記載されているので分かると思いますが、踵骨部から頭上圧をゆっくりと加えて、反応下肢側の緩みが感じられるという感覚、軸圧刺激によって神経関節機能異常の神経学的反応を引き出す「コツ」は実際に体験しなければ分からない「感覚」だと思います。これは、単にどちらが短いとか長いとかの単純な「見方」ではありません。神経学的生体反応の「感覚」をご自身の臨床現場で繰り返し体験することで、自分なりの「コツ」として掴めるようになるのだと思います。

まずは、「基本の型」を習得し、次に実際の「生体反応」を読み取る「技」を習得します。もしも、反応が読み取れる段階に入ると、どの部位の関節、あるいは筋肉に神経学的機能異常が生じているか否かが分かるようになりますので、結果的に筋骨格系の痛みなどの施術効果が出せるようになります。ただし、しっかりと安定したコンタクトが出来ていることなどの臨床的なスキルも当然のことながら必須条件になります。このコンタクトの仕方も、教科書的には〇〇パンドという数字的な記載はありますが、同じ年齢の大人でも体格は異なりますし、筋の緊張度、過敏度は人それぞれに異なります。アクティベータ器による圧の加え方において、科学的なデータから導き出された基準圧を参考にすることは必要ですが、臨床では臨機応変に目の前の患者に合わせてコンタクトすることが大切です。このことも実際に「経験」を積み重ねることによってのみマスターできることだと思います。

ある程度のAMの「技」がマスターできると、患者さんにも喜ばれるようになり、治療家としての自信がついてきます。治療家としての自信は大切なのですが、中途半端な「技」になると、我流へと傾いて、偏った反応でしか読み取れなかったり、偏ったコンタクトによって、引き出せるはずの結果が出せなかったりというような状態に陥ることもあるようです。これは、ある意味自信過剰になって、知らず知らずのうちに自分の「技」の盲点に気づかないままになっていたといえるでしょう。そして、結果が引き出せない原因を自分の技量ではなく、テクニックのせいにしてしまうのです。厳しいことを言うようですが、これは私が20年以上アクティベータ・メソッドを教える立場を継続させていただいた経験に基づく見解です。もっと粘り強く真摯に「技」を極めて欲しいと願います。真摯に継続すれば必然的に身に付く「技」です。そして、ある程度の「技」を極めれば、治療家としての一生の財産になると私は思います。

それでは、次回のセミナーで皆さんと共にさらに「技」に磨きをかけていきたいと願っております。

2019年11月15日金曜日

2019年度PCRT上級セミナー後のフィードバック

今年最後となるPCRT上級セミナーが先日開催されました。PCRTは毎年進化し続けているため、年に一回参加される方にとっては、ハードルが高いところもあったかもしれません。PCRTの基本的な手順を踏まえての上級編ですので、「手順」よりも「本質的な原因と結果」に焦点を当ててご紹介させていただきました。今回初めてご紹介した音叉を利用した骨、靱帯、軟骨などの検査法は、主に筋骨格系の症状を抱えた患者さんには有効で、筋肉、筋膜、神経系だけの視点を超えた幅広い領域で効果を引き出すことができると思います。

ジストニアとイップスに関する調整法もご紹介させていただきました。このような症状はまさに脳の「誤作動記憶」による結果であり、脳の機能や神経の経路だけを理解して、機能低下がある神経機能を刺激するだけで改善するという単純な症状ではないということがある程度ご理解いただけたのではないでしょうか。脳の神経回路は教科書に記載されているような「線形」に表される単純な神経の経路だけで働いているわけではありません。「非線形」で「複雑系」の要素が強く、様々な脳の神経回路、すなわち無意識領域の複雑性が関係しています。

ジストニアやイップスの症状が改善する過程において、この「無意識領域」の「気づき」が必須条件になります。この「気づき」を引き出すためには有効な手順が必要で、意識レベルのカウンセリングで引き出せるものではありません。「心(脳)と身体の関係性」における検査と調整を行うことで、その「気づき」が可能になります。類似した症状でも人それぞれに原因があり、早期に改善する患者さんもいれば、時間がかかる患者さん、一度改善してもぶり返す患者さんなど様々です。このような様々な患者さんの治療の経験を重ねていく過程で、早期に治る患者さんと、期待通りの改善が見られない患者さんとの違いも見えてくると思います。

「心と身体の関係性」、「意識と無意識の関係性」、「脳の誤作動記憶」という領域を長年研究してきたPCRTですが、全てのジストニアやイップスの症状に有効とは言い切れません。これは他の症状においても同じことが言えますが、まずは治療を依頼してくださる患者さんとの信頼関係です。患者さん自身が治療法のコンセプトをある程度理解され、さらに、施術後に治療効果を体験して施術者ならびにその治療法を信頼してもらうことが大切です。あまりにも大きな期待を抱かせるような誇大な広告は信頼関係を損なう要因にもなりますので、あくまでも「可能性」として一度体験していただき、患者さん自身がその効果に納得できる前提で治療を継続してもらうことが大切だと思います。

治療者にとって、まずは「結果」が出せる「技」を身につけなければ始まりません。ジストニアやイップスにも程度があります。慢性的な肩こりや腰痛、眼瞼痙攣(ドライアイ)なども軽度のジストニアとして分類されている文献もあります。まずはそのような慢性症状を改善できる「技」を身につけて、施術の幅を広げていくことが必要かと思います。このような「技」を身につけるには、ジストニアとイップスのセミナーを単発で受講したからといってできるわけではありません。まずは、PCRTの基本となるスキルとコンセプトをしっかりとマスターすることが必須条件になります。何事も軸となる「基本」が大切で、その上で「応用」を加えて、臨機応変にそれぞれの患者さんにあった施術を創造していきましょう。

それでは、来年さらに進化したPCRTセミナーでお会いできることを楽しみにしております。