2021年7月20日火曜日

健康に及ぼす「暗示効果」


「プラシーボ効果」
(暗示効果)という心理的要因が身体に影響を及ぼすということは多くの人が知っていると思います。40年近く治療、施術という業界に携わっていますが、「プラシーボ効果」の健康への影響は大きいと常々感じています。当院の患者さんにも、体調不良が生じて予約の電話をしてから症状が緩和されてきたなど、冗談の様に言われる方がいますが、これもプラシーボ効果だと思います。これは一度、当院で治療効果を体験すると、そのポジティブな条件付け、すなわち痛みを軽減する神経回路が作用して、症状の緩和につながるのだと予測されます。

 

西洋医学においても、薬の飲み過ぎを考慮して、ニセの薬を患者さんに処方することがあり、実際に効果があるということは知られている話です。また、以前、ブログでもご紹介しましたが、国際的な医学雑誌に掲載された重度の膝痛の研究で、ニセの手術をした患者さんと実際の手術をした患者さんとの治療効果を比較すると、両グループとも効果が実証されたという研究結果があります。施術を行う治療者にとって、このプラシーボ効果はとても大切で、患者さんとの信頼関係、治療に対する信頼や期待感は治療効果に密接に関係していると思います。

 

「プラシーボ効果」の反対の「ノーシーボ効果」があります。この効果も同様に心理的な暗示効果ですが、「ノーシーボ効果」に対する臨床事例はいくつもあります。例えば、腰痛や膝関節痛の病院での画像診断で、椎間板や変形した関節などの構造的異常が指摘された画像を見ながら医師から説明を受けた場合、「構造異常=痛み」という思い込み(暗示効果)が入って症状の改善を悪くする事例があります。最近ではNHKやインターネットの情報で、「構造異常=痛み」の原因ではないということが多くの人に知られる様になりましたが、まだまだそのようなネガティブなノーシーボ効果の影響で症状の改善を悪くしている方も少なくはありません。

 

アレルギー症状のノーシーボ効果の事例として、花粉症の人が、造花を見て、鼻水が出てきた、あるいは花粉情報のニュースを聞いてから花粉症状がでてきたなど。また、ある実験で、「うるしの葉」と「栗の葉」を触らせる2つのグループ分けて、うるしを触らせたグループには「栗の葉」だと説明、栗の葉を触らせたグループには「うるしの葉」だと逆の説明しておいたのです。すると驚くことに、栗の葉を触ったグループに発疹が出て、うるしの葉を触ったグループには何もなかったという結果になったといいます。少し乱暴な研究ですが、アレルギー症状の多くの方が心理的要因に関係しているので、あり得る話だと思います。

 

ノーシーボ効果は、いわゆる「思い込み」に関係しますが、意識的に思い込むというよりも知らず知らずに入ってきた情報をネガティブに解釈して受け止めて、それが本当に体調不良に作用してしまうのです。例えば、今回の新型コロナのワクチンでも多かれ少なかれノーシーボ効果の影響を受けて副反応が生じている方も少なくはないと思います。今回のワクチンに関して、最初は情報が少なく、様々な不安情報が入ってきましたが、最近では段々と全体的な効果や副反応の割合なども見えてきているのではないでしょうか。

 

ワクチンの種類、全体的な情報を総合すると、予防効果は高く、変異ウイルスには予防効果が低くなる傾向があるようですが、重症化や死亡率はインフルエンザ程度には押さえ込むことができるということです。このワクチン効果もネガティブに解釈するか、ポジティブに解釈するのかはその人次第です。その解釈の仕方によってはノーシーボ効果によるネガティブな影響を受けるかもしれません。おそらく、ワクチンを恐れる解釈をするよりも、自分の身体の柔軟性を信じてワクチンを受け入れる方が健康に対するメリットが大きいのではないかと感じています。皆さんはどの様に解釈しているでしょうか?