2020年10月26日月曜日

「ハウツウ」から「なぜ」を考える治療者へ

【受講生からの質問】

「機能的な神経異常を改善する治療はアクティベータメソッドだけでしょうか?他のカイロプラクティックも同じ目的で治療を行っているのでしょうか?」


前回のブログでもご紹介させていただいた様に、上記のAMオンラインセミナー後の質問で私なりに実技セミナーで回答させていただきました。その内容を一部ご紹介させていただきます。この質問は、簡単に答えることもできるし、数時間かけて答えることもできる質問です。


カイロプラクティックに限らず多くの施術法で結果が伴うものは、多かれ少なかれ機能的な神経異常の改善によるということが言えると思います。施術者によっては、気の流れが良くなったから症状が改善したと判断する人もいるでしょうし、関節を構造的に正常な位置に調整したら改善したと主張する人もいるでしょう。


なぜ効果があったのかのメカニズムは考えずに〇〇療法だから効果があったという人もいるでしょう。筋肉をストレッチしたから効果があった。筋膜をストレッチしたから効果があった。頭蓋骨を調整したから効果があった。骨盤を調整したから効果があった・・・と、本質的なことは抜きにしてハウツウ手法だけを頼りに施術をしているかもしれません。


私も臨床現場で駆け出しの頃はそうだった様に、多くの施術者がハウツウを頼りに施術をしているのかもしれません。私はそのことを踏まえて丁寧に説明する必要があると思い、なぜかSimon Sinek氏のゴールデンサークルのことを思い出してその理論の一部を引き合いにして施術の目的に対する考え方をご紹介しました。


ゴールデンサークル理論は、「why・how・what」の3つの円で構成されていて、物事の本質を説明するためのフレームです。Simon Sinek氏が説明している内容からは少し異なる解釈ですが、私なりにこの理論の一部が今回の質問に関係すると感じて紹介しました。


三つのサークルは以下のような構成になっています。


「why」 ・・・なぜそうするのか(信念、目的、何のためするのか)

「how 」・・・どうやるのか(商品やサービスの説明、方法、理論)

「what」・・・何をするのか(商品、サービス)


多くの患者(消費者)が、新しい施術法を受ける(買う)時、あるいは、施術者が新しい施術法のセミナーを受講(買う)時、「何をする施術法なのか」(What)、に関心を寄せます。AMであれば、「アクティベータ器でパチパチしてもらう」となるでしょう。


次に、「どのように施術をするのかの「手法・手順」に関心を寄せます。」(How)、に関心を寄せます。AMであれば、「どのように検査し、どのように調整するのか」になるでしょう。


次に、「なぜ、そのような検査、調整法をするのか」(Why)、に関心を寄せます。もちろん、AMでも他の施術法でも患者の症状を改善するという目的は大前提ですが、AMでは神経関節機能障害を特定して、神経系を活性化して症状の改善を図ることを目的としているからです。


他のカイロプラクティックテクニックも多少の哲学的な違いはありますが、最後の「Why」、に関しては、神経生理学的な機能異常を改善することを目的に、患者への健康に貢献しています。なぜならば、「神経系」が身体全体の機能(働き)を司っているからという理由になります。


多くの患者や施術者は、「What」か「How」に興味を注いで、「Why」まで興味を注ぐことは少ない様です。私が卒業したカイロプラクティック発祥の大学ではカイロ哲学の講義が多く、「Why」について大切さを教えられました。したがって、私も自然にその大切さが身についているのだと思います。


西洋医学とは異なり、代替医療の考え方、哲学思想は様々ですが、私はこの「Why」がとても大事だと考えています。だからこそ、「治療哲学」や「調整のメカニズム」などの動画でも話している様に、私はそのことを長年語り続けています。


私は、単にブランド名や「ハウツウ」だけでなく、「なぜ」の部分を考える治療者仲間が一人でも多く増えることを願っています。



2020年10月23日金曜日

AMオンラインセミナー後の質問での気づき

【受講生からの質問】

「機能的な神経異常を改善する治療はアクティベータメソッドだけでしょうか?他のカイロプラクティックも同じ目的で治療を行っているのでしょうか?」

 

最初にこの質問を受けた時、一瞬、「えっ、・・・」と、首をかしげたのですが、よくよく考えると真っ当な質問で、その先生の立場になればごもっともな質問だと思い直しました。私も修行時代、整骨院の臨床現場で働いていた時は、機能的な神経異常とか、何の目的で治療しているのかなどは深く考えていなかったように思います。

 

患者さんの症状を良くするため、自然治癒力を高めるためなど漠然とした目的で、ハウツウ的な施術は行ってはいたものの、電気治療、鍼治療、手技療法などの背後にある治療メカニズムを熟知して施術を行っていませんでした。本質が分からないまま、マニュアル通りの施術を行なっていた当時を振り返りました。

 

しかしながら、結果的にはその矛盾点や手技療法のメカニズム、奥義を知りたくてカイロプラクティック大学への米国留学。卒業して臨床現場で思考錯誤の結果、その本質を語れるまでに至ったわけです。そして、この治療の本質、カイロプラクティックの本質は、カイロプラクティックの哲学書などの書籍で“知っている”というレベルではなく、臨床現場で繰り返し検証した経験、体験によって得た“確信している”というレベルです。

 

正規のカイロプラクティック大学教育を受けたDCでさえも、そのレベルまで確信して臨床を行なっている人がどれだけいるのかは分かりません。カイロプラクティックの目的は、様々な表現の仕方はありますが、端的に言えば、神経生理学的な機能異常の改善を目的にしています。今となっては私にとって当たり前過ぎるくらいの考え方なので、上記の質問に首を傾げてしまったのだと思います。

 

純粋に質問していただいた先生には申し訳なくも感じ、質問していただいている先生の立場で受け止めていない自分を反省しました。私が進みすぎていると言えば聞こえがいいかもしれませんが、治療法を教える指導者としての立場としては、今日にいたる過程を顧みずに麻痺していた様にも思います。

 

米国で53年継続しているAMセミナーは、米国カイロプラクティック大学が認めている卒後教育セミナーであり、DCやカイロプラクティック大学卒業間近な学生やその他のドクターレベルの治療者でしか受講することができません。当然のことながら基礎医学や基礎の臨床学を学んでいることが前提で行われるセミナーです。

 

日本国内ではドクターファーと私との信頼関係でセミナープログラムが委託され、日本語に翻訳して米国と同様のカリキュラムでセミナーを開催しています。日本国内では20年継続しており、国際基準のカイロプラクター以外の医療従事者も広く受け付けて、アクティベータ・メソッドを啓蒙しています。

 

当然のことながら、国内の医療従事者はカイロプラクティックの哲学や思想など知らない人がほとんどです。その様な日本国内の事情を考慮して、カイロプラクティックに関する哲学や思想を間接的にではありますが、少しずつ学んでいただいています。また、認定試験までの必修単位(受講時間)も国際基準のカイロ学位者よりも多く設定しています。

 

また、実技試験のハードルは、おそらく国際的に十分なレベル、いやそれ以上に設定されていると思います。できるだけAMセミナーを繰り返し受講していただくことで、実際に臨床で効果を引き出すことができる施術者が毎年育成されています。今後もさらにセミナーの質を高めて結果の出せる施術者の育成に努めて参りたいと思います。

 

2020年10月1日木曜日

ピンチをチャンスに変える調和

最近ではコロナウイルス感染者数の数が段々と減少傾向にあるものの、まだまだ油断ができない状況が続いています。緊急事態宣言が発令されてから、ほとんどの人がマスクを着用しています。マスクをするのが当たり前で、していない人の方が目立つというような状況は以前では考えられないことでした。特に人との接触をできるだけ避ける様にするということ自体が大きな変化です。この様な変化の時にこそ、ピンチをどのようにチャンスに変えていくのか、その心構えが問われているのかもしれません。

今回の危機を乗り越えるために今何をすべきなのか?今までにない大きな変化の中で何を考えどのように行動すべきなのかが問われているのかもしれません。この様な厄介なウイルスも大自然の中の一部であり私たち人間が共存していくべきモノと言えます。しかしながら、このような状況になると、できるだけ“悪いモノ”を避け、攻撃するという思考が働きやすくなります。その思考は人間関係においても知らず知らずのうちに、“悪いモノ探し”のように「対立」を生じさせる傾向があります。「対立」・「避ける」よりも「共存」・「受け入れ」の方が大自然との調和という観点から言うと健康的だといえます。

 

人間も含めて、“生き物”は閉鎖的になると不健康になります。心も身体も開放的な健康を維持するためには適度な心と身体の“動き”が必要です。それは身体や脳への適度な刺激です。特に人間は刺激を必要とする生き物です。“刺激”は生命体のエネルギー源でもあります。もしも、何もない閉鎖空間で動きや刺激がなくなると生命体は不健康になります。身体の健康を維持するためには適度な運動が必要です。人は往々にして“楽をしようとする”傾向が誰にでもありますので、今回のコロナ禍は、活動をしない言い訳になっているかもしれません。活動しないことが習慣になると結果的に不健康の道へと進む恐れがあります。“しんどいな〜”と思っても少し頑張る習慣を身につけると、身体は自然に鍛えられ強化されていきます。よく、“無理をしないように”と相手をいたわる気持ちを込めて言いますが、少しは無理をした方が、身体には程よい刺激になり、強くしてくれる刺激として捉える方が健康的と言えるでしょう。

 

活動を止めてしまうと、精神的にチャレンジすることもあきらめてしまいがちです。人は生きていく上で、心の成長は必要不可欠です。心の成長のためには、自分の心にチャレンジすることも必要です。チャレンジすることでネガティブな感情も湧き上がってきますが、ネガティブな課題も成長の種になります。その種は目を逸らしたくなる様な課題かもしれません。でもその課題に向き合うことで成長の種は確実に育っていくことでしょう。誰の心にも自分では認めたくないネガティブな心が潜んでいるモノです。それが自然の姿です。大自然はすべてポジティブとネガティブで調和されています。昼があれば夜があり、晴れの日があれば、雨の日もあります。


私たちは人生を通じてネガティブな心と共存しながら心の調和を図り、成長し続けていく生き物です。心の健康を維持すためには、誰の心にもあるネガティブな心を受け入れて、その上でそのネガティブな心を、自分にとって意味あるものに書き換えること。すなわちその「解釈力」が問われているのです。そして、このような時期だからこそどのように解釈するのか、その究極的なポジティブ思考が問われているのかもしれません。