2019年12月14日土曜日

「つながり」と「関係性」でとらえる力

先日、NHKのダビンチ・ミステリー(第2集)という番組を見ました。モナリザの絵画で知られているダビンチは、医学、生物学、物理学、工学・・・あらゆる学問に精通していた「万能の天才」と言われています。そのダビンチの思考を分析するために膨大な「手稿」を世界から入手してAI解析を行い、ダビンチの「脳内」を再現するような広大なプロジェクトが紹介されていました。その中で、ダビンチを研究している心臓弁手術専門の心臓外科医は、ダビンチが描いた心臓の内部を現した解剖図に感銘を受けたといいます。その解剖図には心臓の内部の血液の流れが描かれており、血流の渦の回転力で心臓弁を閉じる機能まで解説しているのです。それは500年前に描いた解剖図です。心臓弁を閉じる仕組みは最近のコンピュータのシュミレーションによって、血液の流れを解析することで心臓弁の箇所で渦を巻いてその勢いで弁が閉じられるという仕組みが明らかになったとのことで、どのようにしてダビンチが最新の分析器もない時代に、その弁を閉じる仕組みが血流の渦によって引き起こされているということが分かったのでしょうか?

番組では500年前の分析機器がない時代に、ダビンチがどのように心臓弁を閉じる原理を知り得たのかということが紹介されていました。その秘密をAI解析してみると、ダビンチは「水」に対して異常なこだわりがあったことが分かりました。彼は川の運河を観察し、渦が生じる仕組みを何度も実験し、解剖によって動脈で再現したのではないかと言われています。水は血液と結び付き、生命という根源的な関心へとつながっていく様子が示されていました。まさに水こそが地球を循環しており、世界をつないでいる大切な生命の源になる。理論物理学者・フリチョフ・カプラによると、「世界の全てを知りたいと願ったレオナルドにとって水こそがその象徴だったのではないか」と述べています。

ダビンチは「自然には法則のない結果は何もない」、「法則を理解せよ」と記述しています。フリチョフ・カプラによると、・・・『ダビンチが膨大な知識に基づいて、複雑な仕組みを全体の「つながり」を通して考える発想を持っており、それは、すなわち「システム思考」で物事を幅広く考察し、体系的に考えていたのではないか。」「光学、解剖学、認知科学、存在論など科学や哲学、さらには芸術を融合させ、全ての知識がインターネットのように分かっていたのではないか?」・・・と述べています。ダビンチは科学と芸術の領域を行き来して、さらには哲学をも融合させていたようです。これは、カイロプラクティックの創始者であるDDパーマーや2代目のBJパーマーの考えに通じていますが、もしかすると、ダビンチの影響を受けていたのかも知れません。

番組ではダビンチが幼少の頃から「自然」をくまなく観察していた様子が紹介されていました。そのような「自然」に対する観察力が土台となって、数学や幾何学などの様々な知識とつながり、様々な発明発見につながったのでしょう。「自然」という本質を土台にすることは、様々な法則につながっているようで、「人間の本質」も「自然の本質」につながっているように思います。番組の最後に、・・人類の複雑化、グローバル化が進む現代において、「細分化」する技術では対応できない問題が生じている、これからは「つながり」から世界をとらえる力が求められるのではないか・・というコメントが心に残りました。この番組を通じていろいろなことを考えました。本質的な治療法を長年研究してきた治療家として、「細分化」でとらえる機械論的な診方に限界を感じ、「つながり」、「関係性」でとらえる有機論的な診方へと方向転換した20年以上も前のことを思い出しました。改めてこれまでの臨床研究が意義あるものであり、時代の流れに沿ったテーマであることを再認識し、これからもこのテーマを深めていきたいと心に響くものがありました。


2019年12月12日木曜日

第79回AMセミナーを終えて

先日、今年最後のAMセミナーが終了しました。熱心に参加して下さる先生方と共に学びを深められることをいつも有り難く思っております。AMのことをよく知らない人たちにとっては調整器具自体が強調される傾向にありますが、臨床的な効果につながる大切なポイントは「一貫性のある下肢長検査法」です。二日目最後のワークでは、それぞれの課題に応じてグループワークが行われます。いつも人気のワークは「下肢長検査で反応を読み取るワーク」のグループです。

これは、多くの先生方が、「臨床上、反応を読み取る技術が重要である」ということを認識されているということの表れだと思います。もちろん、コンタクトの仕方も治療効果を引き出す上でとても大切です。これらの技術技能は恐らく教科書を読んだだけでは学べない内容だと思います。繰り返し体験して、他者からのフィードバックを得て「気づき」が得られるものだと思います。この「気づき」は言葉では表せないいわゆる「コツ」のようなものなので、体験して習得するしか方法はありません。

今回のセミナーにおいても、この「気づき」を得た先生が何人もいました。恐らくセミナーで得たいくつかの「気づき」は、ご自分の臨床現場で生かされているのではないでしょうか?「技」というものは、『「頭」ではなく「身体」で覚える』と言われ続けています。まずは、「基礎」の「型」をしっかりと身体に覚え込ませながら、多くの患者さんの身体を通じて、生体反応やコンタクトの程よい感覚を体得していただければと思います。

それではまた、来年度もセミナー会場でお会いしましょう。


2019年12月7日土曜日

「自責」と「他責」どちらが健康的でしょうか?

人は様々な「ストレス」に遭遇しながら生かされています。「ストレス」と聞くと、精神的にネガティブなことだと思われますが、ポジティブなストレスもあります。それは、人それぞれに捉え方、解釈の仕方によって受けるストレスがネガティブになったりポジティブになったりするからです。例えば、あるプロジェクトの責任者に任命された時、Aさんは、「責任者として様々なことを犠牲にして、大きなストレスを抱えなくてはならない・・・」と悲観的に捉えるかもしれません。その一方でBさんは、「このプロジェクトを進めていく過程で、多くの学びを得て、将来の成長のための糧にしよう・・・」と楽観的に捉えるかもしれません。

人間関係において、多くの人が「ストレス」を経験します。自分の部下やパートナーに、期待しているような行動がみられない時、あるいは、自分の上司や周りの人たちに期待しているような評価をしてもらえない時などは「ストレス」を感じやすいと思います。様々な人間関係において、「捉え方」「解釈の仕方」は様々です。大きく分けると「他責」にするか、「自責」にするかです。他責の場合、「自分は正しい」「自分は被害者だ」ということを誰かに分かってほしいということに意識が向いてしまう傾向にあります。一方、自責の場合、「自分のどこに問題があったのか・・・」「自分の何がそのようなことを引き寄せたのか・・・」というような意識が働く傾向があります。

さて、人間関係や組織の関係性において、「他責傾向」の人と「自責傾向」の人では、どちらの方が発展的で、成長への方向へ進みやすいでしょうか?また、どちらの方が健康的でしょうか?ある問題が生じた時、「他責傾向」の人は、問題を解決するために、責任や原因の所在を他者や環境に求めていきます。そうすると、他者が行動を起こさない限り問題は解決しませんし、自分自身が行動を変える必要性は無くなります。そして相手を非難するだけの傍観者になるでしょう。その一方で「自責傾向」の人は、自分の何がそのようにさせたのか?自分の何がそのような問題を引き寄せたのかと考え、自らを変えようとして行動に移して問題解決へと導いていきます。誰がみても99%相手の責任だとしても、「目の前にある課題は、自分の何かが引き寄せた結果であると解釈してその課題に向き合う人もいます。

「自責傾向」の人と、「自虐傾向」の人とは性質が異なります。「自責傾向」の人とは目の前の問題や課題を自分自身の学びや成長の糧にする人です。「自虐傾向」の人は、自分を卑下して、他者からの哀れみを引き寄せようとする傾向のある人です。もしも、それが長期的な心の「クセ」になると、人生は明るいでしょうか?「他責傾向」の人と「自責傾向」の人ではどちらが人生をポジティブに豊かにしていくでしょうか?あなたは、「他責傾向」や「自虐傾向」の人のそばにいたいですか?それとも「自責傾向」の人とともに人生を歩んで成長をしていきたいですか?

人生において健康を維持することはとても大切です。これは、多くの患者様の健康をサポートさせていただき感じることですが、人生に豊かさを感じるのは、様々な問題を自分の課題として向き合う「自責傾向」の人達です。人生の中で「他責」にしたり、「自虐」になったりする経験は誰もがすることかも知れません。私自身も長い人生経験を通じて、「他責」にすることが多々ありました。今でも時折他責にしてしまうこともあります。振り返るとそこには反面教師として学ぶことはあっても問題解決や自分の成長にはつながりませんでした。やはり、自分自身が変わることで現状に変化が現れていました。これは頭で理解しても何も変わりません。実際に行動に移すことで知らず知らずのうちに変化が生じるものです。

恐らく、多くの人は「自責」で考えた方が自分の人生や健康にとっていいとは分かっていても、時には他責的な発言をして共感を示してほしいと思うことことがあるでしょう。私たちはそのような患者様の気持ちをできるだけ理解し、耳を傾けるようにしています。そして、患者様が「自分の気持ちが理解されている」と十分に感じられると、徐々に自責の思考へと変化していく方も少なくはありません。その変化は内容によっては長い期間を要する場合もありますが、私たちは患者様の気持ちを徹底的に理解し、寄り添いながらサポートすることが大切だと考えています。

人生は山あり谷あり、人は人とのつながりの中で生かされています。もしも、現在抱えている人間関係などの問題や課題が「他責傾向」の罠にはまっているのであれば、今一度ご自身の思考パターンや行動パターンを見つめ直す機会かもしれません。他者はコントロールできません。コントロールできるのは自分自身です。「自責傾向」へとシフトして考えることは、人生を豊かにし、健康を維持していく上でとても大切なことになると思います。さあ、「自責」「他責」、あなたのどちらの傾向なのか今一度見直してみましょう。

2019年12月2日月曜日

お陰さまでファミリーカイロプラクティックセンター25周年

2019121日、ファミリーカイロプラクティックセンター(FCC)はお陰様で25周年になりました。1994121日に開業以来、年月を重ねるにつれて本当に多くの患者様に支えられて今日があるということを実感しております。

ご存知のように当院での治療法はどこにでもあるようなものではありません。常に最良の施術法を目指して日々研究を重ねております。海外などのセミナーで新しい知識、技術を得ることもありますが、治療法発展のために最も価値のあるのは、やはり治療現場だと思います。それは、患者様一人一人の「身体の反応」に色々なことを教えていただいているからです。

FCCではどのような「刺激」(検査)に反応し、どのような「刺激」(調整)で効果が引き出されたのか、一人一人の患者様に合うオーダーメイドの施術をさせていただいております。オーダーメイドの施術とは、既製の施術のように「腰痛」=「お決まりの治療法」というわけではなく、同じ腰痛でも、その人が抱えている原因によって、それぞれに最も適した施術を行なっているということです。

FCCが25年間発展し続けた背景には、開業当初からこのオーダーメイドの施術を一人一人の患者さんに継続させていただいた経緯があります。そして、FCCで確認した効果のある施術法は、ライフコンパスアカデミー(LCA)のセミナー活動の一環として、全国の治療家に啓蒙して、他の先生方に使っていただけるかどうかを検証してきました。この活動も治療法発展の一助となっております。

これからも常に効果的な治療法が提供できるように、臨床現場での研究を深め、知恵と技術を両輪のように進めて、高みを目指す努力を積み重ねてまいります。また、FCCLCAのスタッフが定期的に行っている人間学の勉強会も継続し、人間力を高める自己研鑽も努めていきたいと思います。

これからもさらに皆様の健康のお役に立てるように精進していく所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

2019年11月28日木曜日

「健康」と「運気」の安定

先日、田坂広志氏の最新の著書、「運気を磨く 心を浄化する三つの技法」という本を読みました。当院で行っている心身条件反射療法(PCRT)という施術法の根底にある「考え方」が如実に表された内容だったのでとても感銘を受けました。『なぜ、ポジティブ思考が、逆効果になるのか』、並びに『「良い運気」を引き寄せられない本当の理由』が説明されていました。田坂氏によると、いくらポジティブ思考でポジティブなことを表面的に考えていても、無意識的にネガティブな想念がある以上「良い運気」を引き寄せることはできない・・・そして、本当に「良い運気」を引き寄せたいと思うならば、心の中をポジティブな想念で満たす前に、何よりも、心の中に数多く存在するネガティブな想念を消していかなければならない・・・と述べています。

つまり、心の奥にある無意識的なネガティブな想念を消してからポジティブ思考をしなければ逆効果になってしまうということです。このことは、当院で長年研究してきた本質的な施術法の原理原則に通じるものがあり、慢性症状の多くが、心の奥に隠れている無意識的な想念に関係しており、その想念を認識し、書き換えることで症状が改善し、さらには健康を取り戻すことで「運気」も改善している様子がうかがえる実例を数多く経験させていただいているので、田坂氏が伝えたいことはよく分かります。また、田坂氏は科学研究者としての立場から「運気」というものを明らかにしたいと考えており、そうした視点からの「科学的仮説」についても紹介しています。

私は「健康」を研究する臨床家として、長年多くの患者様の健康をサポートさせていただき、「健康」=「安定した運気」というような感覚を持っています。「不健康」=「不安定な運気」のときで、その原因は田坂氏が述べているように、無意識の世界が「ネガティブな想念」で満たされていることが多いようです。「幸せになりたいと願いながら、不幸を引き寄せる人」というテーマでは、心理学者の仮説を引用して、その原因は自分でも気づいていない無意識の世界が自分の行動を支配してしまい、人生の選択を誤らせてしまうことがあると述べています。

多くの人々は何事も「意識」でコントロールしていると思いがちですが、実は意識する以前に「無意識」にコントロールされているのです。このことは、近年、科学研究者によっても述べられています。有名な心理学者が共通して語っている無意識の世界を要約すると以下の通りです。

第一 「無意識」は「意識」の世界からは明確に自覚できない。
第二 「無意識」の世界は力強く、「意識」の世界に大きな影響を与えてしまう。
第三 「無意識」の世界に働きかけて、それを意識的に変えることは容易ではない。

当院ではこの「無意識の世界」を十分に踏まえて、生体反応を利用した「体に聴く検査」を行って、「無意識の世界」を探索します。そして、健康を阻害している「無意識の想念」を認知してもらい、それを書き換える調整を行っています。その結果として症状が改善し、健康を取り戻すことができます。心と身体の関係性、「心身一如」という観点から、慢性症状が心の奥にある「無意識」と関係するということは、頭で理解しても体験しないと信じられないということもあるかもしれません。当院では「無意識の気づき」によって、症状が改善される患者様が多いので、無意識の世界の影響は理解しやすいと思いますし、さらには、その気づきによって「運気」も上向きに向かっているということも合わせてご理解いただければと思います。「無意識の世界」を明確にして「健康」と「運気」の安定を維持していきましょう。

2019年11月26日火曜日

ジストニア治療のための新たな発見

先日、ジストニア(痙性斜頸)の患者さんが3人来院され大きな発見がありました。3人とも治療前と治療後に確実に効果が示されたので、この新たな発見に確信を持ちさらなる可能性を感じているところです。この発見は以前から筋骨格系の患者さんの症状の改善から分かっていたことではありましたが、ジストニアの患者さんにおいて、機能神経学的な視点や筋肉系を重要視していたあまり、ある意味盲点になっていたように感じました。

PCRTのプロトコルに従って幅広く、客観的に検査すれば引出されるEB(生体エネルギーブロック)なのですが、恐らく、「ジストニア=神経学的機能異常」というような偏った見方がどこかにあり、無意識的に視野が狭くなっていたのかもしれません。もちろん、PCRTは心身相関、経絡、機能神経学も含めて、幅広く原因となる誤作動記憶を検査していきますが、「神経系が身体の働きの全てをコントロールしている」という偏った思想が根底にあるがゆえに、見逃していた可能性もあります。

脳・神経系が損傷してしまうと確かに身体の機能が失われるので「神経系が身体の働きの全てをコントロールしている」よって、「神経系の働きを整えれば、身体の症状が改善され健康が維持される」というのはある意味正しいかと思いますが、病気や症状の原因を探求する際、この理屈で全ての症状を改善しようというのは、かなり偏った思想になるかと思います。私自身もカイロプラクティック大学を卒業したての頃は、「神経系の働きを調整すれば様々な症状が改善される」という信念で施術を行なっていた時期がありました。しかし、臨床現場で「原因と結果」を追求すればするほどこの考え方には偏りがあることが分かりました。

かれこれ20年以上前に気づいたことですが、「神経系の働き」の異常は、様々な他のシステム(系)に関係しているということです。例を挙げると、東洋医学の施術の基準となる経絡も身体全体におけるシステムの一つです。「経絡の働き」が乱れれば、「神経系の働き」も乱れ、その逆も然りです。神経系も生体エネルギーの一つですが、「生体エネルギー論」の視点から見ると、様々な生体エネルギーに関係するシステムが調和しあって生命力や治癒力が維持されているのです。よって、神経系のシステムだけを強調し過ぎるあまり、他のシステムが盲点となって、改善するはずの症状も改善し難くなるということが私の臨床体験から導き出された気づきです。

今回の発見には、その日にたまたま3人の痙性斜頸の患者さんが来院されたという偶然が重なったという影響があったかもしれません。まず、一人目の患者さんは大学生の女性です。来院当初は首が右に傾いて、正面に向くことが出来ない状態でした。しばらく通院していただき、現在ではかなり改善しているのですが、今回の目安検査では首の左回旋と前屈時に多少の傾きが生じていました。いつものようにどの領域にEBがあるか検査をしてみると、前回示されていた神経学的な領域や筋肉系の領域には反応が示されませんでした。「もしかすると」という直感で、新たな領域を加えると陽性反応が示されました。この領域をEBとしてPCRTのプロトコルに従って調整を行うと、その後、明らかにその動きの異常が改善しました。

二人目の痙性斜頸の患者さんは、来院当初はかなり頸部の傾きが強く、仕事も出来ない状態。現在では仕事には支障はないものの、まだ正常とは言えない状態。その日の目安検査では特に前屈の動きができない状態。そこから通常のPCRTプロトコルと前回と同様の領域を加えて調整を行ったところ、一人目に続いて前屈の異常運動が明らかに改善されました。三人目の痙性斜頸の患者さんも初回の来院時は頸部の傾きはもちろん、異常姿勢や不随意運動も強い状態でした。その日の来院時には初診時に比べると改善はしているものの、頸部が右に傾いている状態で、仰臥位においても首が右に傾いて左には容易には向けない状態でした。この患者さんも通常のPCRTプロトコルに加えて、同様の領域を追加してみると、陽性反応が確認され、調整後には首が真っ直ぐに向けるようにまで改善しました。

今回の発見は、その領域だけで全てのジストニアに効果があるということではありません。あくまでも通常のPCRTプロトコルに追加されたEB領域ということで、盲点になりやすい領域であるということです。PCRTの調整法は常に臨床現場からの偶然の発見から発展しているように思います。今回の発見もその一つで、この発見はジストニアの治療に限らず、他の症状においても有効に活用ができると思います。この新しい発見には確信を得てはいるものの、セミナーで紹介するには繰り返し検証が必要だと考えています。他にもジストニアの患者さんが通院されているので、さらなる追試を繰り返し検証を重ねた後、来年度のPCRT上級セミナーでこの発見の内容をご紹介させていただく予定です。PCRT上級セミナーに参加資格のある方はご期待ください。

2019年11月21日木曜日

「技」を極める

手技によって行われる施術は徒手療法、あるいはマニピュレーションと呼ばれています。カイロプラクティック、整体、オステオパシーなど様々な施術法があります。アクティベータ・メソッド(AM)もカイロプラクティック大学で教えられているテクニックの一つです。筋骨格系の痛み症状に対しては即効性のある効果的な施術法です。一見シンプルに思える施術法ですが、その「技」には奥深いものがあります。最近ではオンラインによる動画で学ぶこともできるようになっていますが、「技」をマスターするためには、実際に体験し、多くの熟練者の技術をライブで体感することが重要だと思います。「見て学ぶ」ことも大切ですが、その情報「インプット」した後は、実際に行って「アウトプット」し、他者からのフィードバックをもらい「微調整」をすることがさらに大切になります。

「見て」→「体験して」→「フィードバックを受けて修正」この一連の流れを繰り返し継続して、自分なりの「コツ」を掴むことが上達の近道です。「コツ」の掴み所は人それぞれですが、それは「体験」を通じてのみ得られるものなので、マニュアルを読む、動画を見るだけで得ることは難しいでしょう。例えば、AMの下肢長検査のポジション1では、術者の立ち位置、手の当て方、頭上方向への圧の加え方など説明はマニュアルに記載されているので分かると思いますが、踵骨部から頭上圧をゆっくりと加えて、反応下肢側の緩みが感じられるという感覚、軸圧刺激によって神経関節機能異常の神経学的反応を引き出す「コツ」は実際に体験しなければ分からない「感覚」だと思います。これは、単にどちらが短いとか長いとかの単純な「見方」ではありません。神経学的生体反応の「感覚」をご自身の臨床現場で繰り返し体験することで、自分なりの「コツ」として掴めるようになるのだと思います。

まずは、「基本の型」を習得し、次に実際の「生体反応」を読み取る「技」を習得します。もしも、反応が読み取れる段階に入ると、どの部位の関節、あるいは筋肉に神経学的機能異常が生じているか否かが分かるようになりますので、結果的に筋骨格系の痛みなどの施術効果が出せるようになります。ただし、しっかりと安定したコンタクトが出来ていることなどの臨床的なスキルも当然のことながら必須条件になります。このコンタクトの仕方も、教科書的には〇〇パンドという数字的な記載はありますが、同じ年齢の大人でも体格は異なりますし、筋の緊張度、過敏度は人それぞれに異なります。アクティベータ器による圧の加え方において、科学的なデータから導き出された基準圧を参考にすることは必要ですが、臨床では臨機応変に目の前の患者に合わせてコンタクトすることが大切です。このことも実際に「経験」を積み重ねることによってのみマスターできることだと思います。

ある程度のAMの「技」がマスターできると、患者さんにも喜ばれるようになり、治療家としての自信がついてきます。治療家としての自信は大切なのですが、中途半端な「技」になると、我流へと傾いて、偏った反応でしか読み取れなかったり、偏ったコンタクトによって、引き出せるはずの結果が出せなかったりというような状態に陥ることもあるようです。これは、ある意味自信過剰になって、知らず知らずのうちに自分の「技」の盲点に気づかないままになっていたといえるでしょう。そして、結果が引き出せない原因を自分の技量ではなく、テクニックのせいにしてしまうのです。厳しいことを言うようですが、これは私が20年以上アクティベータ・メソッドを教える立場を継続させていただいた経験に基づく見解です。もっと粘り強く真摯に「技」を極めて欲しいと願います。真摯に継続すれば必然的に身に付く「技」です。そして、ある程度の「技」を極めれば、治療家としての一生の財産になると私は思います。

それでは、次回のセミナーで皆さんと共にさらに「技」に磨きをかけていきたいと願っております。

2019年11月15日金曜日

2019年度PCRT上級セミナー後のフィードバック

今年最後となるPCRT上級セミナーが先日開催されました。PCRTは毎年進化し続けているため、年に一回参加される方にとっては、ハードルが高いところもあったかもしれません。PCRTの基本的な手順を踏まえての上級編ですので、「手順」よりも「本質的な原因と結果」に焦点を当ててご紹介させていただきました。今回初めてご紹介した音叉を利用した骨、靱帯、軟骨などの検査法は、主に筋骨格系の症状を抱えた患者さんには有効で、筋肉、筋膜、神経系だけの視点を超えた幅広い領域で効果を引き出すことができると思います。

ジストニアとイップスに関する調整法もご紹介させていただきました。このような症状はまさに脳の「誤作動記憶」による結果であり、脳の機能や神経の経路だけを理解して、機能低下がある神経機能を刺激するだけで改善するという単純な症状ではないということがある程度ご理解いただけたのではないでしょうか。脳の神経回路は教科書に記載されているような「線形」に表される単純な神経の経路だけで働いているわけではありません。「非線形」で「複雑系」の要素が強く、様々な脳の神経回路、すなわち無意識領域の複雑性が関係しています。

ジストニアやイップスの症状が改善する過程において、この「無意識領域」の「気づき」が必須条件になります。この「気づき」を引き出すためには有効な手順が必要で、意識レベルのカウンセリングで引き出せるものではありません。「心(脳)と身体の関係性」における検査と調整を行うことで、その「気づき」が可能になります。類似した症状でも人それぞれに原因があり、早期に改善する患者さんもいれば、時間がかかる患者さん、一度改善してもぶり返す患者さんなど様々です。このような様々な患者さんの治療の経験を重ねていく過程で、早期に治る患者さんと、期待通りの改善が見られない患者さんとの違いも見えてくると思います。

「心と身体の関係性」、「意識と無意識の関係性」、「脳の誤作動記憶」という領域を長年研究してきたPCRTですが、全てのジストニアやイップスの症状に有効とは言い切れません。これは他の症状においても同じことが言えますが、まずは治療を依頼してくださる患者さんとの信頼関係です。患者さん自身が治療法のコンセプトをある程度理解され、さらに、施術後に治療効果を体験して施術者ならびにその治療法を信頼してもらうことが大切です。あまりにも大きな期待を抱かせるような誇大な広告は信頼関係を損なう要因にもなりますので、あくまでも「可能性」として一度体験していただき、患者さん自身がその効果に納得できる前提で治療を継続してもらうことが大切だと思います。

治療者にとって、まずは「結果」が出せる「技」を身につけなければ始まりません。ジストニアやイップスにも程度があります。慢性的な肩こりや腰痛、眼瞼痙攣(ドライアイ)なども軽度のジストニアとして分類されている文献もあります。まずはそのような慢性症状を改善できる「技」を身につけて、施術の幅を広げていくことが必要かと思います。このような「技」を身につけるには、ジストニアとイップスのセミナーを単発で受講したからといってできるわけではありません。まずは、PCRTの基本となるスキルとコンセプトをしっかりとマスターすることが必須条件になります。何事も軸となる「基本」が大切で、その上で「応用」を加えて、臨機応変にそれぞれの患者さんにあった施術を創造していきましょう。

それでは、来年さらに進化したPCRTセミナーでお会いできることを楽しみにしております。

2019年11月9日土曜日

「私はいい人である」という「基準」がもたらす緊張 (赤面症)

赤面症で通院されている患者さんの一コマで、奥に隠れていた誤作動記憶のパターンが分かったのでご紹介したいと思います。赤面症の症状は初回からするとかなり改善され、表情にも豊かさが現れている様子、でも時折、症状が出るのではないかと不安になるような状態。

目安検査で示されたのは、近所の人と対面で話をする場面のイメージで陽性反応

誤作動記憶の検査をすると、「恐れ」の反応

術者:「今までの傾向だと、“どのように評価されるか”ということがよく反応で示されていたと思いますが・・・」

術者:「今回も「いい人」であるかどうかの評価が気になっている自分がいる可能性がありますか?」

患者:「そうですね・・」

PRT陽性反応

術者:「ご自分にとって“いい人の基準”があるとしたら、どんな人でしょうか?」

患者:「“人に迷惑を掛けない”、“嘘をつかない”、“人の悪口をいわない”・・・」

術者:「それは悪い人ではない基準になりそうですが・・。悪い人でなければいい人のようになっているかもしれませんね・・・」

術者:「いい人の基準というと、幅が広いと思うのですが、心当たりのあるいい人の基準、あるいはモデルはないでしょうか」

患者:「・・・・・ん? 漫画の主人公???」

PRT検査

術者:「あっ、今の言葉で反応しているので、その漫画の主人公がいい人の基準なのでしょうね」

術者:「脳(無意識)は漫画の主人公のようなヒーローが基準になって、そのように評価されているかどうかを気にして緊張しているということですね・・・」

患者:「・・・・あ〜なるほど、それはあり得る(笑)」

調整を行い、誤作動記憶の反応は消失しました。

[考察]
患者さんは昔から漫画が好きで、よく読まれているとのこと。恐らく知らず知らずに漫画の主人公の人格が自分の無意識に投影されて「在るべきいい人」の基準になっていた様子です。以前にも別のキーワードで「漫画の主人公」が関係して誤作動記憶の調整をしたことがあり、今回は患者さんも比較的早く「漫画の主人公」が関係しているかも・・・と察しがついた様子でした。今回の誤作動記憶のパターンは、「相手にどのように思われるのか」ということが誤作動記憶の原因になっていました。

そして、それは以前にも繰り返されていた誤作動パターンなので、さらにその奥にある誤作動記憶のパターンを引き出すために質問を深めていました。「人にどのように思われるか」ということは誰もが気に掛かることです。しかしながら、人それぞれに「基準」が異なります。いい人の基準のハードルを高くすれば、緊張度は高まりますし、逆にハードルを低くすれば、緊張度は低下します。注目すべきはその人がどのような「いい人の基準」で緊張のスイッチを入れているか、さらにはその「基準」ができた「経緯」はどこからかということです。

今回の事例ではよく読んでいた漫画の主人公からの情報によって、「いい人の基準」が学習記憶された様子でした。私たちは、幼い頃から見てきたヒーローものや、悲劇のヒロインを主人公にした漫画やドラマで、知らず知らずのうちに影響を受けていることもあるようです。そして、それが隠れた信念体系となり、心の基準を創って、メンタル面や身体面に制限をかけてしまうようです。「まさかそんなことが心身に影響を及ぼすなんて・・・」と思われる人もいるかもしれませんが、脳の神経回路の誤作動記憶という視点から見ると、起こりうる因果関係です。このような施術で改善する多くの患者さんの実例から見ても辻褄があいますし、患者さんご自身が納得されていることがとても大切だと考えています。さらなる改善を期待しています。

2019年10月23日水曜日

痛みはどこから?骨、靭帯、軟骨からの痛み

腰痛や関節痛の痛みはどこから来ているのか?痛みの症状を改善させるためには痛みに関連する部位の特定が必要です。痛みの種類は発生源から分類すると3つに分けられます。まずケガや火傷のときの痛みのように、その部位に炎症が生じ、痛みを起こす物質が発生して知覚神経を通じて脳で痛みを感じる「侵害受容性疼痛」と呼ばれる痛み。次に構造的な異常が見えないにもかかわらず痛みが生じている「神経障害性疼痛」と呼ばれる痛み。そして、3つ目は、「侵害受容性疼痛」にも「神経障害性疼痛」にも当てはまらず、「心因性疼痛」と呼ばれている分類の痛みで、これは心の問題というよりも脳の認知の異常によって生じる痛みです。その問題の本質は心(精神機能)ではなく、「脳(無意識と身体との認知機能)」にあると考えられます。

そして、多くの慢性症状は、これらの痛みの発生源が複合しています。症状の種類や慢性化の程度などによって「神経障害性疼痛」の問題の度合いが大きかったり、あるいは「脳(無意識と身体との認知機能)の問題の度合いが大きかったりします。慢性症状で一時的に症状が改善されても、すぐに振り返す場合には、特に「脳(無意識と身体との認知機能)」に原因が隠されていることがほとんどです。先日もある膝関節を抱えた患者さんで、振り返す原因を検査していたところ、単に関節を構成する筋肉や関節だけでなく、半月板や前十字靭帯そのものの誤作動記憶が関係しており、その誤作動記憶を調整することで症状が改善された事例があり、改めて無意識と身体との関係性による誤作動記憶、すなわち脳の認知に関係する領域が痛みに深く関わっていたことを確認しました。

通常の医学的な視点からすれば、筋肉や筋膜に分布する神経学的機能が痛みに関係する発生源になると考える傾向にありますが、神経分布の少ない靭帯や軟骨も慢性症状の痛みの発生源になっており、それは脳の誤作動記憶に深く関係しています。筋肉の機能異常による痛みに関しては、マッスルテストによって比較的容易に検査することができますが、靭帯や軟骨、骨などはそれ自体での動きがない組織ですので、エネルギーブロック(EB)の検査には、特殊な検査をしなければなりません。その検査法はPCRT上級編でご紹介させていただきます。

この検査法をマスターできると、慢性的な関節痛の隠れた痛みの発生源の特定が容易にできるようになり、慢性症状の改善度がさらに高まると思います。次回のPCRT上級編では、骨、軟骨、靭帯からの痛みの発生源を特定し、調整する検査法に加えて、ジストニアやイップスなどの調整法など、上級でしか学べない内容をご紹介させていただきます。皆様のご参加を楽しみにしております。

2019年10月14日月曜日

「友達が多い方がいい」という信念の影響―痙性斜頸の施術過程での一コマ

本日、痙性斜頸の施術の過程で深い気づきがあったので、書き留めておきたいと思います。現在、大学1年生の女性が痙性斜頸で通院中です。本人も随分よくなってきているとの自覚があり、施術は順調に進んでいます。施術の過程でとても良い気づきがあり、そのことが症状改善につながっているということがよく分かります。その気づきの過程を一部シェアさせていただきます。

誤作記憶の検査では、以下の反応が示されました。
「喜び」→良い成績→さらに深く→「存在感」の反応。成績が良いことで人に評価され存在感を維持できているという認識。
「慈悲心」→友人関係で自分→人格的に切るに切れなくてだらだら続いてお付き合いする自分→ネガティブな思考を持つお友達に振り回されるので、もっとポジティブな思考をもつお友達とお付き合いして自分を高めたいと願う。それが一年ほど前からの悩みで現在でもその悩みは続いているとのこと。

そこで、悩みパターンに関係する「誤作動記憶」を検査。すると信仰心のキーワードで反応→友人関係→質問から「友達は多い方がいい」という信念があり、それは、先に示された「存在感」にも関係していました。

つまり、「友達は多い方がいい」という信念は、心の奥で大切にしている「存在感」につながっており、「友達が多ければ、自分の存在感は高い」という心の構造の一つになっていました。その信念が「心のブレーキ」になり、それがあるが故に切りたくても切れない友人関係のジレンマにつながっていたということが明確になったということです。

そして、その施術後の改善も明らかに示されており、下に向く動作でも首が傾く動作はほとんど再現されず、スタッフによると受付から帰る際の動作でも、ジストニア特有の手を添える「感覚トリック」の動作も見られずに帰られたとのこと。

今回は9回目で2枠の施術時間で週に2回のペースで通院されています。まだ、完治したとは言えないまでも初心時の症状に比べるとかなりよくなっているのは明らかなので、この調子でさらにぶり返すことなく良い方向へと改善してほしいと願っています。

2019年10月10日木曜日

「知識」だけでは得られない体験型セミナーの価値

時代の流れと共に、セミナー活動の価値も随分と様変わりしてきたようです。10年以上前のセミナーでは、最新の理論や知識に基づく技術には多くの受講者が興味を示してくれていたように思います。近年ではインターネットやSNSの普及に伴って、その価値はセミナー講師から習うというよりも、ネット検索から習うという方向へとシフトしてきており、素人と玄人の境界、プロとアマの知識の壁が少なくなってきているように感じます。また、ネットによる学習は知識だけでなく技術でさえも動画で学べる時代になっているようです。

しかしながら、技術、知識の学習は見様見真似で学べても、実際に自らが行動して体験しなければ技術を習得したとは言い難いと思います。「知識」と「知恵」の学習に分けるとすれば、「知識」の学習は書籍やネット情報からできますが、「知恵」の学習は実践的な体験を通して深く洞察し、言葉では言い表せないコツを自らが掴んで行くことでしか体得できないでしょう。

イギリスのオックスフォード大学は、近い将来に現在ある仕事の90%は機械・人工知能(AI)に置き換えられると公表しました。また、野村総合研究所は、この先15年で今ある仕事の49%がなくなるというレポートを発表しています。AI(人工知能)の研究が進歩するにつれて、医学の世界においても人に変わってAIが診断をする時代になるといわれています。機械学習やディープラーニングを通じて、AIが徐々に人間が行うような複雑な問題に対応できるようになってきているという現実があり、病気の診断もAIを通じてできる時代が来るということだと思います。

自然治癒力を引き出すことを目的とする徒手療法においても、AIがその代役を担ってくれる時代がくるかもしれません。AIの発展に伴って、施術者の学び方もだんだんと変化が現れています。そのような時代の流れに沿って、LCAでは体験型のセミナーに重点を置いてから5〜6年が経過しています。特に強調しているのは自らが体験して学びを深める手法です。実技を行うことはもちろんのこと、人の実技を観察してフィードバックすることも大切な体験です。見て、聞いて、考えて、行動する体験にこそAIに勝る技術技能が身についてくるのだと思います。

人工知能が発展する時代において、「治す」ことを目指す自然徒手療法家に必要なのは生体の「働き」の異常や生体エネルギーブロック部位を的確に特定して、調整できることだと思います。専門的な知識、情報が検索すればすぐに取り出せる時代において、生体の機能異常部位、さらには生体エネルギーブロックの部位を瞬時に検査できる技法は、恐らくAIに取って代わることはできないでしょう。私たちはそのようなAIが発展しても到達できない人間の感性や能力を磨いて、自然徒手療法の価値を高めることが求められる時代になってくるのだと私は思います。


2019年10月1日火曜日

FCCニュースレター2019.10-11 心理社会的要因がもたらす病気

2016年の総務省のデータによると55歳から79歳までの主な死亡原因は1)ガン2)心疾患(心臓の病気)3)脳血管疾患の順になっております。ガンと心疾患は統計的に見ると年々増加傾向にあります。その一方で、脳血管疾患による死亡率は減少傾向にあります。医学が進歩しているにも関わらずガンや心疾患はなぜ増え続けるのでしょうか?それは、ガンや心疾患が心理社会的要因、すなわちメンタル面が関係している可能性があるからです。医学は肉体構造を修復する技術において素晴らしい成果を上げてきましたが、心理社会的要因と病気との関係性を対象にした研究はほとんど進んでいません。恐らくその領域の研究が進んでないが故にガンと心疾患の死亡率は年々増加傾向にあるように思います。

心臓病学は過去100年の歴史でステント、ペースメーカー、冠動脈バイパス手術、心臓移植など科学的な進歩と共に多くの心血管系死亡率の低下に寄与してきました。しかしながら、その進歩を続けるには限界に近づいていると、Dr. Sandeep Jauhar心臓外科医が警鐘を鳴らしています。彼は心臓外科医として20年の経験を持つ医師で、心臓病の問題に対して新しいパラダイムに移行する必要があると述べていました。そのパラダイムとは、医師の間で心理社会的要因を最前線の問題として考えるべきであるということです。

医学雑誌「サイエンス」に掲載された1980年の研究で、研究者らはケージに入れたウサギに高コレステロール食を与えて、心血管疾患への影響を研究しました。彼らはあるウサギが他のウサギよりもはるかに多くの病気を発症したことを発見しましたが、その理由を説明できませんでした。彼らは恐らくウサギとどのくらいの頻度で接触したかに関係があるのではないかと考えました。そこで彼らは同様の研究を繰り返し、1つのグループでは、ウサギをケージから取り出し、かわいがり、話をし、遊んでおり、もう1つのグループでは、ウサギをケージに入れたままにしておきました。その後、彼らは人間の相互作用を受けた最初のグループのウサギは、コレステロールレベル、血圧、心拍数が類似しているにもかかわらず、他のグループのウサギよりも大動脈疾患が60%少ないことを発見しました。

また、1990年にイギリスの医学雑誌「ランセット」に掲載された研究論文では、一つのグループを食事療法や適度な有酸素運動だけ、もう一つのグループを食事と運動にプラスして心理社会的サポートやストレス管理のアドバイスを行なったグループに分けて長期に調査しました。すると食事療法や運動だけでは心臓疾患の予防には至らず、心理社会的サポートやストレス管理の必要性が明らかになったそうです。つまり、運動や栄養バランスだけではなく、人と関わる心理社会的要因が心臓病の予防に大きな影響をおよぼしているということです。このような心理社会的要因は通常の健康診断では分かりません。たとえ健康診断で問題がなくても、もしかするとストレスの影響を受けているかもしれません。大したことがないと思われる症状でも、何らかの不調を身体が訴えているかもしれません。

当院では「心と身体の関係性」=「心理社会的要因」を長年研究しております。様々な心理社会的要因が健康に悪影響を及ぼさないように予防的サポートをさせていただければと願っております。お気軽にご相談ください。

2019年9月26日木曜日

ICC国際コーチンング連盟認定国際コーチ養成講座のご案内


いよいよ1221日よりICC国際コーチング連盟認定国際コーチ養成講座が開催されます。様々なコーチ養成プログラムがある中で、ICCのコーチ養成ブログラムは世界的に評価されています。ICC国際コーチング連盟が2001年に創設されて以来、現在、67カ国から約13000人の国際認定コーチがこのプログラムから誕生しています。国境や文化の違いを超えた人間関係の本質に通じるプロコーチ養成プログラムであることが伺えます。世界各国で年間100以上のICCコーチ養成プログラムの講座が開催される中で、本年度日本国内で開催されるのは本講座のみになります。https://internationalcoachingcommunity.com

ICCのトレーニングは色々な種類のコーチングから様々なモデルを取り入れているので、幅広いコーチングモデルを学ぶことができます。また、ICCトレーニングの特徴として、単にコーチングのスキルではなく、人の在り方や価値観、信念などを心理的に深く掘り下げながらゴールへと進めていく手法は多くの受講者から高い評価を得ています。

単なるスキルではなく、理論的背景に裏付けられた実践トレーニングは、本や動画など座学の「知識」では得ることのできない新しい「体験」、「気づき」をもたらしてくれます。本講座を受講されることで、ご自身の深い部分に何らかの変容がもたらされ、人生やビジネス、人間関係など様々なシーンにおいて役立つことでしょう。「知識」とは「言葉で表せるもの」であり、「書物」から学べるものです。一方、「知恵」とは「言葉では表せないもの」であり、「経験」からでしか学べないといわれています。スマホで検索すれば、ありとあらゆる情報が引き出される現代において、「直観力」「洞察力」「大局観」などと呼ばれる知性がさまざまな分野で求められています。そのような知性は深みのある経験を通じて磨かれ、その経験を通じて本質的な「知恵」が蓄えられていくのではないでしょうか?

ハーバード大学による75年にわたる調査で判明した「幸せな人生」とは、富、名声などではなく、「良い人間関係」であると結論づけています。良い人間関係は仕事、家族、友人など様々な分野において必修条件です。良い人間関係を築くにはどうすれば良いのでしょうか?その答えは「知識」だけでは簡単に学べるものではないでしょう。おそらくそれは経験によって培われる「知恵」であり、もしかすると、本講座にはそのヒントが含まれているかもしれません。

ご自身の無限の可能性を信じ、さらなる高みを目指そうとされている先生方にはぜひ参加していただきたいトレーニングです。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

2019年9月23日月曜日

「How to」を超えたさらなるステップ アート=直感力=人間力

徒手療法を施す施術者が施術法を学ぶにあたって、多くの治療家は「どのようにするのか?」という手順、技法に目を向けます。次にその背景にある「なぜそうするのか」という理論や哲学、そして、その理論に科学性があるのか、あるいは技法に客観性があるのかということに注目します。

多くの施術者が同じ施術法で同じ結果を出すためには、「どのようにするか?」(How to)を統一する必要性があります。そして、「なぜそうするのか?」(Why)を同じように説明できなければなりません。現代医療は科学という客観的な検証に基づいた医療が主流ですので、客観性があると多くの患者さんが信頼を寄せてくれます。

様々なカイロプラクティックのテクニックがある中で、アクティベータ・メソッドは半世紀以上にわたって同じ手法と理論を継承し続け客観性を重視してきました。そして、それを活用している世界中の多くのカイロプラクターが、腰痛や関節痛などの筋骨格系症状に対して自信を持って施術を行っています。

効果を引き出すためには、神経関節機能障害の神経生理学的エラーを感知できる下肢長検査の熟練が必要不可欠です。また、調整する際の適切なコンタクトと調整法のタイミングの技法も“コツ”があり、それは教科書だけでは学べない内容が多く、その“コツ”をセミナーで習得する必要があります。

効果を引き出すためには、上記に述べた「How to」が必須条件になりますが、機械の修理とは異なって、心を持った人間を対象にしているので、同じような腰痛患者でも人によって微妙に異なります。言葉の掛け方、検査の仕方、説明の仕方など、患者一人一人に合わせて接し方を変えなければなりません。それは、言葉では表しにくいアートの領域であり、経験から導き出される「直感力」や「人間力」が必要になります。

そのような臨床における施術者としてのアートの領域は経験を積んでいく必要性があります。単に「どのように」(How to)だけを習得すればそれで終わりではなく、「なぜそうなるのか」(Why)や臨床で大切な「直感力や人間力」を深める必要性が求められるでしょう。

私はそこに治療者としての奥深い醍醐味があると考えています。毎日の臨床において、本当に一人一人の患者さんの立場になって、その方の未来を考えて真摯に向き合っているのか?患者さんのニーズに幅広く応えることができる治療者になるための努力を怠っていないのか?当たり前のことではありますが、日々問いかけるように心がけています。

2019年9月12日木曜日

2019年度PCRT中級2を終えて

今回は台風が東京を通過するという最中、無事に中級2のセミナーを終えることができました。基礎1から中級2までのシルバー認定受験資格が得られる最後のプログラムでした。本年度、最初から全てのプログラムを受講していただいた先生方が着実に成長している過程が明らかに感じ取れました。イップスの症例報告をしていただいた先生も今年から初めて参加していただきましたが、PCRTのコンセプトや手法が明確に示された分かりやすい内容の症例報告でした。

PCRTの特徴である「身体をエネルギー体として診る」「物質や情報をエネルギーとしてとらえる」、並びに慢性症状を単に「機能異常」だけでなく、「誤作動記憶」として捉えるところ、また、原因を単一ではなく、「関係性」によってもたらされた複合因子であるという点についての理解が、机上の空論ではなく、実践的に理解していただいたのではないかと思います。そして、多くの慢性症状が身体内だけの機能異常を調整する「閉鎖系」の視点だけでなく、身体機能と肉体外や無意識の心理社会的要因との関係性も含めた誤作動記憶の機能異常を調整する「複雑系」の視点が必要であることも実感していただけたのではないかと思います。

今回のPCRT中級2までのプログラムでエネルギー的な視点での「蟻の目」、「鷹の目」、そして時系列的に流れを読む「魚の目」のスキルを上げることが、有機論的な視点を持った施術者にとって重要であるということを学んでいただいたのではないかと思います。次回11月10日11日に福岡で開催予定の上級編では、シルバー認定以上レベルの内容をご紹介させていただきます。心身相関に関連するイップス、遠隔治療、ダミーや模型などを使った代理検査や調整法などをご紹介させていただきます。

2019年9月11日水曜日

施術に“魔法”や“マジック”はない?

代替医療の治療者が施術をして驚くような結果がでると、施術を受けている人やそれを見ている人は“魔法”や“マジック”のように感じることがあります。また、施術者自身が「“魔法”の〇〇法」というように、自分の施術や手法を宣伝する目的でそのような言葉を使って注目を集めようとしたりします。自然治癒力を引き出す施術法に魔法やマジックが本当にあるのでしょうか?

私は長年代替医療の世界にどっぷり浸かってきた人間です。「なぜ、治るのか、治らないのか」を探求し続けてきました。代替医療の専門教育を長年受けてきました。理論や理屈も大事にしてきましたが、何よりも臨床現場における結果に興味を注いできました。代替医療の中でも本場の米国で発祥したカイロプラクティックには大きな影響を受けています。学生時代から様々なカイロプラクティックのセミナーを受けました。若い頃に遭遇した米国のカイロプラクター(治療者)の施術を目の当たりにして、最初は“魔法”というよりも半信半疑で見ていたことを思い出します。

そして、研修を重ねるにつれて、臨床現場で自分でも同じような結果が得られると、そこから「なぜ、そのような結果」が得られるのかという「本質への探求」が始まりました。捻挫で足を引きずる、あるいは腰痛のために車椅子で来院されるような重度の症状を抱えた患者が、普通に歩いて帰ることができるなどの結果がある一方で、結果が伴わない患者さんに遭遇することもあります。「その違いは何か?」という本質的な因果関係への探求は現在でも大きなテーマです。

魔法のようにも思える施術法の本質は何か?そもそも、なぜ魔法のように感じるのか?それは多くの人々の考え方、受け止め方が現代医学の「科学信仰」に基づいているからです。代替医療の多くは特に目には見えない「生体エネルギー」を対象にして施術を行っているので、そのような施術で効果が現れれば、「あら不思議」、「魔法みたい・・」となるわけです。折れた骨をつなぎ合わせる、飛び出た軟骨を取り除く、あるいは詰まった血管の通りを良くするなど、目で確認できる施術は何の不思議もありません。当たり前の治療になります。

代替医療の中で、自然治癒力を引き出すことを目的に施術を行っている治療者は、多かれ少なかれ目には見えない生体エネルギーを基本に施術を行っているはずです。もしも、そうでなければ、それは現代医療の考え方に基づいて目に見えるモノを対象に施術している可能性があります。現代医学の医師と同じ目線で症状を捉えているということになるかもしれません。もしかすると、現代医学に基づいた考え方だからこそ安心感を感じ、あるいは当たり前の考え方として感じる人も少なくはないかもしれません。言い換えると、現代医学とは異なる考え方で症状の因果関係を説明されると“怪しい”ということになり、たとえ施術で症状が改善してもそれは“不思議”となるのかもしれません。

多くの人たちにとって現代医学の考え方は“当たり前”になっています。そして、その考え方から外れた考えで施術効果が現れると“魔法”や“マジック”のようだとなるわけです。もしも、目には見えない生体エネルギーによって、私たちの身体の働きが調整されているのだということが当たり前の考え方になれば、代替医療の施術は至極当たり前の療法になるのですが、科学が主流の現代医療の世界において、目には見えないモノを信じるということはまだまだ難しい課題のようです。

2019年9月3日火曜日

期外収縮(脈が飛ぶ)の原因を知りたい・・・

「期外収縮の原因を知りたい・・・恐らく精神的なことだと思うのだけれども・・・」以前から腰痛や関節などの症状で当院を利用していただいている患者さんのご要望だった。患者さんは当院の治療のコンセプトをよく理解していただいていたので、時折起こる期外収縮の原因が無意識のメンタル面に関係しているということは薄々感じていた様子だった。

病院でも期外収縮の検査をしており、特に器質的な異常は見られなかったとのこと。でも、時折、期外収縮が起こることがあり、脈が飛んで不整脈を感じるという。来院時には期外収縮は生じていないので期外収縮が生じていた際の記憶を指標に検査を進めた。

謙虚な方であるが、能力も人間性も高く、責任のある立場で長年お仕事をされてきたように感じる。関係していたキーワードは「自尊心」、その方への質問として、「お仕事に関して密かに誇りや自信に思えることで、周りからも高く評価されている理由があるとしたら何でしょうか?」と質問した。

色々と考えながら、4つほどの項目が引き出されました。そして、それらの項目毎に調整をさせていただいた。思いついた項目の内容は、施術者には開示せずに患者さんだけがそれを認識された。そして、「恐らくご自身が誇りに思えることであるがゆえに、それに関連する事柄が周りに生じると、脳が過敏になっている可能性があります・・・・」と説明させていただいた。

調整後、「何となくつかめたと思います。多分、(原因は)そうだろうという気がします。」と、納得された様子だった。患者さん自身も「器質的な問題」ではなく「機能的な問題」であると認識されて相談していただいた様子。身体の機能、働きに影響を及ぼしている無意識的な心の動きが分かると調整が可能になる。

病気の予防には現代医学に基づく定期的な健康診断も大切だが、身体の機能に異常を生じさせている原因を特定して調整する原因療法は、本来必要とされる医療ではないかと思う。このように無意識的に条件付けされて、心臓の働きに誤作動が生じることがあるということを明確に検査し、その誤作動を調整できるという施術文化がもっと社会に当たり前に知られることを願う。


2019年9月1日日曜日

パフォーマンスを上げるための「心の持ち方」

本日、ナショナルチームに入っている選手が試合前に来院された。ナショナルチームに入って2年目、最近ではランキングも下がってきており、現在継続している練習と試合とのバランスなど、このままのやり方でいいのか少し迷いがあるとのこと。もしかすると、そのようなことがパフォーマンスにも影響を及ぼしているのではないかとのことで・・・

「身体に聞いてみた」

すると、以下の項目で「誤作動記憶」の反応が示された。
ここでいう「誤作動記憶」とは「心と身体」、「意識と無意識」の不一致からなる脳に誤作動を生じさせる記憶(パターン)のことである

l  所属チームとナショナルチームの練習の違い
l  海外遠征での環境の変化
l  休日の過ごし方や過酷なスケジュールなどOFFONの調整

上記の誤作動記憶の調整とともに、それぞれの項目で誤作動を打ち消す自分に合った肯定的な「心の持ち方」も身体の反応を検査しながら探索した。

【所属チームとナショナルチームの練習の違いについての心の持ち方】
ナショナルチームの練習メニューに関して違和感があるが、その中でも主体的に自分にプラスになる練習を工夫する

【海外遠征での環境の変化の捉え方】
東南アジア遠征での蒸し暑さや設備の古さなど劣悪な環境だが、未来の自分を鍛えてくれる練習・訓練だと思って臨む

【休日の過ごし方】
一般論的に「次の試合に備えて休む」というように「頭」で考えて無理に休むのではなく、「身体」で感じて必要な時は休み、必要でなければ適度に練習をする

【過酷なスケジュールの臨み方】
2日連続で試合がある時は心身ともに負担が掛かるが、自分を鍛えてくれる訓練、練習だと思って臨む

ナショナルチームの一員として、海外遠征などその場の環境に適応できる自分になれるように自分に合った心の持ち方が必要になるだろう。一流選手になるとメンタル面と身体との微妙なバランスがとても大切になる。そんな局面で「身体に聞く」検査は有効で、コーチング手法を織り交ぜた質問で、選手は自分に合った答えを自分で見つけていく。


今回はパフォーマンスに関係していたメンタル面のサポートが十分にできた感触があったので、恐らく本来の実力が発揮されてパフォーマンスが向上するのではないかと期待して陰ながら応援している。

2019年8月29日木曜日

疲労骨折のバランス調整

脛骨の疲労骨折の患者が、3回目の治療後に疲労骨折のある側の足でケンケンできるようになった。側で見ていたお母さんが、「痛くないの?」と尋ねると「うん・・」と嬉しそうに微笑んでいた。3回の施術で完治したわけではないが、患者さんが顕著な改善を自覚されたその背後にある「原因と結果」を考察してみたい。

高校1年性のサッカー部の男子が1ヶ月ほど前より両足(下腿部)に痛みを生じて、整骨院と整形外科を受診。病院では右脛骨の疲労骨折と左脛骨のシンスプリントと診断される。病院で診断された2日後に当院を受診。まだ、完治したわけではないが、3回目の治療後に患者自身が症状の改善を自覚され、治る方向へ自信を持たれた。通常であればケンケンするなんてありえない状態。なぜ、そのように改善したのか私なりの考察を述べてみたいと思う。

病院で疲労骨折の診断を受けると、数ヶ月は練習を中止、安静を指示される。通常、「骨折」したら安静が当たり前と思う方がほとんどだろう。骨折に関する医学知識があればなおさらその思いは強くなるかもしれない。私自身も本質的な治療に確信を得る前まではそのように考えていた。

しかし、いくつかの早期改善の施術経験を通してその考え方が一変した。「試合に出たいけれど、どうにかならないでしょか・・・病院では安静を指示されているので・・・」と大事な試合を控えている診断された子供の親御さんに相談を受けて疲労骨折の施術をさせてもらう機会がいくつかあった。どの症例も施術をしてみると、意外に回復が早く、試合に出場できるようになった。

おそらく通常の医学的知識の考えでは恐らく説明がつかないと思う。まず、考えなくてはならないのは外傷による骨折とは性質が異なるということである。外傷の骨折は明らかに「直接的外力」による影響だが。しかし、疲労骨折の場合は「間接的外力」による影響だろう。「間接的外力」とは、筋肉のバランスや関節のバランスがうまく調和できていないために間接的に骨に「ねじれ(捻転)」などの間接的外力が異常に繰り返し加わったことによる結果である。

つまり、身体の筋肉・関節のバランスが悪く違和感を感じながら無理をし続けたことが予測される。若い選手は一生懸命練習していると、多少の違和感を感じてもそれが当たり前になって、痛みに慣れて無理をすることも考えられる。疲労骨折の原因はバランス異常による間接的外力による結果なので、そのバランスを調整すれば回復は早いのだと推測できる。

そして、バランスが調整されれば、骨折部への異常なストレスは加わることなく、むしろ、骨癒合を助ける正常な刺激が骨芽細胞に加わることで治癒を早めるのではないかと考えられる。つまり、原因となるバランス異常を調整するから改善が早いのだと思う。ただし、ここでいうバランスとは単に筋肉・関節・骨だけのバランスのことではなく、無意識・脳・神経系などを含めた総合的なバランス調整の結果である。それは早期回復にとても重要なポイントだと私は経験的に確信している。

2019年8月12日月曜日

帯状疱疹後神経痛

70代後半の女性が口の周りの帯状疱疹後神経痛を訴えて来院。7週間ほど前に帯状疱疹で病院に入院。10日ほどで退院。来院時は病院に通院中で投薬や点滴の治療を受けているとのこと。帯状疱疹は無くなったが、その後の痛みが1ヶ月ほど継続しており、日常生活などにも支障をきたしているとのこと。特に朝の目覚めで痛みが最も強くなる。痛み止めを服用すると軽減するらしい。

当院を利用していただいたことがある息子さんからのご紹介で来院された。最初はハード面だけの施術を行った。患者さんの表情から察するとまだ痛みが強い感じが伺えた。ソフト面の調整は、初診時の患者さんには控えるようにしている。それは患者さんの理解度や信頼度を考慮してのことである。しかし、症状の改善度とあるキーワードが顕著に示されていたことを考慮して、そのキーワードに対して質問させていただいた。

すると、誤作動記憶が明確に反応を示していたので、二つのキーワードに関連するソフト面の調整を行った。施術後、患者さんはにっこり笑って痛みから解放された様子が伺えた。かなり痛みで苦しまれていたのだろう。

初回の施術から2ヶ月ほど経過している。遠方からの来院で、気軽に通院できる状況ではなかった。一回の施術で痛みがかなり改善されていたのは明らかだったが、その後も痛みがぶり返さずに維持されていることを願う。

帯状疱疹の原因はウイルスであると言われている。確かにウイルスは関係しているが、私の臨床経験では、その背後には潜在的なストレスが関係していることがほとんどで、そのストレスの調整後の症状が改善される。ストレスによって免疫力が低下してウイルスが暴れ出し、ストレスに条件付けされて痛みが記憶されるのだと考えている。

帯状疱疹に限らず、様々な「神経痛」には潜在的ストレスが関係していることが多い。このような施術が当たり前になる社会になると、もっと多くの方が痛みから解放されるだろう。私たちはそのような施術文化を社会に創造していきたい。

2019年8月2日金曜日

書痙(ジストニア)

問診情報

高校3年生の男子がお母様と共に書痙の改善を期待して来院。初診時は全く書くことができずに手も震えるとのこと。発症当時はペンを持つこともできず、初回来院時はペンを持つことはできるが、その後手が動かなくなる状態。

初回来院5ヶ月前に3つの病院を受診されたとのこと。一つ目の心療内科を受診、その約2週間後に二つ目の心療内科を受診、その1ヶ月後にメンタルクリニックを受診していずれも精神薬を処方される。

施術前後を評価するための初回の目安検査

身体機能検査(間接法)
陽性反応が示された動作
頚椎左回旋、肩甲帯後方、肘関節屈曲、拳を握る、母指と小指を近づける、書く動作
心身相関機能検査
書くイメージ

初回の施術

ハード面調整(AM)では、骨盤、脊柱、左肩甲骨、肘関節、手関節の機能異常を調整。
ソフト面調整(PCRT)では、大脳辺縁系の誤作動記憶、信念関連のキーワード3つ、価値観関連のキーワード1つ、大脳皮質系のエピーソ記憶を調整。

施術経過

2回目〜12回目まで2枠の予約(施術時間:2025分)をいただき継続治療を行う。ハード面調整とソフト面調整の施術を継続する過程で、5回目の来院時にはメンタル的に気分が改善され、全く書ける感覚がしなかった当初から10段階で4レベルまで上がった感じがするとのことだった。

そして、6回目の来院時には何とか書けるようになったとのこと。しかし、書くことに集中すれば何とか書けるが、他のことを考えながら記述することは難しいとのこと。つまり、以前のように自然には書けない状態。

7回目から書痙の症状が改善傾向に向かったので以前からあったアレルギー性鼻炎の施術も並行して行う。10回目の来院時には本調子ではないが調子がいいとのこと。鼻炎の症状も改善されているとの報告を受けた。11回目ではほぼ自然にかけるようになってきたという報告を得た。

12回目ではほとんどいいとのことで、メンテナンス的に脳のバランスを調整。書痙に関する書くイメージの検査でも陰性反応だった。

13回目では1枠(10分)の予約をいただき、主に脳バランスの誤作動記憶の調整を行う。

考察

大学受験を控えているにも関わらず約5ヶ月間も書痙の症状を患っており、人生の大切な節目に大変な思いをされたように感じた。身体(書痙)に影響を及ぼしている無意識的な誤作動記憶を調整していくうちにだんだんと症状が改善されていった。施術(PCRT)のコンセプトもある程度理解していただいていたので、段階的に改善方向へと向かったのだと思う。

原因となる過去の記憶から鑑みると様々な事柄が絡み合っていたようだ。もつれた糸の束を一本ずつほぐすように誤作動記憶を一つ一つ消去していった結果、完治へと導かれた。症状が改善していくプロセスを通じて、自分の心の奥にある思い(心の構造)を知り調整することで脳の柔軟性が増して症状が改善された。

このような本質的な心身相関の原因療法を体験することで、単に症状が改善したことだけではなく、メンタル的なコントロールも上手になっていると思う。大学生、社会人へと進む過程でこの経験を生かして健康を維持していただきたいと願う。

2019年7月24日水曜日

「機能性身体症状」を調整する


ファミリーカイロをご利用いただいている患者さんの多くが病院での検査や治療を受けて来院されます。時折、「この症状は病院で治療した方がいいのか」、「ファミリーカイロで治療した方がいいのか」、相談を受けることもあります。基本的には患者さんご自身で判断していただきますが、ファミリーカイロを利用する際に参考となる病気や健康に対する全体的な考え方をご紹介させていただきます。骨折などの外傷、脳梗塞、強い感染症などはすぐに病院を受診した方がいいのはもちろんですが、分かりにくいのは慢性症状や構造異常が関係していない痛みなどの症状です。

健康と病気を考える上で大切なことは、Body(身体)Mind(心)は密接につながっており関係しあっているということです。西洋医学の思想では、身体と心を分けて病気の原因を考える傾向があります。そのように「細分化」して考える医療も大切ですが、「木を見て森を見ず」ということわざのように「全体論」で健康と病気を考える必要があります。実際に人間の身体は機械仕掛けのロボットのように部品の集まりでできているわけではなく、それぞれの組織や臓器が強すぎず、弱すぎず、早すぎず、遅すぎることなく調和して働いています。さらには、「人間」という文字が表すように、身体の内界と外界との間の関係性を上手に調和させて適応して生かされています。

「平均寿命」と「健康寿命」という言葉があります。平成28年度の厚生労働省の調査によると女性の平均寿命は87.14歳、男性の平均寿命は80.98歳です。そして、女性の健康寿命は74.79歳、男性の健康寿命は72.14歳です。年々、平均寿命は伸びている傾向にありますが、大切なのは健康寿命を延ばして豊かな人生を送ることです。ではどのように健康を維持していけばいいのでしょうか?多くの人は何らかの病気で死を迎えるのですが、どのようにして健康状態から病気へと進行するのでしょうか?そのプロセスを考えてみましょう。

健康な人がいきなり病院の検査でも分かるような「器質的な病気」になることはありません。最初は、身体の「働き」が悪くなります。その結果、「機能的異常の症状」が現れます。身体の痛みや不快感は機能的異常のサインとして教えてくれます。その機能的異常が慢性化すると、今度は器質的異常を引き起こして病気になります。そして、最終的にそれが致命的になるとその病気で亡くなるというプロセスを経ます。では、そのような病気にならないためにはどのように予防すればよいのでしょうか?
 
病気の原因は何なのでしょうか?前述したように慢性症状の多くは、まずは機能的異常から引き起こされます。その機能的異常の原因は、体質(遺伝)、生活習慣、感染、環境問題という素因に、様々な要因のストレスが加わり、適応力が低下して身体の働きに異常(機能的異常)をきたします。そして、その機能的異常が誤作動記憶として脳にクセがついてしまい、慢性化へと移行してしまうのです。これが、健康から病気へと進行する大まかなプロセスです。

病院では主に「器質的な問題」や「精神的な問題」を対象にしますが、ファミリーカイロでは、身体面の機能異常と心(脳)と身体の関係性による機能異常を調整させていただきます。病院では見つけることが難しい微妙な神経や筋肉の「働き」の異常や脳の「誤作動記憶」を整えることが可能です。身体の不調を感じたら、まずは身体の「働き」に注目して調整をしてみましょう。