現代は、山あり谷ありの複雑な自然な環境とは異なり、ほとんどの道は舗装され、バリアフリーで、障害物が少ない安全な環境で毎日の生活を送っています。そのため知らず知らずのうちにバランス感覚は退化して、その機能が低下している可能性があります。
身体のバランス感覚をテストする簡単な方法があります。まずは、両足でまっすぐに立ちます。次に片方の太ももが床と平行になるぐらいに挙げて、片足立ちをします。30秒ぐらい保持します。(転倒しそうになったらすぐに足を床に着けましょう!)あまりふらつきがなければ、少し休んで、今度は目を閉じて、片足立ちを30秒ぐらい保持します。ふらつきがなければ、身体のバランス感覚は正常です。
もしも、大きくふらついたり、挙げた足が床に数回着くようでしたら平衡感覚の調整機能に異常が生じている可能性があります。平衡感覚には耳の奥の三半規管や小脳の機能が関わっていますので、そのような異常がある場合には、専門医での診察や当院での治療をお勧めします。
さて、「心のバランス」ですが、正常であるかどうかの判断はとても複雑です。一つの判断基準として、「感情」があります。「感情」には「外に現れる感情」と「内で処理される感情」があります。また、自分で自覚しやすい「顕在的感情」と、自覚しにくい「潜在的感情」があります。感情の性質から分類すると「意欲」や「義務」などの意志的感情、「喜び」や「連帯感」などの肯定的感情、「恐怖」や「逃避」などの否定的感情があります。
一般的には否定的な感情は無くして、肯定的な感情を持つようにしましょうという教えがありますが、それは、心のバランスから考えるとそれは不自然かもしれません。喜怒哀楽の感情は外に現れるか否かにかかわらず、生きた人間としてその感情が日常の生活の中で現れないということは心のバランスが保てていない可能性があります。
また、「怒り」の感情は良くないといわれています。その感情が一時的ではなく長引くような感情になると、人間関係だけでなく身体にも影響を及ぼします。しかし、子供をしつけるときには時には激怒して大切なことを気づかせて、次の日には、ケロッとして、喜んで笑顔で接するということもあるでしょう。そのような強弱のある感情やバリエーション豊富な感情の中で豊かな心が育まれるのかもしれません。
ドラマや落語でも面白い内容には、笑わせたり、驚かせたり、泣かせたりして、喜怒哀楽の感情を巧みに表現して、人間味を感じさせてくれます。論語の中で「中庸」という言葉があるように、過大、あるいは過少にならずに何事もほどほどにバランスを保つことが大切だと説かれています。身体も心の感情も偏らずに幅広く動かすことが身も心も豊かになる秘訣になるようです。
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