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2017年7月15日土曜日

イップスの改善にブレーキをかける「技術論」とイップスにならない「コツ」

ゴルフのドライバーイップスの患者さんで、しばらく通院されて、一時改善されていたが、また、ぶり返していた。その原因の一つに「技術論」へのこだわりがあった。通院過程でフォームなどのテクニックなどに囚われすぎると、イップスの改善に影響を及ぼすということは頭では理解しても、ついついテクニック論の方へ傾いて症状の改善を遅らせていた。

なぜそこから抜け出せないのか?それを調べてみることにした。するとゴルフの技術論を追求すること自体が大好きで、そこが「快」になっているということが分かった。「ゴルフプレー」→「問題を引き出す」→「技術論で答えを模索」→「快」→「ゴルフプレー」→「問題を引き出す」→「技術論で答えを模索」→「快」→「ゴルフプレー」というような潜在的な負の習慣(パターン)が「快」にリンクしており、そのサイクルから抜け出せていないとうことが分かった。

好きだからゴルフをやっている。それはごく当たり前のことなのだが、具体的にゴルフの何が好きなのかを質問してみると、人それぞれに微妙に違うものである。だんだんと上達するという「自己成長」が「快」になっている人もいるだろう。勝ち負けに関係なく、友人とゲームを楽しむことが「快」になっている人もいるだろう。ゴルフプレーを継続する動機は人それぞれであるが、今回は隠れた動機(快)が条件付けされて、イップスの改善にブレーキをかけていたという事例である。

患者さんはそのことが心の底から理解できた様子で、撮りためていたゴルフ指導に関するビデオを見るのを辞めると宣言された。以前から技術論がイップスに影響しているのが分かっていたので、技術論から卒業したのかなと安心していたものの、心の底では抜け出せていなかったということがその時に分かった。

誤解のないように言えば、「技術」を意識することが全てイップスにつながるという訳ではない。スイングのフォームを改良して、成績が向上した人もいる。どのようなスポーツでも最初は基本のフォーム(型)を指導者から学んで、何度も練習を繰り返し、身体に覚えさせて上達していくものである。

要するに技術(テクニック)は必要だがその捉え方が大事なポイントになる。「どのような技術論がイップスになりにくいのか」、多くのイップスの患者さんたちをサポートしてきた経験からイップスになりにくい「コツ」をご紹介させていただく。これは、ゴルフのイップスに限らず、あらゆるスポーツやハフォーマンスなどのスランプにも影響を及ぼすので、参考にしていただけばと思う。

イップスにならないための「コツ」

機械論

有機論
機械論的な理論のメカニズム
より
有機論的な自然のメカニズム
細かい技術理論の指導を受ける
より
全体を見てマネして身体で覚える
部分的なテクニカル指導
例:テイクバック(ゴルフ)では決して頭を動かさない
より
全体的で抽象的な指導
例:足から手への連動が重要
腕や足の部分を意識する
より
軸や下半身など全体を意識する
部分的な身体の動かし方
より
目的に応じた自然な身体の動かし方
力やスピード
より
バランスやリズム

この「機械論」と「有機論」を比較してどのように感じるだろうか?一見すると「機械論」の方が、何か理論的で信頼できるような感じがしないだろうか?その一方で「有機論」は、抽象的で答えがないような曖昧な感じがするだろう。それは、多くの人が機械論的、あるいは科学的な教育を受けているからであるといえよう。その思考ラインで考えると、分析的、還元論的になり、身体をロボットのように考えて、部分的な理屈で問題を改善しようと考えてしまう。

しかしながら、人間は部品を取り替えれば修理できる単純なロボットではない。部分的で機械論的な理論で答えがでないことばかりの連続である。人間はむしろ全体的で有機論的な「関係性」や「つながり」で統合された生き物であることを忘れてはならない。



2017年5月29日月曜日

送球イップス 「挑戦者」から「理想のゴール」へ

送球イップス 「挑戦者」から「理想のゴール」へ

情報:
中学2年生男子、野球部、ピッチャー、野手兼任。小学生の頃から野球を始める。
1年ほど前(昨年の5月)より軽度のイップスの症状を感じ、秋頃には回復したが、最近(今年の4月後半)より不安定になってきたとのこと。通常のキャッチボールでは問題ないが、ピッチャーやファーストへの送球でうまく投げられないとのこと。

【1回目】

目安検査:
*右上肢挙上、右肩甲帯後方で陽性反応
*ピッチングのストレートで陽性反応、変化球(カーブ)は陰性反応
*ショートからファーストへの送球で陽性反応

《ハード面調整》
アクティベータ・メソッドにて関節筋肉系の調整を行う。胸椎中部と右上肢の陽性反応を調整
《ソフト面調整》
問診にてどのような時に不安定になるのか尋ねたところ、投手で登板した際、試合の立ち上がりでは問題ないが、プレッシャーを感じてくると不安定になってくるとのこと。さらにどんな時にプレッシャーを感じるかを尋ねたところ、昨年、自分の責任で点が入ったことを経験しているのでそれが関係しているかもしれないとのこと。その時を思い出してイメージしてもらうと陽性反応を示すので、そこから、チャートを使って誤作動記憶に関係するキーワードの検査をして調整。さらにエピソード記憶として、不安定な自己イメージを調整。

【2回目】

《目安検査》
ハード面の目安検査は陰性反応
*ソフト面の目安検査は前回のショートからファーストへの送球、並びに練習でのピッチングでのイメージも陰性反応
*そこで、実際の試合のピッチングのイメージをしてもらうと陽性反応
*不安感を10段階で表してもらうと7のレベル。そこから調整を行う。

昨日の練習ではショートを守り、普通の送球はできたとのことだった。
ハード面調整はほとんど陽性反応が示されず、主にソフト面調整を行う。

《ソフト面調整法》
大脳辺縁系に関係するいくつかのキーワードが示されたが、特に印象的だったのは、小学生の頃から野球を始めて、周りからも期待されていたため、自分はできて当たり前だという自負があった様子。そのプライドを守ろうとしている心の背景が見えてきた。このようなパターンは比較的上手で周りから期待されている選手に生じやすいプレッシャーである。このような場合、多くは失敗しないようにと「守り」のプレーになる傾向がでて自分の実力が発揮できなくなる。そこで、「挑戦者」であることの大切さを提案させてもらい、様々な事例をお伝えした。

【3回目】

《経過》
問診で、昨日の練習試合で登板したが、3回が終わって、自信がなくなったので監督さんに伝え、交代してもらったとのこと。もっとも自信がない度合いを10とすると10レベルとのこと。
自信がない10レベルを目安として、そこからソフト面調整を行う。
前回に引きつづいて失敗しないように「守る」というマイナスのパターンやチームへの責任感を感じる反応も示されていた。
それに加えて、「意味記憶」や「エピソード記憶」の反応も示され調整を行う。調整後、自信のないレベルが10から1まで改善される。

【4回目】

《経過と考察》
問診では、外野で練習や試合を行うようになり、外野で野球を楽しめているとのこと。しかしながら、今後、ピッチャーやショートでも問題のないようになりたいとのことで、未来を先取りした検査で陽性反応を引き出し調整を行う。
検査では、「意味記憶」や「恐れ」のキーワードで陽性反応が示され調整を行う。
理想のピッチングや送球のイメージができている理想の自分になっているゴールのイメージはできますか?と尋ねると、ちょっと首を傾げながら難しい表情を表す。これはよくあるイップスを引きずってしまうパターンだが、イップスの症状が治ったら、〇〇の練習をする、あるいは〇〇のゴールを決めるというような、イップスが治らないと理想のゴールのイメージができないというパターンが示されていた。このようなパターンに入ると、無意識的にできない理由、あるいは失敗の理由をイップスのせいにしてしまう癖がついてしまい改善が遅くなる。もちろん、イップスが治れば、送球ができるようなるという理屈をもっともな理由になるのだが、人間の脳は、「原因と結果」を混同して、負のサイクルにゴール設定して、そのから抜け出せなくなる。イップスという症状は結果であり原因ではない。つまり、イップスは目的(ゴール)があるから生じてしまう症状で、ゴールがなければイップスは生じないので、イップスの症状を治すのをゴールにしてしまうと、何のためにイップスを治しているのか脳が混乱して負のサイクルに陥るということである。そのゴール設定は、間接的にも直接的にもイップスを改善するためにはとても大切である。このような負のサイクルに入っている場合はコーチング的に質問させてもらう。「何のために送球するのか?」、「何のために練習をしているのか?」「何のために野球をしているのか?」「何歳まで野球をするのか?」など、ゴールに関係する隠れた価値観について質問させてもらうことが多い。すると、多くの方は、自分自身の盲点に気づき、自分を俯瞰的に捉えることができ、心にゆとりができて新たな神経回路のパターンが生まれて改善への一助になる。

【5日目】

《経過》 
昨日、監督さんから急にピッチャーで起用され登板したところ、7イニングを問題なく完投できたとのこと。イップスの症状に関してはだいぶん自信がもてた様子だった。今日は、肩の違和感がでたので、主にそこを診てほしとのこと。

《目安検査》
肩関節伸展、外転、肩甲帯後方、頚椎伸展、屈曲に陽性反応

《ハード面調整法》
*アクティベータ・メソッドにて胸椎、右肩関節、肩甲帯を調整
《ソフト面調整法》
*「競争心」や「自省心」で陽性反応。それぞれ調整を行う。

《考察》
イップスに関してはかなり改善している様子で前向きな印象が持てた。本症例は、「守り」から「挑戦者」へ、そして、「イップス治しの負のサイクル」から「理想のゴール」へと「不健全のパターン」から「健全なパターンへ」と抜け出すことに成功した事例である。イップスにはそれぞれにパターンがあり、それぞれに治るプロセスがある。施術者は一人一人の患者さんに寄り添って、そのドラマをしっかりと汲み取っていく力が必要だと改めて思う。


2017年4月18日火曜日

PCRTとAMによるゴルフのドライバーイップスの施術経過(4回シリーズ) シリーズ4

【4回目の施術】

問診
術者:どうでしたか?
患者:そうでね。まだ、症状はありますけど・・・色々と考えてみて、ゴルフレッスンに通うのをやめました。
術者:そうですか。練習はされましたか?
患者:はい、ゴルフ練習場で100球ほど打ちました。

目安検査:陽性反応
筋肉・関節(自動運動)=右大胸筋
症状イメージ=ドライバーショット

ハード面調整(肉体内関係の誤作動記憶調整):
AM(アクティベータ・メソッド)とPCRT(心身条件反射療法)でハード面調整を完了。ハード面調整完了後、症状イメージ(イップス)以外の目安検査は消失。

ソフト面調整(肉体内関係の誤作動記憶調整):
症状イメージ(ドライバーショット)のEB(誤作動記憶)から施術開始
術者:陽性反応が示されていますので、それに関係する無意識の誤作動記憶のキーワードを探していきます。
PCRT誤作動記憶検査チャートを使いPRT(生体反応検査法)を行う』
『大脳辺縁系→信念チャート→慈悲心でPRT陽性反応』
術者:慈悲心というキーワードで陽性反応が示されました。前回もこのキーワードがでていましたね。
患者:イップスの自分が可哀想ということでしたね。
術者:それではもう一度そのことをイメージしてもらえますか?
患者:はい。(術者はイメージ)
PRT(生体反応検査法)を行う』
術者:再度、そのことで陽性反応が出ていますので、もう少しその内容で具体的な認識が必要だったかもしれませんね。何かそのことで具体的になりそうですか?
患者:ゴルフを楽しめてない自分が可哀想だと思いますね。楽しめていないからイップスになるのか、あるいはイップスだから楽しめないのかわかりませんが・・・恐らく今まで、スコアや競技のことにフォーカスしすぎて、いい成績をだすためにコーチをつけてレッスンを真面目に受けて頑張っていたのですけれども、ゴルフを楽しむという肝心なところが抜けていたのだと思います・・・
術者:(お〜〜それは素晴らし気づきだ・・・)あ〜なるほどですね。それでは、そのことが影響しているかどうか、検査をしてみましょう。それでは、最初に、スコアや競技の結果も大切ですが、それらも含めて、ワンゲーム、ワンショットを楽しまれているご自分になれますか?
患者:はい。なれると思います。
術者:それでは、そのようになっているご自分を想像してみてください。
患者:はい。(ゴルフを楽しんでいるイメージ)
PRT(生体反応検査法)を行う』
術者:そのイメージでは陽性反応が示されていないので、心身ともに健全な状態ですね。それでは、スコアや競技を意識してプレッシャーを感じているご自分になれますか?
患者:はい。(スコアを気にしてプレッシャーを感じているイメージ)
術者:そのイメージでは陽性反応が示されていますので、心身ともに不健全な状態ですね。それでは、そのことが身体に影響を受けないように調整しますので、最初は、プレッシャーを感じているイメージ、次にゴルフを楽しんでいるイメージで深呼吸をしながら2往復してもらえますか?その間、そのことが身体に影響を及ぼさないように調整させていただきます。
患者:はい、わかりました。
PCRTパターン調整法を施す』
術者:調整しましたので、再度プレッシャーを感じているイメージをしてもらえますか?
患者:はい。(プレッシャーを感じているイメージ)
PRT(生体反応検査法)を行う』
術者:先ほどの陽性反応が陰性反応に切り替わっていますので、最初のゴルブを楽しめなくて可哀想な自分をもう一度意識してもらえますか?
患者:はい。(可哀想な自分のイメージ)
術者:そのイメージも陰性反応ですので、誤作動記憶が調整できていると思います。
『ソフト面調整法完了』
術者:今日は、ご自分で改な気づきをされて、何か改善の扉が開いたような感じですよね。
患者:そうでね(満面の笑顔)。今度、コースを周るので楽しみになってきましたね!
術者:それでは、私も次回の施術を楽しみにしています。

考察:
前回の施術からの気づきで、まさかゴルフレッスンを辞めるとは思っていなかった。レッスンの指導に縛られるというのは一旦保留して、以前のように楽しむことを優先しようという選択なのだろう。レッスンは受けようと思えばいつでも受けることができるので、また、必要だと感じれば受ければいい。恐らく、その選択は、深い気づきから生まれたもの。スコアやランクを上げるために、「〜すべき」「〜ねばならない」と技術論が先行しすぎて、何のためにゴルフをするのかという本来の自分目的を見失っていたのだろう。技術論に囚われて「正しい、誤っている」という判断ぐせは、不自由な自分になりやすい。

5回目の施術】

前回のゴルフの後、腰がだんだんと痛くなって、朝起き上がれないほどだったとのことで、腰痛治療をメインに来院。

改善の報告:
術者:それでスイングはどうでしたか?
患者:スイングでしょう!あれから、6割ぐらい改善した感じですごく良かったですね。前半は、もう治った感じでニコニコしながらプレーしていました。でも、後半は少し違和感を感じていましたけど・・・
術者:それは良かった。自信が持てましたね。また、ゴルフを楽しめたのも良かったですね。
患者:はい、だいぶん自信がつきましたね。(笑)