2017年8月30日水曜日

エピソード記憶調整法に関連する心理的要因

1ヶ月半ほど前に病院で注射を受けて以来、肘や肩の周辺が痛くなったとのこと。注射を受ける際、一回で済まずに何度もやり直されたらしい。症状の程度は10段階(NRS)で7レベル。肩や肘周辺の目安検査では筋肉関節系の陽性反応が示されていたので、アクティベータ療法にて調整。筋骨格系の症状の程度は4レベルまで軽減。

その後患者さんから「記憶」ですかね?という指摘。

この患者さんは別の症状が、PCRTの「エピソード記憶」で改善した経験があるので、そう感じたのだろう。

検査でも「エピソード記憶」の調整法が必要とされたのでその調整を行う。注射の際に痛みを感じている自分の姿を想像してもらうとすぐにイメージができた様子で、検査では陽性反応が示された。次に注射の際に痛みを感じていない理想の想像ができるかを尋ねたところ、少し考えられた後・・・・・「サイボーグ人間になります。(笑)」といって想像され、検査では陰性反応が示された。

エピソード記憶の調整後、症状は1レベルまで軽減。

以前、エピソード記憶の調整法を経験した患者さんだったので調整もスムーズにいった。しかしながら、稀に理想の想像が「できない」という患者さんもいる。その理由も人それぞれで、「今が痛いから想像できない」「よくなった経験がないから想像できない」など、想像できない人は、それなりの理由がある。

例えば、鳥の様に空を飛ぶことは、現実にできる人はいないが、想像することはできる。しかし、そのようなファンタジーな想像でさえもできないという人がいる。また、ネガティブな空想はしやすいが、ポジティブな空想はしにくい人、人の幸せは想像しやすいが、自分の幸せは想像しにくい人などさまざまな特徴がある。

もしも、今回の患者さんのように、SFやファンタジーの映像作品を見た経験があれば、その映像に自分を置き換えるだけで、現実にありえないことも簡単に想像できるだろう。本来、人間の脳はそのような想像力や空想力は備えられているはずである。


2017年8月21日月曜日

PCRT中級2へのご案内

次回の研究会では各種アレルギーの調整法、五感チャートの応用、信念、価値観チャートの応用などを紹介します。PCRTのアレルギー治療は、特定のアレルゲンに条件付けされた脳幹脊髄系の「誤作動記憶」を調整するとともに、大脳辺縁系や大脳皮質系に学習された「誤作動記憶」を書き換える調整法によってアレルギー症状の体質を改善していきます。

アレルギー治療ではアレルゲン情報を呼吸振動法で適応させる調整法と、アレルゲン情報と頭蓋骨調整法や臓器反応点経絡調整法などのPCRTハード面調整法と組み合わせた効果的な調整法も紹介する予定です。花粉症や食物アレルギーなどで困っている患者さんには自信をもって調整ができるようになると思います。

大脳辺縁系の分野では最後の領域になる「価値観」と「信念」に対するアプローチの仕方をご紹介します。感情、価値観、信念の違いを明確にして、心の構造を把握できるようになると、メンタル系へのアプローチの全体像が見えてくるようになります。メンタル系へのアプローチは、患者さんが自覚しているストレスだけとは限りません。「心と身体は密接につながっている」という基本原理を考慮すれば、心身両面へのアプローチは必須になるのではないでしょうか。

PCRTの熟練度が進むにつれて、マインド系へのアプローチを好んで使ってくださっている先生も増えてきているようです。それは、反射系の調整法だけよりも、更なる深みを患者さんと共有できるからです。その一方でマインド系へのアプローチに苦手意識を感じている先生もいるようです。PCRTの調整法をしっかりとマスターして、PCRTのマインド系領域の検査・調整の基本ルールに従い、ソフト面調整法をマスターできれば、恐らくスムーズに、しかも楽しくアプローチできるようになると思います。何よりも患者さんが心の奥から喜んでいただけるのを感じることができると思います。

【マインド系領域検査】
1.       NO JUGEMENT! 評価、判断を入れない
2.       患者が望んでいる検査・調整法を行うという前提で進める
3.       患者に何かを気づかせて、変えてやろうという思惑は持たない
4.       術者は選択肢を提案し、時にはチャレンジするが、あくまでも患者が求めているラインに寄り添う
5.       患者の自己矛盾を丁寧に扱う

最近、PCRT研究会で教授している内容をしっかりと理解し、臨床現場で使って患者さんに喜んでもらっている先生がいる一方で、もしかすると本質的治療への理解を深めるよりも、表面的な手法ばかりを求めているのかなと感じることがあります。

今年は、PCRT研究会のターニングポイントの年でもあります。術者の熟練レベルを統一する試験制度も充実してきました。受講してくださっている先生が、本質的な理解を深め、さらに現場の患者さんに貢献できるように、技術、技能、教育レベルの質を上げ、さらに発展し信頼される研究会へと進化していきたいと思います。

それでは、今年最後のPCRT研究会でお会いできるのを楽しみにしております。 

2017年8月11日金曜日

頸部ジストニア(痙性斜頸)の一症例



50代男性、人と接するお仕事。痙性斜頸の兆候は30代の頃からみられ、当初は写真撮影時に気になる程度だったが、一年半ほど前より酷くなってきた。仕事上、対面で人と話そうとすると症状が出てしまう。人前に出ることが多く、最近では仕事に支障が出ているとのこと。ジストニアの症状が強くなるのは、人に見られている時、ストレスを感じている時、細かな作業をする時などで、一人でリラックスしている時は軽減する。

一つ目の病院でMRICTなどの検査を受け、頸部ジストニア(痙性斜頸)の診断を受ける。二つ目の病院でも同様の診断を受ける。そこからボツリヌス神経治療の専門医を紹介されて、3ヶ月に1回ボツリヌス注射を受けているとのこと。3回ほど治療を受けて、症状は改善したように見えるが、効果がなくなってくる度に再発が見られるので、対症療法ではなく、根本的な改善を期待して来院。問診の際に、少し顔が左下に向き、右肩が上がる傾向があった。来院時の症状レベルは10段階で5レベルとのこと。

PCRTの目安検査では、右肩甲帯前方、右頚椎回旋、右肩関節挙上、右側頭部空間ブロックで陽性反応。アクティベータ療法を終えた後、ストレスを感じる場面をイメージしてもらい陽性反応を確認。その後、PCRTソフト面調整法へと進む。ストレスで嫌だなと感じる場面が二つほどあるとのこと。その嫌な気分のレベルを尋ねると、10段階で10レベルとのこと。
 
10レベルの嫌な気分を軽減させる目的で、最初は、井合穴経絡調整法(大腸、小腸、膀胱、胆)と音階調整法で6レベル。次に、信念(復讐心)4レベル、カラー調整法と信念(競争心)で2レベルまで軽減。初回の施術は完了。

遠方からの来院なので、一泊2日で続けて2回目の調整を行う。問診をしている間、初回に見られたジストニアの症状は現れなかった。アクティベータ療法をおこなった後に、PCRTの検査を行う。昨日の嫌な気分は二つとも陰性反応。ご本人もそのことは気にならなくなっているとのことだった。ストレスを感じる嫌な気分の際の反応は改善された様子。以前から感じていた対人恐怖の調整を行う。自覚的には8レベル。井合穴調整法(心、胃、膀胱)で5レベル、音階調整法で3レベル。信念(利己心)の調整で1レベルに軽減。

最後に「ジストニアが完治する自信はどうですか?」と尋ねたところ、「いや、まだ不安ですね。」という。「10段階でどれくらい不安が強いですか?」と尋ねたところ9レベルとのこと。最後の不安感を意味記憶の経験や情報を書き換える施術で調整を行い、1レベルまで下がる。

ジストニアの治療に関しては大変満足していた様子。遠方からの来院だったので、また、不安を感じるような症状がでたら来院されるとのこと。安心した様子で当院を後にした。本症例はジストニアの症状が悪化して1年半以上経過している。2回の施術で本質的な改善が望めるかどうかは分からない。しかしながら、対症療法ではなく、本質的な改善を目的にした調整法で改善されたという自信は持たれた様子。あれから1ヶ月以上になるが、患者さんからの連絡がないので、経過が良好であることを期待している。



2017年8月9日水曜日

慢性症状の神経回路から健全な神経回路へ

慢性症状の神経回路から健全な神経回路へ

先日の心身条件反射療法の研究会では、神経細胞の神経新生の様子を示した動画をいくつかご紹介させていただきました。これは56年前から研究会でご紹介してきたことですが、患者へのPCRTの施術効果や治癒過程の説明にとても効果的な動画であると思いますので、施術によってどのような効果をねらっているのか、どのようなプロセスで治っていくのかを脳科学的な観点から再度ご説明します。

脳の神経細胞は「学習と記憶」を繰り返すごとに、様々な神経ネットーワーク(神経回路)を構築します。その神経回路は無意識的なプログラムです。そのプログラムは私たちの健康を維持してくれる一方で、慢性症状を引き起こすプログラムでもあります。慢性的に症状が継続する神経学的なメカニズムはその神経回路(プログラム)にあると言えます。

心身条件反射療法の施術は、脳の可塑性を利用して、脳の再学習と再記憶を促すことによって、新たな神経回路を構築させることを助け、慢性症状の改善を助長させます。近年、脳の学習と記憶に関係する「神経新生」の研究も盛んに行われるようになり、動画でも神経新生の様子が紹介されるようになってきました。その一つをご紹介させていただきます。これは、認知神経科学者のDr. Caroline Leafによるプレゼンテーションの動画のクリップとのことです。

この動画では、新たな神経の枝が伸びて、神経回路を作り出す様子が映し出されています。慢性症状が改善されていくプロセスに置き換えると、症状を改善させる学習=神経の枝が伸びて神経回路を作り出す。そして、施術を継続することでその神経回路を強化させる=記憶で、症状がぶり返すことが少なくなり、「症状を作り出すクセ」(誤作動記憶)から「健全なクセ」に書き換えるということになるでしょう。

このように脳の神経細胞は常に「学習と記憶」を繰り返して新生しているので、適切な学習と記憶を促す施術を行えば、様々な慢性症状も改善させることができる訳です。そのような働きを私たちは自然治癒力とよんでいますが、脳には本来そのような機能が備えられているのです。今後、脳科学の研究がさらに進むことで、脳の神経細胞の「学習と記憶」と「自然治癒力」との関係が明確になってくるかもしれません。