痛みの「記憶」で痛みが再現する患者さん シリーズ2
一週間後、2回目の施術に来院。
【問診】
術者「どうでしたか?」
「え〜まだ痛いですけど、いただいた資料を読んで、前回言われたことがわかるような気がします(笑)」
術者:「そうですか?それは良かった・・・」「今日も座って施術をした方がいいですか?」
患者:「いいえ、今日は大丈夫だと思います・・」
術者:「そうですか・・・それではベッドをゆっくり倒していきましょう。(内心、イタタターと、前回のように言われるのではないかと不安を感じながら・・・)
「大丈夫そうですね・・・」
患者:「はい、大丈夫ですね」
術者:前回「痛い時と痛くない時あるという話をしたと思いますが、改めてどんな時に痛みが強くなりますか」
この時、術者は患者の足元で、患者と会話をしながらPRT(生体反応検査法)を行う。
患者:「何もすることがない時(目的がない時)に痛いですね。さっきもこちらに来る時、バスの運転手さんと話しているときは何も痛くなかったですからね・・・」
術者:「なるほど・・」「では、何もすることがない時の記憶で身体が過敏反応を示しているようですので、そのときの記憶(目的がない時)を思い出してもらい施術をさせてもらいます。」
PCRT呼吸振動法を施す。
術者:「ほかにどん時に痛みを感じていますか」
患者:「そうですね。お稽古の時は痛くないのですよね・・・」
術者:「その話をしている時に検査(PRT)してみると、身体が反応していますね・・・」
患者:「そうですか?・・・同好会の役員をしているので、もしかするとそのことがストレスになっているかもしれませんね・・・」
術者:「同好会の役員の話をされている時は、身体が反応していませんね。そのときも同じようにお稽古されるのですか?」「先ほどのお稽古とどう違うのでしょうか?」
患者:「先ほどのお稽古(陽性反応)は、師匠に習うお稽古で、同好会のお稽古(陰性反応)は、習うというより、好きな人が集まって自分たちで行うお稽古です・・」
術者:「なるほど、それでは、師匠から習うお稽古でなぜ、身体が過敏反応を示しているのか調べてみましょうか・・・」
PCRT誤作動記憶チャートで検査
術者:「『自尊心』というキーワードで陽性反応が示されましたね。何かのプライドに関係することですが、何か思い当たることはありますか・・・」
患者:「・・・そうですね。お稽古はもう70年以上もやっていますから、そういう意味では他の人と比べて、経験者であるという自負はあると思います・・・また、周りからもそのような目でみられていますから・・・」
術者:なるほど、そのことで身体も反応を示しているようですので、その誤作動の記憶を思ってもらいながら調整しましょう。
PCRT呼吸振動法を施す。
その後のアクティベータ療法に切り替えて施術を始める。施術を終える途中から、
患者:「あ〜だんだんと痛みが楽になってきた。」
術者:「それは、良かった。普通、多くの患者さんで、治療するとすぐに痛みが消えたり軽減したりするので、このように、痛みが改善されるということをしっかりと覚えておいていください。そして、自分の身体が、このような治療で治るのだということを信じてもらえるといいですね・・・」
【考察】
本症例は2回目の施術を終えて、まだ途中経過だが、この調子で施術を継続してもらえると改善方向にむかうことが予測できる。通常は、アクティベータ療法から先に行なって、PCRTへと進むケースが多いが、本症例は、患者の痛みの記憶が強く、通常の施術ができる状態ではなかったので、PCRTを様々な角度から応用して、通常の施術で施術効果を感じていただいた。おそらく、次回からは通常通り、アクティベータ療法でハード面の調整を行い、PCRTのソフト面調整法へと進めていけるだろう。
初回で、「・・・痛くなってもらえますか?」という質問をして、拍子抜けした様子だったが、ユーモラスな会話も交えながら、患者さんの痛みに寄り添うことができたように感じられた。初回の検査や説明で、通常の時間をオーバーしてしまい、後の予約の患者さんたちにご迷惑をお掛けして申し訳なかったが、改めて、患者さんの痛みをしっかりと理解して問診し、わかりやすく説明することの大切さを感じさせられた。
特に病院で脊柱管狭窄症と診断されたということを気にされていた際に「レントゲン写真だけで痛みの原因が判断できるのですか?」という質問もした。すると患者さんは、「はっ・・」と何かを気づかれた様子で、そのことで不安が変わったと2回目の施術の際にもその時の「気づき」について話されていた。患者さんに「レントゲン写真は瞬間的撮影された骨格の写真なので、痛みを表している訳ではありません」と教えるというよりも、「気づき」を与えるコーチング的質問で患者さん自らが気づいていただく方が大切だと改めて振り返ることができた。
通常の病院とは異なり、我々のような施術者に対して、患者さんは様々な期待を抱く。時には、魔法のように瞬時に痛みをとってくれる人だと期待されている人もいるかもしれない。私たちはそのような幅広い期待をしっかりと管理し、そこに齟齬が生じないように努めなければならない。「何ができて何ができないのか」をわかりやすく説明して、「それぞれの患者さんのためにできることは何か」を常に考えながら臨機応変に対応することが大切だろう。