2017年4月3日月曜日

ビリヤードイップスの施術(初診時)

ビリヤードイップスの施術(初診時)

患者情報:
30代男性、ビリヤード歴は15年、ビリヤードの試合などにもプロに混ざって参加されているという。イップスの症状が出始めたのは2ヶ月ほど前からで、ビリヤードをするときには毎回その症状がでるという。特に悪化するのは大会などでプレッシャーを感じているとき。

AMPCRTを併用し、PCRTの検査プロトコルに従って調整を行う。

目安検査:陽性反応
チャクラ=第四、第五のEB(エネルギーブロック)、右手掌チャックのEB
筋肉・関節(他動運動検査)=右肩関節、右鎖骨関連関節、右肘関節
症状イメージ=ビリヤードのショット、大会で緊張する場面

ハード面調整(肉体内関係の誤作動記憶調整):
AMのベイシック調整とアドバンス調整を肩関節、肩甲骨、鎖骨周辺、肘関節へ
PCRTの空間ブロック調整法にて上部胸椎、肩関節、肘関節周辺のEBを調整

ハード面調整後、右肩関節中心とする筋肉・関節のEBの陽性反応は消失、チャクラのEBの陽性反応も消失。患者自身が調整前に感じていた肩関節の他動運動による違和感も消失。

ビリヤードのショットのイメージによる検査では、まだ陽性反応が示されていたので、ハード面調整は完了。ソフト面調整へと切り替える。

ソフト面調整(肉体内関係の誤作動記憶調整):
ショットのイメージ=陽性反応
PCRT誤作動記憶検査チャートを使いPRT(生体反応検査法)を行う。
大脳辺縁系→信念チャート→競争心でPRT陽性反応
術者:勝負ごとですので、ライバルが何人かいると思いますが、思い当たる人は何人いますか?
患者:そうですね。三人ぐらいですかね・・・
術者:それでは、競争心に関連する人がいるかどうか検査をしますので、適当に一人一人心の中で思い浮かべてもらえますか?
患者:はい(一人目を想像)
術者:(術者はPRT検査)反応しませんので影響はないと思います。では次の方の想像をお願いします。
患者:はい(二人目を想像)
術者:(術者はPRT検査)その方のイメージでは身体が反応を示していますね。
患者:なるほど・・・
術者:ちなみにもう一人の方を想像してもらえますか?
患者:はい(三人目を想像)
術者:(術者はPRT検査)その方は反応しませんので影響ありませんね。それでは、反応を示した二人目の方ですが、何か心当たりはありますか?
患者:そうですね、その人とはビリヤードに対する考え方が合わないというのは意識していると思います。
術者:(術者は患者が会話をしている時にPRT検査)いま、お話しされている最中に検査をしていると身体が反応を示しているので、そのことが関係しているようです。「さらに」というキーワードで身体に聞いてみると、その奥に競争心につながる心が隠れているかもしれないのですが、思い当たりますか?
患者:そうですね。その人には負けたくないですね。
術者:(術者はPRT検査)それで陽性反応を示していますので、そのような気持ちを認識してもらいながら、そのことが身体に障らないように調整させていただきますので、私の声に合わせて深呼吸をしてください。→PCRT呼吸振動法
二人目の人のイメージでフィードバック検査すると陰性反応→他の信念が関係していないかでフィードバック検査すると陽性反応を示す。
信念チャートで再度PRT検査を行うと、今度は「犠牲心」で陽性反応を示す。
術者:今度は「犠牲心」というキーワードで陽性反応が示されるのですが、何か心当たりはありますか?
患者:???
術者:ちょっとピンとこないようですので、「犠牲心」に関係する分野を別のチャートを使って調べてみましょう。
術者:趣味関係で陽性反応ですので、ビリヤード関係ですね。
患者:ビリヤードで犠牲???ん・・・あっ、もしかすると、最近子供が生まれたので、ビリヤードで家族を犠牲にしているというのが心の何処かにあるかもしれませんね・・・
術者:それでは、そのことを思い浮かべてもらいながら検査をしてみましょう。PRT検査・・・そうですね。そのことで陽性反応が示されていますね。
患者:そうですか。なるほど・・・
術者:それでは、そのことが身体に影響を受けないように調整させてもらいますので、そのことを思いうかべてもらいながら大きく深呼吸をしてください・・・PCRT呼吸振動法・・・それでは、再検査をしますので、そのイメージのままで・・・(術者はPRT検査)、陽性反応が消失しています。他に何か影響がないか調べますので、先ほどのショットのイメージをしていただけますか?
患者:はい(ショットのイメージ)
術者:今のイメージでは、先ほどの陽性反応が示されていません。それでは、最後にもっともプレッシャーを感じて、イップスの症状が強かった時を思い出していただけますか?
患者:はい、(患者にそのイメージをしてもらい術者はPRT検査)
術者:そのイメージでは陽性反応が示されていないので、誤作動を生じさせる脳の神経回路は切り替わっていると思います。
それでは、実際の感覚の変化を試していただきたいのですが、ここでは実際に球を打てないので、実際に打つように素振りで打つ動作をこのベットの上で行ってもらえますか?
患者:はい(治療用のベットの上で構えて何度か球を打つ動作を行う)
術者:治療前の感覚を10とすると、治療後の感覚はどれくらいですか?
患者:そうですね。感覚がずいぶん変わりましたね。3ぐらいでしょうか?
術者:それは良かった、この状態を身体が記憶してくれるとぶり返しが少なくなって早く改善することが期待できますね。
施術前の目安検査はすべて陰性反応
ソフト面調整の完了

患者は満足そうな笑みを浮かべていた。

施術後の説明:
術者:このイップスの治療は、筋肉に誤作動を生じさせてしまう脳の記憶を書き換える治療です。おそらく陽性反応が示された内容は、普段意識していないことだった思います。誤作動記憶に関連するほとんどが無意識的なことですので、今日治療した内容のことはしっかりと覚えていただき、さきほどご紹介した自己療法も家で行って、脳と身体に記憶させておいてください。
今日の施術では、イップスを引き起こす誤作動記憶の反応は消失していますが、脳の記憶は複雑で、他の誤作動記憶も隠れている場合があり、完治するまで繰り返し治療が必要なケースが多いのですが、次回はどうされますか?ご自身で症状の改善具合をみながら通院されますか?
患者:様子を見ながら来て見ます。
術者:それでは、また必要な時に来院されてください。

考察:

様々な種類のイップスの症例がある中で、ビリヤードのイップスの患者さんの来院は珍しい。しかしながら、イップスの種類はほとんど問題にはならない。どのイップスであろうが、心が関係している以上技術論だけでは解決しない。どのイップスであれ、発症してから長期間放置して、しかも技術論、すなわち表面的なテクニックで治そうとした経験があると長引く傾向にある。比較的早く改善する傾向があるのは、発症後早期に来院された患者さんである。本症例の患者さんも発症から2ヶ月後ぐらいに来院されたので、改善は早いだろう。

2017年3月30日木曜日

PCRT基礎1と中級3研究会を終えて

PCRT基礎1と中級3研究会を終えて

先週末、今年初めてのPCRT研究会が開催されました。参加者の積極性と満足度に満たされた雰囲気が多く感じられました。過去10年以上に渡る研究会において、LCAのスタッフとともに様々な試行錯誤を経て、ようやくプログラム内容がアカデミックに確立されてきたように感じます。自然治癒力を基盤とした様々な療法がある中で、PCRTは単なるテクニックではなく、自然療法の本質を追求してきました。施術の背後にある治療哲学やその本質を伝えながら、臨床現場で活躍されている先生方にその価値を伝えてきました。

今回の研究会でのポイントは、ハード面調整法とソフト面調整法とが明確に線引きできたところです。PCRTで教授しているハード面調整法とは肉体内における生体エネルギーブロック(EB)の調整、ソフト面調整法とは肉体外との関係性による誤作動記憶の調整です。PCRT研究会で治療哲学の理解を深めると、様々な療法の本質が見えてくるようになります。単に効果があるとかないとかではなく、なぜ効果があるのかが理解できてきます。

今回、ハード面調整法として「空間ブロック調整法」をご紹介しました。これは、PCRT研究会発足当時から紹介してきた肉体外のエネルギーブロックに関係する調整法です。多くの治療者にとっては今まで聞いたことがない概念であり、画期的な療法になると思います。この調整法をマスターすることで、治療のスピードアップや治療効果が倍増するはずです。PCRTの治療哲学を理解した上での調整法ですので、繰り返し研究会に参加され、背後にある概念も含めてマスターしていただければと願っています。

ワークショップの新しい試みとして、実際の臨床現場で使われた症例を基に、ソフト面調整法のロールモデルのワークが行われました。このワークでは、PCRTの進め方や説明の仕方、声の掛け方、どのタイミングで質問するかなど、具体的な流れの基本を学んでいただきました。受講生からは、PCRTの基本的な臨床の「型」が学べるのでとても勉強になると好評でした。

症例報告ではゴルファーズクリニックの土子勝成先生による「フルショット症例の一コマ」を発表がありました。症例報告には患者情報、最初から終わりまでの経過、考察と医学モデルによる形式があります。そのような学術レベルの形式による症例報告も大切ですが、PCRTでは治療院現場で作り出される施術の一コマも紹介してくださいとお願いしています。PCRTの施術には、その日その日に施術−患者間で作り出すドラマがあります。そのドラマはいつ作り出されるかわかりませんが、施術者にとっては治療家としての醍醐味が味わえる瞬間でもあります。今回の土子先生の症例には治療家冥利につきる喜びが溢れていました。


今年から「空間ブロック調整法」を加えることで、ハード面調整法がさらにバージョンアップしました。また、特にソフト面調整法のアプローチの仕方がシンプル化されたことで、臨床現場では使いやすくなっております。試行錯誤した今までの活動を振り返り、今年がPCRT研究会のターニングポイントになる気配がしております。このような本質的な療法を知らずに困っている患者さんへの喜びの輪を広げるために、今年もさらに成長し、発展していきたいと願っております。

2017年3月18日土曜日

イップスの治り方

イップスの治り方

イップスには様々な種類があるのと同様に、治り方も様々である。患者さんから「どれくらい(期間や治療回数)で治りますか?」という質問がある。患者さんにとってはもっともな質問で、「本当に治るのだろうか?」「どれくらいで治るのだろうか?」と不安になるのは当然だろう。

数多くの症例には、一回で改善される一方で、3ヶ月から半年以上かかる症例もある。治療者側から見ると、数年抱えていた症状が数ヶ月で治るのであれば、その施術期間は長くはないだろうと思いがちだが、患者さんにすれば早く治したいのは当然の思いである。もちろん、早く改善するように毎回全力を尽くすが、脳に学習されたイップスの症状を作り出す誤作動記憶は単純ではないことが多い。

人それぞれに様々な誤作動記憶あり、それを一つ一つ丁寧に消去していかなくてはならない。イップスの症状が出始めてすぐに来院される患者は、比較的に治りも早いが、しばらく症状を放置して、しかも、我流で治そうとしたり、コーチや友人などのアドバイスで応急的にイップスがでないような表面的なテクニックを使ったりすると、根本的な改善が長引いたりすることも少なくはない。

右のグラフは、高校野球部に所属している送球イップスの部員の二人に記入していただいたもの。二人とも改善した後で、今までの施術経過を振り返りながら改善度の経過をグラフに記入してもらった。最初は、先輩になる患者さんに記入してもらった。その先輩は最初の4回の施術で、最悪の状態(120%)から60%改善し、そこから、改善度が停滞して、その後の2ヶ月の間にほぼ完治していった様子が伺えた。

その後、その先輩を紹介してくれた後輩が、その先輩と一緒にメンテナンスで来院した。約4ヶ月後の来院だった。メンテナンスケアでは、イップスの反応は見られなかった。施術後、先輩と同じようにグラフに改善度の経過を記入してもらった。先輩から、「お前は俺よりも相当悪かったから最初は300%(最悪の状態)やろ」などと言われながら記入していた。その後輩も、途中で改善度が停滞したらしく、その2ヶ月後にどんどん完治へと向かったらしい。

高校野球の名門校でレギュラー争いも相当厳しい様子。たとえレギュラーになれなくても、野球かける情熱には純粋さを感じる。イップスの治療を通じて、心と身体のバランスの大切さや「自己を知る」という「心身統一」の大切さを学んでいただいたのではないかと思う。この経験は、野球だけに限らず、長い人生に役立ててほしいと願う。