2017年5月23日火曜日

気分障害(イライラ感)の遠隔治療

気分障害(イライラ感)の遠隔治療

70代女性、大学教授。6年ほど前から当院を利用していただいており、数年前より電話による遠隔治療を好んで利用していただいている。約5ヶ月ぶりの遠隔治療の依頼。数週間前より自律神経失調症のような症状が現れ、気分のイライラ感も強く、すぐにカッとなったり、突然、たわいのないことで悲しくなったりするとのこと。最高のイライラ感を10レベルとすると8(フィンガーテスト《生体反応検査法》)レベル。

術者:「おそらく、イライラ感が治まったら、他の自律神経系に関係した症状も治まってくると思いますが、どうですか?」
患者:「そうですね。」
術者:「それでは、イライラ感を思い浮かべていただいて、検査をさせてもらいます」
誤作動記憶検査チャートを使いながら、フィンガーテストにて検査。
大脳辺縁系→信念→警戒心
患者:「今・・・・・とても仕事に追われている感じで、よそ見をするとその仕事に支障がありそうで、何か馬の目隠しのように前だけを見ていないといけないという感じで・・・でも、気になる本があるとそれを取り寄せたりして、・・・仕事に集中しなくてはいけないのに他のことが気になっていますね・・・家事のこともあるし・・・・〇〇も気になるし・・・何か閉塞感を感じている自分がいますね・・・」
術者:「そうすると、仕事に集中しなくてはいけない時なのに、他のことが気になる自分を警戒しているかもしれませんね・・・」
患者:「そうですね・・・・」
術者:「それでは、先ほど話していただいた内容を気にしている自分を警戒していることを意識してもらいながら調整させてもらいますね」
電話を通じて遠隔治療で調整する。
術者:「はい、警戒心の反応はとれました。先ほどの8のレベルからどれ位になっていますか?」
患者:「ん・・・・」
術者:「では、こちらで検査して見ますね。検査(フィンガーテスト)では4レベルになっているようですが、どうですか?」
患者:「そうですね。それぐらいですね。」
術者:「では、まだ、レベルが下がりそうなので、さらに検査をして行きますね」「それでは、先ほどのイライラ感に戻って思い浮かべてもらえますか?」
患者:「はい・・・・」
誤作動記憶検査チャートを使ってフィンガーテストで検査
大脳皮質系→意味記憶→一般論
術者:「今度は意味記憶の「一般論」で反応していますので、何か一般論的な意味づけをされて、今の症状につなげている可能性があると思いますが・・・」
患者:「・・・・最近、〇〇を感じている自分がいるのですよね・・・おそらく自分の「老い」を気にしているのだと思います・・・最近、周りの知り合いが毎月のように亡くなってなって行くのですよね・・・〇〇の人たちはだんだんと元気がなくなっていっているような・・・」
術者:「というと、そのような周りの情報、つまり一般論にのって、〇〇さん自身もそのようになっていくのではないかと思い込んでいるということでしょうか?」
患者:「そうですね・・・・・」
術者:「海外でもそのような傾向があるのですか?」
患者:「英国の〇〇の人たちはもっと元気があるのですよね・・日本の〇〇の人たちとは違いますね・・・」
術者:「それでは、そのような一般論からの思い込みを認識してもらいながら調整しましょう・・・」
電話を通じて遠隔治療で調整する。
術者:「はい。一般論から意味記憶の反応が取れました。先ほど、イライラ感のレベルが4でしたが、今はどうでしょうか?・・・検査をしてみますね。・・・今2ぐらいになっているようですが、どうでしょうか?」
患者:「そうですね。だいぶん楽になっていると思います。・・・」
・・・遠隔治療完了・・・

二週間後、ご家族の件で代理治療の相談があり、その後の経過を聞いてみると、あれからすっかり良くなったとのことで喜んでいただいた。


2017年5月20日土曜日

PCRT研究会基礎2、上級を終えて

PCRT研究会基礎2、上級を終えて

先週末、基礎2と上級の研究会が開催されました。意識の高い先生方に受講していただき、心地よい雰囲気の中で、学びを深めることができました。また、普段、臨床現場で抱えている課題も先生方からフードバックしていただき、PCRTをよりスムーズに使うためのアイディアをたくさんいただけました。

特に課題となるのはソフト面調整法の際、チャートを使って誤作動記憶に関連するキーワードを特定した後の進め方です。患者がすぐにそのキーワードから連想して心当たりを認識できれば、調整がスムーズに進むのですが、その認識に至るまでの質問やフォローの仕方で行き詰まってしまうという課題があります。

この場合、そのキーワードにつながる答えがでてこないと調整ができない、あるいは効果が得られないという前提が生じやすいと思います。確かに患者が誤作動記憶に対する心の状態を認知することで、様々な症状の改善に繋がります。しかしながら、心の状態を明確に認知しなければ改善されないというわけではありません。

検査の過程でチャートのキーワードを見る、あるいは術者からの質問を受ける、それだけで生体に陽性反応が示されるということは、神経生理学的に何らかの誤作動記憶が引き出されたということです。それは、ハード面調整法で生体に何らかの「刺激」を加えて行う施術と同じになります。ハード面調整法では、ほとんどが物理的に生体に何らかの「刺激」を加えて、施術を行います。

一方、ソフト面調整法では、言語情報や想像による脳への入力情報によって「刺激」を加え、誤作動記憶を引き出して施術を行います。要するに、身体への刺激であれ、脳への刺激であれ、生体が誤作動記憶の陽性反応を示さない場合、それは、様々な環境に適応できている状態です。すなわち健全な健康状態を保っていることになります。逆にいうと、身体や脳への様々な「刺激」に対して誤作動記憶の陽性反応が多ければ、不健全な状態になっているということです。
 
ハード面調整法と同様に、キーワードや質問による陽性反応で引き出された誤作動記憶も施術対象になります。答えが引き出されなければ施術ができないというわけではありません。誤作動記憶の根っことなる部分に直接働きかける以外に幹や枝葉を調整しながら、根や全体を調整するという手順もあります。

根っこを見つけて施術する方法に加えて、枝葉から調整する方法があると、さらにPCRTも使いやすいなってくると思います。今回の上級ではその応用的な手法もご紹介させていただきましたが、次回の研究会でも分かりやすくご紹介させていただければと計画しております。


それでは、次回の研究会でお会いできることを楽しみにしております。

2017年5月9日火曜日

痛みの「記憶」で痛みが再現する患者さん シリーズ2

痛みの「記憶」で痛みが再現する患者さん シリーズ2

一週間後、2回目の施術に来院。

【問診】
術者「どうでしたか?」
「え〜まだ痛いですけど、いただいた資料を読んで、前回言われたことがわかるような気がします(笑)」
術者:「そうですか?それは良かった・・・」「今日も座って施術をした方がいいですか?」
患者:「いいえ、今日は大丈夫だと思います・・」
術者:「そうですか・・・それではベッドをゆっくり倒していきましょう。(内心、イタタターと、前回のように言われるのではないかと不安を感じながら・・・)
「大丈夫そうですね・・・」
患者:「はい、大丈夫ですね」
術者:前回「痛い時と痛くない時あるという話をしたと思いますが、改めてどんな時に痛みが強くなりますか」
この時、術者は患者の足元で、患者と会話をしながらPRT(生体反応検査法)を行う。
患者:「何もすることがない時(目的がない時)に痛いですね。さっきもこちらに来る時、バスの運転手さんと話しているときは何も痛くなかったですからね・・・」
術者:「なるほど・・」「では、何もすることがない時の記憶で身体が過敏反応を示しているようですので、そのときの記憶(目的がない時)を思い出してもらい施術をさせてもらいます。」
PCRT呼吸振動法を施す。
術者:「ほかにどん時に痛みを感じていますか」
患者:「そうですね。お稽古の時は痛くないのですよね・・・」
術者:「その話をしている時に検査(PRT)してみると、身体が反応していますね・・・」
患者:「そうですか?・・・同好会の役員をしているので、もしかするとそのことがストレスになっているかもしれませんね・・・」
術者:「同好会の役員の話をされている時は、身体が反応していませんね。そのときも同じようにお稽古されるのですか?」「先ほどのお稽古とどう違うのでしょうか?」
患者:「先ほどのお稽古(陽性反応)は、師匠に習うお稽古で、同好会のお稽古(陰性反応)は、習うというより、好きな人が集まって自分たちで行うお稽古です・・」
術者:「なるほど、それでは、師匠から習うお稽古でなぜ、身体が過敏反応を示しているのか調べてみましょうか・・・」
PCRT誤作動記憶チャートで検査
術者:「『自尊心』というキーワードで陽性反応が示されましたね。何かのプライドに関係することですが、何か思い当たることはありますか・・・」
患者:「・・・そうですね。お稽古はもう70年以上もやっていますから、そういう意味では他の人と比べて、経験者であるという自負はあると思います・・・また、周りからもそのような目でみられていますから・・・」
術者:なるほど、そのことで身体も反応を示しているようですので、その誤作動の記憶を思ってもらいながら調整しましょう。
PCRT呼吸振動法を施す。
その後のアクティベータ療法に切り替えて施術を始める。施術を終える途中から、
患者:「あ〜だんだんと痛みが楽になってきた。」
術者:「それは、良かった。普通、多くの患者さんで、治療するとすぐに痛みが消えたり軽減したりするので、このように、痛みが改善されるということをしっかりと覚えておいていください。そして、自分の身体が、このような治療で治るのだということを信じてもらえるといいですね・・・」

【考察】
本症例は2回目の施術を終えて、まだ途中経過だが、この調子で施術を継続してもらえると改善方向にむかうことが予測できる。通常は、アクティベータ療法から先に行なって、PCRTへと進むケースが多いが、本症例は、患者の痛みの記憶が強く、通常の施術ができる状態ではなかったので、PCRTを様々な角度から応用して、通常の施術で施術効果を感じていただいた。おそらく、次回からは通常通り、アクティベータ療法でハード面の調整を行い、PCRTのソフト面調整法へと進めていけるだろう。
初回で、「・・・痛くなってもらえますか?」という質問をして、拍子抜けした様子だったが、ユーモラスな会話も交えながら、患者さんの痛みに寄り添うことができたように感じられた。初回の検査や説明で、通常の時間をオーバーしてしまい、後の予約の患者さんたちにご迷惑をお掛けして申し訳なかったが、改めて、患者さんの痛みをしっかりと理解して問診し、わかりやすく説明することの大切さを感じさせられた。
特に病院で脊柱管狭窄症と診断されたということを気にされていた際に「レントゲン写真だけで痛みの原因が判断できるのですか?」という質問もした。すると患者さんは、「はっ・・」と何かを気づかれた様子で、そのことで不安が変わったと2回目の施術の際にもその時の「気づき」について話されていた。患者さんに「レントゲン写真は瞬間的撮影された骨格の写真なので、痛みを表している訳ではありません」と教えるというよりも、「気づき」を与えるコーチング的質問で患者さん自らが気づいていただく方が大切だと改めて振り返ることができた。
通常の病院とは異なり、我々のような施術者に対して、患者さんは様々な期待を抱く。時には、魔法のように瞬時に痛みをとってくれる人だと期待されている人もいるかもしれない。私たちはそのような幅広い期待をしっかりと管理し、そこに齟齬が生じないように努めなければならない。「何ができて何ができないのか」をわかりやすく説明して、「それぞれの患者さんのためにできることは何か」を常に考えながら臨機応変に対応することが大切だろう。