2017年8月9日水曜日

慢性症状の神経回路から健全な神経回路へ

慢性症状の神経回路から健全な神経回路へ

先日の心身条件反射療法の研究会では、神経細胞の神経新生の様子を示した動画をいくつかご紹介させていただきました。これは56年前から研究会でご紹介してきたことですが、患者へのPCRTの施術効果や治癒過程の説明にとても効果的な動画であると思いますので、施術によってどのような効果をねらっているのか、どのようなプロセスで治っていくのかを脳科学的な観点から再度ご説明します。

脳の神経細胞は「学習と記憶」を繰り返すごとに、様々な神経ネットーワーク(神経回路)を構築します。その神経回路は無意識的なプログラムです。そのプログラムは私たちの健康を維持してくれる一方で、慢性症状を引き起こすプログラムでもあります。慢性的に症状が継続する神経学的なメカニズムはその神経回路(プログラム)にあると言えます。

心身条件反射療法の施術は、脳の可塑性を利用して、脳の再学習と再記憶を促すことによって、新たな神経回路を構築させることを助け、慢性症状の改善を助長させます。近年、脳の学習と記憶に関係する「神経新生」の研究も盛んに行われるようになり、動画でも神経新生の様子が紹介されるようになってきました。その一つをご紹介させていただきます。これは、認知神経科学者のDr. Caroline Leafによるプレゼンテーションの動画のクリップとのことです。

この動画では、新たな神経の枝が伸びて、神経回路を作り出す様子が映し出されています。慢性症状が改善されていくプロセスに置き換えると、症状を改善させる学習=神経の枝が伸びて神経回路を作り出す。そして、施術を継続することでその神経回路を強化させる=記憶で、症状がぶり返すことが少なくなり、「症状を作り出すクセ」(誤作動記憶)から「健全なクセ」に書き換えるということになるでしょう。

このように脳の神経細胞は常に「学習と記憶」を繰り返して新生しているので、適切な学習と記憶を促す施術を行えば、様々な慢性症状も改善させることができる訳です。そのような働きを私たちは自然治癒力とよんでいますが、脳には本来そのような機能が備えられているのです。今後、脳科学の研究がさらに進むことで、脳の神経細胞の「学習と記憶」と「自然治癒力」との関係が明確になってくるかもしれません。





2017年8月2日水曜日

脳の神経細胞は増やせるのか? 〜若さを保つ秘訣〜

脳の神経細胞は増やせるのか? 〜若さを保つ秘訣〜

以前は脳の神経細胞は成人したら増えないと言われていましたが、最近の研究では、脳の限られた領域では神経細胞の生成が一生涯にわたって起こっていることが明らかになりました。その領域の中でも海馬は記憶や学習、気分・感情に深く関わっております。また、海馬はストレスの影響を受けることが分かっています。

脳の学習・記憶が低下するとどうなるでしょうか?コンピュータの性能が20年前に戻ることを想像してみてください。脳の性能が低下すると、肉体面や精神面に色々な不具合が現れます。また、老化現象も加速するでしょう。皆さんの周りの人を思い浮かべてみてください。ある程度の年齢を重ねても日頃から何かを学び続け、活動的な人は若々しくないですか?

科学的な研究で明らかにされているように、脳の細胞は増やすことができるのです。科学者の間では神経細胞が増えることを「神経新生」といわれています。神経科学者のサンドリン・チュレは、研究結果に基づいて実践的なアドバイスをしています。そのアドバイスに従えば気分良く過ごし、記憶形成を向上し、先々の老化にともなう脳機能低下が予防できるといっています。


では、どうすれば、脳の細胞を増やして老化を防ぐことができるのでしょうか?脳の「神経新生」を促すためには、「学習」を継続することです。次に、「運動」はどうでしょうか?特に有酸素運動で「走る」ことは脳の神経細胞が増えることが研究で分かっています。

では、どのようなことが「神経新生」を低下させるのでしょうか?「ストレス」や「睡眠不足」は新しい脳の神経細胞の生成を低下させます。脳の神経細胞は年齢と共に減少傾向にありますが、活動習慣や思考習慣によって生成されるのです。また、脳の「神経新生」は、活動や思考習慣だけでなく、食習慣の影響を受けることが研究で分かっています。

「神経新生」を促進させる
  • 「学習」、有酸素運動
  • セックス
  • 食事の間隔をある程度開けること、すなわち短期的な絶食
  • 20~30%のカロリー制限、すなわち8分目、7分目の食事制限
  • 食べ物の種類では、ダークチョコレートやブルーベリーに含まれるフラボノイドの摂取
  • サーモンをはじめ魚油の多い魚に含まれるオメガ3脂肪酸の摂取
  • 緑茶
  • 日光浴(ビタミンDの合成)


「神経新生」を抑制させる
  • 精神的ストレス、睡眠不足
  • バターや肉の脂身など飽和脂肪の多い食事
  • 精製糖
  • アルコールの摂取(例外として赤ワインに含まれるレスベラトロルは新しい神経細胞の生存を促進することが分かっています)
  •  
  • 興味深いことに、柔らかい食べ物は「神経新生」を損なうそうです。歯ごたえのある食べ物の方が「神経新生」を促すとのこと。咀嚼時の振動が脳に影響を与えているのかもしれません。


さて、ファミリーカイロでの施術は脳の「神経新生」に役立っているのでしょうか?科学的な証明をしたわけではありませんが、私は大いに役立っていると信じています。もちろん、健康づくりは患者さんの前向きな気持ちがあってのことですが、ファミリーカイロでは患者さんの身体の働きを最大限に引き出すお手伝いをさせていただいております。特に身体のコントロール系統である脳・神経系の働きに注目し、ストレスや睡眠障害などのメンタル面の調整のお手伝いもさせていただきます。たとえ走らなくても、日常生活では、身体を動かして関節や筋肉などが痛みのない状態でバランスを最低限保っていることが必要です。心と身体のバランスを保ちながら脳の「神経新生」を促し、老化を抑制していきましょう。

出典:TED Talk, Dr. Sandrine Thuret., healthharverd.edu., mentalheathdaily.com


2017年7月31日月曜日

AM5050周年記念米国研修参加報告

2017720日から22日に渡って、アクティベータ・グローバル・リーダーシップ・カンファレンスが開催された。最終日にはAMの創立50周年に当たる記念式典も催された。今回アクティベータ・ネットワーク・ジャパンからは5名が参加した。

 初日の講義は、Dr. Nathan Unruhによる盛業メソッドのプレゼンが行われた。テクノロジーを駆使したマーケティング戦略が印象的だった。次に、ディレクターやインストラクター達の非公開のミーティングで今後の展望や注意事項が伝達された。今後、グローバルにオンラインセミナーを活用する計画であるとのこと。

2日目の最初のスピーカーは、Chicken Soup for the Chiropractic Soulの著者で元パーカーカイロプラクティック大学学長のDr. Fab Manchinだった。パブリックに耳を傾け、自らがスピーカーになってストーリーを語り続けることの大切さを伝えていたことが印象的だった。

二人目のスピーカーは、WFC(世界カイロプラクティック連合)会長、Dr. Richard Brown。カイロプラクティックの世界的動向についてのプレゼンがあった。その後、CCEの会長やギリシャカイロプラクティック協会会長や法律家やなどを交えてパネルディスカションが行われた。

三人目のスピーカーは、パーマーカイロプラクティック-ウエスト大学の会長、Dr. William Meeker。米国におけるカイロプラクティックの認知に関する調査結果が報告された。米国のカイロプラクティックの利用者は、首や腰の痛みに対して95%の人が効果的だと答えている。61%の米国人がカイロプラクティクは首や腰の痛みに対して効果的だと信じており、29%の米国人がカイロプラクターを最初に選択するとのこと。

カイロプラクティックに関する5つの質問項目があり、まずは、安全であるか?効果があるのか?カイロプラクターは本当のドクターなのか?誰がカイロプラクターを受診するのか?カイロプラクティックは首や腰の痛みに効果的なのか?米国には医療分野でドクターの学位を有する職業が4つあり、それに必要な教育時間を比較して報告されていた。Medical Doctor4800時間、Doctor of Osteopathy4665時間、Doctor of Chiropractic4620時間、Doctor of Physical Therapy3870時間とのこと。
 
四人目のスピーカーは、現在、イギリスの名門大学の一つであるケンブリッジ大学の神経学教授を勤めているDr. Frederick Carrick。アクティベータのアジャストメントがどのように神経系に影響を及ぼすのかの可能性についてのプレゼンがあった。

夕方からは、ドクターファーと奥様のジュディーさんからのご招待で、地元の球場で大リーグを観戦させていただいた。とても白熱した試合で、日本のインストラクターチームを初め、イギリスやブラジルからの参加者も野球観戦を存分に楽しんだ。

余談になるが、試合が始まる前に米国の国家斉唱が始まると、通路を歩いていたお客さんは足を止め、店員さんも作業を止めて胸に手をあてて、アメリカ国旗を見つめていた。誰もその静粛な雰囲気を乱す人はいなかった。以前から知ってはいたが、改めて米国人の愛国心に感動した。

最終日の午前は、Steven B. Wiley氏によるリーダーシップに関するプレゼンが行われた。リーダーシップの概念として、トランザクショナル(取引型)とトランスフォーメショナル(変革型)のリーダーシップの違いについての説明があった。トランザクショナルは権威や

規律によって部下を統率していくタイプで、トランスフォーメショナルは人格的に部下を教化して目標に向かって率いるタイプなどの説明があった。

日本のアクティベータチームのリーダー、責任者としての活動も18年目。お陰様でとても洗練されたチームになっている。今日までたくさんの先生達に協力していただき、チーム全体の個性もそれぞれのメンバーの個性によって変化してきた。チームとしては様々な紆余曲折があったが、その都度成長してきた。東洋的に言えば、チームリーダーには「義」と「愛」が大切なのかなと今回の講義を聞いて感じた。
 
午後からは、スペイン在住のDr. Ricardo FujikawaDr. Arantxa Orgega de MuesよりアクティベータVによる骨粗鬆症への効果に関する研究報告があった。アクティベータを使っているドクターのほとんどが、このリサーチの価値や未来への可能性を感じたのではないだろうか?アクティベータVによるアジャストメントが骨粗鬆症に影響を与えているという科学的研究は追試され、さらに広がってくるのかもしれないと感じた。

その他、いくつかのプレゼンがあり、夕方からAM50周年の記念式典が開催された。豪華な会場でディナーを味わった。その後、ローガンカイロプラクティック大学やWFC(世界カイロプラクティック連合)、ヨーロッパのカイロプラクティック団体などから祝辞とお祝い品がドクターファーに贈呈された。日本からはAMを使ってその恩恵をうけている先生達から寄付を募り、博多人形と寄付者の名前を刻印した記念の盾を贈呈させていただいた。博多人形は無形文化財保有者、人間国宝の宗田源蔵作の「羽衣」の能の人形。気品のある荘厳な雰囲気が心のこもった日本からの贈り物として伝えることができたと思う。
 
最後に、AMを率いているインストラクター達への表彰が行われた。年間ディレクター賞や年間リサーチ賞などが表彰され、驚いたことに私もイーグル賞という名誉ある賞をいただいた。私は、米国のインストラクターカンファレンスに参加させていただいて20年目になるが、この賞は特別な人しかいただけないことを知っているが故に嬉しさもひとしおだった。この賞は、今日まで協力してくださった日本のスタッフのお陰でもあり、コツコツと積み重ねてきた日本チーム全体に与えられた賞だと思っている。
 
今回の節目となる50周年の記念行事に参加させていただき、さらなる成長と貢献を積み重ねていこうと心を新たにした。日本チームはさらに成熟し次のステージに向かい、目の前の患者さんはもちろん、日本の健康医療に貢献したいと思う。