2018年2月13日火曜日

「生体反応検査法」をマスターするための大前提

「生体反応検査法」をマスターするための大前提

代替医療には様々な療法があります。その中でも症状に応じて治療法を選択する療法と、患者の生体反応に応じて調整法を選択する療法があります。前者は症状に応じて、施術する部位や手法がすでに決まっており、料理本に従って料理をするように長年の経験に基づいて施術手順をハウツー的に真似る手法になります。多くの人は通常医療に類似した手法に慣れており、代替医療においても症状に応じて薬を処方してもらう感覚で、対症療法的にマッサージや鍼灸、整体などを受けるとういうが普通ではないでしょうか?

一方、後者の患者への生体反応に応じて調整法を決定する療法ではオーダーメイド的な手法になります。症状に関わらず、それぞれの患者が示す生体の反応に応じて施術部位と施術法が決定されます。ここで説明する「生体反応検査法」とは、文字が表すようにある刺激によって示される生体の反応を読み取る検査法のことです。この検査法は神経生理学的な作用を利用しています。生体エネルギー論的に言えば、生体のエネルギーや生体の情報を読み取る方法です。生体反応検査法は特にカイロプラクティックの分野において発展し、数多くのカイロプラクターによって臨床現場で使われています。

カイロプラクティックの領域では、施術部位や施術法の決定には下肢長検査や筋力検査などの「生体反応検査法」が使われてきた長い歴史がありますが、西洋医学の思想に準じて、西洋医学的な診断をベースに調整を行うカイロプラクティックの流派もあります。科学至上主義とまでにはいかないにしても、機械論的な思考が色濃く、目は見えない生体エネルギーや有機的な関係性による反応には否定的な考えを示す傾向にあるようです。生体反応検査法を客観的に評価して、信頼性を示そうという科学的研究もありますが、可能な限り機械的な指標で見なければ、信頼度の高い結果は示されないようです。

もしも、骨の長さだけを評価するのであれば、二人の試験者間の一致度は高まる傾向があります。そこに筋肉の緊張度を加えた評価になるとその一致度は低くなり、さらに動作やメンタル面などの関係性を加えた評価になるとさらに一致度は低くなるでしょう。これらの信頼度を測定する研究には、試験管内で行う研究とは異なり、生きた人間を使って検査を行うため、一定の条件を統一するには無理があります。だからと言って、信用しないという人もいるかもしれませが、客観性のある科学的データが全てではありません。科学的なデータだけに基づいて治療を行うということは、様々な関係性や心の影響を排除して、機械論的に施術を行うということになります。


西洋医学の整形外科や外科、内科などの分野において科学的なデータに基づく客観性、再現性のある機械論的な検査や治療はとても重要です。しかしながら、西洋医学では改善が困難な症状を求められる代替医療の領域では目には見えない関係性やメンタル面などの複合した原因が絡んできます。そのような目には見えない因果関係が絡んだ症状を機械論的な西洋医学の概念でアプローチしようとすると、本質的な問題が見えなくなるでしょう。

生体反応検査法は機械論的検査では診ることのできない、様々な関係性を診る有機論的、生命論的検査法です。画像や数値で判断するのではなく、エネルギー的な情報を感じ取って有機的に判断することが大切です。生体反応検査法をマスターするための大前提として、機械論的な検査ではなく、有機論的な検査が必要であるという理解がまず必要になるでしょう。

2018年2月3日土曜日

患者(クライエント)への「質問力」その6【「寄り添う力」を高めるために】

患者(クライエント)への「質問力」その6【「寄り添う力」を高めるために】

患者とのラポールを築くための寄り添い方にはいくつかの技法がある。カウンセリングやコーチング 関連の書籍でも紹介されているが、最初によく取り上げられる技法は「傾聴」である。しかし、傾聴の前に大切だと思われるのは「患者に関心を寄せること」である。「患者に関心を寄せるなんて当たり前のことでしょ」と思われる方も少なくはないだろう。新米の医療者であれば、患者に関心を寄せることは当たり前のように思われるが、どのように患者に接するのかのマニュアル的な手法ばかりに意識が先行して、目の前の患者の問題に対する関心が薄れてしまうこともある。

一方、ベテランの医療者であれば、「慣れ」や経験からくる「思い込み」が知らず知らずのうちに生じてしまい患者が抱えている本質的問題への関心が薄れてしまうこともある。また、患者の来院数が増えると、患者の数をこなすことに関心が向いたり、早く終わらせることに関心が向いたりして、表面的なことばかりに気を取られて、言葉では言い表すことのできない心(無意識)の声に耳を傾けるまでには及ばなくなる。医療者は新米であれ、ベテランであれ、目の前の患者の表面的な言語や身体検査だけにとどまらず、言葉の背後に隠れた無意識的な心の訴えや魂に関心をよせ、無意識的な仕草や表情などのボディーランゲージにも深く関心を寄せることが求められるだろう。

関心を寄せることの効果を表した心理学的実験がある。「ピグマリオン効果」と呼ばれアメリカの心理学者ローゼンタールとフォードによって行われた。最初はネズミを使った動物の迷路実験だった。ネズミをランダムに二つのグループに分けた。実験を行う学生たちに一つ目のグループはよく訓練された利巧なネズミとして渡し、二つ目のグループはまったくのろまなネズミとして渡した。学生たちは恐らく前者のネズミを丁寧に扱い、後者のネズミをぞんざいに扱い、その両者のネズミへの関心や期待度の違いが実験結果に反映されたものとローゼンタールは考えた。そこで、教育現場の教師と学生でもありうるのではないかと考えた。

教育現場の実験では、普通の知能テストを行なったにも関わらず特別なテストを行なったかのごとく装った。そして、学級担任には今後数カ月の間に成績が伸びてくる可能性のある生徒の名簿を渡した。それは実際にはテストの結果とは関係のない無作為に選ばれた名簿だった。その後、学級担任は選ばれた子供達の成績が向上するという期待を込めてその子供たちを見ていたらしい。そして、実際にその子供達の成績が向上した。報告論文では成績が向上した原因として、学級担任が子供達に対して期待のこもった関心を向けたこと。さらに、子供達も期待されていることを感じ取ったがゆえに成績が向上していったと主張されている。


恐らく、教育現場では成績が伸びない予測がでたからといって、子供達にあからさまな差別的な扱いはしないだろう。しかしながら、期待を込めた関心が無意識的に態度に表れたのではないだろうか。もっと言えば、目には見えない期待や関心の信号が伝わったのではないかと考えられる。このように期待をこめた関心を寄せることの効果は、医療現場でも同じだろう。表面的には見えにくい効果ではあるが、誠実に患者に接している医療者であれば、納得していただけるのではないだろうか?

2018年1月29日月曜日

患者(クライエント)への「質問力」その5【質問力を高める「寄り添う力」】

患者(クライエント)への「質問力」その5【質問力を高める「寄り添う力」】

質問力とは、単に質問の幅が広いとか、奥深い質問をしているという一方向の技量だけでなく、クライエントの無意識の答えを読み解く能力も問われる。マニュアル的に質問のフレーズだけを暗記して、一方的に投げかけても、相手の様々な反応をどのように読み取るかの読解力、判断力がなければ意味がないだろう。また、質問で相手も気づいていない心の奥から湧き出た本心を引き出すためには、相手との信頼関係を保つ「寄り添う力」も必要になるだろう。相手が醸し出す波長に上手に合わせることで、相手は心地よく心を開いて本当の答えを導き出すことができる。

武道などにおいても、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」という諺のように、相手の実力や現状をしっかりと把握し、自分自身のことをよくわきまえて戦えば、何度戦っても、勝つことができるというようにいわれている。それは武道のみならず、経営などにおいても問題を解決するときは、その内容を吟味し、自分自身の力量をしっかりと認識したうえで対処すれば、うまくいくものだといわれている。医療の現場でいえば、相手の心や身体の現状をしっかりと把握し、自分自身の心の状態や知識や経験による力量をしっかりとわきまえて対処すれば理想的な結果が得られるということになるだろう。

患者が求めているニーズに応えるためには、まずは自分自身をしっかり把握し、頭と心、心と身体が調和していることが大切である。そして、患者のニーズに応えるだけの能力や経験を持ち備えておかなくてはならない。特に心の側面に触れる医療従事者は、様々な角度から患者に質問を投げかけながら、言語では言い表すことのできない心の内面を読み取る力、洞察力が求められる。実際の患者が発する言葉にならない無意識のメッセージは幅が広く、深いものがある。そのような心の隠れた信号を読み解くためには、相手の心に「寄り添う力」が必要とされるだろう。

ただし、相手の言葉や身体に合わせるだけでは、単に相手のラインに沿っているだけなので何の変化も生じなくなる。相手の変化をサポートするためには、まずは相手に寄り添って、時折変化球的な質問をして、未知(盲点)の領域、可能性への領域へ踏み出すサポートが求められる。つまり、寄り添いながらも「ずらす技」が必要になる。例えば、相手を力でねじ伏せるというよりも、むしろ、合気道などのように攻撃してくる相手の身体の波長にうまく合わせてから、相手の力を一旦自分の身体に吸収し、二人の身体が一体となったところでずらして技を決める。患者への質問力でいえば、患者に添って対話をしながら、相手の心を一旦受け止めて、質問の角度を少しずつズラして「盲点領域」への質問を投げかける。


しかし、「盲点領域」への質問を投げかける前に、患者との深いレベルの信頼関係は必修条件であり、深い信頼関係がなければ、患者への「盲点領域」の質問を投げかけても、相手は答えようとしないだろう。そのような深い信頼関係のことをカウンセリングの用語では「ラポール」という。質問力を高めるためには患者とのラポールは必要不可欠であり、そのためにも寄り添う力が必要とされる。