2017年10月19日木曜日

送球(投球)イップス

送球(投球)イップス

はじめに
2週間ほど前からブルペンでの投球は問題がないのに、試合での投球が上手くいかない状態になる。周りの人から、「イップス」ではないか?と言われ、当院を受診。3回ほどの施術で早期に改善したので報告させていただく。

患者情報
14歳、男子、主にピッチャー、キャッチャーを担当することもある。小学1年生の時から野球を始める。リトルリーグ(硬式野球)の野球クラブに所属。ピッチャーは本人以外に三人。経過としては段々と悪くなっているとのこと。そのような悪い状態をなんとかしてあげたくて、お祖父様がインターネットで検索して当院に連れてこられた。

初回の施術
最初は、骨盤、脊柱の調整をAMで行うが、特に身体の機能面には問題は見られなかった。本人に思い当たる原因を尋ねたところ、試合でのデットボールを監督さんに叱責されたという。PCRTの検査に入り、大脳辺縁系で「恐れ」のキーワードが示された。前述した監督さんに怒られたことではないかと尋ねたところ、本人も納得。検査をするとやはり陽性反応が示された。そこから検査を深めると、交代させられる先発の立場やチームの雰囲気を壊してしまうなどの恐れへとつながっていたので、その恐れを引き出して調整。他にバッターが立っている時の投球やデットボールでの記憶でも誤作動記憶の陽性反応が示された。大脳辺縁系では「虚栄心」のキーワードも示され、内容を質問して誤作動記憶を引き出して調整。さらに検査を進めると、大脳皮質系でエピソード記憶に関する誤作動記憶の陽性反応が示され調整を行なった。普通に投球できる自信の度合い(最高が10)は、最初は5レベルだったが施術後には8レベルまで上がる。

2回目の施術
前回に示された陽性反応を再検査すると全て陰性反応が示された。PCRTのソフト面の検査を行うと「恐れ」の反応が示された。具体的な内容を尋ねると、特に先発で起用され、先頭バッターに対する四球やデットボールを恐れているという。それは完全にピッチャーの責任でランナーを塁に出すことになるし、監督さんからの叱責につながるとのことだった。

3回目の施術
前回の陽性反応は全て陰性反応に転じていたが、前回と同様に「恐れ」に関するキーワードが示された。前回とは少しニュアンスが異なり、初回にランナーを出したらどう思われるかという恐れの気持ちと、チームメートに申し訳ないなどの気持やピッチャーとしての周りからの期待も絡んでいた。投手としての自信の度合いを尋ねてみると来院時は7レベルで施術後は8レベルに上昇。明日試合があるとのことで、先発で登板するイメージをしてもらいPCRTの検査を行う。陰性反応だった。

4回目の施術
先日の試合後に来院。試合では一回で交代することが多かったが、調子が良かったので4回まで投げたとのこと。試合を観戦していた人からいいピッチングだったと褒められたとのことだった。本人に投手としての自信の度合いを尋ねると9レベル。イップスに関してはほぼ完治した様子だった。

考察
イップスの症状を発症してから比較的早期に来院していただいたので、経過も良好で早期の改善につながったようだ。イップスを改善するために投球フォームなど「技術論」で解決しようとする指導者もいるが、今回のケースは明らかにメンタル面が関係していると保護者も感じていた様子で、その保護者の献身的なサポートも好結果につながった。もしも、周りの指導者が、投球フォームなどの技術論でイップスを改善しようとしていたら、悪循環になり改善は難しかったかもしれない。また、本人がメンタル面と身体的誤作動の関係を素直に理解してくれたのも良かった。一般論的に自分はメンタル面に自信があるのでメンタルは関係ないと誤解している人もいるが、心と身体は切ってもきれない関係性で結ばれており、多かれ少なかれ誰もが影響を受ける。大切なのは「己を知る」こと。自分の心の状態がどのような状態なのかを理解することで、心と身体の調和がとれ、症状も改善し、さらにパフォーマンスのアップにつながるだろう。


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