患者情報
五十代女性、4ヶ月前に口の周りの筋肉や舌が意識とは無関係に動くようになり、仕事に集中できなくなったとのこと。また、そのような症状で周囲からの目も気になっているという。以前から首の痛みや肩こりで整骨院や整形外科を受診していた。整形外科では頸椎症と診断される。舌の異常な動きに対しては耳鼻科を受診、その後、心療内科を受診、呑気症(空気嚥下症)との診断。精神安定薬を処方され、呼吸法やリラックス法を受ける。約1ヶ月前に神経内科を受診して、ジストニアと診断されボトックス注射を顔面(下顎部)と頚部に一度受けたが症状が、改善されずに当院を受診。
初回施術
〈術前評価〉
l ジストニアの症状はNRS(数値評価)で9レベル。メンタル面の不安感はNRSで10レベル。
〈検査〉
l 頸頸椎部周辺と肩甲骨周辺の筋骨格系の機能検査で左右共に陽性反応を示す。
l さらに舌を動かす動作、口を尖らす動作、声を発する動作による間接的機能検査で陽性反応を示す。
〈調整〉
l 施術では、最初はハード面の調整法をAM(アクティベータ・メソッド)によって骨盤、脊柱の基本部位に行う。PCRTのハード面調整法ではブレインマップ調整法を施す。
l ソフト面調整法では、大脳辺縁系で「利己心」、「慈悲心」のキーワードから誤作動記憶を特定して調整を行う。
〈術後評価〉
施述後、メンタル面の不安感は10レベルから5レベルに軽減したとのこと。ジストニアの症状の軽減はやや見られたが、数値的な評価は尋ねなかった。
2回目施術
次の日に来院。
〈術前評価〉
l ジストニアの症状はNRS(数値評価)で9レベル。メンタル面のNRSは9レベル。筋骨格系の機能評価は8レベル。
〈検査〉
l 前回と同様に行う
〈調整〉
l ハード面調整法ではAMによる基本レベルの調整の後、PCRTの頭蓋骨調整法とブレインマップの調整法を行う。
l ソフト面調整法では前回の「利己心」は反応が示されなかったが、「慈悲心」に関するキーワードで再度反応が示されたので、コーチング的に質問を行い、心の構造を明確にして調整を行う。さらに検査を進めると大脳皮質系で意味記憶「情報」に関係する誤作動記憶が示された。
l 質問で明確になったのは心療内科で処方されていた「精神安定剤の薬を止めると悪くなるのではないか」といういわゆる思い込みだった。そこで、「その薬で改善されていたのですか?」と尋ねると、「いいえ・・」という。「改善してもいないのに薬を飲み続けて、その薬を止めるのに不安になっているのですね・・・」と現状をフィードバックさせてもらうと、「はっ・・・」と、ご自分なりに気づかれた様子。そこでこのような本質的な調整法を通じて自分の治る力を信じるような肯定的な思い込みに書き換えるように提案して調整を行なった。一般情報として、薬に対する思い込みは影響が強いのだと改めて感じた。
〈術後評価〉
l 施術後の筋骨格系のNRSは1レベル。メンタル系のNRSは6レベルに変化した。
3回目施術
続けて次の日に来院。
この日は別人のような印象を受けた。明らかに顔の表情がリラックスしている。本当はこんな顔の人だったのだとスタッフと口を揃えて言ったほど変化が見られた。その変化は、本人も自覚されており喜んでいいた。
〈術前評価〉
ジストニア症状のNRSは3レベル。筋骨格系はNRSは3レベル。メンタル系のNRSは4レベルと前々回よりも数値的にもかなり改善していた。
〈検査〉
l 前回と同様に行う
〈調整〉
ハード面調整法
l 最初はAMで調整、骨盤部のみの反応が示された。PCRTの臓器反応点調整法を行う。
ソフト面調整法
l 「喜び」のキーワードが示された。症状が改善された喜びだった。次に示されたキーワードは「恐怖」だった。仕事に関する書類の監査があるので、前回のようにパニックにならないか、あるいは自分の評価が下がって情けなくならないかということが関係していた様子だった。
〈施術後評価〉
l ジストニアのNRSは1レベルに軽減。筋骨格系は1レベル、メンタル系は2レベル
4回目施術
前回の施術から5日後に来院。ジストニアの症状は以前よりもある程度改善されていたが、以前から抱えていた口周りのこわばり感、病院で受けたボトックス注射の後の違和感、舌の動き、咀嚼障害、首肩の症状、睡眠障害などの症状を訴える。
〈施術前評価〉
筋骨格系のNRSは8レベル。メンタル系のNRSは6レベル。
〈検査〉
ハード面調整法
l AMで調整
ソフト面調整法
l PCRT検査で「恐怖」に関係するキーワードが示された。退職後のやりがいや生きがいなどのテーマが関係していた様子だった。
〈施術後評価〉
l 調整後、筋骨格系のNRSは2レベル。メンタル系のNRSは1レベルに軽減。
5回目から10回目の施術
その後、仕事に復帰しながら、少しずつ間隔を開けて通院していただいている。以前は職場から休職の相談ももちかけられていたが、職場の人からも症状改善が確認されていることなので、仕事を継続していくとのこと。以前のような誰が見ても分かるジストニアの症状もある程度落ち着いているが、人間関係における身体的な緊張や精神的な緊張を仕事現場などで感じている様子。通院を継続しながら、何が緊張させているのかをPCRTで検査しながら誤作動記憶の調整を行なった。さらに誰にでもある建前と本音の自己認識を深められるように心理面の提案もさせていただいた。
考察
本症例は、ジストニアの症状が完治したという訳ではないが、初診時の症状から比較するとかなり改善されていることは明らかである。このような症例の経過からすると、一般的には仕事を辞めれば治るのではないかと思われるのではないだろうか?しかし、ジストニアの症状に関連している脳の誤作動記憶はそれほど単純ではないことが多々ある。もしも、人や環境が変わっても、症状に関係している「無意識の心のクセ」はそう簡単に変わるものではない。
まずは、ご本人が「心と身体の関係性」による症状であるということをしっかりと理解すること。そして、症状につながっている無意識的に発生する誤作動記憶の内容をしっかりと認識することが大切だろう。もしも、患者が無意識的に発生する自分の「心のクセ」に向き合おうとせずに、「脳や身体の構造的、あるいは機能的な問題ばかりに目を向けようとすると、治すのは治療法や治療者次第ということになり、改善も難しくなる。
症状は自らが創ったモノなので、自らが主体性をもって適切な治療を受ければ治るという基本姿勢が必要不可欠になるだろう。ジストニアの症状はかなり改善されているが、首周辺の緊張パターンも含めて完治するまでしっかりと症状(自分自身)に向き合えるよう患者さんのペースに寄り添っていきたいと思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿