時代の流れと共に、セミナー活動の価値も随分と様変わりしてきたようです。10年以上前のセミナーでは、最新の理論や知識に基づく技術には多くの受講者が興味を示してくれていたように思います。近年ではインターネットやSNSの普及に伴って、その価値はセミナー講師から習うというよりも、ネット検索から習うという方向へとシフトしてきており、素人と玄人の境界、プロとアマの知識の壁が少なくなってきているように感じます。また、ネットによる学習は知識だけでなく技術でさえも動画で学べる時代になっているようです。
しかしながら、技術、知識の学習は見様見真似で学べても、実際に自らが行動して体験しなければ技術を習得したとは言い難いと思います。「知識」と「知恵」の学習に分けるとすれば、「知識」の学習は書籍やネット情報からできますが、「知恵」の学習は実践的な体験を通して深く洞察し、言葉では言い表せないコツを自らが掴んで行くことでしか体得できないでしょう。
イギリスのオックスフォード大学は、近い将来に現在ある仕事の90%は機械・人工知能(AI)に置き換えられると公表しました。また、野村総合研究所は、この先15年で今ある仕事の49%がなくなるというレポートを発表しています。AI(人工知能)の研究が進歩するにつれて、医学の世界においても人に変わってAIが診断をする時代になるといわれています。機械学習やディープラーニングを通じて、AIが徐々に人間が行うような複雑な問題に対応できるようになってきているという現実があり、病気の診断もAIを通じてできる時代が来るということだと思います。
自然治癒力を引き出すことを目的とする徒手療法においても、AIがその代役を担ってくれる時代がくるかもしれません。AIの発展に伴って、施術者の学び方もだんだんと変化が現れています。そのような時代の流れに沿って、LCAでは体験型のセミナーに重点を置いてから5〜6年が経過しています。特に強調しているのは自らが体験して学びを深める手法です。実技を行うことはもちろんのこと、人の実技を観察してフィードバックすることも大切な体験です。見て、聞いて、考えて、行動する体験にこそAIに勝る技術技能が身についてくるのだと思います。
人工知能が発展する時代において、「治す」ことを目指す自然徒手療法家に必要なのは生体の「働き」の異常や生体エネルギーブロック部位を的確に特定して、調整できることだと思います。専門的な知識、情報が検索すればすぐに取り出せる時代において、生体の機能異常部位、さらには生体エネルギーブロックの部位を瞬時に検査できる技法は、恐らくAIに取って代わることはできないでしょう。私たちはそのようなAIが発展しても到達できない人間の感性や能力を磨いて、自然徒手療法の価値を高めることが求められる時代になってくるのだと私は思います。
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