2016年の総務省のデータによると55歳から79歳までの主な死亡原因は1)ガン2)心疾患(心臓の病気)3)脳血管疾患の順になっております。ガンと心疾患は統計的に見ると年々増加傾向にあります。その一方で、脳血管疾患による死亡率は減少傾向にあります。医学が進歩しているにも関わらずガンや心疾患はなぜ増え続けるのでしょうか?それは、ガンや心疾患が心理社会的要因、すなわちメンタル面が関係している可能性があるからです。医学は肉体構造を修復する技術において素晴らしい成果を上げてきましたが、心理社会的要因と病気との関係性を対象にした研究はほとんど進んでいません。恐らくその領域の研究が進んでないが故にガンと心疾患の死亡率は年々増加傾向にあるように思います。
心臓病学は過去100年の歴史でステント、ペースメーカー、冠動脈バイパス手術、心臓移植など科学的な進歩と共に多くの心血管系死亡率の低下に寄与してきました。しかしながら、その進歩を続けるには限界に近づいていると、Dr. Sandeep Jauhar心臓外科医が警鐘を鳴らしています。彼は心臓外科医として20年の経験を持つ医師で、心臓病の問題に対して新しいパラダイムに移行する必要があると述べていました。そのパラダイムとは、医師の間で心理社会的要因を最前線の問題として考えるべきであるということです。
医学雑誌「サイエンス」に掲載された1980年の研究で、研究者らはケージに入れたウサギに高コレステロール食を与えて、心血管疾患への影響を研究しました。彼らはあるウサギが他のウサギよりもはるかに多くの病気を発症したことを発見しましたが、その理由を説明できませんでした。彼らは恐らくウサギとどのくらいの頻度で接触したかに関係があるのではないかと考えました。そこで彼らは同様の研究を繰り返し、1つのグループでは、ウサギをケージから取り出し、かわいがり、話をし、遊んでおり、もう1つのグループでは、ウサギをケージに入れたままにしておきました。その後、彼らは人間の相互作用を受けた最初のグループのウサギは、コレステロールレベル、血圧、心拍数が類似しているにもかかわらず、他のグループのウサギよりも大動脈疾患が60%少ないことを発見しました。
また、1990年にイギリスの医学雑誌「ランセット」に掲載された研究論文では、一つのグループを食事療法や適度な有酸素運動だけ、もう一つのグループを食事と運動にプラスして心理社会的サポートやストレス管理のアドバイスを行なったグループに分けて長期に調査しました。すると食事療法や運動だけでは心臓疾患の予防には至らず、心理社会的サポートやストレス管理の必要性が明らかになったそうです。つまり、運動や栄養バランスだけではなく、人と関わる心理社会的要因が心臓病の予防に大きな影響をおよぼしているということです。このような心理社会的要因は通常の健康診断では分かりません。たとえ健康診断で問題がなくても、もしかするとストレスの影響を受けているかもしれません。大したことがないと思われる症状でも、何らかの不調を身体が訴えているかもしれません。
当院では「心と身体の関係性」=「心理社会的要因」を長年研究しております。様々な心理社会的要因が健康に悪影響を及ぼさないように予防的サポートをさせていただければと願っております。お気軽にご相談ください。
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