2020年4月24日金曜日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で思うこと

連日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の問題で、今までにない未知の経験に直面しています。長らく患者さんの健康のサポートをさせていただいている私にとって、今回のウイルスは通常の風邪やインフルエンザなどとはちょっと性質が異なる様で複雑な心境です。自然治癒力を高めることを主にしている治療家にとって、感染症は適応外の症状です。抵抗力、免疫力を高める手助けはできても、ウイルスを撲滅するような治療はできません。

今回のウイルスで厄介なのは、重症化して早期に亡くなってしまう人がいるということです。病院でも最善を尽くされていると思うのですが、助けることができないのです。亡くなる方やその家族が気の毒なのはもちろんですが、全力を尽くして力及ばなかった医療従事者の気持ちを察すると心が痛みます。この感染症に効く薬は、そのうちに開発されるとは思いますが、なぜ、このようなウイルスが突然現れるのかわかりませんし、今回の新型コロナウイルスは突然変異を繰り返しているともいわれています。

私は治療家として機械論と有機論を対比して、主に筋骨格系に関する治療哲学を語ってきました。今回の恐ろしい新型コロナウイルスに関しは、治療の対象外ではありますが、機械論と有機論の観点で捉えると、ウイルスとの闘い(機械論)と共生(有機論)の視点が生まれます。今回の感染症は私にとっては今までにない未知の感染症ですが、人類の歴史を振り返れば、人類は様々なウイルスと闘い、共生してきた事実があります。

感染力の強いウイルスに対しては、「避ける」、「闘う」という機械論的な捉え方も必要ですが、その一方で、「共存」「共生」するという有機論的な捉え方も必要だと私は考えています。数週間前にはなりますが、たまたま観ていたテレビ番組で、感染症の専門家の方が、新型コロナ感染症に関するインタビューを受けていました。その方は、感染防止策は推奨しつつも、「最終的にはコロナウイルス との共生・共存を目指すべきだ・・・」「致死率を下げながらコロナと共存するしかない・・・」という趣旨のことを語っていました。

その時、私は「あっ、同じことを考えている・・・」と思わず呟きました。このような時期に、「ウイルスと共生する・・・」とは心の中で思っていても言いづらい状況です。限られた患者さんにコロナのことを質問されたときだけ、私の意見として、「ウイルスと闘うことも必要だと思いますが、ウイルスと仲良くすることも必要だと思いますよ・・・」などと細々としか話していませんでした。だからこの専門家の意見は共感できる専門家がいるという意味で心強く感じました。

後で、この教授のことをネットで検索すると、感染症と人類史の専門家であることが分かりました。この教授は「過去20年でSARSMERS、新型コロナウイルスと3種の新型ウイルスが発生していることを挙げ、これは人類が無秩序に生態系に進出したことで野生動物のウイルスが人間に感染するようになったことやグローバル化が大きな理由だ」と述べています。

さらに、同じ様に考えている人は他にいないのかと検索してみると、感染症の専門家の医師が、『「ヒトとウイルス」共生と闘いの物語』というタイトルで論文を書いていました。その論文の中で、『「きれい好き」が感染症を増加させる』という一つの原因論を述べていました。事例としてA型肝炎を挙げ、子供の頃にかかると無症状か非常に軽症に終わるとのことで、現在70歳以上の人たちは、当時の衛生状態が悪い状況で、小児期に知らず知らずのうちにA型肝炎に感染して免疫を持つようになったのだろう』と述べています。現在のように衛生状態が良くなると、抗体をもたなくなり、ヒトの感受性がどんどん高くなってきて感染症が増加する原因の一つと考えられるといいます。

また、「ウイルスにせよ細菌にせよ、ヒトと共に生きているのだから、人間の生活様式が変化すれば、それに従って変化するはずで、今はそれが顕著に起きている状況だ・・」と述べています。論文の最後に、「ヒト自身も大量の微生物を持っているはずですし、やはりウイルスにしろ、細菌にしろ、ずっとヒトと一緒に生きてきたものであって、人間の行動の変化によって、共に変化してきました。結局は、どのように感染症とつきあっていくのか、そのつきあい方を間違いない様にすべきだと考えます。」と述べています。

スウェーデンは多くのヨーロッパの国と異なって外出禁止措置は取らず、レストランなどの営業も続けるなど独自の路線でウイルス対策をとっているとのことです。そのためか、スウェーデンの保健当局が首都ストックホルムでは市民が新型コロナウイルスに対する集団免疫を来月には獲得する可能性があるという見解を示したとメディアが伝えているようです。ウイルスとの共存ともみられる有機的な方向性が見えてきます。

さらに、イギリスの新聞「テレグラフ」はスウェーデンの保健当局の疫学者、アンダース・テグネル博士が「ストックホルムには免疫を持った人が多く現れ始めている」と発言したと伝えました。さらに、来月にも集団免疫を獲得するだろうという見通しを示したということです。人と人との接触を極端に制限するロックダウンのような措置が長期的にみて本当に効果があるのかどうかは定かではありませんが、日本に住んでいる以上は、政府の方針通りにできるだけ不要不急の外出は控え、人との接触は避けるべきなのだと思います。

今回のウイルスは、分からないことが多々ありますが、命を脅かす感染症なので、自分や他者を守るためにマスクの着用や手洗いは必要ですが、同時に抵抗力や免疫力を高めることも必要です。部屋に篭りすぎて閉鎖的になると、体や心の秩序が乱れて不健康になりやすく免疫力も低下しやすくなる恐れがあります。心や身体をできるだけ解放させて免疫力を上げましょう。天気の良い日には日光の光を浴びて、適度な運動、散歩することなどを心がけましょう。

この様な時期だからこそ、明るい未来に向けてできることがあると思います。闇雲に恐れるのではなくできるだけウイルスの性質を理解して恐れ、行動を柔軟に変化させてこの難局を乗り越えていきましょう。




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