2017年3月18日土曜日

イップスの治り方

イップスの治り方

イップスには様々な種類があるのと同様に、治り方も様々である。患者さんから「どれくらい(期間や治療回数)で治りますか?」という質問がある。患者さんにとってはもっともな質問で、「本当に治るのだろうか?」「どれくらいで治るのだろうか?」と不安になるのは当然だろう。

数多くの症例には、一回で改善される一方で、3ヶ月から半年以上かかる症例もある。治療者側から見ると、数年抱えていた症状が数ヶ月で治るのであれば、その施術期間は長くはないだろうと思いがちだが、患者さんにすれば早く治したいのは当然の思いである。もちろん、早く改善するように毎回全力を尽くすが、脳に学習されたイップスの症状を作り出す誤作動記憶は単純ではないことが多い。

人それぞれに様々な誤作動記憶あり、それを一つ一つ丁寧に消去していかなくてはならない。イップスの症状が出始めてすぐに来院される患者は、比較的に治りも早いが、しばらく症状を放置して、しかも、我流で治そうとしたり、コーチや友人などのアドバイスで応急的にイップスがでないような表面的なテクニックを使ったりすると、根本的な改善が長引いたりすることも少なくはない。

右のグラフは、高校野球部に所属している送球イップスの部員の二人に記入していただいたもの。二人とも改善した後で、今までの施術経過を振り返りながら改善度の経過をグラフに記入してもらった。最初は、先輩になる患者さんに記入してもらった。その先輩は最初の4回の施術で、最悪の状態(120%)から60%改善し、そこから、改善度が停滞して、その後の2ヶ月の間にほぼ完治していった様子が伺えた。

その後、その先輩を紹介してくれた後輩が、その先輩と一緒にメンテナンスで来院した。約4ヶ月後の来院だった。メンテナンスケアでは、イップスの反応は見られなかった。施術後、先輩と同じようにグラフに改善度の経過を記入してもらった。先輩から、「お前は俺よりも相当悪かったから最初は300%(最悪の状態)やろ」などと言われながら記入していた。その後輩も、途中で改善度が停滞したらしく、その2ヶ月後にどんどん完治へと向かったらしい。

高校野球の名門校でレギュラー争いも相当厳しい様子。たとえレギュラーになれなくても、野球かける情熱には純粋さを感じる。イップスの治療を通じて、心と身体のバランスの大切さや「自己を知る」という「心身統一」の大切さを学んでいただいたのではないかと思う。この経験は、野球だけに限らず、長い人生に役立ててほしいと願う。



2017年3月13日月曜日

2017年度PCRT研究会

2017年度PCRT研究会

今年13年目を迎えるPCRT研究会は、大きな転換期になりそうな予感がしています。その理由は大きくは二つあります。一つ目は「ハード面調整法」と「ソフト面調整法」が明確に定義できたこと。二つ目は新しくご紹介する「空間ブロック調整法」です。これはPCRTのハード面調整法の一つですが、今まで開発してきたハード面調整法の中では、簡便で即効性があり、かなりの確率で結果がでやすい調整法だと私は感じています。

この調整法は、今までご紹介してきた「持続圧振動」や「加算振動」などの概念に通じるものですが、それよりも一歩進んだ調整法であり、今まで研究してきた内容の点と点が結びついて、線となり面となって、一気に立体像が現れたようにも感じています。通常の筋骨格系の症状であれば、ほとんどの患者で結果が示されます。

新しい調整法といっても肉体外のエネルギーブロック(EB)の発見から何度か試したことのある手法です。通常医療の概念とはあまりにもかけ離れていたということと、これをどのように伝えれば良いのかなど、私自身がその調整法の良さを信じきれていなかったこともあり、本格的に紹介するまでには至りませんでした。

今までの知識、既成概念にとらわれると先には進めないというのはどの分野でも同じです。説明できるかどうかよりも、結果が出るかどうかの方が大切です。すこし乱暴な言い方をすれば、患者も治療法の説明などほとんど興味はなく、治れば良いのです。もっともらしい医学的な説明よりも結果が全てです。新しい調整法が開発されるに度に、ワクワクしていますが、今回の発見は何らかの転換期につながるような気配も感じております。


アクティベータを使っている先生方は十分に結果をだされていることと察しますが、この「空間ブロック調整法」を併用することでさらに効果的な結果が期待できると思います。今年のPCRT研究会ではソフト面調整法もかなりシンプルにアプローチしやすくなっていると思います。さらに進化した2017年度PCRT研究会を今年も宜しくお願い致します。

2017年3月3日金曜日

「セミナールール」の先にある「志」

「セミナールール」の先にある「志」

昨年より、AMセミナーでの「セミナールール」、「受講者の心得」、「規約」などをしっかりと守っていただく事を強調しています。そして、その事によって、より質の高い学びの場ができていることを受講生と共に実感する事ができています。「ルール」や「心得」を守っていただくことは「学び」や「教育」に関わる現場では基本中の基本です。

組織が大きくなればなるほど、教育に関わる現場ではその基本ルールが大切になってきます。AMセミナーでは、初心者から認定を受けた熟練者まで、技術技能の幅に広がりがあります。そのような幅広いレベルの受講者で互いに学び合うと、相剰効果が生まれ、学びが深まります。この学びの深まりは、基本的なセミナールールや心構えがあってのことです。

さらに、「何のために学びを深めるのか?」ということも考えていただく必要があります。それは患者に貢献するためです。私たちのANJのセミナーでは、「チームで学んで、成長し、社会に貢献する」というビジョンを掲げています。そのような「志」があっての「セミナールール」であり、「学びを深める」という目的があります。

AMセミナー熟練者の多くが、150時間から300時間以上の受講時間を費やしており、セミナー回数にすると13回から25回以上です。個人の臨床経験にもよりますが、13回のラインは熟練者としてのスタートラインになっているように感じます。そのラインを超えるとある程度臨床現場での治療効果も数多く体験されるので、自信を持って施術されている様子が伺えます。

数年前には認定維持だけの目的でセミナーに参加されている受講生が増えてきて、「学び」という基本的な目的に問題が生じていました。初心を忘れて、貪欲、謙虚に学ぼうという姿勢が薄れてくる傾向があるように感じられました。その一方で熟練者であるにもかかわらず、慢心する事なく謙虚な姿勢で、自分の下肢長検査に問題がないかどうかのフィードバックを求める先生もおられます。

「初心忘るべからず」ということわざがありますが、認定を習得すると大きくは二通りの道に分かれる傾向があるようです。一つ目のグループは、熟練者になっても初心を忘れずに真摯に学ぼうという受講生、二つ目のグループは、「解ったつもり」で、学ぶ姿勢が感じられない受講生です。

このようなセミナー現場での受講生の態度や行動の違いは、恐らく臨床現場にも影響を及ぼしているのではないでしょうか。臨床現場でも「初心」を忘れずに、毎日謙虚な姿勢で活躍されている先生は、多くの患者さんとの信頼関係で守られているのではないでしょうか?その一方で、初心を忘れて慢心した先生はどうでしょうか?

私たちの仕事は常に「人」に関わる仕事です。他責にせず、常に自分自身を振り返り、人格を高める努力をしていかなくてはならないと思います。ライフコンパスアカデミーで行われるセミナーは、単に能力や技能を高めるだけでなく、「志」を高く掲げて、人格を高める修行の場でもあると考えています。今後も私たちスタッフ一同も自らの人格を高めるべく研鑽を積み重ねながら、皆様のお役にたてるように精進して参ります。 

2017年2月8日水曜日

寒さで腰痛?? 寒さで身体が固まって・・・「意味記憶」の施術の一コマ

寒さで腰痛?? 寒さで身体が固まって・・・「意味記憶」の施術の一コマ

三週間ぶりに行ったサッカーの練習後に、だんだんと腰が痛くなったとのこと。朝起きた時に痛みが強くなり来院。PCRTの検査をしてみると、「意味記憶」の反応。

「意味記憶」で反応を示すということは、いわゆる「思い込み」が腰痛の原因の一つになっているので、「今回腰痛で、思い当たる原因は何かありませんか?」「本当の原因は分からないかと思いますが、少しでも心当たりがあったら教えてください」と、質問してみた。

患者:「・・・練習中にシュートを思い切って打っちゃって・・・」

保井:「・・・打っちゃって、という・・・ちゃってとういう言葉の裏には、打つべきではないという前提が含まれているようですが・・・」

患者:「そうですね、寒さで身体が固まっていたから、固まっている時に身体を動かすと、また、腰を痛めそうで・・・」

保井:「そうすると、寒さで身体が固まっているので、その状態で思いっきり身体を動かすと腰を痛めるということを信じているのですね・・」

患者:「そうですね。」

保井:「その信念はどこからきていますか?一般論的な情報からですか?それとも誰かに教えてもらいました?」

患者:「それは一般論からですね」

保井:「では、寒さで身体が固まっているかどうか、それが本当なのかどうかは実際のところはわからないですよね。」

患者:「・・・そうですね。」

保井:「今の検査では、寒さの影響というよりも、寒さで身体が固まるという思い込み(自己暗示)が、アクセルを踏みながら、ブレーキをかけているかのように身体の働きに誤作動を生じさせた結果の可能性があります。」

保井:「その誤作動の思い込み(意味記憶)を修正する施術をおこなうと、寒さの中でも身体を不自然に制限する事なく、自然体で練習できるようになり、腰痛の予防にもなると思いますが、そのような施術を望まれますか?」

患者:「はい!」

保井:「それでは、寒さの中でも自然体で練習できるための、新しい意味づけを創ることはできますか?」

患者:「ん・・・・・?」

保井:「それでは、私からの提案ですけれども・・・人間にはもともと“ホメオスタシス”という機能があって、寒い時は身体を自動的に温めて、暑い時は汗などで身体を冷やしてくれる自動的な適応作用があります。・・・ですので、この身体の“自動的な働き”を信じて、寒くても自動的に身体を温めてくれて、筋肉もほぐれているので、思い切ってシュートを打っても大丈夫・・・という新しい意味づけはどうでしょうか?」

患者:「なるほど・・・」

保井:「それでは、腰痛に関係していた前の意味づけから、新しい意味づけに書き変える施術をしましょう」

・・・その後、患者さんから前回の腰痛はその後に改善され、寒さを気にせずにサッカーの練習ができるようになったとのご報告をいただいた。

最近、寒さに関係する「意味記憶」の施術によって改善した症例は本症例だけではなく、急に寒くなった時期に、同じような意味記憶のケースが3症例ほどあった。いずれも、一般論から生じた意味づけである。ある患者さんの話では、最近のニュースでも「今日は冷え込みが強いので、腰痛などにならないように、身体を動かす時には十分に気をつけてください・・・」などと言っているらしい。

これでは、寒い=腰痛というようなマイナスの暗示効果が生じかねない。くれぐれも、このような根拠のない一般常識を信じるよりも、寒くても自動調整できる自分の身体の適応力を信じる自己暗示をかけていただきたい。


このような症例報告の一コマを聞いてあなたはどのように感じるだろうか?