2017年11月16日木曜日

ジストニア(顔面部)改善事例の途中経過

患者情報
五十代女性、4ヶ月前に口の周りの筋肉や舌が意識とは無関係に動くようになり、仕事に集中できなくなったとのこと。また、そのような症状で周囲からの目も気になっているという。以前から首の痛みや肩こりで整骨院や整形外科を受診していた。整形外科では頸椎症と診断される。舌の異常な動きに対しては耳鼻科を受診、その後、心療内科を受診、呑気症(空気嚥下症)との診断。精神安定薬を処方され、呼吸法やリラックス法を受ける。約1ヶ月前に神経内科を受診して、ジストニアと診断されボトックス注射を顔面(下顎部)と頚部に一度受けたが症状が、改善されずに当院を受診。

初回施術
〈術前評価〉
l   ジストニアの症状はNRS(数値評価)で9レベル。メンタル面の不安感はNRS10レベル。
〈検査〉
l   頸頸椎部周辺と肩甲骨周辺の筋骨格系の機能検査で左右共に陽性反応を示す。
l   さらに舌を動かす動作、口を尖らす動作、声を発する動作による間接的機能検査で陽性反応を示す。
〈調整〉
l   施術では、最初はハード面の調整法をAM(アクティベータ・メソッド)によって骨盤、脊柱の基本部位に行う。PCRTのハード面調整法ではブレインマップ調整法を施す。
l   ソフト面調整法では、大脳辺縁系で「利己心」、「慈悲心」のキーワードから誤作動記憶を特定して調整を行う。
〈術後評価〉
施述後、メンタル面の不安感は10レベルから5レベルに軽減したとのこと。ジストニアの症状の軽減はやや見られたが、数値的な評価は尋ねなかった。

2回目施術
次の日に来院。
〈術前評価〉
l   ジストニアの症状はNRS(数値評価)で9レベル。メンタル面のNRSは9レベル。筋骨格系の機能評価は8レベル。
〈検査〉
l   前回と同様に行う
〈調整〉
l   ハード面調整法ではAMによる基本レベルの調整の後、PCRTの頭蓋骨調整法とブレインマップの調整法を行う。          
l   ソフト面調整法では前回の「利己心」は反応が示されなかったが、「慈悲心」に関するキーワードで再度反応が示されたので、コーチング的に質問を行い、心の構造を明確にして調整を行う。さらに検査を進めると大脳皮質系で意味記憶「情報」に関係する誤作動記憶が示された。
l   質問で明確になったのは心療内科で処方されていた「精神安定剤の薬を止めると悪くなるのではないか」といういわゆる思い込みだった。そこで、「その薬で改善されていたのですか?」と尋ねると、「いいえ・・」という。「改善してもいないのに薬を飲み続けて、その薬を止めるのに不安になっているのですね・・・」と現状をフィードバックさせてもらうと、「はっ・・・」と、ご自分なりに気づかれた様子。そこでこのような本質的な調整法を通じて自分の治る力を信じるような肯定的な思い込みに書き換えるように提案して調整を行なった。一般情報として、薬に対する思い込みは影響が強いのだと改めて感じた。
〈術後評価〉
l   施術後の筋骨格系のNRSは1レベル。メンタル系のNRS6レベルに変化した。

3回目施術
続けて次の日に来院。
この日は別人のような印象を受けた。明らかに顔の表情がリラックスしている。本当はこんな顔の人だったのだとスタッフと口を揃えて言ったほど変化が見られた。その変化は、本人も自覚されており喜んでいいた。
〈術前評価〉
ジストニア症状のNRS3レベル。筋骨格系はNRS3レベル。メンタル系のNRS4レベルと前々回よりも数値的にもかなり改善していた。
〈検査〉
l   前回と同様に行う
〈調整〉
ハード面調整法
l   最初はAMで調整、骨盤部のみの反応が示された。PCRTの臓器反応点調整法を行う。
ソフト面調整法
l   「喜び」のキーワードが示された。症状が改善された喜びだった。次に示されたキーワードは「恐怖」だった。仕事に関する書類の監査があるので、前回のようにパニックにならないか、あるいは自分の評価が下がって情けなくならないかということが関係していた様子だった。
〈施術後評価〉
l   ジストニアのNRS1レベルに軽減。筋骨格系は1レベル、メンタル系は2レベル

4回目施術
前回の施術から5日後に来院。ジストニアの症状は以前よりもある程度改善されていたが、以前から抱えていた口周りのこわばり感、病院で受けたボトックス注射の後の違和感、舌の動き、咀嚼障害、首肩の症状、睡眠障害などの症状を訴える。
〈施術前評価〉
筋骨格系のNRSは8レベル。メンタル系のNRSは6レベル。
〈検査〉
ハード面調整法
l   AMで調整
ソフト面調整法
l   PCRT検査で「恐怖」に関係するキーワードが示された。退職後のやりがいや生きがいなどのテーマが関係していた様子だった。
〈施術後評価〉
l   調整後、筋骨格系のNRSは2レベル。メンタル系のNRSは1レベルに軽減。

5回目から10回目の施術
その後、仕事に復帰しながら、少しずつ間隔を開けて通院していただいている。以前は職場から休職の相談ももちかけられていたが、職場の人からも症状改善が確認されていることなので、仕事を継続していくとのこと。以前のような誰が見ても分かるジストニアの症状もある程度落ち着いているが、人間関係における身体的な緊張や精神的な緊張を仕事現場などで感じている様子。通院を継続しながら、何が緊張させているのかをPCRTで検査しながら誤作動記憶の調整を行なった。さらに誰にでもある建前と本音の自己認識を深められるように心理面の提案もさせていただいた。

考察
本症例は、ジストニアの症状が完治したという訳ではないが、初診時の症状から比較するとかなり改善されていることは明らかである。このような症例の経過からすると、一般的には仕事を辞めれば治るのではないかと思われるのではないだろうか?しかし、ジストニアの症状に関連している脳の誤作動記憶はそれほど単純ではないことが多々ある。もしも、人や環境が変わっても、症状に関係している「無意識の心のクセ」はそう簡単に変わるものではない。
まずは、ご本人が「心と身体の関係性」による症状であるということをしっかりと理解すること。そして、症状につながっている無意識的に発生する誤作動記憶の内容をしっかりと認識することが大切だろう。もしも、患者が無意識的に発生する自分の「心のクセ」に向き合おうとせずに、「脳や身体の構造的、あるいは機能的な問題ばかりに目を向けようとすると、治すのは治療法や治療者次第ということになり、改善も難しくなる。
症状は自らが創ったモノなので、自らが主体性をもって適切な治療を受ければ治るという基本姿勢が必要不可欠になるだろう。ジストニアの症状はかなり改善されているが、首周辺の緊張パターンも含めて完治するまでしっかりと症状(自分自身)に向き合えるよう患者さんのペースに寄り添っていきたいと思う。


2017年11月7日火曜日

不整脈の調整

別の症状も含めて以前から当院を利用してくださっている患者さんが、3日前より不整脈が始まり、段々と悪くなって吐き気もするようになって体調が悪いという。以前から体調が悪くなると同時に不整脈の症状が生じるとのことで、循環器専門の病院でも検査を受けた病歴を持つ。聴診器を当てると、心臓の拍動が3拍に一回ほど間隔が開く。僧帽弁領域に指を当ててもらいながら、PCRT検査を進めると、大脳辺縁系→信念→猜疑心のキーワードが示される。徐々にマトを絞り込むと、一人のママ友達で反応が示される。

「好きな人なのですけどね〜」という。「相手の人も〇〇さん(患者)のことを好きなのでしょうか?・・・」と質問したところ。「・・・あ、もしかしたら〇〇のことが気になっているかもしれません・・・」というので、PRT検査をすると陽性反応。「猜疑心」に関連する内容を認識してもらい調整を行う。調整後、すぐに心臓の拍動が正常化される。患者さんも不整脈を体感できる人で、調整後、「わ〜、すごい!」と驚かれていた。

潜在的な心の記憶が自律神経系に影響を及ぼしていたということがわかりやすい症例だった。患者さんによると不整脈の症状は10年ほど前から時々生じるという。一回の調整で10年来の不整脈がその場で改善したからといって、完治したわけではないだろう。恐らく不整脈に関連する「誤作動記憶」が他にもあるだろう。このような誤作動記憶による慢性症状は、症状につながる記憶を一つ一つ引き出して消去法のように調整していくことが必要になる。

今まで改善されなかった不整脈が治療によってその場で改善されるという体験は、患者さんにとって「治る」という大きな自信につながっただろう。まずは、自分の体調不良は本来治るのだという肯定的な信念をもっていただくことは「自然治癒力」を何倍にも加速させるだろう。


2017年10月27日金曜日

頚部ジストニア(痙性斜頸)・攣縮性斜頸

頚部ジストニア(痙性斜頸)・攣縮性斜頸

はじめに
頚部ジストニアの症状を長年抱えていた患者さんが来院され、最初は、誰が見ても明らかに正常ではない首の動きが、数回の施術後には症状があるのが分からなくなるほどに改善された一症例をご紹介する。

患者情報
四十代女性、事務職、7年ほど前より頚部ジストニアの症状を発症。個人病院や大学病院を転々とする。MRIなどの検査を受け、痙性斜頸(ジストニア)の診断を受ける。投薬、ボトックス注射、電気療法、マッサージ、筋膜リリース注射、ストレッチ、運動療法、リハビリなどの施術を受ける。来院時には手元を見続けられない。姿勢をまっすぐにして正面を向いて静止できないなどの症状があり、問診している際にも正面をまともに向くことができず、顎の下部付近に手を当てて(感覚トリック)、首の曲がりを補っていた。頚部ジストニアにも様々な程度があるが、施術者から診て「8レベル位悪いのではないか」という印象を受けたが、ご本人によると最も悪い時には上半身が曲がることもあったので、その時に比べると、現在はで6レベル(NRS)とのことだった。

初回施術
筋骨格系の検査では、頚部の右回旋、右側屈、左上肢挙上、左肩甲骨伸展で陽性反応。PCRTの検査では座って下を向くイメージで陽性反応。最初は、脊柱関節のバランスを整える目的で、AM(アクティベータメソッド)にて調整を行う。次にPCRTのハード面調整法で脳神経(三叉神経)と頭蓋骨の調整を行う。PCRTソフト面の調整では、患者から思い当たる原因を申告されたので、そこから検査を進め、「恐れ」に関係する内容で調整を行なった。調整後、初回の施術内容やジストニアの説明、今後の治療計画などを患者に話した。その際には、最初の問診時のように患部に手を触れる感覚トリックなどを使わずに正面を向いて会話ができていた。

2回から4回目の施術
2回目の来院時は顔の症状も和らぎ、首の曲がりも軽減していた。数値による自覚症状も6レベルから3レベルに軽減された。1回目の施術後には明らかに改善の変化が見られた様子で6回の回数券を購入された。2回から4回までの間は、特に過去の人間関係に関する内容で陽性反応が示された。関係するキーワードは「執着心」で「〜すべき」や「〜すべきではない」の内容が明確になった。「全て自分が正しいと思っている」ということに対して、誤作動記憶の陽性反応が示されたということを自覚されたらしく、笑いながら納得した様子だった。

5回目の施術
以前のPCRTの検査で陽性反応が示されていた「会社に行くイメージ」、「特定の人に対するイメージ」などの陽性反応はすべて陰性反応に転じていた。「職場で椅子に座って下を向くイメージ(体感)」では陰性反応が示されたが、「その体勢を客観的に見ているイメージ(客観視)」では陽性反応が示された。そこで、「下を向いて仕事をしても、リラックスできている自分の姿を想像できますか?」と質問したところ、患者さんは「その姿は想像できない。」という。理想の自分の姿を想像しようとすると陽性反応(誤作動反応)が示されるので、その状態でPCRTの頭蓋骨調整を行う。そして、少しチャレンジ的ではあるが、「恐らく想像できないのではなくて、想像したくないというもう一人の自分がいる可能性があると思いますので、その辺りも次回の課題として検査していきましょう」と提案させてもらった。

6回目の施術
来院時にジストニアの症状の程度を尋ねてみると2.5のレベル。「下を向いて仕事ができないイメージ」から陽性反応が示されたので、そこからPCRTのソフト面の検査を行う。そこでは、大脳皮質系レベルで、「意味記憶」、「ストーリー」で反応が示される。この「ストーリー」の陽性反応は、複雑な心理要素を含んでいるサインで、症状を治したい一方で、そこにブレーキを掛けるもう一人の自分がいるというような誤作動記憶である。そのブレーキとは何かと言うと、症状を持ち続けることで得られる隠れた目的のようなもので、それは、当の本人の意識にはない。

ちなみに「ストーリー」に関する陽性反応が出た場合には、施術者にとってもチャレンジ的なコーチング手法が要求される。ややもすれば、誤解を受けて患者さんとの信頼関係を失いかねないハードルの高い課題である。患者さんに理解を得ながら検査を進めると、その「隠れた目的」は、「被害者、あるいは犠牲者であるという承認」という項目で陽性反応が示された。そのことに関して丁寧に質問すると、患者さんから、「ある人に迷惑をかけられているということを分かってほしいという自分がいる」という答えがかえってきた。つまり、その人から迷惑を受けているということを伝えきれない自分、理解してもらえない自分が、ジストニアの症状で無意識的に訴えているということになるのだろう。

7回目の施術
7回目の検査も6回目と同様に「下を向いて仕事ができないイメージ」で陽性反応が示された。そこからPCRTのソフト面の検査を行うと大脳皮質系レベルで、「意味記憶」、「ストーリー」で反応が示され、「隠れた目的」は、前回と同様に「被害者、あるいは犠牲者であるという承認」という項目で陽性反応が示された。前回と同じ人に関係しているかもしれないので、前回の人をイメージしてもらって検査をしてみると陰性反応。そのことを患者さんに伝えると、「同じ人で、その人には別の内容のことを分かってほしいのかもしれない」という答えが返ってきた。そこで、そのことをイメージしてもらうと陽性反応が示されたのでその内容で調整を行なった。

その後、患者さんの表情もすっきりした様子。複雑に絡んだ心理面の関係も受け入れてくださった様子で満足されていた。帰りの会計時には、購入された6回の回数券も終了し、経済的なことも考慮して、このまま継続治療するのかどうか迷っているとのことだった。下を向いて仕事をする以外の日常生活には支障がなくなっているので、当初ほどの深刻な状況ではないまでに回復したことが伺えた。

考察
通院されている過程で、患者さんから冗談交じりに「ジストニアって本当に治るのですか?」という質問を2回ほど受けたことがある。私は「治るから治療しているのですよ・・」と笑いながらお答えしたが、その質問の裏に様々な心理的要素が関係しているだろうと勘ぐった。「今まで様々な医療機関で完治しないので、治らないと思い込んでしまったのだろうか?」「初回の施術で改善されて、可能性を信じたから回数券を購入されたのになぜその質問を・・・?」「実際に改善度のレベルが上がっていることを自覚されているのに、なぜ治ることに疑問をもつのだろうか・・・? 」「7年間もジストニアの症状を抱えていたので、そのような疑問も致し方ないのだろうか・・・?」一般の人がジストニアの症状を発症した場合、まずは病院を受診するだろう。そして、投薬かボットクス注射の治療を受けるのが普通である。治療者が治るという確信を持って施術にあたっても、当の本人が自分の治る力を信じなければ、治るものも治らない。特に心因性が絡んだ症状において本人の治る力に対する確信は多大な影響を及ぼす。初診時からするとかなり改善されてご本人もその改善を自覚されている。まだ完治とは言える状態ではないので継続された方がいいと思うが、患者さんにも事情があるので致し方ないだろう。