2017年10月20日金曜日

2017年度最後のAMセミナーを終えて

先日、本年度最後のAMI公認セミナーが終了しました。熱心な先生方に参加していただきとても実りのあるセミナーになったと思います。今年から臨床編のプログラムが変更されました。筋肉系へのアプローチや頭蓋骨へのアプローチなどを加えて臨床応用の幅が広がることが期待されます。長く継続していいただいているベテランの先生にも興味深く聴講していただけたのではないでしょうか?

AM公認セミナーが開催されて今年で16年目です。組織が段々と大きくなるにつれて、「アクティベータ器」や「アクティベータ・メソッド」が一人歩きして、思いもかけない問題に遭遇することもあります。今後、10年先、20年先を見据えて、組織全体が一丸となって地域社会からの信頼を高める努力をしていかなくてはなりません。組織の信頼は、数ヶ月や数年でできるものではありません。10年単位でコツコツと組織全体のベクトルを合わせることで成果が得られるものです。

そのために、今年から知的財産権や受講者規約などについてANJスタッフ内で協議して明確に整備しました。一人一人のご協力が、組織全体の社会的な信頼に繋がり、ひいては個人の信頼につながっていくことになると思います。来年もさらにANJの信頼が高まるように、先生方とともに成長し、地域社会に貢献できるように邁進していく所存です。来年度もよろしくお願い致します。


2017年10月19日木曜日

送球(投球)イップス

送球(投球)イップス

はじめに
2週間ほど前からブルペンでの投球は問題がないのに、試合での投球が上手くいかない状態になる。周りの人から、「イップス」ではないか?と言われ、当院を受診。3回ほどの施術で早期に改善したので報告させていただく。

患者情報
14歳、男子、主にピッチャー、キャッチャーを担当することもある。小学1年生の時から野球を始める。リトルリーグ(硬式野球)の野球クラブに所属。ピッチャーは本人以外に三人。経過としては段々と悪くなっているとのこと。そのような悪い状態をなんとかしてあげたくて、お祖父様がインターネットで検索して当院に連れてこられた。

初回の施術
最初は、骨盤、脊柱の調整をAMで行うが、特に身体の機能面には問題は見られなかった。本人に思い当たる原因を尋ねたところ、試合でのデットボールを監督さんに叱責されたという。PCRTの検査に入り、大脳辺縁系で「恐れ」のキーワードが示された。前述した監督さんに怒られたことではないかと尋ねたところ、本人も納得。検査をするとやはり陽性反応が示された。そこから検査を深めると、交代させられる先発の立場やチームの雰囲気を壊してしまうなどの恐れへとつながっていたので、その恐れを引き出して調整。他にバッターが立っている時の投球やデットボールでの記憶でも誤作動記憶の陽性反応が示された。大脳辺縁系では「虚栄心」のキーワードも示され、内容を質問して誤作動記憶を引き出して調整。さらに検査を進めると、大脳皮質系でエピソード記憶に関する誤作動記憶の陽性反応が示され調整を行なった。普通に投球できる自信の度合い(最高が10)は、最初は5レベルだったが施術後には8レベルまで上がる。

2回目の施術
前回に示された陽性反応を再検査すると全て陰性反応が示された。PCRTのソフト面の検査を行うと「恐れ」の反応が示された。具体的な内容を尋ねると、特に先発で起用され、先頭バッターに対する四球やデットボールを恐れているという。それは完全にピッチャーの責任でランナーを塁に出すことになるし、監督さんからの叱責につながるとのことだった。

3回目の施術
前回の陽性反応は全て陰性反応に転じていたが、前回と同様に「恐れ」に関するキーワードが示された。前回とは少しニュアンスが異なり、初回にランナーを出したらどう思われるかという恐れの気持ちと、チームメートに申し訳ないなどの気持やピッチャーとしての周りからの期待も絡んでいた。投手としての自信の度合いを尋ねてみると来院時は7レベルで施術後は8レベルに上昇。明日試合があるとのことで、先発で登板するイメージをしてもらいPCRTの検査を行う。陰性反応だった。

4回目の施術
先日の試合後に来院。試合では一回で交代することが多かったが、調子が良かったので4回まで投げたとのこと。試合を観戦していた人からいいピッチングだったと褒められたとのことだった。本人に投手としての自信の度合いを尋ねると9レベル。イップスに関してはほぼ完治した様子だった。

考察
イップスの症状を発症してから比較的早期に来院していただいたので、経過も良好で早期の改善につながったようだ。イップスを改善するために投球フォームなど「技術論」で解決しようとする指導者もいるが、今回のケースは明らかにメンタル面が関係していると保護者も感じていた様子で、その保護者の献身的なサポートも好結果につながった。もしも、周りの指導者が、投球フォームなどの技術論でイップスを改善しようとしていたら、悪循環になり改善は難しかったかもしれない。また、本人がメンタル面と身体的誤作動の関係を素直に理解してくれたのも良かった。一般論的に自分はメンタル面に自信があるのでメンタルは関係ないと誤解している人もいるが、心と身体は切ってもきれない関係性で結ばれており、多かれ少なかれ誰もが影響を受ける。大切なのは「己を知る」こと。自分の心の状態がどのような状態なのかを理解することで、心と身体の調和がとれ、症状も改善し、さらにパフォーマンスのアップにつながるだろう。


2017年10月12日木曜日

「集中ケア」と「メンテナンスケア」

体調に何か問題がある場合、大きく分けると身体の「構造」に異常があるという場合と、「働き(機能)」に異常がある場合があります。もしも、身体の構造に異常がある場合は、病院で検査をしてもらう必要があります。もしも、体調不良に関係する構造異常や特定の原因がわからない場合は身体の「働き」の異常に注目する必要があります。

身体の「働き」に異常があるということはどういうことでしょうか?

身体の働きをコントロールしているのは、「脳・神経系」です。脳・神経は意識的にも無意識的にも身体をバランスよくコントロールしているのです。もしも、身体の働きをコントロールする信号が滞るとどうなるでしょうか?

例えば、膝の関節には屈筋という曲げるための筋肉群と、伸筋という伸ばす筋肉群があります。この屈筋群と伸筋群はONOFFを微妙に繰り返しながらコントロールしています。少しでもこのONOFFのバランスが乱れると、関節がうまくかみ合わなくなり痛みや違和感などが生じます。

この神経や筋肉のONOFFのバランス異常は、自然に治ることもありますが、もしも、その誤作動のクセが脳や身体に記憶化されてしまうと、長引くことがあります。また、一部の誤作動が長引くと、連動して他の部位にも誤作動が波及することがあります。

そのような誤作動の記憶は早期に調整して、神経や筋肉が健全に働くように再学習することが必要です。ファミリーカイロでは、神経や筋肉が正常に働くように、働きの悪い部位を検査して調整を行なっています。しかし、慢性化の記憶化(クセ)が強い場合、調整した後でもバランスの悪い状態に引き戻されやすくなります。



一度脳や身体に記憶化されたクセを健全なクセに引き戻すためには、戻りが少ないうちに「集中ケア」が必要です。習い事のように身体に覚えさせるために施術を繰り返し受け、バランスの良い状態が身体に学習されてきたら、だんだんと間隔を空けながら、「メンテナンスケア」へと移行することが理想です。

痛みなどの症状が特になくても「メンテナンスケア」を受けることで、症状が出る前の段階でバランスを調整することができます。大したことが無いような症状でも、それを放置することで身体がバランスの悪い状態に慣れて関節の変形などへと移行する可能性もあります。

ぎっくり腰などの症状も普段通りの動作で引き起こされるケースも少なくはありません。動作自体が原因ではなく、バランスの悪い状態のままでの動作によって、ぎっくり腰が生じてしまう場合が多いいのです。

車などの整備と同じように、定期的にメンテナンスを行うことで、体調不良になりにくい体質になるようです。体調が優れない時は「集中ケア」、たとえ痛みなどの症状がなくても予防的に「メンテナンスケア」で体調管理をすることをお勧めしています。

2017年10月4日水曜日

書痙(ジストニア)

病院で書痙(ジストニア)と診断され、投薬治療を受けて、9ヶ月ほど症状が改善されなかった患者さんが、5回目の調整で劇的な改善を示したので報告させていただきます。

患者情報
高校2年生、女性、9ヶ月前に英単語の学習のためにノートに5枚ほど書いた後に手が震えて文字を書くのが不自由になったとのこと。1ヶ月後に脳神経外科を受診、CT検査などを受け、書痙(ジストニア)の診断を受ける。いい日と悪い日があるようで、たくさん文字を書くと悪くなる傾向があるとのこと。

初回調整

筋骨格系の機能評価はNRS7レベル、メンタル系の機能評価はNRS=9レベル。書ける自信の最高を10としたら3レベル。

AMのプロトコルに従って骨盤、脊椎部を調整。手関節などの症状部位へのAM検査では陰性反応。PCRTハード面調整法は、頭蓋骨、ブレインマップ、臓器反応点経絡調整法を行う。ソフト面では、いくつかの信念や感情に関係するキーワードから詳細を明確にして調整を行う。最後に出た上位の成績優秀グループから外れるという「恐れ」に関する調整は効果的だったと感じた。調整後の機能評価は、筋骨格系のNRS=4レベル、メンタル系のNRS1レベル。書ける自信は8レベルに上昇。

実際に書いてもらうと、施術前よりも指に力が入るようになったとのこと。

初回調整の調整前の映像


初回調整の調整後の映像


2回目から5回目の調整

2回目と3回目ではお姉さんとの比較に関する心理的なキーワードが示された。いくつかの感情や信念に関するキーワードが示されていたが、5回目の調整の際、「警戒心」というキーワードから、「書けない自分」から「書きたくない自分」へと認識を深める。書きたいけれども手指が動かないから書けなくなるというのが書痙の一般的な理解であるが、心理学的には、「書きたい」という意識的気持ちとは裏腹に無意識がブレーキを掛けている場合が多々ある。

書きたくない理由は、シンプルに言えば、「めんどくさい」とう感情が関係していた。それは、試験勉強に対する義務感に関係するわけだが、私は直感的に「何のために勉強するのか?」という「ゴール設定」の必要性を感じた。そこでコーチング手法を導入。ゴールに関係するいくつかの質問をさせていただいた。大きく分けると二つの選択肢が明確になった。

一つは心理系の職業、もう一つは事務系の職業。そして、「もしも、その仕事についたら何が得られそうですか?」というそのゴールで得られる価値観に関する質問をしてみると、心理系の仕事に就いた場合は、人を手助けできるという充実感。事務系の仕事は、特に得られるものがなく、一人でコツコツ仕事をしているイメージしか浮かばないという。

そこで、身体に聞く生体反応検査(マッスルテスト)をしてみると、心理系の仕事に就くために勉強をしているイメージの方が明らかに力が入ることを本人も自覚した様子。心の奥(無意識)の本当の自分は、心理系の仕事に就きたいのだということが明確になったようだ。

5回目の調整の時は試験中で、もう1日試験があるとのことだった。以前よりは書けるようになったが、書いていると疲れる感覚があるという。検査をしてみると前回明確になった将来に対する「執着心」と将来の目標が明確になった「喜び」の感情が示された。どちらも肯定的な要因だった。そして、その日の調整後には、本人も驚くほど、スラスラと文字が書けていた。

5回目の調整前の映像


5回目の調整後の映像

考察

ジストニアは、自分の意思とは裏腹に筋肉に力が入らなくなったり、こわばったりする症状で、部分的に生じたり、全身的に生じたりする。これは脳からの信号に誤作動が生じたため、「心と身体の関係性」がうまく機能していない状態である。その誤作動を脳が学習し記憶してしまったために、元の正常な状態に戻せなくなっているということが原因として考えられる。この症状を改善するために、主に心身条件反射療法で、ジストニア症状に関係する誤作動記憶を引き出して身体を調整する。


心と身体の関係性を無視して外科的に処置をする手法もあるようですが、心と身体は密接に関係し合っているのが本来の姿である。この症状はたまたま心と身体の関係性に誤作動が生じることで引き起こされていると考えられる。心にいい悪いとかはなく、ただ、どのような心の状態が関係していたのかを認識することは症状を改善する上でとても大切な治療のプロセスになります。臨床でも誤作動記憶に関係する心の状態が分かれば分かるほど改善度も高まる傾向になる。PCRTを学んでいる先生方が、様々なジストニアの症状改善に貢献しています。ジストニアの症状でお困りの方は、ぜひご相談いただければと願う。