2011年10月3日月曜日

「目標設定」と「流れに身を任せる」 

先日、健康教室の時間に、「目標設定する」ことと、目標など設定せずに、「流れに身を任せる」という二通りの生き方について考えてみました。人生をより良くしたいという共通した目的を基準にすると、どちらの生き方にもそれぞれにメリットとデメリットがあり、人それぞれに様々な考え方があるようでした。

「目標設定」と「流れに身を任せる」という一見して対極的な方法論のようですが、どちらの方法が正しいとか正しくないとかではなく、どの手法を使えば、自分らしくより豊かに生きていくことができるのかということを考えてみることが大切だと思います。

そして、その手法は、二者択一的にどちらか一方を選択しなければならないという訳ではなく、その時々の人生の波や時代の流れに応じて両方の手法を使い分けることも必要なのかもしれません。
云うならば、「目標設定」を行いながら生きていく手法は、「論語」の教えに通じた生き方で、目標設定の過程において、様々な壁にぶつかりながら人は成長し、人間形成を営むことに価値をおいていると云えるでしょう。その一方で、「流れに身を任せる」生き方は、老子・荘子の「老荘思想」に通じて、「ありのままを受けいれる」ような生き方といえるかもしれません。

「論語」と「老子」の幅広く深い教えの中で、類似した教えがあります。「過ぎたるは及ばざるが如し」という孔子の教えと、「足るを知る者は富む」という老子の教えです。どちらの教えも「充足感」の上手な感じ方に気づかされるような言葉ですが、論語的な「目標設定」も老子的な「流れに身を任せる」という生き方も共通して大切なのは「充実感」や「充足感」なのかもしれません。

自分らしくより豊かに生きる基準は、人それぞれの価値観によっても様々です。ある人は、経済的に豊かになること、あるいは、社会的な地位を確立することで人生の豊かさを感じるかもしれません。その一方で、お金、地位、名誉に関わらず、自分の好きな仕事に打ち込んで、日々の「充足感」を感じることで、人生の豊かさを感じるかもしれません。それは、時代の流れと共に人々の価値観が変化するように、「豊かさ」や「充足感」に対する価値観も成長に伴って変化するのでしょう。

書店では「成功」のための指南書として様々な自己啓発本が販売され、どのように目標設定すれば、自分の欲しいモノが早く手に入るのかを解説しています。それは、問題を解決するために役立つかもしれませんし、さらなる理想に挑戦することに役立つかもしれません。しかし、「流れに身を任せる」という生き方を選択した人にとっては、あまり意味のない書物なのかもしれません。

ファミリーカイロには、身体的な症状や、メンタル的な症状の改善のために多くの方が来院されます。数年前より、コーチングの導入によって、症状や問題の解決というよりも、さらなる「理想」や「可能性」に挑戦するために利用して下さる方もだんだんと増えてきました。

多くの場合、最初は症状やメンタル的な改善のための施術を行いますが、施術の過程において、直感的にこのクライアントさんは、現在の身体的、あるいはメンタル的な症状に焦点をあてるよりも、未来の目標設定をされた方が、日常の充実感や満足度が高まり、その結果として慢性的な症状や問題も改善するだろうと感じることがあります。

そのような場合には、クライアントさんへ、コーチングを提案させていただきます。その提案をクライアントさんが快く選択していただくことができると、より良い方向へと向かうことが多々あります。そして、最初に訴えていた症状や問題は枝葉に過ぎなかったということが、コーチングを受けた後に明らかになってくることが多いようです。

目標を言葉に出さなくても、無意識的に向かうべき目標を目指して淡々と生きている人もいます。その一方で、明確な目標があっても、もう一人の自分がブレーキを掛けて、身体的にもメンタル的にも様々な症状を引き起こしている人もいます。

もしも、現在の自分に満足できていない場合、あるいは、原因不明の身体的な症状がある場合、頭で考えている自分と身体で感じている潜在的な自分との不一致が疑われます。その場合は、本当に自分はどこへ向かっていきたいのかを整理して、もう一人の自分と対話をし、お互いが納得できる方向へと軌道修正することが必要です。そのよう場合はコーチングがとても役立ちます。

コーチングは、日本では、まだまだスポーツコーチのイメージが強く、厳しく指導されるのではないかという印象があるようです。しかし、コーチングは、現在の状況を整理し、クライアントさんが本当に向かいたい方向を二人三脚で探し、それを支援する役割を担います。

よって、コーチは提案をすることがあっても、指導するという立場は取りません。また、その提案も選択するのはクライアントさんで、クライアントさんが自分の意志で選択し、自分が選んだ選択に伴う行動や結果に責任を持つことがとても重要になります。

コーチングは、クライアントさんが「これを改善したい」あるいは「このような理想に近づきたい」という希望がなければ始まりませんが、その目標設定の過程で、時の変化に上手に適応するために「流れに身を任せる」ことも、重要な考え方の一つになることも多々あります。

「目標設定」も「流れに身を任せる」という生き方も、どちらも大切な方法論ですが、もしも、人間が、何かの役に立つために生まれ、そのために成長する使命があるという前提にたてば、ゴールを決めて歩んでいくことは、人生での「豊かさ」や「充足感」を得るためには大切なことなのかもしれません。私は、今はそのように感じていますが、時代の流れや年齢とともにその考え方も変わるのかもしれません。

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