2016年12月5日月曜日

人生の健康習慣

人生の健康習慣といえば、「寿命」のことや「健康」のことが頭に浮かぶかもしれません。最近の書籍『ライフシフト 100年時代の人生戦略』では、過去200年間のデータを振り返ると、人間の寿命が10年に2~3年のペースで伸びている事が示されています。1914年生まれの人が100歳まで生きる確率は1%だったそうです。しかし、2007年生まれになると、その半数が104歳まで生きるそうです。そして、2050年の日本は、100歳以上の人口が100万人を超えているというから驚きです。著者のリンダ・グラットン教授曰く、もし自分が100歳近くまで生きるとしたら、人生設計もそれにあわせて変えるべきではないかと主張しいます。

寿命だけが伸びても実際の「生活の質」が低いと、人生全体は不健康になります。人生の健康を保つためには「生活の質」は高めていかなくてなりません。健康を維持する上で、ご自分の「習慣」を振り返ることはとても大切な事です。「習慣」といえば、まずは「食習慣」や「運動習慣」などをよく耳にするのではないでしょうか?これらの表在的な習慣の背後には「思考習慣」があります。人によっては「前向きの思考習慣」の人もいれば、「後ろ向きの思考習慣」の人もいます。別の言い方をすると、「内向きの思考習慣」と「外向きの思考習慣」という言い方もできます。さて、あなたはどちらの傾向があるでしょうか?

健康面でいうと、どちらの思考習慣の方が、精神的にも肉体的にも健康的に過ごせるでしょうか?このことに関係する興味深い研究があります。ハーバード大学教授のエレン・レンガーは、ある介護施設で実験を行いました。入居者全員に鉢植え植物を配り、半数にはみずからその世話をしてもらい、別の半数には植物の世話は施設の職員がしました。ちょっとした仕事もさせてもらえなかった人は、植物の世話をした人にくらべて健康、幸福感、活力が大幅に減少したという結果が出ました。

さらに悲しいことに、その間の死亡率を比べると、植物の世話をした人たちの死亡率は15%だったのに対し、世話をしなかった人たちの場合は30%だったという事です。そして教育、仕事、人間関係、ダイエットなど多くの分野でも、同様な結果がでているということです。この研究結果から何が読み取れるでしょうか?

外向きに何かのお世話をしよう、あるいは何かの役に立とうと、「前向き思考」の人は心も体も健康的な方向へ進みますが、内向きに誰かからの世話を待つ人、あるいは、何かの役に立ちたいという気力のない人は、心も体も不健康な方向へと進む傾向があるということです。私も長い臨床経験の中で、家族でも、会社でも、地域でも何かの役に立とうと外向きの人は、高齢になっても健康的な人生を送っていると感じます。

世間一般では高齢化社会が深刻な問題になっていますが、高齢になったら人の手助けを受けるのが当たり前にならないように、いくつになっても外向きに何かの役に立とうという姿勢は、自分自身の健康を守る上でとても大切な思考習慣だと言えそうです。何かの世話をする、あるいは役に立つということは、一見、アウトプット(出すこと)ばかりで、損をしているかのように思われがちですが、誰かの手助けを受けるインプット(入れること)ばかりしていると、得をしているかのようで、長い目で見ると心身のバランスが悪くなり、心も体も不健康になるということのようです。

多くの人は、ご自分の人生を振り返り、若い頃は一生懸命働いてきたので、老後はゆっくりとして、誰かの世話になろうと思いがちです。しかし、今回ご紹介させていただいた研究からも伺えるように、老後の無力感は、その人の健康や幸福感、さらには命にまで影響しかねないといえそうです。人は歳を重ねると何かとインプット(世話になること)に頼る傾向にありますが、「人生の健康」を保つためにもアウトプット(世話をすること)を優先させる心がけは大切だといえます。


さて、あなたはインプット優先の人生を選びますが、それともアウトプット優先の人生を選びますか?

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