先日、PCRT基礎2のセミナーを終えて色々な気づきがありました。受講生はいつものように臨床経験が豊富な方から少ない方まで幅が広く、できるだけ多くの受講生に分かりやすく理解してもらうために、基礎知識から専門知識まで広く網羅した内容になります。そのような幅の広さから、ある先生にとっては膨大な知識になり、ある先生にとっては丁度良い内容になったのかもしれません。このような形式のセミナーであるため繰り返し受講していただくよう勧めています。そして、繰り返して受講されている先生は着実に内容を理解して臨床現場で使えるようになっているようです。
私は長きに渡って、このような幅広い受講者を「蟻の目」の視点で直接ご指導させていただいたり、先生方の上達ぶりを年単位で客観的に「鷹の目」の視点で観察させていただいたりする立場にあります。そのような立場で観察していると、上達が早い人と、遅い人の違いが見えてきます。さて、その違いは何でしょうか?一言で言うと、それは「素直さ」にあると思います。経営の神様といわれる松下幸之助氏が「一流の人たちの共通項は素直な心を大事にする」というような内容を述べていたのを思い出します。
かれこれ20年ほど近い経験を振り返ると、やはり素直な人は成長が早いように感じます。「素直な人」とは、単に「イエスマン」や「騙されやすい人」とは異なります。「素直な人」は、しっかりした自分の考えを持ちつつも相手の立場になって、相手の心をしっかりと受け止めようとします。デモや実技の際においても、しっかりと見て真似ようとしますので、吸収が早くスムーズにできるようになってきます。つまり、「素直に学んで素直に真似ている」のです。模倣から始まって、最終的には自分のモノにしていくわけですが、言い換えると、真似が下手な人は上達するのに時間がかかりますし、その背後にある心の制限が邪魔をしているのかもしれません。
素直でない人は、見て習うというよりも理屈(頭)で習おうとするので、自分が信じている理屈が先行しすぎて、批判的に見てしまいます。結果的に柔軟性が欠けてしまうので技術をスムーズに習得することができなくなります。また、アドバイスをすると、あれこれと言い訳をして理屈を言う傾向があります。PCRTセミナーは常に進化し続けていますので、手法や手順が変化することがあります。素直な人は、過去の手法や手順は尊重しながらも、進化した手法や手順を素直に学ぼうとして自らも進化しようと努力します。一方、素直でない人は、過去に身につけた手法に囚われて、進化した手法を身に付けることに抵抗し自らの成長にブレーキを掛けてしまいます。
「ハイハイ」と素直に受け止めているようで、実は心から素直に受け入れていないという人もいます。それは、その人の実技を見ていると読み取れます。何か頑なに信じているモノがあると、それが足かせになって、新たな技術が入ってこなくなるようです。我々治療者の仕事には常に「柔軟性」や「応用力」が求められます。毎日の臨床で同じ患者さんは来院しませんし、一人の同じ患者さんでも次の来院日には変化がありますので、その変化に対しての「応用力」が求められます。
過去に身につけた技術技能は捨てるモノではありません。身体に身に着いた技術は身体が覚えているので捨てたくても捨てられないモノです。新しい技術技能を身に着けることで、身につけた技術を捨てるのではないかと錯覚しがちですが、むしろ新しい技術を身に着けることで、過去の技術が柔軟に修正され磨きがかかってきます。そして、新しい技術を積み重ねることで臨床においても柔軟性が養われるはずです。理屈よりもまずは結果を素直に受け入れることが肝心であり、その結果を引き出す技術を素直に受け入れることで成長が促されるのだと思います。年齢とともに素直さがなくなってくるとも言われていますが、何歳になっても「素直さ」は仕事に限らず人生を豊かにしてくれる大切な心の姿勢だと思います。「素直さ」は成長の源になるようです。
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