2019年3月13日水曜日

2019年度PCRT基礎1を終えて

先日、熱心な臨床家の先生方にお集まりいただき、本年度初めてのPCRT基礎1のセミナーを開催させていただきました。今年は症状別をテーマにしてプログラムが構成されているので、さらに実践的な手法をご紹介できたと思います。それぞれの臨床現場ですぐに応用できるのではないでしょうか。また、今回初めてバージョンアップした「言語加算振動法」をご紹介いたしました。ハード面からソフト面への橋渡しの施術法としても幅広く応用できますので、是非マスターしてご自分の患者さんに活用していただければと願っています。

症例報告では、ここ数年で飛躍的に成長された先生にジストニアの症例を二例ご報告していただきました。PCRTのプロトコルに沿った成果を明確に示していただき、動画で施術前と施術後の変化が明らかに分かる症例報告でした。神経学的な質問もありましが、PCRTでは神経学的な機能評価はあくまでも目安検査であり、調整のための検査ではないということも明確に示していただけたという点においては、心と体の関係性を直接的にアプローチした実践的な症例報告だったと思います。

ジストニアの原因を神経機能障害だけに留めて語る臨床家が多い中で、私たちのような治療家に期待されるのは、心と身体が関係した心因性のジストニアです。脳のどこどこの機能が低下している、あるいは興奮しているということが神経学的な検査で分かったとしてもそれはあくまでも結果であり原因ではないのです。肉体の機能的メカニズムだけで言えば、その領域の機能異常が原因だと言えるかもしれませんが、その機能異常を引き起こす原因があるというところに目を向けなければ本質的な治療は難しいのではないかと私は考えていいます。

今後も本格的にPCRTを臨床に取り入れて、多くの患者さんの症状改善に貢献する治療家がさらに成長してくれることを願っています。昨年から組織全体としての技術技能のレベルアップを目指して、実技試験制度を設けましたが、その成果も着実に現れているようです。今回のセミナーでは継続参加されている先生方の技術の向上を確認することができました。恐らくそのような熱心な先生方は患者さんに貢献されているだろうというのが予測できますのでたいへん嬉しく思います。

また、懇親会でもいい話が出ました。私たちは往々にして結果を出せない原因を患者のせいにしがちですが、ある先生は、「結果が出せないのは患者に原因があるのではなく、施術者にある」ということを話されていました。それは机上の空論ではなく、自分の経験で心から話されているのが感じ取れたので、飲み会でこのような深い話ができたことを嬉しく思いました。PCRTでは治療効果を引き出す「大前提」として、施術者と患者との信頼関係、患者の主体性(コミットメント)というのがありますが、患者との信頼関係や主体性も「患者次第と考える」のか、それともそれらは「施術者によって信頼関係が作られ、施術者によって患者の主体性が引き出される」と考えるのとは随分と患者への思いや接し方は異なるはずです。

たまたま読んでいた四月号の致知の雑誌は、「運と徳」についての特集でした。「徳を修める上での大事な心得として「易経」の一文が紹介されていました。「身を反りて徳を修む」、すなわち、「困難に遭遇したり、失敗した時は、自分に原因がないかを反省する。それが徳を修めることになる」ということを説いています。松下幸之助氏もこの言葉を生涯実践した人だといいます。松下氏は「ぼくは物事がうまくいった時は皆のおかげ、うまくいかなかった時はすべて自分の責任と思っていた」といって、この言葉の実践反復から氏の徳が生まれ、高まっていたといいます。

「徳」についてのお話は、開業当初から様々な書籍で学ばせていただいていますが、日々実践するという難しさは常々感じているところであり、折に触れて反省する毎日です。でも、このような文章に触れさせていただく度に、生き方の基本はここにあると思うことができます。たまたま臨床家の先生にご指導させていただける立場になった身ではありますが、治療法に関する知識や技能以前にこのような人としての在り方をコツコツと学んで自分自身を磨いていくことが組織の発展になり、患者への貢献になるということを忘れないように努めて前進していきたいと考えています。

次回のPCRT基礎2のセミナーでは肩関節痛、膝関節痛の調整法、スポーツ障害の調整法、頭痛、顎関節の調整法、めまいの調整法をテーマに前庭器官、小脳機能検査、ブレインマップ脳領域調整法、経絡を活用した調整法(臓器反応点)、メンタル系施術の導入、メンタル系領域のゴールデンルール、選択のマインド設定(メジャー・4つ)、ソフト面検査チャートの使い方、「基本感情チャート」の使い方、「詳細感情チャート」の使い方、「時系列・分野・立場」の使い方をご紹介いたします。

会場で皆様とお会いできることを楽しみにしています。

2019年2月28日木曜日

パターン化された頭痛

患者様よりメールで以下のフィードバックをいただきました。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1週間続いた朝の頭痛が改善しました!

先週の半ばから、朝起きると毎日頭痛がして、午前中はめまいや首の痛みと一緒に続き、午後から夕方にかけて軽減するという症状が1週間ほど続いていました。

保井先生にみていただいたところ、頭や目、首だけでなく、身体の回りの空間にも反応があるということで、エネルギーの調整をしていただきました。キーワードとしては「意欲」「自尊心」「犠牲心」などに反応していました。

施術直後は頭や目がすっきりしましたが、正直なところ、明日の朝はどうだろうかと不安に思う自分もいました。

ところが今朝の目覚めはとても爽やかで、1週間も頭痛があったことなど忘れるほどでした。自分の中から自然と感謝の気持ちが湧き出てくるのを感じ、いい気分で一日のスタートがきれました。

本当にありがとうございました。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【治療者からのコメント】

問診から毎朝の頭痛の症状があり、仕事をしていると午後から症状がだんだんと軽減するという状態が1週間継続しているとのこと。このことから単に肉体面だけの問題ではなく、脳、すなわち無意識の心が関係していることが予測できました。今回の症例は、肉体内のエネルギーブロックを調整するだけでなく、肉体外のエネルギーブロックを検査し調整することで、症状を引き起こしている原因が明確になり、誤作動記憶が新たに上書きされて、パターン化された症状が改善されました。

このような症状が一般医療とは異なる施術ですぐに改善するということは、通常医療では考えられないことかもしれません。しかし、原因があっての結果です。何か原因があるはずです。このような結果をだすためには、一般化された医療概念に囚われずに、幅広く原因を探索することが大切だと思います。将来はこのような施術が当たり前のように語られるようになれば、もっと多くの人が健康になれると思います。

2019年2月25日月曜日

老犬の施術

老犬の施術

先日、当院に通院されている犬の飼い主の方から以下のようなご報告をメールいただきました。

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

施術前
施術後

左の写真

愛犬が食事をするときに、後ろ足が、何度も何度も滑るのを何とか我慢しながら(※本人が)食べていた様子です。
長い事・・・・数か月・・・? 続きました。

右の写真
 
治療が終わった10時間後の様子です。
 
施術では、まず、左の写真でどのような状況であるか、先生に確認していただいて本人(本犬)を間近で見ていただき、(何ゆえ、もうすぐ16歳の老犬なので)飼い主の体を通して治療をしていただきました。

それだけなのに、こんなに改善してうれしいばかりです。

ありがとうございます。

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

【治療者からのコメント】

飼い主方から「餌を食べる際に、なぜか右の後ろ足が前の方に移動して、右足で支えられていないのでは・・・」とう相談を受けました。数ヶ月前から続いているかもしれないとのことで、はっきりとした原因は不明とのことでした。患者さんが持参してくれた写真を通じて検査をしてみると、確かに右の後ろ足全体に生体エネルギーブロック(EB)の陽性反応が示されました。飼い主の方を代理にして検査と調整を行いました。そして、その後上記のように喜びのご報告をいただきました。

これは通常医療の機械論的な概念というよりも生命の調和を重んじる有機論的な概念、すなわち「エネルギー」、「関係性」、「誤作動記憶」という観点で診ることで得られた結果です。特に飼い主の方との信頼関係を踏まえての成果だということは大前提にあると思います。

今回の症例報告の許可を飼い主の方にお尋ねしたところ、「どこかのわんちゃんが、また、こういう治療を受けることができ、幸せを感じてくれたらうれしいので、役立ててくださいませ。」とのご返答をいただきました。本症例の公表の許可を与えていただいた飼い主の方に謝意を表するとともに、本症例報告が何らかのお役に立つことを願います。



2019年2月12日火曜日

陸上選手の施術

最近、駅伝大会を控えている陸上選手達が次々と来院。その中の一人がAMPCRTを併用している佐渡市の先生の施術を受けていたらしく、その先生が当院を紹介してくださったそうだ。その選手は佐渡市の先生を信頼されている様子で、同じ療法をする施術者がいると、他のチームメンバーにも紹介してくれたようだ。数えると7名も来院してくださった。全ての選手が次の来院日には症状の改善を報告してくださり、心の底から喜んでいただけているのが感じられる。

ほとんどの選手がそれぞれに足や腰の問題を抱えていた。それに加えて慢性的なアレルギー性鼻炎で困っている選手、あるいはメンタル関連の症状で悩んでいる選手もおられ、それぞれに症状に合わせて施術させていただいた。スポーツ選手は前向きの方が多く、自分自身の身体の感覚を熟知している。そのためどこに不調があるのかも感じやすく、良くなった時の感覚も明確に分かりやすい。そして、改善した際にはその場で施術効果を感じてもらえるので比較的治療が進め易い。

これもAMPCRTの研究を長年継続してきた成果だとスタッフ一同で喜んでいる。これからも、セミナー活動を広げて、全国で安心して施術を受けることができる治療院が増えることを願う。

2019年2月5日火曜日

吃音(どもり)の原因

吃音の施術で小学4年生(9歳)の女の子が来院。5歳の頃から症状が出始めたとのこと。日常生活では話しづらいことが多いという。当院に来院する2年前からリハビリテーション病院で言語療法を受け、喋り方の訓練をしているとのこと。症状の経過としては波があり、軽くなったり、ひどくなったりしているらしい。

通院して9回目の時から、本人は「もう、つまったりしていない・・・」というので、以前からあった乗り物酔いの施術を行なった。お母さん曰く、「以前は、他人から見ても明らかに吃音があることが分かったが、今ではそれが分からなくなっている・・」とのこと。しかしながら、時折、つまっていることがあるらしい。以前は、治療院で話を聞いていると明らかに吃音の症状が現れたが、それは確かに無くなっている。でも、どこかの場面で誤作動記憶のスイッチが入るのだろう。次回からはお母さんの記憶を頼りに検査を進めていく予定。

「吃音の原因は何か」という問いに対して、ネットで検索するとその分野に関係する専門家らしき人たちがそれぞれに見解を述べているようだ。西洋医学的な考えに基づいて原因論を捉えている方が多いようだが、シンプルに分けると、身体の構造面、身体の機能面、そして心理面に分けられる。我々のような治療院に来院する吃音の症状を抱えている患者さんのほとんどは、構造的な問題ではないことが多い。

多くの治療者は、心理的な要因が関係しているだろうということは察していても、どのように治していいのか分からないので、発声法などの機能的な改善に目を向けて喋り方などの指導をする。それは原因療法ではなく対症療法なので、なかなか本質的な改善は望めないと思う。では、本質的な原因は何か。原因メカニズムは「身体の機能と心との関係性」による誤作動記憶であると私は確信している。基本的にはゴルフや他のスポーツ競技で知られているイップスと同様のメカニズムで生じると考えているので同じようにアプローチすると結果が伴う。

イップスは、「身体の働き」と「無意識」との関係性で生じる誤作動なので、その誤作動記憶をピンポイントで検査をして調整することが必要になる。症状を抱えている期間が長いほど、誤作動記憶が複雑で複数関係していることが多いが、継続的に調整していけば消去法のように少なくなっていき、それに伴って症状も改善していく。

イップスを改善する際に、「フォームの矯正」や「前向きな心の持ち方」など小手先のテクニックを指導される方もいるようだが、そのような表面的な対症療法でほんとうに効果があるのか疑わしい。治療対象となる相手は「身体機能」と「無意識」の「関係性」である。よって、吃音や発声障害の治し方もイップスやジストニアと同様のアプローチで進めていけば改善される。と、私は信じて治療させていただいている。

2019年1月16日水曜日

精神薬が抗がん作用を持つ・・・

2019/01/07付 西日本新聞朝刊に興味深い記事が掲載されていた。九州工業大の山西芳裕教授が既存の薬で他の病気への効果をAIで解析し、既存薬が別の病気に効くかどうかを予測する「AI創薬」システムを開発した。これまでに、抗精神病薬「フェノチアジン」が前立腺がんに有効。統合失調症の治療薬「ペンフルリドール」が抗がん作用を持つ。腹痛に効く漢方薬「大建中湯」が炎症性大腸がんに有効などと予測した。

私が興味深かったのは、「精神薬が抗がん作用を持つ」ということだ。当院では筋骨格系の症状を主訴とする患者さんが多いが、がんの診断を受けた患者さんも、病院の治療と併用して代替医療の一つの選択として当院を利用されることもある。心身相関の臨床的な探求を続けて20年以上になるが、がんのような自然発生的に生じる病気には無意識的なメンタル面が原因の一つとして関係しているというこということは常々感じていたことではあるし、心と身体が関係し合っている以上関係しないはずはない。

人の主観を排除した、AIによる膨大なビックデータに解析をふまえた研究成果によって、「精神薬が抗がん作用を持つ」ということが分かったということは、長い臨床経験から鑑みても納得のいく成果だと思う。現代医療の多くが身体面と精神面を切り離して治療を進める中で、「身体と心の関係性」を調整する医療の価値がますます高まってくる時代へと進んでいっているのではなかろうか?いや、本質的な原因療法を追求している一人の治療家にとっては、ぜひ、そのような方向性で医療が進んでいくことを願いたい。

2019年1月14日月曜日

毎朝の腰痛の原因は何か?

2ヶ月ほど前から腰痛を発症、特に朝起きた時に腰が痛くて、日常生活での行動に支障があるとのこと。年齢は60代後半。約10ヶ月前から以前行なっていた卓球を再開されたとのこと。来院の前日には病院でレントゲン診断を受け、ギックリ腰の診断。湿布の処方を受けたという。どのように当院を知ったのかお尋ねすると、当院と同じビル内にあるヘルストロンに通っており、そこで偶然に知り合った当院の患者さんに、「とてもひどかった腰の痛みが良くなって・・・腕のいい先生よ・・」などと聞いて来院されたという。

初めて受ける施術なので、最初に検査の手法や目的、施術法などを分かりやすく説明させていただいた。施術前の検査では、腰部や股関節部、さらには膝関節部にも誤作動、機能異常に関連する陽性反応が示された。最初の主訴には記載されていなかったが、「膝のバランスもよくないのではないか?」と質問すると、卓球の練習の際には痛みを伴うという。

初回の施術後には全ての陽性反応が陰性へと転じた。3回目の施術日には朝の腰痛や膝の痛みもないとのこと。4回目の施術日には腰と膝の陽性反応が示されていないので、症状がぶり返した際には早めに来院していただくようにお伝えした。患者さんは、朝の腰痛から解放されて、「毎朝、あんなに悪かったのに良くなって・・・」と、とても喜んでいただいた。

今回の患者さんの主訴は朝起きる際の腰痛であったが、朝起きて首や肩が痛くなったりする人もいる。その際、枕やベットの硬さや柔らかさを痛みの犯人にしてしまう傾向が多くの人にある。先日、たまたま目にした新聞の記事にもそのようなことが当たり前のように記載されていた。その内容は、枕やベットが身体の骨格にフィットするように隙間がない状態が良いというようなことが説明されていた。その解説者の肩書は整形外科医で大学病院の教授。

もっともらしい説明ではあるが、おそらく科学的な根拠はないだろう。私も開業したての頃は、朝の寝違え、あるいは朝の腰痛などの患者さんには、枕やマットが原因ではないかと疑いを持っていたが、よくよく聞いてみると、いつもの枕やマットを使っており、寝具を換えたから痛みが生じたという人はほとんどいなかった。

そうすると「寝る姿勢が悪かったのか・・」となるが、寝ているときは無意識であり、ほとんどの人は無意識的に寝返りをうったり、自然に態勢を変えて、心地よい姿勢になっているだろう。そのような現状を考えると、単純に枕やマットを痛みの犯人にはできないことが分かる。では、何が原因なのか?それは睡眠中に生じている無意識の筋緊張から生じていると私は考えている。これはあくまでも私の臨床経験による推測に過ぎないが、施術効果と照らし合わせても間違いないと確信している。

睡眠中の無意識の筋緊張が影響しているかどうかを検査するのは簡単である。朝起きた際に首の寝違えや腰痛を訴える患者さんが来院された場合、睡眠時の状態を想像してもらい、生体反応検査法を行う。もしも、睡眠時の筋緊張が誤作動として記憶されている場合、陽性反応を示すだろう。

私はこの原因を発見して以来、寝違えや朝の腰痛などの患者さんの治療効果が格段に上がり、改善度も数段早くなった。機械論的に考えると枕やマットが犯人にされやすいが、有機論的に考えると、人間は様々な環境に適応できる柔軟性を備えているということを基本に考えることが大切だろう。また、肉体面だけでなく、身体と心の両面を診ないと部分的な施術になり、症状を長引かせてしまうことにもつながるだろう。

これは、機械論から派生した医療の誤謬のほんの一部ではあるが、少しでも多くの人にそのことを伝えたいと思う。