2012年11月16日金曜日

なぜ、集中継続治療が大切なのか?

治療院を訪れる患者さんにとって「すぐに治るのですか」ということは大きな関心ごとです。多くの治療者はできるだけ早く患者さんの苦痛を和らげるため最大限の努力をするでしょう。骨折や切り傷などの外傷は、その程度や年齢に応じて、患部の組織が修復する期間がある程度予測できます。それは、自然治癒力という治す力が備えられているからです。

組織が損傷したことによる症状であれば、擦り傷が日を追うごとに治ってくるように、自然治癒力によって修復され、それに伴って症状も改善されます。これは「損傷モデル」ともいわれています。医学の基本はこの「損傷モデル」から始まっていることから「メディカルモデル」ともいわれています。この「損傷モデル」は外傷をはじめとする様々な病気の治療に多大な貢献をしてきました。

しかし、情報化社会が進化するにしたがって、病気や症状の種類も多様化し複雑化してきました。そして、単に「損傷モデル」だけでは対応しきれない病気や症状が増えてきているのが現状です。「いつ治るのか」ということがはっきり言えないのが慢性症状です。最近の研究ではそのような慢性症状は、「生物・心理・社会的モデル」といわれています。これは、主に組織損傷を原因とする「損傷モデル」に対して、神経生理学的関係性や心理社会的関係性を原因としています。

したがって、「生物・心理・社会的モデル」は幾種類もの原因パターンが複雑に関係しており、症状の改善はその原因パターンの修復次第ということになります。その原因パターンとは身体、特に脳・神経系に学習記憶されており、様々な場面でスイッチが入り、症状が引き出されます。脳・神経系に学習記憶されているパターンは、目には見えない症状を引き起こすプログラムのようなものです。そのプログラムを修正するために学習記憶の上書きが必要になります。

慢性症状がいつ改善されるかどうかは、症状を引き起こしている学習記憶のパターンの種類や数によって異なり、「損傷モデル」のように症状別にいつ治るかを予測することは困難です。学習記憶という意味を分かりやすくいうと、症状を引き起こす身体の「クセ」です。知らない間に蓄積された症状を引き起こす「隠れた習慣」のようなものです。したがって、その「クセ」を治すためには、バランスの良い状態を身体に再学習させることが必要で、バランスの良い状態にクセづけるように繰り返し治療をすることが必要です。

集中して継続治療することで、どの原因パターンが改善されて、どの原因パターンがぶり返しているのかが明確になりやすくなり、治癒力も強化しやすくなります。勉強の記憶学習や身体で覚えるスポーツのように、最初に集中して治療することで、身体はどのようにして治していくのかを学習記憶していくわけです。治療の間隔が開き過ぎると、記憶が定着せずに振り出しに戻りやすくなります。

慢性症状の状態が長く、症状につながる学習記憶のパターンの数が多ければ多いほど治療回数もその数だけ必要になります。慢性症状を治すための集中継続治療は、治癒力を強化するための必要条件です。慢性症状をかかえている患者さんの多くは、その症状が当たり前のようになって、この症状は治らないと思い込んでいる方が多いようですが、基本的に人の身体は治るようになっています。慢性症状を治すポイントは、いかにして症状につながっている学習記憶されたパターンを消去できるかどうかです。

「継続して治療すると症状が戻りにくくなるということがよくわかった」という体験をされた患者さんへのインタビューです。



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