2016年8月22日月曜日

オリンピック選手のコメントに変化が・・・


今日でリオのオリンピック閉会式を迎えました。今回のオリンピックは単に競技だけでなく、選手のメンタル面に興味が注がれました。先日、たまたま目にしたオリンピックのテレビ番組で、重量挙げの競技で銅メダルを獲得した三宅宏実選手が試合後のインタビューを受けていました。インタビュアーが、「最後は、どのような心境で競技に臨んだのですか?」と質問すると三宅選手が「2回目は失敗しているので、後は、天に任せるだけで・・・」というようなコメントしていたのが印象的でした。大会前に腰痛が悪化したとのことで、恐らく最後は開き直って「無心」で挑戦したのでしょう。

最近、スポーツのメンタルトレーニングやコーチングなどの手法がだんだんと広く浸透してきているのか、スポーツ選手のコメントに変化が表れているように感じます。オリンピック選手ともなれば、国レベルの期待や世界からの注目度から生じるプレッシャーは、計り知れないものがあるとオリンピックを経験した多くの選手は語っているようです。「オリンピックには魔物がいる」と、体操で金メダルを獲得した内村航平選手が話していたそうですが、後に「魔物は自分自身で創りだしている」ということが分かったらしく、後輩の白井健三選手にアドバイスしていたといいます。

通常、ミスするはずのない場面でミスをしてしまうと、「何かにやられた!」と思いがちになり、「魔物」などのせいにしたくなりますが、実は自分の無意識が引き起こしているのです。「魔物」というのは、私なりに表現すると「無意識の誤作動」なのですが、この誤作動が生じる傾向は、深い心理面に関係するようです。私の心身相関に関連する臨床経験でも多くのスポーツ選手が、本来の実力が発揮できなくなるような誤作動記憶のパターンが浮き彫りにされることがあります。

選手それぞれに異なる誤作動記憶の背景がありますが、多くの傾向として、優勝して自分がチャンピオンの立場になると、「守り」に入ってしまう傾向があるようです。「守り」と対照的になるのが「挑戦者」の精神です。試合のパフォーマンスをサポートさせていただいている選手には、次の対戦相手やパフォーマンスを想像してもらい、心身相関的に「誤作動記憶」がないかどうかを検査します。自分の置かれた立場や地位を守るような気持ちで試合に臨むイメージをすると誤作動反応が示され、挑戦者の気持ちで試合に臨むイメージをすると、誤作動反応はなくなる傾向があります。

多くの選手は勝つために試合をしているので、「絶対に勝つ!」という意気込みで試合に臨むわけですが、「絶対に勝つ」という意識は身体機能に誤作動を生じさせやすくなる傾向があります。それよりも、「普段の練習通り」という思いで試合に臨むと、本来の実力が発揮され、理想的なパフォーマンスができる選手が多いようです。

今回、惜しくも4連覇を逃した吉田沙保里選手の試合直後のコメントから察するに、「・・・で申し訳ないです」あるいは、「日本選手の主将として、金メダルを取らないといけないところだったのに、ごめんなさい」というようなコメントは、多くのプレッシャーを背負って臨んだことが伺えます。もしも、「普段の練習通りに・・・」という思いだけで戦っていたら本来の実力が発揮できていたのかもしれません。それは単なる勝手な予測にしか過ぎないですし、相手がいる競技ですので、相手の実力が上回っていたのかもしれません。

「勝っても負けても、今まで練習してきた通りに全力が出せる」と、心の底から思えることができればいいのかもしれませんが、無意識の心はそれほど簡単ではないようです。

選手によっては、「周りからの声援が大きいほど、実力がだせる」という傾向の人もいますが、本番での無意識の誤作動記憶のパターンがあるかどうかは、事前に検査をすれば分かります。孫子の兵法に、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」とあります。敵の実力やメンタル面も含めた現状をしっかりと把握し、自分自身の実力や深いメンタル面も良くわきまえて戦えば、勝ち続けることができるということです。

昔から武道においても「無心」になることが重要視されています。スポーツ選手が勝利したとき、「無心で走りました!」「何も考えていなかったです!」などという「無心」であったであろうコメントを聴くことがあります。恐らく、それは「ゾーン」か「フロー」といった状態の時のことで、そのときに多くの選手はピークパフォーマンス、すなわち最高のパフォーマンスが発揮できるとだといわれています。

スポーツ選手をサポートする治療者として、単に肉体面だけでなく、このような隠れたメンタル面のケアができるかどうかはとても重要な役割になると思います。多くの治療者がもっと本質的なところに興味をもっていただき、活躍する選手の縁の下の力持ちになってくれればと願います


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