30代の男性が卓球イップスの症状で来院。今まで出会った卓球選手にしてはがっちりした体格だった。見るからにパワーが溢れている感じの一方で優しい顔立ちをしている。症状は5〜6年前から始まったらしい。その頃から自分の理想の卓球ができなくて、悩みが多いとのこと。以前はBランクだったのに現在はDランクに下がっているという。普段の日常生活には支障はないが、特に試合の時には症状が顕著で、経過としては良くなったり悪くなったりしているという。
イップスの症状を抱えている患者さんの場合、肉体的な機能異常に加えて、メンタル面との関係性を調整しなければならないので、時間の都合で二枠の予約を頂いて進めさせていただいている。本症例の患者さんも二枠の予約で初回を含めて、7回調整させていただいた。7回の間に、以前から抱えていた膝の問題も調整させていただき、順調に改善されている。いくつかの過去の誤作動記憶もうまく調整され、ご本人も改善を実感されていた様子。
まだ、調整途中ではあるが、7回目の誤作動記憶の原因が、これから遭遇する可能性のあるパターンだなと感じたのでご紹介したい。本症例では試合の際のパターンと、フォアサーブ、バックハンドが主なイップス症状だったが、ゆっくりとした球を打つ際に手が震えていると周りの選手に指摘されるという。その場面をイメージすると確かに誤作動の陽性反応が示される。
PCRTのプロトコルに沿って検査を進めていくと、大脳皮質系⇨意味記憶⇨情報と示されたので、「その症状の原因の一つで、何か外からの情報を入れることで、その情報を信じていることで影響を受けている可能性があるのですが、何か心当たりはありませんか・・」と質問させていただいた。患者さんはしばらく考えて、「・・・ん、もしかしてこれかな・・」と想像してもらいながら検査をすると、陽性反応が示された。
「それは影響しているようですけど、どんな情報ですか・・」と尋ねると、「卓球の動画です・・・」という。ある卓球の選手の動画のフォームを研究してそれに近づこうとして練習していたが、何か自分には合わないということを何となく気づいていたらしい。最近は動画を簡単に見ることができる時代なので、それを見ながら研究して自分のパフォーマンスを改善しようとしているスポーツ選手が増えてきているようだ。
イップスの原因に関して言えば、以前はコーチ指導による情報が多かったが、これからは動画映像、あるいは指導による情報の影響も増えるのではないかと予測される。コーチからの直接指導、あるいは動画による間接的な指導であれ、その情報が自分にあっているかどうかがとても重要である。「たとえ理想の選手がいいフォームでいい結果を出しているからといって、そのフォームが自分に合っているかどうかは分からない。」ということは理解しておいた方がいいだろう。理想の選手のフォームは参考にしても、そこから自分の合ったフォームを自分で体得することが大切である。
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