今年最後となるPCRT上級セミナーが先日開催されました。PCRTは毎年進化し続けているため、年に一回参加される方にとっては、ハードルが高いところもあったかもしれません。PCRTの基本的な手順を踏まえての上級編ですので、「手順」よりも「本質的な原因と結果」に焦点を当ててご紹介させていただきました。今回初めてご紹介した音叉を利用した骨、靱帯、軟骨などの検査法は、主に筋骨格系の症状を抱えた患者さんには有効で、筋肉、筋膜、神経系だけの視点を超えた幅広い領域で効果を引き出すことができると思います。
ジストニアとイップスに関する調整法もご紹介させていただきました。このような症状はまさに脳の「誤作動記憶」による結果であり、脳の機能や神経の経路だけを理解して、機能低下がある神経機能を刺激するだけで改善するという単純な症状ではないということがある程度ご理解いただけたのではないでしょうか。脳の神経回路は教科書に記載されているような「線形」に表される単純な神経の経路だけで働いているわけではありません。「非線形」で「複雑系」の要素が強く、様々な脳の神経回路、すなわち無意識領域の複雑性が関係しています。
ジストニアやイップスの症状が改善する過程において、この「無意識領域」の「気づき」が必須条件になります。この「気づき」を引き出すためには有効な手順が必要で、意識レベルのカウンセリングで引き出せるものではありません。「心(脳)と身体の関係性」における検査と調整を行うことで、その「気づき」が可能になります。類似した症状でも人それぞれに原因があり、早期に改善する患者さんもいれば、時間がかかる患者さん、一度改善してもぶり返す患者さんなど様々です。このような様々な患者さんの治療の経験を重ねていく過程で、早期に治る患者さんと、期待通りの改善が見られない患者さんとの違いも見えてくると思います。
「心と身体の関係性」、「意識と無意識の関係性」、「脳の誤作動記憶」という領域を長年研究してきたPCRTですが、全てのジストニアやイップスの症状に有効とは言い切れません。これは他の症状においても同じことが言えますが、まずは治療を依頼してくださる患者さんとの信頼関係です。患者さん自身が治療法のコンセプトをある程度理解され、さらに、施術後に治療効果を体験して施術者ならびにその治療法を信頼してもらうことが大切です。あまりにも大きな期待を抱かせるような誇大な広告は信頼関係を損なう要因にもなりますので、あくまでも「可能性」として一度体験していただき、患者さん自身がその効果に納得できる前提で治療を継続してもらうことが大切だと思います。
治療者にとって、まずは「結果」が出せる「技」を身につけなければ始まりません。ジストニアやイップスにも程度があります。慢性的な肩こりや腰痛、眼瞼痙攣(ドライアイ)なども軽度のジストニアとして分類されている文献もあります。まずはそのような慢性症状を改善できる「技」を身につけて、施術の幅を広げていくことが必要かと思います。このような「技」を身につけるには、ジストニアとイップスのセミナーを単発で受講したからといってできるわけではありません。まずは、PCRTの基本となるスキルとコンセプトをしっかりとマスターすることが必須条件になります。何事も軸となる「基本」が大切で、その上で「応用」を加えて、臨機応変にそれぞれの患者さんにあった施術を創造していきましょう。
それでは、来年さらに進化したPCRTセミナーでお会いできることを楽しみにしております。
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