2019年11月21日木曜日

「技」を極める

手技によって行われる施術は徒手療法、あるいはマニピュレーションと呼ばれています。カイロプラクティック、整体、オステオパシーなど様々な施術法があります。アクティベータ・メソッド(AM)もカイロプラクティック大学で教えられているテクニックの一つです。筋骨格系の痛み症状に対しては即効性のある効果的な施術法です。一見シンプルに思える施術法ですが、その「技」には奥深いものがあります。最近ではオンラインによる動画で学ぶこともできるようになっていますが、「技」をマスターするためには、実際に体験し、多くの熟練者の技術をライブで体感することが重要だと思います。「見て学ぶ」ことも大切ですが、その情報「インプット」した後は、実際に行って「アウトプット」し、他者からのフィードバックをもらい「微調整」をすることがさらに大切になります。

「見て」→「体験して」→「フィードバックを受けて修正」この一連の流れを繰り返し継続して、自分なりの「コツ」を掴むことが上達の近道です。「コツ」の掴み所は人それぞれですが、それは「体験」を通じてのみ得られるものなので、マニュアルを読む、動画を見るだけで得ることは難しいでしょう。例えば、AMの下肢長検査のポジション1では、術者の立ち位置、手の当て方、頭上方向への圧の加え方など説明はマニュアルに記載されているので分かると思いますが、踵骨部から頭上圧をゆっくりと加えて、反応下肢側の緩みが感じられるという感覚、軸圧刺激によって神経関節機能異常の神経学的反応を引き出す「コツ」は実際に体験しなければ分からない「感覚」だと思います。これは、単にどちらが短いとか長いとかの単純な「見方」ではありません。神経学的生体反応の「感覚」をご自身の臨床現場で繰り返し体験することで、自分なりの「コツ」として掴めるようになるのだと思います。

まずは、「基本の型」を習得し、次に実際の「生体反応」を読み取る「技」を習得します。もしも、反応が読み取れる段階に入ると、どの部位の関節、あるいは筋肉に神経学的機能異常が生じているか否かが分かるようになりますので、結果的に筋骨格系の痛みなどの施術効果が出せるようになります。ただし、しっかりと安定したコンタクトが出来ていることなどの臨床的なスキルも当然のことながら必須条件になります。このコンタクトの仕方も、教科書的には〇〇パンドという数字的な記載はありますが、同じ年齢の大人でも体格は異なりますし、筋の緊張度、過敏度は人それぞれに異なります。アクティベータ器による圧の加え方において、科学的なデータから導き出された基準圧を参考にすることは必要ですが、臨床では臨機応変に目の前の患者に合わせてコンタクトすることが大切です。このことも実際に「経験」を積み重ねることによってのみマスターできることだと思います。

ある程度のAMの「技」がマスターできると、患者さんにも喜ばれるようになり、治療家としての自信がついてきます。治療家としての自信は大切なのですが、中途半端な「技」になると、我流へと傾いて、偏った反応でしか読み取れなかったり、偏ったコンタクトによって、引き出せるはずの結果が出せなかったりというような状態に陥ることもあるようです。これは、ある意味自信過剰になって、知らず知らずのうちに自分の「技」の盲点に気づかないままになっていたといえるでしょう。そして、結果が引き出せない原因を自分の技量ではなく、テクニックのせいにしてしまうのです。厳しいことを言うようですが、これは私が20年以上アクティベータ・メソッドを教える立場を継続させていただいた経験に基づく見解です。もっと粘り強く真摯に「技」を極めて欲しいと願います。真摯に継続すれば必然的に身に付く「技」です。そして、ある程度の「技」を極めれば、治療家としての一生の財産になると私は思います。

それでは、次回のセミナーで皆さんと共にさらに「技」に磨きをかけていきたいと願っております。

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