2ヶ月ほど前から腰痛を発症、特に朝起きた時に腰が痛くて、日常生活での行動に支障があるとのこと。年齢は60代後半。約10ヶ月前から以前行なっていた卓球を再開されたとのこと。来院の前日には病院でレントゲン診断を受け、ギックリ腰の診断。湿布の処方を受けたという。どのように当院を知ったのかお尋ねすると、当院と同じビル内にあるヘルストロンに通っており、そこで偶然に知り合った当院の患者さんに、「とてもひどかった腰の痛みが良くなって・・・腕のいい先生よ・・」などと聞いて来院されたという。
初めて受ける施術なので、最初に検査の手法や目的、施術法などを分かりやすく説明させていただいた。施術前の検査では、腰部や股関節部、さらには膝関節部にも誤作動、機能異常に関連する陽性反応が示された。最初の主訴には記載されていなかったが、「膝のバランスもよくないのではないか?」と質問すると、卓球の練習の際には痛みを伴うという。
初回の施術後には全ての陽性反応が陰性へと転じた。3回目の施術日には朝の腰痛や膝の痛みもないとのこと。4回目の施術日には腰と膝の陽性反応が示されていないので、症状がぶり返した際には早めに来院していただくようにお伝えした。患者さんは、朝の腰痛から解放されて、「毎朝、あんなに悪かったのに良くなって・・・」と、とても喜んでいただいた。
今回の患者さんの主訴は朝起きる際の腰痛であったが、朝起きて首や肩が痛くなったりする人もいる。その際、枕やベットの硬さや柔らかさを痛みの犯人にしてしまう傾向が多くの人にある。先日、たまたま目にした新聞の記事にもそのようなことが当たり前のように記載されていた。その内容は、枕やベットが身体の骨格にフィットするように隙間がない状態が良いというようなことが説明されていた。その解説者の肩書は整形外科医で大学病院の教授。
もっともらしい説明ではあるが、おそらく科学的な根拠はないだろう。私も開業したての頃は、朝の寝違え、あるいは朝の腰痛などの患者さんには、枕やマットが原因ではないかと疑いを持っていたが、よくよく聞いてみると、いつもの枕やマットを使っており、寝具を換えたから痛みが生じたという人はほとんどいなかった。
そうすると「寝る姿勢が悪かったのか・・」となるが、寝ているときは無意識であり、ほとんどの人は無意識的に寝返りをうったり、自然に態勢を変えて、心地よい姿勢になっているだろう。そのような現状を考えると、単純に枕やマットを痛みの犯人にはできないことが分かる。では、何が原因なのか?それは睡眠中に生じている無意識の筋緊張から生じていると私は考えている。これはあくまでも私の臨床経験による推測に過ぎないが、施術効果と照らし合わせても間違いないと確信している。
睡眠中の無意識の筋緊張が影響しているかどうかを検査するのは簡単である。朝起きた際に首の寝違えや腰痛を訴える患者さんが来院された場合、睡眠時の状態を想像してもらい、生体反応検査法を行う。もしも、睡眠時の筋緊張が誤作動として記憶されている場合、陽性反応を示すだろう。
私はこの原因を発見して以来、寝違えや朝の腰痛などの患者さんの治療効果が格段に上がり、改善度も数段早くなった。機械論的に考えると枕やマットが犯人にされやすいが、有機論的に考えると、人間は様々な環境に適応できる柔軟性を備えているということを基本に考えることが大切だろう。また、肉体面だけでなく、身体と心の両面を診ないと部分的な施術になり、症状を長引かせてしまうことにもつながるだろう。
これは、機械論から派生した医療の誤謬のほんの一部ではあるが、少しでも多くの人にそのことを伝えたいと思う。