先日、熱心な臨床家の先生方にお集まりいただき、本年度初めてのPCRT基礎1のセミナーを開催させていただきました。今年は症状別をテーマにしてプログラムが構成されているので、さらに実践的な手法をご紹介できたと思います。それぞれの臨床現場ですぐに応用できるのではないでしょうか。また、今回初めてバージョンアップした「言語加算振動法」をご紹介いたしました。ハード面からソフト面への橋渡しの施術法としても幅広く応用できますので、是非マスターしてご自分の患者さんに活用していただければと願っています。
症例報告では、ここ数年で飛躍的に成長された先生にジストニアの症例を二例ご報告していただきました。PCRTのプロトコルに沿った成果を明確に示していただき、動画で施術前と施術後の変化が明らかに分かる症例報告でした。神経学的な質問もありましが、PCRTでは神経学的な機能評価はあくまでも目安検査であり、調整のための検査ではないということも明確に示していただけたという点においては、心と体の関係性を直接的にアプローチした実践的な症例報告だったと思います。
ジストニアの原因を神経機能障害だけに留めて語る臨床家が多い中で、私たちのような治療家に期待されるのは、心と身体が関係した心因性のジストニアです。脳のどこどこの機能が低下している、あるいは興奮しているということが神経学的な検査で分かったとしてもそれはあくまでも結果であり原因ではないのです。肉体の機能的メカニズムだけで言えば、その領域の機能異常が原因だと言えるかもしれませんが、その機能異常を引き起こす原因があるというところに目を向けなければ本質的な治療は難しいのではないかと私は考えていいます。
今後も本格的にPCRTを臨床に取り入れて、多くの患者さんの症状改善に貢献する治療家がさらに成長してくれることを願っています。昨年から組織全体としての技術技能のレベルアップを目指して、実技試験制度を設けましたが、その成果も着実に現れているようです。今回のセミナーでは継続参加されている先生方の技術の向上を確認することができました。恐らくそのような熱心な先生方は患者さんに貢献されているだろうというのが予測できますのでたいへん嬉しく思います。
また、懇親会でもいい話が出ました。私たちは往々にして結果を出せない原因を患者のせいにしがちですが、ある先生は、「結果が出せないのは患者に原因があるのではなく、施術者にある」ということを話されていました。それは机上の空論ではなく、自分の経験で心から話されているのが感じ取れたので、飲み会でこのような深い話ができたことを嬉しく思いました。PCRTでは治療効果を引き出す「大前提」として、施術者と患者との信頼関係、患者の主体性(コミットメント)というのがありますが、患者との信頼関係や主体性も「患者次第と考える」のか、それともそれらは「施術者によって信頼関係が作られ、施術者によって患者の主体性が引き出される」と考えるのとは随分と患者への思いや接し方は異なるはずです。
たまたま読んでいた四月号の致知の雑誌は、「運と徳」についての特集でした。「徳を修める上での大事な心得として「易経」の一文が紹介されていました。「身を反りて徳を修む」、すなわち、「困難に遭遇したり、失敗した時は、自分に原因がないかを反省する。それが徳を修めることになる」ということを説いています。松下幸之助氏もこの言葉を生涯実践した人だといいます。松下氏は「ぼくは物事がうまくいった時は皆のおかげ、うまくいかなかった時はすべて自分の責任と思っていた」といって、この言葉の実践反復から氏の徳が生まれ、高まっていたといいます。
「徳」についてのお話は、開業当初から様々な書籍で学ばせていただいていますが、日々実践するという難しさは常々感じているところであり、折に触れて反省する毎日です。でも、このような文章に触れさせていただく度に、生き方の基本はここにあると思うことができます。たまたま臨床家の先生にご指導させていただける立場になった身ではありますが、治療法に関する知識や技能以前にこのような人としての在り方をコツコツと学んで自分自身を磨いていくことが組織の発展になり、患者への貢献になるということを忘れないように努めて前進していきたいと考えています。
次回のPCRT基礎2のセミナーでは肩関節痛、膝関節痛の調整法、スポーツ障害の調整法、頭痛、顎関節の調整法、めまいの調整法をテーマに前庭器官、小脳機能検査、ブレインマップ脳領域調整法、経絡を活用した調整法(臓器反応点)、メンタル系施術の導入、メンタル系領域のゴールデンルール、選択のマインド設定(メジャー・4つ)、ソフト面検査チャートの使い方、「基本感情チャート」の使い方、「詳細感情チャート」の使い方、「時系列・分野・立場」の使い方をご紹介いたします。
会場で皆様とお会いできることを楽しみにしています。