2018年9月8日土曜日

腰椎疲労骨折(分離症)に対する治療

はじめに

中学1年、男子、野球部所属、約5ヶ月前に腰痛で整形外科を受診。レントゲン、MRICTなどの検査を受け、腰椎の疲労骨折(分離症)の診断。約1ヶ月の完全安静の指導を受ける。その後、運動は再開するが、コルセットの着用を指示される。本人は運動をしても痛みは感じないとのこと。ただし、整形外科医の指示通りコルセットを着用しての活動なので動きに制限があるらしい。

本人は痛みがないのに、コルセットをいつまでつけなくてはならないのかという相談と身体のバランスを検査してほしいとのことで来院された。恐らく、ご両親が整形外科医の指示通りでいいのだろうかという疑問をもたれたのだろう。知人のご紹介で来院していただいた。

初回目安検査

施術前の目安検査では、右側の股関節後面、股関節の内転筋群、腰方形筋、肩甲骨後面の筋肉に筋抵抗弱化反応が確認された。小脳機能検査では右側に陽性反応が示された。

初回の施術

アクティベータ療法で、骨盤部と腰部に神経関節機能異常が確認され調整を行う。ご両親によると本番で緊張するクセがあるとのことで、PCRTのソフト面の検査を行ったところ「意欲」で陽性反応が示されたので調整を行なった。

2回目の施術(5日後)

初回で反応した目安検査は消失。アクティベータ療法で骨盤と腰部、腰部の神経関節機能障害を調整。本番で緊張するクセがあり、本来の実力が発揮できずにパフォーマンスに影響を及ぼしているとのこと。PCRTでメンタル系の検査調整を行う。前回の試合の場面を想像してもらうと陽性反応が示された。その場面を目安に検査を進めていくと、「恐れ」や「意欲」の誤作動記憶の陽性反応が示され、調整を行なった。先に検査した目安検査は消失した。

3回目の施術(二週間後)

前回の施術から痛みもなく、メンタル的にも調子がいいという。アクティベータ療法で骨盤と胸椎部の調整を行う。自覚症状はないが、音波刺激で検査をすると、胸腰椎部に陽性反応が示されたので、検査を進めると、7年前の誤作動記憶が示される。本人はあまり記憶がないようだが、お父様によると、小学校入学の際の身体検査で先天的な心臓障害が見つかったときだという。その過去のことも誤作動記憶になっていたので調整を行う。その後、様子を見ながら、何かあれば来院していただくように伝える。

考察

来院時に相談を受けた腰椎分離症だが、筋肉、関節系の機能検査を行う限り、その構造異常から生じる痛みの因果関係は確認できなかった。もしかすると、疲労骨折の骨が癒合して痛くないのかもしれないし、まだ骨癒合が完治していないかもしれない。しかし、そもそも、疲労骨折を生じさせる原因は何か?西洋医学的に考えると、単純に「使いすぎ」なので、「運動を制限する」ということになるだろう。でも、本当に「使いすぎ」だけが原因なのだろうか?筋肉や関節の機能異常を研究している専門家としては、単純に「使いすぎ」だけが原因だとは考え難い。

本来、人の関節は使うためにあるので、筋肉と関節のバランスが正常であれば、疲れを感じるまで使っても、一部の骨だけに異常なストレスが生じるとは考えにくい。例えば、腰を曲げる時には前面の筋肉群が収縮して、後面の筋肉群は緩む。前面の筋肉群に関係する神経は「オン」となり、後面の筋肉群に関係する神経は「オフ」となる。神経系は様々な筋肉を無意識的にコントロールしており、自動的にオンとオフのスイッチを微妙に切り替えている。もしも、神経系の機能に誤作動が生じれば、このスイッチのタイミングが乱れ、筋肉に異常緊張を生じさせる。そして、そのアンバランスな力が関節や骨に異常なストレスを加えることになり、疲労骨折を生じさせると考えられる。

そのように考えると、単純に安静にしただけで、神経の誤作動を調整していないと、元のコントロール系統に異常があるので、運動を再開すると同じような症状を引き起こすかもしれない。画像診断も大切だが、人間の身体は骨だけで構成されているのではないので、骨を動かす筋肉、神経系の働きを診ることも重要である。あいにく整形外科では最新の画像診断で骨の構造異常は分かるが、筋肉や神経の働きの異常までは詳細に検査しない。筋肉と神経系のバランスが整った上で運動をすれば、疲労骨折や怪我なども少なくなるだろうし、パフォーマンスもいい状態になるだろう。また、神経系は「無意識の心」と密接に関係するので、身体だけの原因にとどまらずに、身体と心との関係性においても誤作動の原因を追求していかなくては、本質的な治療にならないだろう。

2018年9月5日水曜日

アロディニア(異痛症)の改善

15年以上も前から、腰痛や首、肩、背中の痛みなどで当院を利用していただいている患者さんが、1年半ぶりの来院。今回は左足の痺れ感と前面部の痛みを訴えた。1ヶ月位前から発症したとのことで、特に左足背部の痛みはかなり強く、軽く触れるだけでも痛い、いわゆるアロディニア(Allodynia:異痛症)の症状を示した。患者さんの表現ではビリビリした痛みがあるとのこと。患者さんはそれほど強く痛みを訴えるタイプではないが、今回はかなり痛みが強い様子だった。検査を行う際には、患部を触らないように注意しながら進めた。

思い当たる原因は特にないとのことで、おそらくハード面の問題でなく、ソフト面の問題であることが予測できた。初回の施術から、1回目、2回目・・・と施術ごとに、段階的に痛みの度合いが軽減はしている様子だったが、毎回、痛みがぶり返していた。結果的には、6回の施術を終えた後で痛みが完全に消失したとのこと。そのことは、痛みが消失した最後の施術から約1ヶ月後の来院日にご報告していただいた。その日の来院はメンテナンス的な施術が目的で、足背部のエネルギーブロックの反応も患者さんがおっしゃるように完全に消失していた。

原因は、大脳辺縁系レベルのいくつかの誤作動記憶だった。検査で陽性反応を示したキーワード以外は、誤作動記憶に関係する詳しい内容は分からないが、恐らく、仕事面で大きな変化があったのではないかと察した。このような通常医療では分かりにくい痛みの原因をPCRTで進めていくと因果関係が見えてくる。このような痛みは、しっかりとした原因療法を行わないと、さらに慢性疼痛が持続していた可能性もある。大脳辺縁系=無意識の心が、このような痛みの原因になっているということは、まだまだ一般化されていない。

「目に見えないものは分からない」となりがちな医療が主流を占めている今日において、将来は、「慢性痛=無意識の心を疑う」ということが優先される医療を創っていきたい。

2018年9月3日月曜日

お母さんの無意識が関係する子供の食物アレルギー

6年ほど前に、食物アレルギーの症状で来院して下さった患者さんが再来院。以前、来院していただいたときは、一歳半の幼児だった。当時、来院された際には、食物アレルギーが多くて、病院からの指導も受けて幅広い食物制限を行なっていた。その結果、約8ヶ月前から体重が増えていないとのことだった。来院時には、通常の幼児に比べると明らかに痩せ細っているのが見てわかった。当院を受療する前にはいくつかの病院を転々とされていたが、解決策もなくお母様は八方塞がりの状態でとても悩まれていた。そんな最悪の状態で当院に来院され、10回ほど通院されてから体重も1キロ増えてきて喜んでいただいた。まだ、いくつかの食物アレルギーの治療は必要だったが、経済的な理由で中止されていた。

それから、その患者さんも元気な7歳の男の子に成長した。今回はご主人の転勤に伴って海外で生活をすることになり、それまでには、何でも食べられるようにアレルギーを改善したいとの希望で再度、アレルギー治療で来院。以前ほどではないが、まだ、複数の食品に対してアレルギー症状がでるとのことで、アレルギー治療を施しながら、陽性反応が消失した後に、実際にその食品を触ったり、ほんの少しだけ舐めたり、口にしたりして、実際のアレルギー症状を確認してもらいながら治療を継続した。

4回の通院治療で、以前から制限していた牛乳、乳製品、卵、鶏肉、パンなどが普通に食べられるようになった。興味深かったのは鶏肉のアレルギー治療だった。アレルギー検査チャートでは陽性反応が示されていなかったのに、実際に食べて試してみたら、顔が赤くなってアレルギー症状がでたという。再検査でもチャートで検査しても反応が示されない。これはアレルゲン以外の何かが関係していると直感的に思い、症状が再現されたイメージから検査をすすめた。すると、「警戒心」というキーワードが示される。それもお母様の過去の記憶が影響を及ぼしていたことが判明。3歳以下の子供は、お母様の影響を受けやすいことは臨床的によくあることだが、7歳の子供でも、過去の記憶で、しかもお母様の記憶が影響を及ぼしているというのはとても興味深かった。

お母様によると、過去、鶏肉をうっかり食べてアレルギー症状がでていたので、お母さん自身も意識的にも無意識的にも鶏肉に対して警戒していたと思うとのこと。お子さんと手をつないでもらい、鶏肉に対する警戒心を認識してもらい調整を行なった。その後、鶏肉を試してもらったが、アレルギー症状は出なかったという。因果関係に関しては珍しいが、この症例から考察すると、3歳以上の患者でも身近にいるお母さんの過去の記憶の影響も考慮して検査を行なわなければならないと思った。やはり、術者のマインド設定はいかにニュートラルにするかの訓練が大切だと改めて思った。

2018年8月30日木曜日

「トラウマ=誤作動記憶」による小脳機能障害

はじめに
10年ほど前に腰痛で来院された患者さんが遠方から来院。今回は半年前から左足に力が入りづらく、仕事で大きな丸太を抱えて移動させるときに力が入らない状態が続いているという。ふくらはぎの筋肉もだんだんと細くなっているという。

機能検査(目安検査)
筋抵抗検査をしてみると、明らかに左下肢の検査で陽性反応が示される。最初の問診では左腕の症状は話されていなかったが、検査をしてみると左上肢にも陽性反応が示される。ここまでの検査で、左側の小脳の機能低下が疑われる。いくつかの小脳機能検査をすると、やはり陽性反応が示される。前腕を回旋させる回内-回外検査をしてみると、左の動作が遅れている。PCRTの三層構造レベルの検査では、小脳-大脳辺縁系関係の誤作動が疑われた。これらの検査を総合して機能障害の根源は小脳機能障害であることが明らかであり、その機能障害を生じさせているのは大脳辺縁系の誤作動記憶であるという予測はできた。

調整
1.     ハード面調整はアクティベータ療法で行い、ソフト面調整法はPCRTのチャートで検査を進めた。
2.     大脳辺縁系→信念→復讐心→時系列→過去→14ヶ月前→思い当たる事柄の特定、相手の特定→「べき」の明確化→調整。
3.     調整後、回内-回外検査をしてみると、先ほどよりは動かしやすくなっているが、若干、左が遅れている感じがするとのこと。
4.     再検査で、同じ出来事で、別の人も関連しているというので、その人に関する「べき」の明確化で調整。調整後の再検査では、先ほどよりも、まだ若干の違和感があるとのこと。
5.     次の再検査では、同じ出来事で「恐れ」のキーワードが示される。「当時のことで最も恐れていたことで、最悪のシナリオとして、思い当たることはありますか?」患者さんはすぐにその恐れのシナリオを想像できた様子。そのイメージで調整。
6.     調整後の回内-回外の再検査では、患者さん曰く「あっ、いいみたいですね!」と、ほぼ左右が同じ感覚で回旋できるようになった。
7.     最初の他の小脳関連の機能検査も全て陰性化して機能障害の反応はすべて改善した。

考察
最初は、現在の症状のことだけをお聞きして、原因になっていた過去の出来事(トラウマ)に関しては一切お聞きしていなかった。でもPCRTの検査ではピンポイントでその原因にたどり着いた。施術後、患者さんにその出来事の内容をお聞きして、なるほど、そんな大きな出来事があればトラウマ(心的外傷)=誤作動記憶として、影響を及ぼしてもおかしくはないと納得した。患者さんは、身体全体を使った力仕事をされている方で、施術前と施術後の違いを明確に感じていただいた様子。以前、腰痛で来院されてから、腰の調子もいいとのことで、今回も信頼して来院してくださり、不調の原因も明確になりとても喜んでいただいた。恐らく、このような関係性による本質的な原因を診ないままで、単に機能神経学的(ハード面の施術)だけのアプローチにとどまると、改善にもっと時間を要しただろう。全ての症例でこのような因果関係がスムーズに分かるわけではないが、今回のように何が症状の本質的原因なのかが明確に分かり、それに伴ってその場で症状が改善されるのはとても清々しい!


2018年8月24日金曜日

思いがけない過去の「トラウマ」が慢性症状を引き起こす

先日、患者さんが痔の症状を訴えてしばらくぶりに来院。以前も痔の症状で施術させていただいたことがあり、その時は一時改善したが、今回はその時よりも悪いとのこと。来院時には、何もしなくても患部に痛みを感じているとのことだった。

アクティベータ療法でハード面の施術を終えた後、PCRTのプロトコルへと進んだ。最初に示されたキーワードは「恐れ」だった。プロトコルに従って、詳細チャートで「どの領域から特定したら良いのか」という前提で、「分野」→「立場」→「時系列」という順でPRT検査をすると、「時系列」で反応。そこから「現在」→「過去」・・・と進めると「過去」で反応。さらに、「近い過去」なのか「遠い過去」なのかをLPRT(言語生体反応検査法)で検査すると、「遠い過去」で反応。そこからLPRTで年代を特定すると、18年前で反応を示す。

「18年前の恐れに関係する記憶が関係しているようですが、何か心当たりがありますか?」と尋ねると、患者さんは「・・・・その年は丁度、主人が亡くなった年ですね・・・」という。「それでは、その当時を思い出して、その時の最悪の恐れをシナリオ的に想像してもらいますか?」と尋ねる。検査で陽性反応が示されたので、そのイメージで調整を行う。

調整後

「あっ・・だいぶん楽になりました・・・」と喜んでいただいた。

1週間後に来院していただいたが、前回の施術後から改善状態が継続しているとのことで喜んでいただいた。検査でも陽性反応が示されずに改善が維持されていた。今回の痔の症状の改善は、ある意味、劇的に改善した一例といっていいだろう。

この患者さんの痔の症状は以前から診させていただいたのに、なぜ、その時に過去の記憶が引き出されず、今回は引き出されたのか?後で振り返った。それは、できるだけ施術者(私)の思い込みが最小限になるように、マインド設定をして、チャートに沿って検査を進めた結果だと思った。私自身もまさか18年前の記憶が影響しているとは思いもよらなかったし、ご主人をご病気で亡くされていたことは知っていても、18年前だとは知る由もなかった。

改めて「無意識に聞く検査」に磨きをかけて、幅広くアンテナを広げて、本質的な原因を引き出せるように訓練をし続けなくてはならないと思った。また、思いがけない過去の記憶(トラウマ)が、案外現在の慢性症状に結びついているということをもっと多くの人に知ってほしいと思う。また、そのトラウマが症状の発症よりも遠い過去であっても無意識の脳と関連していることも少なくはない。理性的な脳で考えると辻褄が合わないことでも、深い感性的な脳は関係しているようだ。トラウマの調整で症状が改善されたことから考えても、そのトラウマが症状に関係していたと思わざるを得ないだろう。

2018年8月23日木曜日

鼻水、鼻づまり(副鼻腔炎)

一週間前より鼻水、鼻づまりの症状で病院を受診。副鼻腔炎の診断を受け、処方薬を服用しているが、改善が見られずに来院。本患者さんは10年以上も前から腰痛などの症状がある際に時々ご利用いただいている。今回は病院での薬でも効果がないので、「何か原因が他にあるのではないか?」と根本的な治療を期待して来院。最初は「五感適応系」で、嗅覚や植物系繊維のアレルゲン情報、並びにいくつかの感情に反応を示していた。その後、アレルゲンの反応は消失し、潜在的なメンタル系の反応が毎回示されていた。10回目の施術でようやく症状の改善が見られ、休日の間は良かったが、仕事が始まってから少し症状がぶり返すとのことだった。

鼻水、鼻づまりの症状の患者さんの中では比較的治りが悪い印象を受けていたが、10回目にしてようやく家族関係に関係する潜在意識が整理された様子で、ご本人も、様々な原因が重なっている中で、ある一つの関係性が複雑に影響を及ぼしているということは、薄々は感じていたとのことだった。誤作動記憶に関係する詳しい内容に関してはご本人にしか分からないが、そのことが影響していたということは納得されていた様子だった。

通常医療では、鼻水、鼻づまりの原因は、感染症かアレルギーという診方をするだろう。一般では潜在的なストレスが関係するとは思わないのが普通だろう。しかしながら、心身条件反射療法を使った改善例を考察すると、鼻水、鼻づまりの原因は、単に感染症やアレルギーだけが原因ではなく、「メンタル系が絡んだ誤作動記憶」による場合も少なくはない。現代医療の知識情報にとらわれずに、純粋に身体に聞いて検査を進めていくと、最終的には辻褄が会うことが多く、患者さんも点と点が繋がって線となり、線と線が繋がって面となり、面と面が繋がって立体像が浮かび上がって、因果関係が明確になる。そして、それに伴って症状も改善される場合が多々ある。

症状の改善の鍵は、いかに患者さんの無意識に寄り添って、原因となる誤作動記憶を引き出すかによる。現代医療のケアも大切だが、それでは治らない時には、純粋に「無意識に聞く」ことが改善の近道になるだろう。

2018年8月9日木曜日

2018年度PCRT中級2のご案内

2018年度PCRT中級2のご案内

9月9日-10日に開催されるPCRT中級2では、主にアレルギー治療に関しての手法を学びます。スイスのアレルギー研究所が発表したデータによると、アレルギー患者は1950年代では非常に少なかったけれども、先進国では年を追うごとに増加し、2000年の時点では、何と3人に1人が何らかのアレルギー症状を抱えているといいます。現代医学では科学的な根拠に基づいて治療やアドバイスをしていると考えられますが、アレルゲンを避けるという「予防策」は効果があるのでしょうか?巷では花粉を避けるためのマスクやメガネなどの広告やアレルギー食材の表示をたくさん目にします。

しかし、最新の科学研究は、アレルギー食品などを避けることは、実はアレルギー予防に全く役に立たないことを突き止めました。つまり、アレルゲンを避ける「予防策」は、明確な科学的根拠が存在しないのです。これは、アレルギー医療の最新研究の現場を世界的に取材したNHK取材班が述べていることです。さらにアレルギー食品を避けることが、かえってアレルギーを発症する子供を増やしてしまっているという恐ろしい可能性すら指摘され始めているのです。現代医療はアレルギー症状を根本的に治すことが不可能だと考えていたため、予防策や症状を抑える対症療法で対応してきたのです。

しかしながら、22年前に日本人科学者がある特殊な免疫細胞の存在を突き止めたことに起因して、近年のアレルギー研究が飛躍的に進歩しました。現代医療においては、アレルギー医療の常識が根底から覆るようなパラダイムシフトがあったということです。簡単に言うと、「アレルゲンを身体から避ける」から「アレルゲンを身体に慣れさせる」という考え方に180度転換したということです。

現代医療ではその革新的な考え方から、2014年に「花粉症の舌下療法」という治療法が開発され、新聞、雑誌などで話題になり、根本的な治療法として期待されるようになりました。それは花粉成分が少量入った液体を舌の裏側に垂らして吸収させる治療法です。アレルギーの原因物質であるアレルゲンを敢えて体内に取り込むことで身体を慣らして完治させようという試みです。また、花粉の成分を入れたお米を食べることで花粉症を根本的に治す研究も進められています。

PCRT(心身条件反射療法)研究会では、20年ほど前からアレルギー治療の臨床研究が進められており、欧米で進められている様々なアレルギーの代替療法も参考にしながらその本質的な治療法を追求してきました。そして、現在のPCRTにおけるアレルギー治療は、明確なプロトコルに基づいて、効果的なアレルギー治療ができるように発展してきました。基本的には「アレルゲンを身体に慣れさせる」というコンセプトに基づいていますが、アプローチの仕方は、現代医学とは異なります。アレルゲンを「情報」=「エネルギー」として捉え、脳の可塑性を活用して、アレルギー症状を生じさせる誤作動の記憶を調整していきます。

アレルゲン情報をエネルギー的に身体に慣れさせることは難しいことではありませんが、様々な一般情報から由来するいわゆる根拠のない「思い込み」は、施術の妨げになることもあります。しかし、PCRTではそれが「思い込み」が関係しているのか、単に反射系に関係する「アレルゲン」の条件付けなのかを検査します。さらには、「アレルゲン」にプラスアルファーされた、大脳辺縁系に関係する複合した誤作動記憶なのかを明確にして施術を行うことができます。

PCRTの本質をしっかりとマスターすれば、アレルギー症状の患者さんをしっかりとサポートできる自信が身につきます。アレルギー症状は改善されないものだと諦めている患者さんは少なくはないと思います。そのような患者さんに貢献できるように治療の幅を広げてはどうでしょうか。様々な慢性症状と同様に、アレルギー症状の改善も、身体をエネルギー体として捉え、誤作動記憶という概念で治療をすることで、効果が出せることを確信されると思います。次回のPCRT中級2では主にアレルギー治療について学び、信念や意味記憶などの概念を深めていきます。皆様と共にさらに学びを深めていけることを楽しみにしております。