意識と無意識の不一致を乗り越えた先にあるもの
ダンスインストラクターの方が、半年前からある股関節の痛みで来院。最初は、寝たままの状態から、膝関節を曲げて、股関節を45度ぐらい屈曲するだけで、痛みが生じていた。2ヶ月後のイベントまでにはなんとか治したいとのこと。8回ほどの通院で舞台パフォーマンスができるまで回復、2回目の舞台も無事終了。股関節を大きく内回しや外回しをしても痛みのない状態まで回復し、施術後には症状はほとんど消失するが、次の来院日には、両方の股関節前面の鼠径部に症状がぶり返すとう状態が3回ほど続いている。そのぶり返すパターンには何か原因があるだろうと、患者さんとともに探索していた。
ぶり返す症状が継続してから約1ヶ月後の施術でようやく糸口が見えてきたのでご紹介させていただく。
目安検査:陽性反応
EB部位を触れる=両鼠蹊部(3回ほどぶり返す)
症状イメージ=スタジオに戻るイメージ(前々回からぶり返す)
ハード面調整(肉体内関係の誤作動記憶調整):
AM(アクティベータ・メソッド)とPCRT(心身条件反射療法)でハード面調整を完了。ハード面調整法の後は、いつもその場で症状が軽減、あるいは消失している。
ソフト面調整(肉体内関係の誤作動記憶調整):
前々回の検査から、ダンススタジオに戻るイメージをしてもらうと、陽性反応が示されていたので、その日の施術でもダンススタジオのイメージから検査を行う。
術者:それでは、以前からぶり返しが続いているダンススタジオに戻るイメージから検査させてもらえますか?
患者:はい(ダンススタジに戻るイメージ)
術者:(生体反応検査法)また、陽性反応がぶり返していますね。それでは、また検査チャートを使って調べます。
患者:(検査チャートを押さえる)大脳辺縁系→感情→意欲
術者:意欲というキーワードで陽性反応が示されていますが、何か心当たりはありますか?確か前回の施術でも意欲のキーワードが出ていましたが・・・。その時は、振り付けのアイディアを出すというような創造性に関する意欲だったと思います。再度、そのイメージで検査させてもらえますか?
患者:はい(前回と同じ振り付けを創り出す意欲をイメージ)
術者:・・・前回と同じように反応が出ていますね。ということは、まだ、そのことに関して深い意味があったり、不明瞭だったりしている可能性があるのですが・・・新しい振り付けを創り出した先にあるモノはなんでしょうか?
患者:そうですね。新しい振り付けができたら、それを舞台公演で発表したりすることになると思います。
術者:お話しされている間に検査をしてみると、陽性反応が示されていますので、そのことが、先ほどの意欲の先にあるゴールになる感じでしょうか?それ以上先のゴールはありますか?
患者:いいえ、それ以上はないと思います。
術者:「さらに」の生体反応検査でも反応が示されないので、それが最終だと思います。それでは、そのことをイメージしながら深呼吸をしてください。
PCRT呼吸振動法を施す。生体反応検査で先ほどの陽性反応が陰性反応に変わる
術者:意欲に関する誤作動記憶は調整できましたので、スタジオに戻るイメージで再検査させてもらいます(フィードバック検査)・・・そのイメージでまだ陽性反応が示されていますので、再度、検査チャートを使って検査させてもらいます。
患者:(検査チャートを押さえる)大脳皮質系→意味記憶→エピソード記憶
術者:「エピソード記憶」の場合は、症状部位からの痛みの信号ではなく、脳で作られる痛み信号です。では、そのエピソード記憶の施術を行いますので、まずはご自分自身の姿を客観視してください。映画の中にいる自分を想像するような感じです。そして、その自分の映像の中で痛みのある部位に赤い色をつけてもらえますか。
患者:はい、想像できました。
術者:今度は、その痛みの赤い色を取り除いてください。
患者:あ〜色が取り除けない〜。え〜何だろう〜
術者:お・・・赤色を取り除くイメージができないのですね。それでは、その痛みの赤色を取り除けない原因検査のために再度チャートを使って調べてみましょうか・・・。
患者:(検査チャートを押さえる)大脳皮質系→意味記憶
術者:「意味記憶」というのは無意識に何か意味付けしていることが、赤色の症状を取り除けない原因の一つになっているということです。もしかすると、ぶり返す原因の一つになっているかもしれませんね。それでは意味記憶の検査チャートを使って検査させてもらいます。
経験→情報→ストーリー・・・あ〜「ストーリー」で反応が示されましたか・・・この反応は少し複雑です。ここも無意識の自分が作っている筋書きで、意識では早く治したいと思いつつ心の奥の無意識さんは、治ると何かを失うと勘違いしているようなことです。例えば、今、新しい振り付けのアイディアを出そうと一生懸命になられていますが、股関節が悪いことで、そのアイディアがでてこない自分にとっての正当な理由だったり、あるいはご自分に対する何かの言い訳だったり・・・・
患者:・・・ん〜何かそれは分かるような気がする。本当は(振り付けを)やりたくないけどやらなければいけない。そのことに文句を言っちゃいけないというのは、仕事があることにありがたみを感じているがゆえにありますね・・・
術者:そうですか〜、では身体がそのような自己矛盾に反応しているということを理解できそうですか?
患者:ややこしいけど理解できます。(笑)
術者:それではその自己矛盾を認識してもらいながら大きく深呼吸をしてください。(PCRT呼吸振動法を施す)
術者:それでは、先ほどイメージで取り除けなかった赤色を取り除いてみますか・・・
患者:あ〜〜〜無くなった!え〜〜すごい、手のひらに汗も出てきた!わ〜すごい!(自律神経系の変化)
術者:それでは先ほどのエピソード記憶の調整を行いますね。深呼吸を繰り返しながら、先に症状の赤色のついた自分の姿を思い浮かべて、次に赤色を取り除いた自分の姿を思い浮かべて、深呼吸を続けながら2往復繰り返してください。
PCRTパターン振動法を施す
患者:あ〜今度は症状の赤色がイメージしにくくなりました!あ〜不思議!
術者:それでは、最初の陽性反応の検査に戻りますので、スタジオに戻るイメージをしてもらえますか?
患者:(スタジオに戻るイメージ)
術者:今度は陽性反応が示されていません。今回は、奥深い誤作動記憶が明確になったので期待できるかもしれませんね・・・
術者:いい気づきだったと思います(お〜すごいドラマだな〜〜と感心する・・・)
患者:ありがとうございました。
施術完了
考察:
施術の直後には慢性症状が改善されるが、その症状が同じような原因パターンで振り返される場合、「意味記憶」や「エピソード記憶」に関係している事は珍しくない。今回のケースのように症状がない理想の自分自身の姿を想像できないということは、言い換えると、無意識のもう一人の自分が「そのイメージはしたくない」といっていると解釈することもできる。当の意識の本人はそのような無意識さんの思いを知る由も無い。
治っている自分の姿というのは、意識では心から望んでいる姿なので、想像できるはずだが、それができないというのは、どこかに「理想のイメージ=治るイメージ」を制限しているもう一人の自分が存在しているということにつながるだろう。施術を通じて意識と無意識さんとの境界線を取り払って無意識さんに寄り添ってみると、「無意識さんが抵抗している理由もよく分かる」ということにつながり、新たな選択肢へと広がる。
これは、一般論的に言われている「疾病利得」というニュアンスとは異なる。このような意識と無意識との不一致がもたらす関連症状は、単にハード面だけの施術法だけでは到達できない領域だろう。PCRTの臨床現場では、そのような壁を乗り越えて次のステージへと進む。そして、その瞬間、瞬間に様々なドラマが展開される。私たちはそのような患者さん達に寄り添って、一緒にその壁を乗り越えていくことで、なんとも言えない治療家としての醍醐味を患者さんとともに味わうことができる。いつもこのようなドラマに遭遇するわけではないが、このような奥深い施術に携わることができるということに心から感謝する。
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