患者(クライエント)への「質問力」その2【症状の質や原因に応じて異なる質問】
事故などによる身体的問題を抱えた患者に対しては、「いつ、どこで、どのように外傷を受けたか?」という「原因と結果」に対する質問が肝心で、「物理的な外力がどのようにどの程度加わったのか?」そして、「どこの部位でどのような結果になったのか?」、「時間の経過とともにどのように変化し、外傷直後にどのように処置したのか?」、「症状の程度や質はどのように感じたか?」などに関する質問をすることが大切だろう。
西洋医学の領域で言えば、整形外科から外科、内科、などでは機械構造論の知識や技量が求められる。その一方で心の面が関係する心療内科など、有機的なつながりや関係性が求められる領域では患者への質問の質や内容が大きく異なるだろう。心の側面との関係性を診ない整形外科や外科などの領域では、医師は解剖学的、生体力学的な医学知識を統合しながら分析して、最善の治療法を導き出すだろう。医学の知識と経験があれば適切に判断して適切に治療を行うことができる。さらには、膨大なビックデータを処理するコンピュータで症状などの情報を入力すれば、機械的に診断ができる時代になりつつある。
外傷を受けた急性患者に対しては、機械構造論的な原因と結果の分析に基づく質問で患者のニーズに答えることができる。しかしながら、3ヶ月以上も同じ症状を抱えている慢性患者に対しては、このような機械構造論的な原因と結果の分析では辻褄が合わないことが多い。それはなぜか?多くの医療従事者は、身体的な問題があると、外傷を受けた患者と同様にその問題を「機械仕掛けの理論」で質問し説明しようとする傾向があるからだ。その原因と結果の説明を聞くと理論的で「なるほど」と思いたくなる。しかし、そこにはたくさんの矛盾がある。
最近ではロボットに心の要素を組み入れる研究も盛んになってきている。しかし、心を持った人間は機械仕掛けのロボットを修復するようにはいかない。心と身体の関係性はとても複雑でまだまだ未知の領域がたくさんある。特に理解し難いことは、「無意識」の心の領域が身体の90%以上をコントロールしているということだろう。もちろん「意識」の心の領域でも身体をコントロールしているが、私たちの行動や内臓や細かな細胞に至るまで、無意識の脳(神経)が様々な情報交換を行いながら自動的にコントロールしているのである。
慢性症状の多くは「無意識の脳」が誤作動を記憶してプログラム化された結果であることが多い。神経の働きが乱れ、筋肉が異常に緊張して自動的に慢性症状を生じさせるように、脳が無意識的に学習し記憶しているのである。もちろん故障している身体的な部品を取り替えて改善する症例もあるが、慢性症状が改善された多くの患者は、脳・神経の誤作動記憶を健全な記憶に書き換えることで改善される場合が多い。このような「無意識の脳」が引き起こしている「働きの問題」を抱えた慢性症状の患者に対して、外傷患者と同様な質問をしても症状改善の糸口は得難いだろう。
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