2018年1月19日金曜日

患者(クライエント)への「質問力」その3【「無意識の脳」への質問】

患者(クライエント)への「質問力」その3【「無意識の脳」への質問】 

関節痛などの慢性症状の多くの患者は、病院で身体的検査をしても異常が見当たらないことが多い。例え、背骨の変形や椎間板ヘルニアなどの症状が存在してもそれが直接的に痛みやしびれなどの原因になることは少ない。厄介なことに椎間板ヘルニアなどの画像診断を受けると、あたかもそれが症状の原因であるかのように思い込んでしまう傾向がある。そのような思い込みは、本来の原因となるバランス異常や心身相関などの目には見えない領域に関心を向けずにさらに症状の改善を遅らせてしまう傾向がある。

身体的に症状の原因になるような問題が見当たらない慢性症状を抱えた患者に対して、どのような「質問力」が求められるのだろうか?急性症状による原因は意識的に答えが出やすいが、慢性症状の原因になると、行動や思考などの無意識的な習慣が関係しやすいので意識的な領域では答えられないことがほとんどだろう。少し飛躍して言うと、慢性症状は「無意識の脳」が作り出すプログラム化による結果であるという前提に立てば、「無意識の脳」に質問しなくては答えが出ないということになる。おそらく「意識の脳」に質問をしても、分からないだろうし、答えがあるとすれば機械仕掛けの「原因と結果」の理論から分析した答えが返ってくる可能性が大きい。「無意識だから答えようもない」という反論もあるだろう。では、「無意識の脳」にどのように質問するのか。

心理学や催眠療法などに興味のある人であれば、「意識」と「無意識」の違いなどについては、多少の解釈の違いはあっても理解されるだろうが、一般的に考えることはない。意識や無意識に関する心の構造の概念は、フロイトやユングらが学術的に発展させた現代の深層心理学以前に、すでに唯識思想として4世紀にインドで確立されている。そして、「意識」と「無意識」との調和、統合、すなわち心身統一の大切さが語り継がれている。心身統一の意味を「脳の構造」に照らし合わせると、心=意識、身体=無意識ということになる。頭(心)で考えていることと身体(心の奥)で感じていることが一致していることが大切で、そこに不調和、不一致が生じてしまうと、心も身体も不健康になり、潜在的な能力も発揮できなくなる。

「意識の脳」は「理性」を担い、「無意識の脳」は「感性」を担うと説明されることもなる。意識の脳」に質問すると、分析的で理論的な答えが返ってくる傾向がある。答えの傾向がイエスかノーであり、その中間はないことが多い。その一方で、「無意識の脳」に質問すると、感覚的で曖昧性のある答えが多い。イエスかノーでは答えられない内容になるだろう。よって、「無意識の脳」への質問の多くは、評価や判断の度合いが幅広く、答えが限定されない質問になるだろう。答える側は、すでにある答えを探すのではなく、今まで考えたことのない未知の領域に思考を巡らせて答えを導き出すことが多い。それが「無意識の脳」を活用した答えになる。


慢性症状の原因の多くは、外傷を受けた急性症状の原因のように、イエス・ノーで答えることのできない場合が多い。言い換えると、症状の原因がイエス・ノーで答えることができないが故に、脳の交通整理がうまくいかずに神経系の機能に誤作動を生じさせ、結果的に慢性症状が現れやすくなると言えるだろう。

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