2016年9月15日木曜日

連載7心の視野を広げるこつ

「無意識」にアクセスする「コーチング」を目指して 連載

連載7 心の視野を広げるこつ

慢性症状などの身体の問題や、人間関係などによる心の問題は、部分的な構造や機能、あるいは特定の人というよりも、全体的なシステムや「心の構造」に本質的な問題が隠れている場合が多くあります。連載6でご紹介したメジナという魚の例でいえば、いじめっ子のメジナが悪いのではなく、狭い水槽という構造が本質的な問題であって、水槽から広い海の中に移動すると生態系、すなわちシステムが変わって問題が解決するわけです。

生活環境というシステムが脳に与える影響については、動物実験でも研究されています。老齢のネズミを2つのグループに分けて、一方は遊具のたくさんある広い飼育環境かで活発的に生活させます。他方は非常に狭い空間の飼育環境下で生活させました。その結果、遊具が沢山ある飼育環境下でのネズミグループは、脳の細胞が増えていることが確認できたのです。要するに、狭い空間では心の視野も狭くなり、脳の細胞も活性化されずに衰えてくるのです。人間でいえば、外に出て運動したり、人と交流して会話を楽しんだり、好奇心をもって色々と勉強したりしたほうが、脳細胞がどんどん活性化するということです。

人間関係でいろいろと問題があると、引きこもりがちになります。そして、多くの場合、「怒り」、「悲しみ」など一つの感情にフォーカスしがちです。しかし、そこにフォーカスしても本質的な問題に変化は促されません。それよりも、その感情が引き出される「背景」や「心の構造」に注目して、客観的に自分の心を理解し、心の視座を高く、視野を広げることに注力した方が、ネガティブな感情から簡単に抜け出せるのです。例えば、「怒り」の感情の背後には「~すべき」「~ねばならない」といった自分が大事にしている信念が関係します。相手がいる場合は、相手の「~べき」と自分の「~べき」のルールの違いが分かるとさらに視野が広がりますし、自分が信じているルールはどこからきたのかがわかると、さらに視座が広がります。

ビジネスの世界でも、視野を広げるために、「鷹の目」、「蟻の目」で見ることの大切さが語られています。「鷹の目」とは、鷹が大空から眺めるように、大局から全体をとらえる見方です。「蟻の目」とは、細部に意識が向くように細かくものごとを見る見方です。どちらの見方も大切な見方ですが、「木を見て森を見ず」ということわざがあるように、「蟻の目」だけに偏って視野が狭くなる方に問題が生じる傾向があるようです。

視野を広げるためには、時間軸の長さも関係します。実際に目の前にある問題や成果は、今に至る数週間から数か月前に生じた出来事や行動の結果生じたものです。また、目の前に大きな問題、あるいは大きな成果があったとしても、数か月後、数年後、数十年後にそれが継続するとは限りません。常に時間と共に変化していますので、長期的に物事のとらえ方や受け止め方を幅広く見ることが大切になります。

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